今回が9回目となる企画です。これは以前行った「私的○○年代ベストアルバム」の続編のようなものです。その企画では管理人が所有する1985年〜2016年リリースのアルバムの中から、好きな作品を1年ごとにベスト5形式(一部それより少なかったり多かったりしましたが)で紹介してきましたが、「曇りめがね的名盤特集」はその中から作品のチョイスに特に迷ってしまった年をピックアップし、好きな作品を紹介していきます。この企画ではランキング形式をやめ、作品及びその解説を並べていくだけの極めてシンプルな形をとります。何作紹介するかという数も決めていません。   
既にブログで紹介した作品はリンクも用意しています。紹介している順番については、管理人が使っているCD管理アプリでのアーティストの並び順です。ご了承ください。

「曇りめがね的名盤特集」第9回は1994年です。管理人が考える、「名盤の当たり年」の筆頭です。この年を扱うのはとても楽しみでした。


CORNELIUS「THE FIRST QUESTION AWARD」
THE FIRST QUESTION AWARD
Cornelius
1994-02-25


CORNELIUS(小山田圭吾)の1stアルバム。フリッパーズ・ギター解散後、小沢健二とは決別してソロ活動を行なっていますが、こちらはフリッパーズ・ギターの路線を引き継いだ「渋谷系」を追究したポップアルバムとなっています。1993年リリースの小沢健二の1stアルバムフォークロック色の強い作品。二者の作風の違いがわかりやすいので、聴き比べると面白いです。
CORNELIUSは後に実験的な方向に傾倒していきますが、今作はまだ一般受けするようなポップスがほとんど。メロディーメーカーとしての才能が遺憾無く発揮されているのが今作の魅力です。


E-ZEE BAND「Let me get higher」
Let Me Get Higher
E-ZEE BAND
1994-06-25


E-ZEE BANDの5thアルバム。E-ZEE BANDは決して著名とは言えないバンドですが、どのバンドにも劣らない本格的なファンクやソウルを得意としていました。
今作は代表曲「DANCE AROUND」を始めとして、ポップかつキレの良いファンクを堪能できます。E-ZEE BANDはボーカルの生熊朗の優れたメロディーセンスや甘い歌声、リズム隊の演奏力などが魅力ですが、今作はその魅力を余すところなく楽しめます。ブラックミュージック好きな方には是非とも聴いていただきたい作品であり、バンドです。


Escalators「PLANET e」
Escalators
1994-11-21

Escalatorsの2ndアルバム。Escalatorsはソウルフルかつ可愛らしさも持ったZOOCOの歌声や、日本人離れした演奏が魅力のバンドです。当時流行していたアシッドジャズやジャズファンクを取り入れた、ポップな楽曲を展開していました。同年にリリースされた1st「ammonite」は全編英語詞でしたが、今作は日本語詞に移行しています。サウンド面も含めて、同年代のICEのような雰囲気を感じさせるようになりました。聴きごたえのあるサウンドは今聴いても格好良くてお洒落。再評価されても違和感の無いだけの良さがあるバンド、作品です。


FESTA MODE「FESTA MODE Ⅱ【DEUX】」
FESTA MODE
1994-09-23

FESTA MODEの2ndアルバム。FESTA MODEは一木有佳子の伸びのある爽やかな歌声、砂田裕史によるポップなメロディーが特色のユニット。CMソングや番組のテーマソングに使われた曲も多く、ユニット名や曲名こそ知らなくても聴き覚えがある…ということがあるかもしれません。今作は代表曲「愛してるってば」やユニットにとって大切な存在だった曲「Actual Angel」が収録されています。日本とロスでレコーディングされており、その音作りの違いに耳を傾けて聴くのがおすすめ。王道なJ-POPを主体にしつつも、シティポップの要素も持った曲たちは今でも色褪せていません。


Communication
FLYING KIDS
1994-11-30


FLYING KIDSの8thアルバム。ファンクロック路線からポップス路線に移行し、アルバムの中では自己最多の売上を記録した作品です。初期の作品に見られたアクの強い要素はほとんど無く、ヒット曲「風の吹き抜ける場所へ〜Growin' Up,Blowin' In The Wind〜」を始めとして、とても親しみやすい曲が並んだ作品となっています。全編通してメロディーがとにかく冴え渡っており、後追いで聴くとどの曲がシングル曲かわからなくなってしまうほど。
FLYING KIDSはファンク路線・ポップス路線共に名曲揃いのバンドですが、今作はポップス路線の代表作と言えます。


