Natural Punch Drunker
2004-03-03


【収録曲】
全曲作詞作曲 井村洋
8.作詞 井村洋・村上雅之
3.7.作曲 Natural Punch Drunker
全曲編曲       Natural Punch Drunker
3.7.編曲 Natural Punch Drunker・白井良明
9.編曲 Natural Punch Drunker・村松邦男
11.編曲 Natural Punch Drunker・中村公輔
プロデュース Natural Punch Drunker

1.朝 省略
2.土曜日 ★★★★☆
3.シンクロナイズ ★★★★★
4.波音少し… ★★★★★
5.丘を越えて ★★★☆☆
6.ソラトブフタリ ★★★★☆
7.夜汽車 ★★★★☆
8.Start on Me ★★★☆☆
9.涙のカケラ ★★★★★
10.スタンドバイミー ★★★★★
11.夜 ★★★☆☆

2004年3月3日発売
テイチク(インペリアルレコード)
最高位120位 売上不明

Natural Punch Drunkerのメジャー1stアルバム。先行シングル「シンクロナイズ」「涙のカケラ」を収録。今作発売後に「スタンドバイミー」がシングルカットされた。

Natural Punch Drunkerはボーカル・ギターの井村洋、ギター・コーラスの松原史明、ベース・コーラスの村上雅之から成るバンド。(今作リリース当時のメンバー構成)主な略称はNPD、ナチュパン。
1999年に大学のサークル内で結成され、インディーズデビュー。シングル1作とアルバム2作をリリースしたのち、2003年にメジャーデビューした。現在は活動しているのか解散してしまったのか不明。

今作発売後にシングルカットされた「スタンドバイミー」をもって、ギターの松原史明が脱退することとなった。2005年3月からはサポートメンバーとして活動していたギターの小野晃裕が正式メンバーとして加入した。

Natural Punch Drunkerは怖そうなバンド名とは裏腹に、爽やかなポップス・ロックを得意としていたバンド。井村洋による、ポップで爽やかながらもどこか切なさや懐かしさを感じるメロディーが魅力。それはスピッツ、Mr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEW、RAZZ MA TAZZといった90年代のポップスバンドを彷彿とさせる。


「朝」は今作のオープニングを飾るインスト曲。段々と街が賑やかになり始める頃をイメージさせるインスト。途中からは子供の声も入っている。どことなくモヤモヤした感じのサウンドが展開されており、まさに「朝」と言ったところ。曲は1分足らず。聴き手を今作の世界に導く役割を持ったインストだろう。


「土曜日」は爽快なポップロックナンバー。前の曲からは繋がって始まる。勢いに満ち溢れたギターサウンドが主体となっている。脇をストリングスが固めている。終始明るいテンションのまま突き抜けるメロディーも印象的。メンバーが楽しんで演奏している姿が浮かんでくるようだ。井村洋の甘くて温かみのある歌声も楽しめる。井村洋の歌声はNatural Punch Drunkerの楽曲の大きな魅力と言える。歌詞はタイトル通り「土曜日」の光景を描いたもの。サビまでは淡々と情景描写がされている。昼下がりの光景を描いているのだが、その情景が浮かんでくるような繊細な表現がされている。サビの「土曜日の下り坂に転がしてしまえば 何でもできるのさ」というフレーズが印象的。管理人にとって一番気分良く過ごせるのは土曜日。とても共感できる。 アルバムの実質的なオープニングという位置にふさわしい爽やかさがある曲だと思う。


