今回が五回目となる企画です。これは以前行った「私的○○年代ベストアルバム」の続編のようなものです。その企画では管理人が所有する1985年〜2016年リリースのアルバムの中から、好きな作品を1年ごとにベスト5形式(一部それより少なかったり多かったりしましたが)で紹介してきましたが、「曇りめがね的名盤特集」はその中から作品のチョイスに特に迷ってしまった年をピックアップし、好きな作品を紹介していきます。この企画ではランキング形式をやめ、作品及びその解説を並べていくだけの極めてシンプルな形をとります。何作紹介するかという数も決めていません。
「私的○○年代ベストアルバム」で紹介した作品は解説文がほぼ同じです。既にブログで紹介した作品はリンクも用意しています。紹介している順番については、管理人が使っているCD管理アプリでのアーティストの並び順です。ご了承ください。

「曇りめがね的名盤特集」第五回は2000年です。この企画で2000年代を扱うのは今回が初めてですが、この年も名盤と呼びたくなるような作品が沢山生まれた年だと思います。


BLANKEY JET CITY「HARLEM JETS」
BLANKEY JET CITY
2000-05-10


BLANKEY JET CITYの9thアルバム。今作が彼らにとって最後のオリジナルアルバムとなりました。そのためか、バンドとしてやりたいことを全てやり尽くしたような雰囲気がある作品です。解散を前提にして作られたわけではないようですが、それでもやはりバンドの終わりを感じさせるような曲が並んでいます。BLANKEY JET CITYの王道と言える破壊的なロックナンバーが主体ながらも、打ち込みを用いた実験的な曲もあります。 最後まで力の限り駆け抜けた彼らの勇姿を見ることができる作品です。


DEEN「'need love」
DEEN
2000-05-24


DEENの4thアルバム。彼らにとっては初となるセルフプロデュースによる作品にして、ドラムの宇津本直紀が脱退し、3人体制になってから初のアルバム。
タイトルから察しがつくかもしれませんが、コンセプトは「愛」で、様々な愛の形を描いた曲が並んでいます。多彩なバリエーションの曲が収録されているのも特徴。全曲の作詞作曲をメンバー自ら手がけた初の作品なのですが、何故もっと前からそうしなかったの?と思ってしまうような名曲揃い。王道な要素と当時としては異端だった要素とのバランスが取れており、とても聴きやすい作品。DEENに関してはあまり詳しくないですが、好きなアルバムです。


Every Little Thing「eternity」
Every Little Thing
2000-03-15


Every Little Thingの3rdアルバム。今作を最後に五十嵐充が脱退したため、3人時代としては最後のアルバム。これまでの作品と同じく、打ち込み主体の爽やかなポップナンバーがメインの作風なのですが、バンドで演奏されることを見越してか骨太な印象の音作りになっているのが特徴。もう一つの特徴として、「Every Little Thing」名義で作詞作曲編曲がされた曲が増えていることがあります。セールスという面では前2作ほどの圧倒的な勢いが感じられる作品というわけではないですが、 当時の3人の力を結集させて作られたような雰囲気がある作品。シングルカットされた曲が多いのも頷けます。


FIELD OF VIEW「CAPSULE MONSTER」
FIELD OF VIEW
2000-03-29


FIELD OF VIEWの5thアルバム。オリジナルアルバムとしては今作が最後の作品。先行シングル曲でもそれを匂わせていましたが、打ち込みやクラブサウンドを導入した曲が並んでいます。バンドサウンドは大分控えめになっています。これまでのFIELD OF VIEWの曲に慣れていると違和感を覚えること間違い無しなのですが、それでも不思議とクセになってしまうような曲ばかり。もしも次のアルバムが作られていたら、どんな作品になっていたのだろうとついつい妄想してしまいます。


GAKU-MC「word music」
GAKU-MC
2000-02-19


GAKU-MCの1stアルバム。ソロとしては初めてのアルバムです。管理人にとってヒップホップはあまり馴染めないジャンルという印象があるのですが、この作品はサラッと聴けました。その理由はそれぞれの曲のメロディーの良さにあると言えます。一回聴いただけで耳に残るようなポップでキャッチーな曲や、心地良いバラード…バンドサウンド主体の聴きごたえのあるトラックも格好良いものばかり。何より、GAKU-MCの聴き手に語りかけるようなラップがたまらない。 ヒップホップは苦手かも…と思う方にこそ聴いていただきたい作品です。