ICE「Wake Up Everybody」
WAKE UP EVERYBODY
ICE
1994-01-24


ICEの2ndアルバム。ICEはお洒落かつキレの良いソウルやファンクを得意としたユニットです。国岡真由美の艶のある美しい歌声、宮内和之による変幻自在の楽曲や、日本人離れしたギタープレイは今でも凄みを感じさせます。今作は代表曲「MOON CHILD」「ANALOG QUEEN」が収録され、ICEの魅力を知るにはうってつけのアルバムです。まさにアイスのようにひんやりした雰囲気を持った楽曲と、いとも簡単にそれを溶かしてしまうような熱を帯びた楽曲。そのどちらもICEの幅広い音楽性の一部に過ぎません。
今回は紹介しておりませんが、同年にリリースされた「ICE Ⅲ」も素晴らしい作品なので、今作と共に入手していただきたいです。


Orange Sunshine
JUDY AND MARY
1994-12-01


JUDY AND MARYの2ndアルバム。パンク色の強かった前作「J.A.M.」に比べて、格段にポップ性が増した作品。そのためか、セールスの面でも上昇しました。TAKUYA(当時は浅沼拓也名義)が楽曲制作に関与し始めたのも今作の特徴の一つ。恩田快人との作風の違いも面白いところです。後の作品のように捻くれた複雑な曲は無いですが、この頃はそのストレートな楽曲が特色。「Hello!Orange Sunshine」「小さな頃から」「自転車」など名曲揃い。大ブレイクする前夜の雰囲気に溢れた、充実した作品となっています。今作をJUDY AND MARYの最高傑作と称するファンがいるのも頷けます。


東雲
KAN
1994-11-26


KANの9thアルバム。KANは「自らの作品に対する評価が厳しくなっていた頃」と今作リリースを振り返っていますが、それだけあって全曲の完成度がかなり高くなっています。ただ、他の作品ほどの明るさはあまり無く、比較的落ち着いた作品となっています。特に「ホタル」「Girlfriend」は後にも先にも見られない、耽美的な作風です。そのような作風の上に、ヒット曲も収録されていないので入門に聴くような作品ではないと思いますが、KANを深く聴き込んでいく上では不可欠です。


LACK OF REASON
L-R
1994-10-21


L⇔Rの5thアルバム。ポリスターからポニーキャニオンに移籍、嶺川貴子の脱退という大きな変化を経てリリースされた作品。今作と同時発売のシングル「HELLO,IT'S ME」に引っ張られたのか、セールスはこれまでよりもかなり上昇しています。ポリスター時代の作品に強く感じられたマニアックな要素は少し薄れて、親しみやすくキャッチーな要素が強くなっているのが特徴。シングル曲「REMEMBER」「HELLO,IT'S ME」だけでなく、「SOCIETY'S LOVE」「SEVENTEEN」といったアルバム曲も出色の出来。管理人にとってのL⇔Rの最高傑作は今作。


Atomic Heart
Mr.Children
1994-09-01


Mr.Childrenの4thアルバム。ヒット曲「CROSS ROAD」「innocent world」が収録され、当時のアルバムの売上記録を更新したほどのヒット作。これまでの作品では使われなかったデジタルサウンドを前面に押し出し、王道かつ実験的な作風となりました。恋愛だけでなく、社会風刺や内省的な要素を取り入れるようになり、詞世界に於いても大きな変貌を遂げています。前述したシングル曲だけでなく、アルバム曲も「Dance Dance Dance」「クラスメイト」「雨のち晴れ」「Over」など、ベスト盤と言いたくなるほどの豪華な面々。ミスチルの代表作であり、90年代のJ-POPを代表するアルバムでもあると思います。