「シンクロナイズ」は先行シングル曲。NPDにとってのメジャーデビュー曲。TBS系音楽番組『COUNT DOWN TV』のオープニングテーマに起用された。爽快さ溢れるポップロックナンバー。爽やかで勢いに溢れているのに、それでも懐かしさを感じさせるメロディーは絶品。そして、とてもキャッチー。それはNPDの楽曲の魅力である。弾むようなバンドサウンドはメロディーの美しさをより引き立てている。歌詞は新しいステージに立とうとする人への応援歌と取れるような内容。「ありふれた言葉はイタズラに僕らを惑わすけど 慣れたあの景色に少し「サヨナラ」を」というサビの歌詞の一節が好き。日本語に拘った詞世界となっており、それは言葉の響きや意味をより伝わりやすくしている印象がある。メジャーデビュー曲という重要なポジションにふさわしい完成度を持った曲である。NPDの楽曲の良さが凝縮されている印象。


「波音少し…」は軽快なポップロックナンバー。アコギが主体となったバンドサウンドが展開されている。どことなく焦燥感を煽るようなアコギの音色や手数の多いドラムは曲の軽快さを引き出している。そして、思わず聴き入ってしまうような美しいメロディーもたまらない。一回聴くとすぐに口ずさめそうなくらいキャッチーなサビも良い。軽快な曲調とは裏腹に、歌詞は中々に切ないものとなっている。失恋した後、その悲しみを癒すために海を訪れる男性を描いている。繰り返し歌われる「さっきまで波の音が聴こえていたのがまるで嘘のよう」というフレーズ。海に行った帰りの光景が描かれているのだろうか。最後は「打ち寄せる日々は手を離していくけど 笑い飛ばしてくじけそうな今を描くのさ」と少しだけポジティブな歌詞で終わる。曲、歌詞のテーマ共に管理人の趣味のどストライク。後追いで聴いたので、シングル曲ではないのかと驚いた。


「丘を越えて」はここまでの流れを落ち着けるようなバラードナンバー。全体的にアコースティックなバンドサウンドが展開されており、温かみのある音作りがされている。聴いたことがなくても、どこかで聴いたことがあるという感覚にさせるような懐かしい雰囲気を持っている。歌詞は少々難解なもの。主人公の男性は丘を越えて何を探しているのだろう。「濡れた花びらと消えた面影」を探しているようだ。これは別れた恋人のことを指していると解釈している。サビでは「重ねた手のぬくもりは忘れはしないでしょう」と歌っている。別れた恋人への気持ちを絶妙に表現した歌詞だと思う。「でしょう」と丁寧語になっているのが印象的。 2分と少しの短めな曲ではあるが内容が濃い曲なので飛ばすのは勿体無い。


「ソラトブフタリ」は今作の中では比較的ロック色が強めな曲。出だしから終始力強いギターサウンドが主張している。前の曲はアコースティックなサウンドの曲だったのでギャップが大きい。そのようなサウンドでもポップなメロディーは冴え渡っている。歌詞は彼女と空を飛ぶ夢を見た…というもの。割と散文的な詞世界なので意味はあまり分からない。付き合い始めて浮かれていることの例えなのだろうか?そう考えると何となく可愛らしい感じがしてくる。この曲の歌詞で好きなのは「足りないものを補いあうだけさ」というもの。主人公の二人の優しさが伝わってくるようなフレーズだと思う。この曲は歌詞よりもメロディーやバンドサウンドに魅かれた。アルバム曲ではあるが、シングル曲とも遜色のない爽やかさや親しみやすさがあると思う。


「夜汽車」は先行シングル「シンクロナイズ」のC/W曲。重厚なロックバラードナンバー。力強いドラムが前面に出て聴こえる印象がある。太い音色のベースも曲の重厚さを演出している。いきなりサビから入るという構成は聴き手を引き込んで釘付けにするような魅力があると思う。歌詞は恋人と別れることを決めた男性を描いたもの。女性は夜汽車に乗ってどこかに旅をするのだろうか。「どこまでも歩きながら 話したいことたくさんあったけど」という歌詞は男性の悔しさやもどかしさがよく伝わってくる。ジャケ写は夕暮れの空の風景が使われているが、その世界によく合っていると思う。全編通して恋人と別れることへの寂しさや悔しさが描かれている。そのため、聴き手が主人公になったような感覚で聴けるはず。