GOING UNDER GROUND「GOING UNDER GROUND」
GOING UNDER GROUND
2000-05-24
(オリジナル盤)


GOING UNDER GROUND
2003-05-07




GOING UNDER GROUNDのインディーズ時代のフルアルバム。2003年に再発されました。前作は荒々しさが目立つ曲が多い作品でしたが、今作では後のゴーイングの王道と言える、胸がキュンとなってしまうような、青春の雰囲気をまとった曲が出始めました。後の楽曲と比べるとバンドサウンドも荒削りな印象の上に、松本素生のボーカルもどことなく拙い感じがするのですが、それでも魅かれる曲が揃った作品です。「桜が咲いたら」のせいか、春になると聴きたくなります。


GOMES THE HITMAN「cobblestone」
GOMES THE HITMAN
2000-04-21


GOMES THE HITMANのメジャー2ndアルバム。前作「weekend」はフリッパーズ・ギターを彷彿とさせる爽快なギターポップが並んだ作品でしたが、今作は一つの街を舞台にしたコンセプトアルバムというような味わいを持っています。そのような作風のため、全体を通しての統一感は素晴らしいものがあります。山田稔明の卓越したポップセンスや叙情的な詞世界は作品全体にキラキラとした輝きを与えています。街中で聴くとありふれた光景も素敵なものに感じさせてくれます。まさに「シティポップ」と言ったところ。作風は小沢健二の「LIFE」を思わせますが、それにも劣らない名盤。


HIKARI「Good-bye Sputnik」
HIKARI
2000-04-21


HIKARIの1stアルバム。現在は作詞・作曲・編曲家として活躍するHIKARIですが、シンガーソングライターとして活動していた時期がありました。フルアルバムは今作が最初で最後。今作の収録曲の作詞作曲編曲、プログラミングに至るまでをHIKARI自ら行なっており、後のマルチな音楽性はこの頃から発揮されていたことがわかります。タイトルやジャケ写からも想像できるように、宇宙をテーマにした楽曲が多めなのが特徴。 少年は宇宙に憧れを抱くことが多いですが、そのような少年の憧れをそのまま具現化させて描き出したポップスが並んでいます。HIKARIの歌声もそのイメージを強めています。 全編通して、SF映画を観ているようなワクワク感に溢れた作品です。


Hysteric Blue「WALLABY」
Hysteric Blue
2000-02-23


Hysteric Blueの2ndアルバム。先行シングル「なぜ…」のヒットに押されてか、前作に続いてヒットを記録した作品。前作よりも勢いや力が増したポップ・ロックが全編通して展開されています。幅広い曲調を取り入れた作風のため、聴いていても飽きが来ないのも魅力。何より素晴らしいのはTamaの歌声。ノリの良いロックナンバーからしっとりと聴かせるバラードまで、変幻自在の歌声で楽曲を彩っています。Hysteric Blueはプロデューサーが同じだったこともあってか、JUDY AND MARYの亜流呼ばわりされてしまったバンドですが、それぞれ違った魅力があるのは言うまでもありません。Hysteric Blueのオリジナルアルバムを聴くなら今作がおすすめです。


Mr.Children
2000-09-27


Mr.Childrenの9thアルバム。これまで続いてきたアルバムのミリオン記録やチャート1位が途切れてしまった作品。中身は何でもありと言った感じで、はっきり言って意味が分からない作風です。一般リスナーが求めるようなポップな曲があれば、激しいロックナンバーもあり、どう分類していいのか迷ってしまうような曲もあり…とにかく多彩なのは事実。しかし、「深海」から続いてきた迷いから脱却した作品とも言えます。どこまでも自由な作風なのでライトリスナーにはまずおすすめできないですが、最高傑作と称するファンが一定数いるのも頷ける作品。「問題作の傑作」というフレーズが一番似合う作品だと思います。




