【収録曲】
全曲作詞 浅岡雄也
3.作詞 小松未歩
8.作詞 小田佳奈子
9.作詞 小橋琢人
1.5.9.作曲 小橋琢人
2.8.作曲 新津健二
3.作曲 小松未歩
4.作曲 小田孝
6.7.10.11.作曲 浅岡雄也
全曲編曲 FIELD OF VIEW&池田大介
2.6.編曲 FIELD OF VIEW
3.編曲 小澤正澄
サウンドプロデュース FIELD OF VIEW
プロデュース BMF
1.風よ ★★★★★
2.終わらない恋〜ひとつになれる〜 ★★★★☆
3.渇いた叫び ★★★★☆
4.君を照らす太陽に ★★★★★
5.everywhere ★★★☆☆
6.君がいないだけ ★★★☆☆
7.ナチュラル ★★★★★
8.想い出すよ 君の笑顔を ★★★★☆
9.ながれる雲 ★★★★★
10.I'm thinking a lot of you ★★★☆☆
11.めぐる季節を越えて ★★★★★
1998年9月30日発売
日本コロムビア Beat reC
最高位13位 売上5.0万枚
FIELD OF VIEWの3rdアルバム。先行シングル「渇いた叫び」「めぐる季節を越えて」「君を照らす太陽に」を収録。前作「FIELD OF VIEW Ⅱ」からはベスト盤を挟んで約2年振りのリリースとなった。初回盤は三方背BOXケース入り仕様でトレーディングカードが封入されていた。
今作はFIELD OF VIEWにとって初となる自作による作品。外部からの楽曲提供は先行シングル曲と一部の作詞のみに抑え、後はメンバーが全面的に制作に関わった。サウンド面はこれまでとは異なる。4人の息遣いが感じられるバンドサウンドが主体となり、それを補助する形でキーボードが入る…という形となった。これまではキーボードの方が前面に出ている印象があったが、自作に移行したことで変貌を遂げた。
今作はレコード会社の移籍を経てリリースされたアルバムである。先行シングル「渇いた叫び」からZAIN RECORDSから日本コロムビアに移籍した。Beat reCというのはビーイングが設立したレーベルであり、他にはBAADがほぼ同時期に移籍した。
「風よ」は今作のオープニング曲。そのポジションにふさわしい、爽快なポップロックナンバー。清涼感のあるアコギの音色を始めとしたシンプルな構成のバンドサウンドはメロディーの心地良さを演出している。必要最小限に抑えられたキーボードは曲を効果的に盛り上げる役割を果たしている。FIELD OF VIEWの王道中の王道を突いたようなメロディーが何よりも素晴らしい。小橋琢人のメロディーメーカーとしての才能を実感させられる。歌詞は遠距離恋愛をしている恋人たちを描いたもの。風に恋人への想いを乗せて届けたい。伝えたくてもすぐには伝えられないもどかしさが伝わってくる。この曲で好きなのはメロディー。自作路線に転向した最初の作品のオープニングでこれほどの完成度の曲を出してきてしまったところに圧倒される。何故最初から自作しなかったのかと思ってしまうほど。
「終わらない恋〜ひとつになれる〜」はバンドサウンド主体のミディアムナンバー。作曲は新津健二が担当した。今作の中では数少ない、バンド単独での編曲がされている曲。イントロでの透き通るようなギターサウンドはスピッツやRAZZ MA TAZZのそれを彷彿とさせる。メロディーの美しさを限りなく引き立てている音色である。そのようなメロディーでも、サビは割とキャッチーな仕上がりとなっている。歌詞はすれ違いを経て、再び仲を深める恋人たちを描いたもの。「コートの襟」『自動販売機の「あったかい」』「冷たいコーヒー」といった小道具が多用された詞世界は聴き手にリアルな想像をさせる。「終わらない恋
何気ない瞬間大切に出来るならつかめる 二人だから解ること きっとまだあると信じていたい」という歌詞が好き。この手の誠実な主人公が描かれたラブソングには弱い。
「渇いた叫び」は先行シングル曲。テレビ朝日系アニメ『遊☆戯☆王』のオープニングテーマに起用された。今作では唯一となる、作詞作曲を外部が担当した曲。小松未歩の作品を聴いていると、すぐに小松未歩が作曲したとわかる。それくらい特徴のあるメロディーメーカーということだろう。PAMELAHの小澤正澄が編曲を手掛けたためか、これまでの曲と比べてもロック色の強いサウンドが展開されている。ギターサウンドはそれが特に感じられる。90年代J-POPならではのキラキラとしたシンセサウンドとの絡みは心地良い。歌詞は応援歌と取れるような内容。少々分かりにくいものの、恐らくそのような内容だと思う。「闇が
