ZARD
1993-09-01
(再発盤。オリジナル盤との区別がされていない可能性がある。)



【収録曲】
全曲作詞 坂井泉水
1.作曲 織田哲郎
2.3.6.7.作曲 栗林誠一郎
4.8.9.11.作曲 川島だりあ
5.作曲 和泉一弥
10.作曲 望月衛介
1.編曲 明石昌夫・池田大介
2.4.6.7.10.11.編曲 明石昌夫
3.9.編曲 池田大介
5.8.編曲 葉山たけし
プロデュース 長戸大幸


1.眠れない夜を抱いて ★★★★★
2.誰かが待ってる ★★★★☆

3.サヨナラ言えなくて ★★★★☆
4.あの微笑みを忘れないで ★★★★★
5.好きなように踊りたいの ★★★★☆
6.Dangerous Tonight ★★★☆☆
7.こんなに愛しても ★★★★☆
8.Why Don't You Leave Me Alone ★★★☆☆
9.愛は眠ってる ★★★☆☆
10.遠い日のNostalgia ★★★★★

11.So Together  ★★★★☆


1992年9月2日発売
ポリドール・b.gram
最高位2位 売上106.5万枚


ZARDの3rdアルバム。先行シングル「眠れない夜を抱いて」を収録。前作「もう探さない」からは9ヶ月振りのリリースとなった。


今作はZARDにとっては初のフルアルバムである。1st「Good-bye My Loneliness」と2nd「もう探さない」はミニアルバムだったため。

先行シングル「眠れない夜を抱いて」がヒットしたため、今作もそれに釣られる形でヒットし、ZARDにとって初のトップ10入りを果たした。最高位は2位だが、長らく上位に留まるロングヒットを記録し、最終的にミリオンを達成した。


前作ではバンドメンバーの表記がされているだけでなく、写真も掲載されていたが、今作では写真が掲載されていない。メンバー表記は小さくされている。次作以降はメンバー表記すらされなくなり、坂井泉水のみとなった。



「眠れない夜を抱いて」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。テレビ朝日系番組『トゥナイト』のエンディングテーマに起用され、1stシングル「Good-bye My Loneliness」以来のトップ10入りを果たした。爽やかなポップナンバー。若干のロック色を残したサウンドは当時のZARDならではと言ったところ。一回聴いたら口ずさめるくらいポップでキャッチーでありながら、聴き惚れるような美しさも持ったメロディーは絶品。そのようなメロディーと坂井泉水の透き通るような歌声との相性は抜群である。
歌詞は少々難解という印象がある。過去の恋人との日々を回想しているのか、自らの少女時代を回想しているのか、一目惚れした心情を描いているのか…?はっきりとわからない。まさに「不思議な世界へと行く」ような詞世界である。曲としては、ZARDにとっての本格的な出世作になったのも頷けるほどにヒット性が高い。初期のZARDの中では特に好きな曲。



「誰かが待ってる」はしっとりと聴かせるミディアムバラードナンバー。日本テレビ系番組『マジカル頭脳パワー!!』のエンディングテーマに起用された。作曲者の栗林誠一郎は後にセルフカバーしている。イントロや間奏、アウトロではホーンが効果的に使用され、哀愁を帯びたメロディーを際立たせている。しかし、サビは爽やかかつキャッチーな仕上がりとなっている。その味付けのバランスが絶妙である。
歌詞は少しわかりにくい。今の恋人に別れを切り出しているのか、別れた恋人に対するメッセージなのか、これからの出逢いへの期待を込めたメッセージなのか。「一番大切な 優しさをあげる」というフレーズは男性ファンの誰もが「欲しい!」と思ってしまうことだろう。かくいう管理人もその一人。叙情的な要素とキャッチーな要素とのバランスが良く、シングル曲にしていても良かったと感じる。