Something ELse「ギターマン」
Something ELse
2000-03-08


Something ELseの2ndアルバム。大ヒットシングル「ラストチャンス」は未収録。Something ELseらしい、アコースティックサウンドを前面に押し出した温かみがあって爽やかなポップスを全編通して楽しめます。シングル曲だけでなく、アルバム曲の完成度も高いのが特徴。後追いで聴くと、シングル曲よりもむしろアルバム曲の方が印象に残るのではないかというくらい。今作を聴くだけでも、「ラストチャンス」以外にも名曲揃いのバンドだったということがよくわかります。最初にSomething ELseのオリジナルアルバムを聴くなら今作がおすすめ。


aiko「桜の木の下」
aiko
2000-03-01


aikoの2ndアルバム。代表曲「花火」「カブトムシ」が収録され、自身にとって唯一のミリオンを達成した大ヒット作。ひねくれているのにキャッチーですぐに耳に残るメロディーライン、女性の恋心をわかりやすく描いた歌詞は絶品。先行シングルがヒットした勢いのままに制作されたためなのか、バラードが少なめでアップテンポの曲が揃っているのが特徴。そのため、最初から最後まで一気に聴けてしまうような勢いの良さがあります。ベスト以外で最初にaikoの作品を聴くなら今作。


canna「無人島」
canna
2000-02-02


cannaの1stアルバム。cannaはボーカルの谷中たかし、キーボードの周水からなるユニットです。周水はKinKi Kidsの「青の時代」、修二と彰の「青春アミーゴ」、テゴマスの「ミソスープ」などを手掛け、作詞・作曲家としても活躍しています。今作では「青の時代」のセルフカバーが収録されています。
周水の紡ぎ出す、繊細でどことなく甘酸っぱさを感じさせるメロディーと、谷中たかしのソウルフルな歌声との相性は素晴らしいものがあります。今作ではその魅力が遺憾無く発揮されています。「無人島にCDを持っていくなら何が良い?」というような質問はよくありますが、その答えに適した作品でしょう。タイトルだけで選んでいるだろと思われるかもしれませんが、内容もそれにふさわしい、普遍的なポップスを味わえる名盤です。


northern bright「NORTHERN SONGS」
northern bright
2000-10-01


northern brightの1stアルバム。northern brightはオアシスの日本公演のオープニングアクトを務めたことでも知られる3人組バンドです。その経歴からも察しがつくかもしれませんが、オアシスを始めとしたブリットポップからの影響を強く受けた曲を得意としていました。しかし、メロディーに関しては本家にも負けず劣らずの素晴らしいものばかり。爽快感と格好良さを併せ持ったポップス・ロックを堪能できる作品となっています。「Wildflower」は隠れた名曲。


shame「Air Pocket」
shame
2000-04-26


shameの1stアルバム。shameは1999年にメジャーデビューし、2001年に解散したバンド。2006年に再結成し、2009年にはEVERYTHING MUST PASSと改名しています。今作は繊細さと荒々しさを併せ持ったギターロックを堪能できる作品となっています。演奏に聴きごたえがあるだけでなく、メロディーはどの曲も親しみやすい。彼らの楽曲の特徴は、CUTTによる哲学的でメッセージ性溢れる詞世界。 もっと評価されてもいい作品であり、バンドです。


くるり
2000-01-21


くるりの2ndアルバム。前作「さよならストレンジャー」はフォークロック色の強い作品でしたが、今作はオルタナティブロック色の強い作品へと変貌を遂げました。一部の曲ではシカゴ音響派の代表格と言える存在であるジム・オルークが共同プロデュースで参加しています。メンバー間に軋轢が生じた状態で制作されたという経緯のためか、衝動や葛藤が爆発したようなギターロックナンバーが多めなのが特徴。かなり不安定でとっ散らかった作風なのですが、それが今作の最大の魅力。ファンの間でも好き嫌いがかなり分かれる作品ですが、管理人は割と好きな方です。