もう一人の自分をつくる」というフレーズはタイアップ相手の内容に寄り添ったものである。一曲単位で聴くと好きな曲なのだが、どうにも今作の中だと浮いている印象が否めない。他に同じようなタイプの曲が無いからだろうか。
「君を照らす太陽に」は先行シングル曲。TBS系番組『噂の!東京マガジン』のエンディングテーマに起用された。シングルにするには少し地味か?と思われるような、シンプルな曲。しかしこの曲、圧倒的な解放感を持ったサビが絶品である。静かに聴かせるAメロとBメロから一転して、 サビでグッと心を掴む。別の曲になってしまったのかと思うほどの変貌を遂げている。小田孝もまた、優れたメロディーメーカーであることがわかる。歌詞はそのような曲調に反して、切ないもの。違う男性を愛している女性に想いを寄せる男性が描かれている。しかも友達同士の関係。もはやこの設定から切ない。「冬の日だまりのような安らげる場所は
今僕じゃない」というフレーズには主人公の男性の心情が込められている。聴いていると心を抉られるような切ない詞世界なのだが、それがたまらない。メロディー、アレンジ、歌詞共に好き。FIELD OF VIEW屈指の名バラードだと思う。
「everywhere」は独特な音作りが印象的なミディアムナンバー。イントロは壮大かつ不穏な雰囲気を感じさせる音から始まり、途中からケルトのテイストを感じさせる音が入ってくる。民族音楽のテイストを取り入れているのはこれまでに無い作風であるが、それ以降のサウンドやメロディーはいつも通り。繊細さの漂うメロディーは思わず身を委ねたくなるような心地良さがある。小橋琢人の才能を実感する。歌詞は喧嘩を経て、再び二人で日々を過ごすことを決めた恋人たちが描かれている。「普通に暮らす毎日 何故か僕は焦っていた
君が傍に居てくれる事 当り前と感じていたから」という歌詞が好き。決して当り前ではないことなのに、それに気付けない。感情の難しさがよくわかる。しかし、最後には「何処にでも愛はあること 気付けたんだ」と真実に気付いている。この曲は内省的かつストーリー性のある詞世界に魅かれた。
「君がいないだけ」は重厚なロッカバラードナンバー。「渇いた叫び」とはまた違った、「激しい」というよりは「重い」という印象を持つようなバンドサウンドが展開されている。切なさや儚さを感じさせるメロディーはバンドサウンドの重さをより引き立てている。アコギの繊細な音色と力強いエレキギターの音色との違いがこの曲の聴きどころ。歌詞はタイトルからもわかるように、恋人と別れた男性の気持ちが描かれたもの。虚無感や喪失感が全面的に描き出されている。「受け止められなかった 全ての事から逃げてたから…」と自虐したと思えば、「君がいないだけ
何も間違ってない 強がることやめよう」と自分で自分を擁護する。不安定な感情がよく伝わってくる詞世界である。もはや自己暗示でもかけているかのよう。聴いているとこちらまで不安定な気分にさせられる感覚がある。
「ナチュラル」は爽快なポップロックナンバー。前の曲のダウナーな雰囲気を壊すような力強いバンドサウンドから始まる。焦燥感を煽るようなアコギの音色が前面に出ており、サウンドを牽引している。サウンドの勢いの良さを演出するためなのか、どことなく音が歪んでいるような感じになっているのが特徴。他の曲と比べると、この曲だけ明らかに音作りが違うのが分かる。コーラスワークも凝っており、曲を盛り上げている。歌詞はポジティブなメッセージが並んだラブソングと言ったところ。「ナチュラル」な心で恋人と向き合えるから、これからも上手くいく予感がする…「冗談なんかじゃ言えない
運命初めて感じた」とまで言えてしまうほどの存在に出逢いたいものである。メロディーやサウンドだけでなく、歌詞も爽やかそのもの。浅岡雄也の突き抜けていくような歌声も魅力的。FIELD OF VIEWの王道と言える。