NICE MUSIC「ACROSS THE UNIVERSE」
across the universe
nice music
1994-10-21


NICE MUSICの3rdアルバム。メンバー構成や、少々頼りない感じの歌声であることなどから「フリッパーズ・ギターの後釜」的な扱いをされがちなユニットですが、それは誤解。確かにネオアコ的な要素もありますが、どちらかというと、YMOから強い影響を受けた緻密なシンセポップの方が本領と言えます。
今作はそのシンセポップが全面的に展開されており、ジャケ写からも想像できるように「宇宙」をイメージさせる曲が並んだ、コンセプトアルバム志向の作品です。当時聴いてもチープだと感じていたであろうシンセ音も、今作の世界観を構成する重要な要素。そのようなサウンドと、どこか懐かしさを感じさせるポップなメロディーとの相性は抜群です。
「渋谷系」と括るには微妙な存在ですが、再評価されてもいいと感じる作品・ユニットです。


ORIGINAL LOVE「風の歌を聴け」
風の歌を聴け
ORIGINAL LOVE
1994-06-27


ORIGINAL LOVEの6thアルバム。代表曲「朝日のあたる道」が収録され、初のチャート1位を獲得したヒット作。宮田繁男と村山孝志が脱退し、田島貴男・木原龍太郎・小松秀行の3人とサポートドラムの佐野康夫の4人体制になって制作されました。
今作はジャズ、ロック、ソウル、ファンクなどを融合させたORIGINAL LOVEの王道と言えるポップスに加え、ラテン音楽やボサノヴァも取り入れられています。
あらゆるジャンルを自由自在に行き来してしまう芸術性の高さと、誰もが良いと感じられるような普遍性の高さとを併せ持っているのがORIGINAL LOVEですが、その魅力が特に冴え渡っているのが今作だと思います。


Paris Blue「Going to a Go-Go〜それ行けPB〜」

Paris Blueの3rdアルバム。ボーカル・作詞の谷口實希とキーボード・作曲の日比野信午の2人組ユニット。谷口實希の優しく可愛らしい歌声や、日比野信午によるポップでお洒落なメロディーが持ち味。シティポップ・AOR、フレンチポップなどを取り入れたサウンド面も聴きごたえがあります。
今作はタイトルからも察しがつくかもしれませんが、明るく開放的なポップスが並んだ作風。Paris Blueの作品に共通していることですが、ボーカル・メロディー・サウンドなど様々な要素で「心地良さ」に満ちています。 今作は特にそれを堪能できます。今聴いても色褪せない、煌めきに溢れた曲ばかりです。


Ordinary Story
RAZZ MA TAZZ
1994-06-17


RAZZ MA TAZZの1stアルバム。共同プロデューサーに佐久間正英が参加して制作されました。三木拓次・横山達郎による爽やかでどこか切なさを感じさせるメロディー、阿久延博によるドラマティックな詞世界といったRAZZ MA TAZZの魅力は、1stの今作から余すところなく楽しめます。阿久延博のボーカルがどことなく拙い印象なのは、1stならではのご愛嬌と言ったところ。
管理人のツイッター界隈ではかなり有名で熱く支持されているバンドですが、世間では決して著名ではないと思います。ただ、楽曲の質の高さは同世代のどのバンドにも劣らない。少しでも多くの方に楽曲が愛され、再評価されてほしいと感じてなりません。


SECRET CRUiSE「SECRET CRUiSE」
SECRET CRUISE
SECRET CRUISE
1994-08-01


SECRET CRUiSEの1stアルバム。SECRET CRUiSEはTHE SHAMROCKの解散後、ボーカル・ギターだった高橋一路が結成したソロユニットです。THE SHAMROCK末期のAORやアシッドジャズ主体の路線をそのまま引き継ぎ、深化させた音楽性が特徴。
今作は生音と打ち込みのバランスが取れた、洗練されたAORやフュージョン、アシッドジャズを楽しめる作品となっています。どの曲もサウンドに聴きごたえがあります。THE SHAMROCK時代で発揮していた、高橋一路の優れたメロディーセンスはSECRET CRUiSEでも健在。近年の音楽界はシティポップ・AORが再興していますが、その流れの中で日の目を見てほしいと思う作品です。