キリンジ「3」
キリンジ
2000-11-08


キリンジの3rdアルバム。代表曲「エイリアンズ」が収録され、今でも人気の高い作品。「エイリアンズ」がCMソングに起用されたためか、最近はさらに注目を集めているようです。シティポップ、AOR、ソウル、ファンク、ロックなど多彩なジャンルを自由自在に織り交ぜたポップスが展開された作品です。文学的かつシニカルな詞世界や複雑に作り込まれたサウンド面も魅力。割と癖が強いのにスッと聴けてしまう、不思議な感覚のある作品。思わず聴き惚れてしまうような美しいメロディーや、堀込兄弟の歌声も絶品。 堀込兄弟の脂ぎった顔によるジャケ写はインパクト抜群で、思わず手に取る気力が削がれてしまうかもしれませんが、内容は完成度の高いポップスばかりの名盤。是非とも怯まずに今作を手に取って聴いていただきたいと思います。



サニーデイ・サービス
2000-09-20


サニーデイ・サービスの7thアルバム。2008年に再結成するまでは今作が最後のオリジナルアルバムでした。メンバー同士がバラバラになった状態で制作されたという経緯がある作品。高野勲と、SUGIURUMN名義でDJとしても活動する杉浦英治が曽我部恵一との共同プロデュースに参加しており、打ち込みを取り入れた楽曲が多数を占めました。そのため、ダンスミュージックやクラブミュージックのテイストが強い作品となっています。「打ち込みはやらない」というバンド内での約束を破ってしまった形となり、このことは一時解散することになった原因になったのではと思います。とはいえ一曲一曲の完成度はとても高く、好きな曲も多くあります。サニーデイ・サービスとしては異色な作品ではありますが、ダンスミュージックが好きな方ならハマれる作品だと思います。




ジァイアントステップ「SOUND AFFECT」
ジァイアントステップ
2000-07-05


ジァイアントステップの1stアルバム。ジァイアントステップは現在、ボーカル・ギターの野田タロウのソロプロジェクトとなっていますが、当初は3人組のバンドでした。「ジャ」ではなく、「ジァ」が正しい表記です。一回聴いただけで耳に残るようなポップでキャッチーなメロディー、骨太でシンプルなバンドサウンドが展開された作品です。野田太郎の野太く熱のある歌声や、日本語に拘った訴求力のある詞世界も魅力的。爽快なギターロックが好きな方は聴いて損はないでしょう。もっと評価されてもいいバンドであり、作品です。


スピッツ
2000-07-26


スピッツの9thアルバム。共同プロデュースにSCUDELIA ELECTROの石田小吉を迎え、これまでのアルバムで続いていたポップな路線から、一気にロック色を強めた作品となりました。スピッツ=ポップで爽やか、どこか切ない曲とイメージする方も多いと思われますが、今作ではアグレッシブで格好良いロックナンバーが揃った作品です。タイトル曲の「8823」を始めとして、今でもライブの定番としてよく演奏される曲も多いのも特徴。新規に聴く場合にはおすすめできませんが、格好良いスピッツの楽曲を楽しむならまずは今作。 ポップな楽曲だけでなく、攻めたロックナンバーも名曲ばかりだということがわかるはず。


スーパーカー「Futurama」
スーパーカー
2000-11-22


スーパーカーの3rdアルバム。これまでの2作はシューゲイザーやギターロックを取り入れた作品でしたが、今作では打ち込み主体になり、エレクトロニカを取り入れた作風へと変貌を遂げました。後にスーパーカーはさらにエレクトロニカの路線を深めていくわけですが、今作がその始まりです。後の作品は完全にエレクトロニカに傾倒していますが、今作はこれまでの作風とエレクトロニカ路線の中間と言える作風。「未来」を意味する「Future」と「全景」「展望」を意味する「Panorama」とを掛け合わせたタイトルからも、攻めた作風であることがわかります。格好良くて爽快な曲たちを楽しめます。2000年の作品ながら、近未来の音楽を聴いているような感覚に襲われます。