「想い出すよ 君の笑顔を」はアコースティックなサウンドが展開されたミディアムナンバー。聴いていて安心感のある、落ち着いたメロディーが心地良い。そのようなメロディーに寄り添ったバンドサウンドも聴き心地が良い。アコギとエレキギターとの絡みは絶品。作曲は新津健二によるものだが、爽やかさも漂わせつつ、切なさも表現したメロディーとなっている。歌詞はアルバム曲の中では唯一となる、外部が担当したもの。お互いの夢を叶えるために離れることを決めた男女が描かれている。別れてしまったのか、遠距離恋愛の形で続いているのかはわからない。あくまで管理人の予想ではあるが、別れてしまったと思う。「どこかで
くじけたなら 想い出すよ 君の笑顔を」という歌詞が好き。歌詞もメロディーもアレンジも決して派手なものではないのだが、それでもどことなく引き込まれる。
「ながれる雲」は爽やかなポップロックナンバー。作詞作曲の両方を小橋琢人が手掛けた。ブリティッシュロックからの影響を感じさせるストレートなバンドサウンドは聴き手の心を盛り上げてくれる。メンバーのそれぞれが意欲的かつ楽しみながら演奏したような雰囲気が感じられる。ポップかつ勢いの良いメロディーも高揚感に溢れている。そして、サビは一回聴けば口ずさめそうなほどにキャッチー。歌詞は浅岡雄也が手掛けたのか?と思ってしまうような、直球な応援歌。昔の姿を思い出して再び頑張ろうとする人が描かれた詞世界となっている。「あるがまま
受け止める心に目隠しをして 何処に行けるのだろう?」「嘘や言い訳 自分自身に ついてても変わらない」という歌詞が好き。
今作のアルバム曲の中では「風よ」と並び好きな曲。この2曲を初めて聴いた時「小橋さん凄いじゃん!」と感じたことを今でも覚えている。何故もっと前から自作しなかったのか…と思ってしまってならない。
「I'm thinking a lot of you」はしっとりとした3拍子のバラードナンバー。フォーク色の強い曲となっている。アコギが主体となった、音数の少ないシンプルなアレンジで聴かせる。必要最低限の音を使っている感じ。気だるい雰囲気のあるメロディーは聴いていると眠くなってしまうような心地良さがある。歌詞はすれ違いを経て再び仲を深めた恋人たちを描いたもの。FIELD OF VIEWはこの手のテーマのラブソングが多い印象がある。主人公が時間を経て成長したことが語られているのが特徴。「強くなったのは
思いやりや愛しい気持ち 道に咲いている名もない花をいたわる様な…」という歌詞からはそれが顕著に感じられる。今作の中では最も地味な印象のある曲だが、聴く度に心に沁みてくるような味わい深さがある。
「めぐる季節を越えて」は先行シングル曲。フジテレビ系『奇跡体験!アンビリバボー』のエンディングテーマに起用された。FOVにとっては初となる、自らが編曲に参加した曲。完全自作によるシングル曲はこの曲が初。ストレートなバンドサウンドが当時としては新鮮だったポップロックナンバー。パワフルなギターサウンドが前面に出ている。訴求力のある、ぐんぐん前に出ていくようなメロディーは力強さとポップ性を併せ持っている。高音が何度も使われたサビはキャッチーそのもの。歌詞は恋人へのメッセージと取れるような内容。「もし君が何かにくじけそうなそんな日は
孤独抱えないで 呼んで欲しい僕を この胸の情熱ただ一つで守り抜きたい」という歌詞が好き。メロディーも歌詞のテーマも管理人の好みなのだが、何故売れなかったのかと疑問に感じてならない。自作路線を行くきっかけになったシングル曲をラストに置くという配置が絶妙。何度でも聴きたくなるような魅力があると思う。
あまり売れた作品ではないものの、中古屋ではそこそこ見かける。自作に転換した作品だけあって、ストレートなポップロックナンバーが数多く並んだ作品となっている。キーボードはバンドサウンドの補助といった感じであまり主張していないのが特徴。後にも先にも今作ほどストレートなバンドサウンドが展開された作品は無い。そのような作風なので、全体を通しての流れや聴きやすさは抜群。
今作を聴いて何よりも印象的なのは、メンバーのメロディーメーカーとしての才能。どのメンバーの曲もそれぞれの個性や魅力を発揮しているのだが、中でも小橋琢人の曲が冴え渡っている。後追いで聴くとどれがシングル曲なのかわからなくなるほどポップでキャッチーな曲ばかり。FIELD OF VIEWのアルバムの中でも今作が一番好き。
★★★★★
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