「サヨナラ言えなくて」は重厚なポップロックナンバー。栗林誠一郎が作曲を担当しただけあって、ポップながらもどことなく陰を感じさせるメロディーとなっている。歌謡曲のテイストがあるからだろうか?サウンド面については、ポップスかロックのどちらかでいうとロックの要素の方が強いと感じる。力強いバンドサウンドが前面に出ているからだ。
歌詞は別れた恋人への想いを綴ったもの。「優しすぎた 別れの言葉が 今もよみがえる」「まだどこかで 想い出の中のあなたを探してる」といったフレーズからは主人公の女性の心情がよく伝わってくる。この手の切ない詞世界と坂井泉水の歌声の相性は素晴らしい。栗林誠一郎によるメロディーともぴったり合っている。ZARDの「陰」の部分がよく現れた曲になっていると思う。



「あの微笑みを忘れないで」はZARDの王道と言える爽やかなポップナンバー。フジテレビ系ドラマ『金曜エンタテイメント 腕まくり看護婦』シリーズの主題歌に起用された。2012年には葉山たけしによってリアレンジされ、映画『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター』の主題歌に起用された。ZARDのパブリックイメージそのままと言っていいほど清涼感に溢れている。そのためか、ファン人気も非常に高いようでベスト盤に度々収録されている。聴き手の心をぐっと掴むようなポップかつ力強いメロディーがたまらない。
歌詞は前向きなメッセージが並んだもの。歌詞全体としては「つまづいた時」にこそ、ありのままの自分でいることが大切…というようなメッセージ。「心の冬にさよならして 走り出そう 新しい明日へ」という歌詞は坂井泉水の歌声も相まって、訴求力に満ちている。
メロディー、アレンジ、歌詞とどれを取っても王道そのものであり、後追いで聴くと「何でシングル曲じゃないの?」と思ってしまった。



「好きなように踊りたいの」は跳ね上がるようなメロディーが心地良いポップナンバー。作曲は和泉一弥が担当した。ZARDのキャリアを通じても、和泉一弥が作曲を担当したのはこの曲のみ。アイドルポップかと思うほどに明るいメロディーが展開されているが、ZARDならではのポップスとして料理されている。そのようなメロディーを飾るのはキラキラとしたアレンジ。シンセの音色はポップ性を高めている。
歌詞は恋人に振り回され、別れることを考えている女性を描いたもの。全体的に可愛らしい詞世界となっている。「デートのキャンセルだって怪しい匂いが」という歌詞。こんな相手とのデートをキャンセルしてしまう男性に心底疑問を抱く。「可愛い」という印象を抱く曲はこの頃のZARDには珍しいと思う。もちろん、今作以降もそこまで多くはないが。



「Dangerous Tonight」は先行シングル「眠れない夜を抱いて」のC/W曲。初期のZARD特有のハードな曲調が展開されたミディアムナンバー。勢いの良いメロディーやサウンドなのに、どこか哀愁を感じさせるのが栗林誠一郎のマジックと言える。派手なシンセの音やオーケストラヒットは90年代前半という時代性を強く感じさせる。
歌詞は官能的な世界観をイメージさせるもの。「濡れた唇乱され 嘘を許してもいいと…」「何もかも嫌になる程 激しく抱き合いたいの」「絡みつく指先に意味はあるの?」といった歌詞はその光景を想像してしまう男性リスナーが多いことだろう。例に漏れず管理人もその一人。このような詞世界は初期にしか見られない貴重なものである。この曲に関しては、曲そのものよりも詞世界に注目してしまう。



「こんなに愛しても」は前作に収録された3rdシングル「もう探さない」のC/W曲。アルバムバージョンでの収録となっている。ミックス変更がされている。イントロに雑踏の音が入っていたり、間奏にサックスが追加されていたりするのが主な違い。今作のタイトルはこの曲のサビの「Hold Me」のフレーズから取られたもの。そのため、今作のタイトル曲と言えるだろう。ロック色の強さを残したミディアムナンバー。異国情緒を感じさせるシンセの音と力強いギターサウンドが印象的。
歌詞は恋人への想いを切々と語ったもの。愛しているのにその心は恋人には届いていない。「そばにいて やさしくなくても かまわないの」「もう二度と 他の誰かを 愛さないで」といった歌詞からは主人公の女性のもどかしい心情がよく伝わってくる。表題曲は前作に収録されたのに、C/W曲であるこの曲をわざわざ今作に収録したという点では、坂井泉水にとって思い入れの強い曲だったのかもしれない。