中村一義「ERA」
中村一義
2000-09-06


中村一義の3rdアルバム。1st「金字塔」、2nd「太陽」よりもロック色が強くなりました。しかし、中村一義の卓越したポップセンスや独特な言葉遊びを用いたメッセージ性の強い歌詞は健在。それどころか、さらに深みやキレが増している印象があります。短めのインタルードを含めて20曲というかなりのボリュームがありますが、それでも一切飽きずに最後まで聴けてしまう圧巻の名盤。多彩なジャンルを取り入れているのもその理由でしょう。 「天才」というフレーズが似合うアーティストはそうはいないと思いますが、中村一義はそれがよく似合う。今作については中々説明しづらいので、とりあえず聴いてくださいとしか言いようが無いです。歌声についても好き嫌いが分かれるので。


倉木麻衣「delicious way」
倉木麻衣
2000-06-28


倉木麻衣の1stアルバム。353万枚という記録的な大ヒットを飛ばした作品。外国人の制作集団Cybersoundが全面的に楽曲制作に関わっています。本場の乾いた空気が伝わってくるような、本格的なR&Bが展開された作品です。今になって聴いても全く違和感の無い、徹底的に作り込まれたサウンドは圧巻。サウンド面は本格的なR&Bそのものなのですが、曲は全て王道なJ-POP。そのバランス感覚が素晴らしい。倉木麻衣のクールかつ可愛らしい歌声も今作の格好良さを引き立てています。この頃から優れた表現力を持ったボーカリストだったことが感じられます。 1stを最高傑作と称するのも難ですが、それでもそう言ってしまいたくなる名盤。


堂島孝平「黄昏エスプレッソ」
堂島孝平
2000-03-01


堂島孝平の6thアルバム。これまでの作品とは打って変わって、シティポップ色を強めた曲が多くを占める作品となりました。作風こそ変わりましたが、堂島孝平の圧倒的なポップセンスはさらに磨きがかかっています。聴いているだけで気分が晴れやかになるようなキラキラしたメロディーと、ジャケ写のコーヒー豆のように深みや渋みを感じさせる演奏との相性は抜群。少年のような無邪気さを持った堂島孝平の甘い歌声も今作の魅力を引き立てています。実力派ミュージシャンが多数参加しているだけあって、演奏に耳を傾けて聴くとさらに今作を楽しめます。聴いていて心地良く、爽やかな曲が揃った名盤。少し気だるい昼下がりにコーヒーでも飲みながら聴きたい作品です。


宮本浩次「Personal notes」
宮本浩次
2000-04-19


宮本浩次の3rdアルバム。前作「umbrella」からは2年半振りのリリースとなりました。宮本浩次は多彩な音楽性を持ったシンガーソングライターですが、前2作と同じようにその音楽性が遺憾無く発揮されています。ひねくれているのにしっかりと耳に残るキャッチーなメロディー、独特な言語センスから紡ぎ出されるユニークな歌詞、色気と繊細さを兼ね備えた歌声…どれを取っても過小評価されるにはあまりにも勿体無いアーティストです。あまり見かけないのは事実ですが、もし見かけたら是非とも手に取っていただきたい作品です。


小松未歩「小松未歩 3rd〜everywhere〜」
小松未歩
2000-02-16


小松未歩の3rdアルバム。90年代のビーイング系サウンドを強く感じられた前2作とは異なり、GIZA系アーティスト特有の軽めなアレンジを取り入れた曲が目立っています。GIZA系のサウンドに完全に移行するのは次作なので、前2作と次作以降の過渡期という印象が強い作品。控えめなアレンジながらも、美しさとキャッチーさを併せ持ったメロディーはこれまでと同様に冴え渡っています。聴き手に寄り添った優しい歌詞も魅力的。前2作の作風に慣れていると違和感があるかもしれませんが、それでも引き込まれる名曲揃いの作品。


小林建樹「Rare」
小林建樹
2000-07-05


小林建樹の2ndアルバム。先行シングル「祈り」が一部で高い評価を得て、その勢いのままに作られたアルバム。「祈り」は繊細で美しいバラードナンバーですが、今作は実験的な色合いが強い作品です。前衛的なアレンジがされた曲もあり、かなりアクの強い作品なのですが、それでも魅かれてしまうのは小林建樹の才能のおかげなのでしょう。メロディーやアレンジだけでなく、頼りない感じの歌声や文学的な歌詞も小林建樹というシンガーソングライターの魅力。「音」を「楽しむ」小林建樹の音楽性を表現するのにはこのフレーズが合っていると思います。