Togetherness
SING LIKE TALKING
1994-04-27


SING LIKE TALKINGの7thアルバム。前作「ENCOUNTER」に引き続きチャート1位を獲得したヒット作。今作からCat Grayがプロデュースに参加しました。ホーンを多用しており、これまでの作品よりもファンクやAORの色が強くなっているのが特徴です。
ホーンという違いはありますが、サウンド面の聴きごたえや、佐藤竹善の圧倒的な歌唱力は今までと全く変わっていません。マニアックな要素と、ポップでわかりやすい要素とが絶妙なバランスで共存しているのはSLTならでは。
前半はポップな曲が主体、後半はバラードがメインという構成になっており、SLTの楽曲の幅広さを知るにはうってつけの作品です。


Selfish「Dig it!」
Dig it!
Selfish
1994-05-20


Selfishの2ndアルバム。3人組の男性ユニットで、AORやソウルなどを取り入れた音楽を展開していました。今作はロスでレコーディングされた曲が多く、Selfishが元々持っている洗練された雰囲気に加えて、開放感も感じさせる作品となっています。井村裕之の熱を帯びた力強いボーカルも今作のそのような雰囲気を演出しています。
国内外の実力派ミュージシャンが数多く参加しただけあって、かなり豪華なサウンドを楽しめます。前述したSECRET CRUiSEと同じく、この手の音楽は活動していた当時よりも現在の方が評価されやすいと思います。シティポップが好きな方には、是非とも作品を手に取っていただきたいユニットです。


Spiral Life「Spiral Move TELEGENIC2」
SPIRAL MOVE~TELEGENIC2
Spiral Life
1994-07-20


Spiral Lifeの2ndアルバム。Spiral Lifeの全作品の中で最高となる、チャート10位を獲得した作品。
様々な年代の洋楽からの影響を反映しつつも、最新の音楽に仕上げる…Spiral Lifeのマジックと言うべき能力が今作では冴え渡っています。文学的な詞世界や、ポップでありながら聴き惚れてしまうほどに美しいメロディーは今聴いても全く色あせることなく輝き続けています。Spiral Lifeのオリジナルアルバムは今作を含めて3作だけですが、どれも違った魅力を持った名盤。管理人は今作がSpiral Lifeの最高傑作だと思っています。


To Be Continued「BEYOND THE LIGHT…」
BEYOND THE LIGHT・・・
To Be Continued
1994-10-01


To Be Continuedの4thアルバム。現在は俳優として活躍する岡田浩暉がボーカルを担当していたユニットとして知られています。ヒットシングル「君だけを見ていた」が収録されたためか、今作は自身最多の売上を記録しました。
To Be Continuedは打ち込みを多用した、シティポップテイストのサウンドが展開されたポップスを得意としていました。今作でもその持ち味が発揮されています。バブル時代を彷彿とさせる詞世界やシンセ主体のサウンド面は少々時代性を感じさせますが、いつかは再評価されてほしいと思ってなりません。


OH MY LOVE
ZARD
1994-06-04


ZARDの5thアルバム。前作「揺れる想い」に続いて200万枚超えを達成した大ヒット作。
様々な作家が参加していたZARDの作品としては珍しく、作家が綺麗に揃っているのが特徴。タイトル曲と一部のシングル曲は織田哲郎、それ以外は全て栗林誠一郎が作曲を担当し、全曲の編曲は明石昌夫が担当する…という感じ。
セールス的な全盛期の作品ですが、派手でもなければとても地味というわけでもない、バランスの取れた作風です。「爽やか」「切ない」「可愛らしい」といった、ZARDの楽曲のパブリックイメージ通りの曲が揃っています。アルバム曲の完成度も非常に高く、90年代J-POPの王道中の王道と言える名盤です。


空の飛び方
スピッツ
1994-09-21


スピッツの5thアルバム。ホーンやシンセが多用された前作「Crispy!」から打って変わって、バンドサウンド主体のポップスという現在に至るまでのスピッツの王道なサウンドを確立した作品です。ポップで美しいメロディーと骨太なバンドサウンドとの絡みが素晴らしい。
今作以降はセールスをどんどん伸ばして人気バンドとなるわけですが、その直前の雰囲気を感じられます。
後追いで聴くと、どの曲がシングル曲なのか分かりにくいほどにアルバム曲も充実しています。一般リスナーが想像するスピッツの楽曲像そのままと言った感じで、シングルコレクションの次に聴くオリジナルアルバムとしてもおすすめです。