「Start on Me」は全編英語詞によるポップロックナンバー。2分40秒ほどの比較的短めな曲。流れるような爽やかなメロディーと跳ね上がるように軽快なバンドサウンドとの絡みが心地良い。間奏のハーモニカの音色も印象的。その中を泳ぐような井村洋の歌声も曲の爽快な雰囲気を引き出している。英語詞ということもあってか、メロディーとぴったり合っている印象がある。歌詞の意味はよく分からないが、何となくポジティブな言葉が並んだものなのだろうと思っている。歌詞の意味は分からなくてもメロディーやバンドサウンドだけでも十分に聴ける。


「涙のカケラ」は先行シングル曲。この曲でNHKの音楽番組『ポップジャム』に出演したほか、全国のFM各局で多数の推薦曲に選ばれたようだ。NPDにとっての出世作と言えるかもしれない。ストリングスも使われ、ドラマチックに盛り上がるバラードナンバー。心が晴れ渡るような爽やかさと、胸がキュッとなるような切なさとが同居したメロディーは圧巻。ストリングスも前面に出ているのだが、バンドサウンドを覆ってしまうほどではない。歌詞は恋人への想いをストレートに語ったもの。恋人との再会を果たそうとする姿が描かれているのだろうか。「どこまでも歩いて行ける それぐらいの覚悟はある」という歌詞には主人公の男性の強い想いが凝縮されている。管理人がこの曲を初めて聴いた時には「なんでこんな良い曲が売れなかったの?」と心底疑問に思った。これほど訴求力のあるバラードはヒットした曲の中でもそうは無いと思う。


「スタンドバイミー」は今作発売後にシングルカットされた曲。インディーズ時代の曲「スワロウ」との両A面シングルだった。よみうりテレビ・日本テレビ系バラエティ番組『オカンと娘』のエンディングテーマに起用された。2分40秒という短い曲。爽やかなポップロックナンバー。勢いの良いバンドサウンドは聴き手の気持ちを高めてくれる。歌詞はメッセージ性の強いもの。「ただ目の前にある長い道を僕は歩いていくだけさ 交わした言葉や幾つもの重なりをたどっていくだけさ」という歌い出しから引き込まれる。「歩き疲れたなら少し休めばいいさ」という歌詞は優しさが感じられる。ただ進んでいくことを歌うのではなく、しっかりと気遣うところが素晴らしい。 井村洋の歌声は歌詞のメッセージを聴き手にスッと届けてくれる。全体的にキャッチーかつメッセージ性のある歌詞なので、シングルカットされたのも頷ける。


「夜」は今作のラストを飾る曲。アコースティックなバンドサウンドで構成されたシンプルな曲。アコギやハーモニカの音色は切なさや儚さを感じさせる。スコーンスコーンと抜けていくようなドラムの音が印象的。歌詞はタイトル通り夜の光景を描いたもの。「雨に濡れたアスファルトが乾いた後の蝉時雨」という歌詞が好き。雨が降った時特有の匂いすら伝わってくるような繊細な描写だと思う。「朝」というタイトルのインストで始まった今作は数々の物語を経て、「夜」と名付けられたこの曲で締められる。その構成が絶妙。この曲を聴き終えたらまたもう一周聴きたくなるはず。


あまり売れた作品ではないので中古屋ではたまに見かける程度。しかし、このまま埋もれてしまうのは勿体無いと感じられる作品。全編通して爽やかかつポップな曲が並んでいる。どことなく懐かしさや切なさも感じさせる優れたメロディーを持った曲ばかりなのも魅力。今作を聴くと、何故Natural Punch Drunkerが過小評価されているのか疑問に感じるはず。Mr.Children、スピッツ、L⇔R、FIELD OF VIEW、RAZZ MA TAZZといった90年代の爽やかなポップスバンドが好きな方はハマれると思う。それらのバンドが好きな方には是非とも聴いていただきたい。

★★★★★