平井堅「THE CHANGING SAME」
平井堅
2000-10-01


平井堅の3rdアルバム。先行シングル「楽園」「why」がヒットし、最終的にミリオンを達成した、平井堅にとっての出世作と言えるアルバム。前2作はAORやソウル、ファンクの影響を受けたお洒落なポップスが展開されていましたが、今作は当時の音楽界を席巻していたR&Bが全面的に取り入れられています。今までの作風を知っている上で聴くと、本当に同じ人なのかと疑いたくなるほどの変貌を遂げてしまいました。クールなサウンドは洋楽と比べても何ら遜色ない出来栄え。ジャンルがガラリと変わったのにいとも簡単にその変化に対応してしまう平井堅のボーカリストとしての実力には脱帽。先行シングルを聴いて気に入ったのなら、まず外すことはないでしょう。


徳山秀典「One 17th」
徳山秀典
2000-03-29


徳山秀典の1stアルバム。徳山秀典は俳優としての活動がメインですが、歌手としての活動も行っています。今作はL⇔Rの黒沢健一がプロデュースを手掛け、一部の徳山秀典との共作を除き全曲の作詞と作曲を担当しています。徳山秀典のハスキーで色気のある歌声は魅力的。黒沢健一が手掛けた曲たちということで、俳優活動の片手間で音楽をやったとは言わせないような完成度の高い曲ばかり。徳山秀典のキャラクターに寄り添ったためか、黒沢健一の方では全く見せないような「王子様」「ナルシスト」な一面を見せた詞世界が特徴的。L⇔Rリスナー、黒沢健一リスナーほどそのギャップを楽しめると思います。


椎名林檎「勝訴ストリップ」
椎名林檎
2000-03-31


椎名林檎の2ndアルバム。前作「無罪モラトリアム」の衝撃も冷めやらぬままリリースされた今作は、ヒット性と前衛的な要素とを両立した作品になりました。衝動に満ちたバンドサウンドと浮遊感のある打ち込みサウンドの絡みは聴いていると耳をつんざかれるような、鬼気迫る雰囲気があります。巻き舌で聴き手を幻惑させるような独特なボーカルも今作の混沌とした世界観を構成する大きな要素です。正直言ってかなりアクが強い作品なのですが、こんな作品が233万枚も売れたというのには驚くばかり。当時の音楽界の盛り上がりを実感させられます。


槇原敬之
2000-11-29


槇原敬之の10thアルバム。薬物所持で逮捕されてからの復帰作。デビュー10周年記念アルバムという意味合いもあります。事件を経て制作されただけあって、全編通して内省的な味わいを持った曲が並んでいます。ひたすらに自分と向き合い、見つめ直したような詞世界が印象的です。これまでのようなラブソングやポップな曲はあまり無いのですが、そのような作風でもさらりと聴けてしまうのは槇原敬之のメロディーメーカーとしての才能によるものでしょう。人生訓や生活について描いた「ライフソング」路線の始まりの作品ということで、槇原敬之のキャリアを通じても重要なポジションにある作品と言えます。


高野寛「Ride on Tide」

高野寛
2000-03-15

高野寛のライブアルバム。アルバム「Tide」に連動して行われたライブの模様が収録されたアルバム。当時の高野寛としては初めてだった、ギターの弾き語りによるライブです。高野寛=徹底的に音を作り込んだポップスというイメージを打ち破るような作品となっています。ギターと高野寛の歌だけという極めてシンプルな構成はメロディーや歌詞の良さを再確認させてくれます。元のバージョンにあった温かみや優しさがさらに強調されている印象があります。一部の曲では中村一義がゲスト参加しており、二人のポップス職人の共演も聴きどころの一つ。


色々な作品を挙げてきましたが、どれもおすすめです。中古屋やレンタル店に出向く際に参考にしていただけたら幸いです。今後追記する可能性がありますので、その際にはツイッター(@fumimegane0924)で報告しつつ加筆修正していきます。