中西圭三「Starting Over」
Starting Over
中西圭三
1994-03-23


中西圭三の4thアルバム。前作「Steps」に続いてチャート1位を獲得した、セールス的な全盛期にあった頃の作品。
中西圭三は「ポスト久保田利伸」という旨の触れ込みでデビューしましたが、実際は王道なポップス寄りのアーティストです。ソウルやファンクというよりは、AOR色が強い印象があります。今作はブラックミュージックに詳しくなくても親しみやすいような、かなりポップな曲が並んだ作品です。ポップナンバーからバラードまで、メロディーがキレッキレ。中西圭三の歌唱力は思わず聴き惚れてしまうほど。管理人にとっては、「Steps」と並んで特に好きな作品の一つです。


Giant Steps
大江千里
1994-02-28


大江千里の12thアルバム。これまでの作品とは打って変わって、AORやソウル、フュージョンの色が強い曲が多めなのが特徴です。また、80年代後半の作品から関わってきた大村雅朗が編曲に参加していないのも変化の一つ。今作から編曲に参加したのはギタリストの佐橋佳幸で、大江千里作品の常連である清水信之と共に今作を彩っています。
サウンド面や歌声の変化による影響なのか、今までの作品に比べて「渋さ」や「円熟味」を感じさせる曲が増えました。ジャケ写の色味やバラードが主体の構成も相まって、今までにはなかった魅力を堪能できます。
90年代以降の大江千里のアルバムの中では、管理人の最も好きな作品です。


宇徳敬子「砂時計」
砂時計
宇徳敬子
1994-10-10


宇徳敬子の1stアルバム。宇徳敬子の作品の中では唯一のチャート1位を獲得しました。ビーイング全盛期のリリースではありますが、ポップでキャッチーなメロディーやシンセを多用した派手なサウンドといった「王道」な要素は今作にはそこまでありません。
透明感や訴求力に溢れる美しい歌声の持ち主である宇徳敬子の魅力を限りなく演出するような、ミディアムナンバーやバラードが多めの作品。アレンジも、余計なものを一切省いたようなシンプルな仕上がり。
そのこだわりの甲斐あって、聴いていて本当に心地良い作品になっています。ふと物思いに耽りたくなった時のお供にぴったりだと思います。


LIFE
小沢健二
1994-08-31


小沢健二の2ndアルバム。フォークロック色の強かった前作「犬は吠えるがキャラバンは進む」とは打って変わって、ソウルやヒップホップを取り入れたポップなラブソングが主体の作品になりました。セールスの面でも飛躍しました。本人のキャラも王子様的なものに変貌を遂げ、サブカルヒーローのような存在として熱烈な支持を集めることとなります。
今作の最大の特徴は「多幸感」にあると言えるでしょう。暗い気持ちを吹き飛ばすかのように明るく、幸せなイメージの歌詞が展開されています。どんな時に聴いても、今作の多幸感を受け取ったような気分になれます。まさに管理人の「LIFE」と共にあるような名盤。これからもずっと聴き続けていく作品だと思います。


山口由子「しあわせのみつけかた」
しあわせのみつけかた
山口由子
1994-09-21


山口由子の3rdアルバム。アイドルからシンガーソングライターに転向したことを基点にすると、1stアルバムとなります。ほぼ全曲を自ら作詞作曲しており、その完成度はかなりのもの。武部聡志による、生音とシンセを上手く絡めたカラフルなアレンジも今作に彩りを加えています。
今作…というよりは山口由子の作品全てに言えることですが、とにかく歌声が素晴らしい。透明感、可愛らしさ、優しさ、訴求力…あらゆる要素を兼ね備えた、管理人にとっての「理想の女性ボーカル」です。今作はミディアムナンバー〜バラードが多めなので、その歌声の魅力が引き立てられている印象があります。ZARDや宇徳敬子辺りが好きな方にはどストライクだと思うので、是非とも聴いていただきたいです。


川崎真理子「For my boy」
For My Boy
川崎真理子
1994-10-25


川崎真理子の2ndアルバム。どこか気だるさを感じさせる、ふわふわとした可愛らしい歌声が魅力的なシンガーソングライターです。同じレコード会社だった槇原敬之の女性版とでも言いたくなるような、生活感に溢れたリアルで叙情的な詞世界が特色。シンセを多用したポップなサウンドも「女性版槇原敬之」と言いたくなってしまう理由の一つ。
今作はそれらの個性が生かされた、独特な味わいのラブソングが並んでいます。川崎真理子のような音楽性を持った女性アーティストは沢山いるようでいて、意外と少ない印象です。


Breath
東野純直
1999-02-24(再発盤?)