「Why Don't You Leave Me Alone」は壮大なロックバラードナンバー。しっとりとしたAメロ・Bメロから一気に力強いサビに変貌を遂げる。その変わりようの激しさには聴く度に圧倒されてしまう。バンドサウンドと同じくらいシンセも主張しており、分厚い音作りがされている。派手なオーケストラヒットが連発されるサビ終わりは時代性の強さと他の追随を許さないキャッチー性を持っている。
歌詞は冬を舞台に、切ない恋模様を描いたもの。「通り過ぎる冬の風は 切なく泣いて 虚しい愛を責めることも 孤独すぎて」という歌詞は何とも切ない。冷たく厳しい冬の空気すら感じられるような繊細な描写である。坂井泉水のボーカルも他の曲と比べると、次々に畳み掛ける感じでパワーがある。今作の中では最もロック色の強い曲だと思う。



「愛は眠ってる」は比較的ロック色の強いサウンドが展開されたミディアムナンバー。力強くも哀愁を感じさせるギターサウンドとシンセとが絡み合うサウンドはビーイングならでは。音作りが「誰かが待ってる」とかなり似ている印象があるが、特にサビのメロディーに関しては、初めて聴いた時に「歌詞違いバージョンかな?」と思ってしまったことを覚えている。作曲者は違うのだが…
歌詞は過去の恋を振り返ったもの。どうにも今作はこの手の詞世界が多い印象。昔の思い出に浸っている感じで、前を向いてこれからの恋に期待する様子はあまり感じられない。サビ始まりの「Broken Heart」というフレーズの力強さが印象的である。この曲については「誰かが待ってる」と似ているということで印象に残っている。



「遠い日のNostalgia」は美しいメロディーが展開されたバラードナンバー。作曲はヒーリング系ピアニストの先駆けと言える望月衛介が担当した。ZARDに提供したのはこの曲が唯一。この曲もまたファン人気が高いようで、リクエストベストにも収録されたことがある。美しさと力強さを併せ持ったサウンドで聴かせる。メロディーの中を泳ぐようなピアノの音色がたまらなく心地良い。サビは訴求力に満ちた仕上がりとなっている。
歌詞はタイトル通りノスタルジックな雰囲気を持ったもの。青春時代の恋模様を振り返ったもの。友情を描いたものとも解釈できるだろう。青春時代の思い出を蘇らせながら聴きたくなるような詞世界である。そうしたくなるのは一つ一つの思い出を愛おしむような坂井泉水のボーカルのおかげだろう。ZARDの歴史を通じても屈指の名バラードだと思う。6分近い大曲でありながら、そのようなバラード特有の重苦しさが全く無い。


「So Together」は今作のラストを飾る曲。重厚なロックバラードナンバー。ZARDにとっては珍しいウェディングソング。ヘビーなバンドサウンドと分厚いシンセが展開されている。特にギターサウンドは圧巻。ゆったりしたメロディーではあるが、只ならぬ強さを持っている。しかし、サビはキャッチーな仕上がりである。この曲での坂井泉水は思い切り情感を込めて歌っており、「熱唱」というフレーズがとても似合う。ボーカリストとしての実力がよくわかる曲であると言える。
歌詞は前述したように、ウェディングソング。結婚を決めた女性の想いが綴られている。「これからはつらい時も 二人で乗り越えてゆくの」という歌詞は大きな愛を感じさせる。「遠い日のNostalgia」で終わっても良かったのではと思ってしまうが、この曲もラストを飾るだけの壮大さや存在感がある。


ヒット作なので中古屋ではよく見かける。ZARD=ポップで爽やかなラブソングというようなパブリックイメージがあると思うが、そのようなイメージは今作で確立されたと言える。その路線は次作「揺れる想い」でさらに進化することとなる。本格的に大ヒットする寸前の作品という点から、今作以降の作品と比べると過小評価されている印象がある。確かに派手さはそこまで無いが、心に沁みるような良曲が揃っている。シングル曲が少ない構成だからこその味わい深さがある。

★★★★☆