東野純直の2ndアルバム。清涼感漂うジャケ写からも想像できるかもしれませんが、夏が似合う爽やかな曲が並んだ作品となっています。東野純直の突き抜けるようなハイトーンボイスはその清涼感を引き立てています。洋楽からの影響を感じさせる、お洒落かつポップなメロディーが東野純直の強みですが、今作は比較的シティポップ・AOR色の強い作品なので、それを特に味わえる印象です。
東野純直は大ヒットを出せないままフェードアウトしてしまったものの、ヒット性の高い良質なポップスばかり。今からでも再評価されて良いのではと感じてならないアーティストです。今作を聴けばそれがよくわかるはず。


松任谷由実の26thアルバム。ミリオンを達成したシングル「Hello,my friend」「春よ、来い」が収録され、ユーミンのオリジナルアルバムの中では最多の売上を記録した作品です。横尾忠則によるサイケデリックなジャケ写やブックレットがインパクト抜群ですが、収録曲はどれもユーミンの王道そのもの。聴いているとワクワクするようなポップナンバーから、文学的な詞世界が冴え渡るバラードナンバーまで圧倒的な完成度を誇っています。シングル曲だけでなく、アルバム曲にもかなりの力が入っていることがよくわかる作品です。管理人にとっては、ユーミンのオリジナルアルバムの中でも特に好きな方に入ってきます。


染谷俊「僕のたくらみ」
僕のたくらみ
染谷俊
1994-04-21


染谷俊の2ndアルバム。染谷俊は真っ直ぐで力強い歌声や、メッセージ性の強い歌詞が特徴的な尾崎豊のフォロワーと言えるシンガーソングライターですが、こちらはピアノロックが主体なのが大きな違い。青臭さを感じてしまうほどに熱く力強いメッセージを、美しく優しいメロディーに乗せて表現する…という音楽性ですが、今作でもそれが展開されています。ロック色も強いですが、それと同じくらい親しみやすさもあります。
色々と悟ってしまったような「冷めた」若者(自分もそうですが)が多い今になって聴くと、眩しいとさえ思ってしまう作品です。


栗林誠一郎「遠く離れても」
遠く離れても
栗林誠一郎
1994-10-21


栗林誠一郎の6thアルバム。ビーイングを支えた名作家ですが、シンガーソングライターとしても精力的な活動をしていました。どこか哀愁の漂う美しいメロディーと、AORテイストの強い上質な演奏との相性は素晴らしいものがあります。透き通るようなハイトーンボイスはそのような曲の良さをさらに引き出しています。今作はZARDやDEENに提供した曲のセルフカバーも収録されており、原曲との聴き比べをするのも楽しみの一つ。語弊を招く表現ですが、今作は聴き流すのが最もおすすめな楽しみ方です。淀みなく流れていくようなメロディーや演奏の数々が非常に心地良いので。


孤独の太陽
桑田佳祐
1994-09-23


桑田佳祐の2ndアルバム。「ギター一本でロックはできる」をコンセプトに制作された、フォークロックやブルースのテイストが強い作品。制作中に桑田佳祐の母親が亡くなったこともあってか、全編通して内省的な詞世界が展開されています。ソロ作品としては珍しく、社会風刺がされた歌詞が多いのも特徴。
こうして紹介すると、マニアックでとっつきにくい作品だと感じてしまうかもしれませんが、どの曲もかなりポップな仕上がり。その味付けのバランスこそが桑田佳祐の真骨頂と言えます。
現在ではサザンもソロもそこまで変わりはない状態になっていますが、今作はパーソナルな要素が強く、最もソロらしさを感じさせます。桑田佳祐ソロのアルバム単位での最高傑作は今作だと思っています。


PHARMACY
槇原敬之
1994-10-25


槇原敬之の5thアルバム。1stから今作までは段々とポップ性や優しさ、温かみが増していった印象があります。槇原敬之は今作をリリースした後に療養のため1年ほど活動を休止し、全編英語詞の楽曲に挑戦していくわけですが、そう考えると今作はデビュー当初からの活動の到達点と言えるでしょう。
王道を少し外したような先行シングル曲が印象的なアルバムですが、アルバム曲の方に「こっちの方がシングル向きだったんじゃないの?」と思うような曲が揃っています。ポップナンバーからバラードまで名曲揃い。ヒットメーカーとしての貫禄と親しみやすさとを併せ持った作品です。


篠原利佳「世界中があなただったら」
世界中があなただったら
篠原利佳
1994-03-23


篠原利佳の3rdアルバム。篠原利佳は割とマイナーですが、渡辺美里フォロワーと言いたくなるような力強い歌声が持ち味のガールポップ系シンガーソングライターです。今作はメジャーでリリースされた最後の作品。次作以降はインディーズとなります。
歌声だけだとロック色の強そうなイメージを持ってしまうかもしれませんが、実際は全編通してポップです。前向きで明るい詞世界が展開されており、その歌声も相まって、聴いていると元気付けられるような感覚があります。
管理人は90年代のガールポップを深掘りしていきたいと思って色々と聴いている段階ですが、その中でも特に気に入った作品です。唯一不満を挙げるとすれば「ずっと抱きしめたい」はシングルバージョンのままで収録してほしかった…ということだけ。もちろんアルバムバージョンも好きですが。


米川英之「HALF TONE SMILE」
米川英之
1994-03-20

米川英之の2ndアルバム。米川英之はC-C-Bのギタリストでしたが、ソロのシンガーソングライターとしても活動をしています。1990年にリリースされた前作「Sweet Voyage」はシティポップ・AORに寄った作風でしたが、今作はそれをさらに深化させた作品です。
米川英之の渋く色気のある歌声は上質な演奏やメロディーとの親和性が非常に高いため、聴いていて心地良い仕上がりです。本人によるギターも格好良い。どこかキザな感じが漂う詞世界も印象的です。
C-C-Bは知られていても、メンバーのその後の活動はあまり知られていないように感じます。確かな実力を持ったミュージシャン揃いだったことを再認識するにはうってつけの作品だと思います。


米光美保「From My Heart」
From My Heart
米光美保
1994-12-12


米光美保の1stアルバム。東京パフォーマンスドール(TPD)在籍時代のソロ作品は考慮していません。今作と次作「FOREVER」は角松敏生がプロデュースを手掛け、シティポップ・AORに寄った作品となっています。聴きごたえのあるバンドサウンドと、打ち込みとのバランスが取れたサウンドが展開されています。
TPD時代から米光美保の歌唱力は高く評価されていたようですが、透き通るような美しい歌声が魅力的です。角松敏生のプロデュースもその特色を生かすような形。「風のPAVEMENT」を始めとして歌声やサウンド含めて清涼感溢れる楽曲が並んでいます。
今作や次作は角松敏生プロデュースということもあってか、近年のシティポップ・AOR再興の中で再評価されてプレミアがついているようです。プロデューサーのネームバリューを抜きにしてもいいと思える作品なので、それも頷けます。


DRAGON
電気グルーヴ
1994-12-01


電気グルーヴの5thアルバム。前作「VITAMIN」と同じく、本格的なテクノやハウスミュージックを追究した作品となっています。そのため、10曲中4曲がインスト曲という構成。ポップ性も歌入りの曲にあるくらい。電気グルーヴの歴史を通じても、前作や今作ほどストイックな音楽性のアルバムは無いように感じます。様々な曲を経て、ラストの「虹」にたどり着く瞬間は何とも言い難い達成感や感動があります。
「音」に耳を傾けて音楽を聴く方にはおすすめできます。どうしてもふざけているイメージを持たれがちな電気グルーヴですが、今作を聴くとそのイメージを払拭できるはず。歌詞はネタ路線のものがかなりありますが。


色々な作品を挙げてきましたが、どれもおすすめです。中古屋やレンタル店に出向く際に参考にしていただけたら幸いです。今後追記する可能性がありますので、その際にはツイッター(@fumimegane0924)で報告しつつ加筆修正していきます。