チューインガム・ウィークエンド
チューインガム・ウィークエンド
1997-01-22


【収録曲】
全曲作詞作曲 橋本孝志
全曲編曲 THE CHEWING GUM WEEKEND
プロデュース THE CHEWING GUM WEEKEND

1.青い雨が僕らにもふりそそぐ ★★★★★
2.メランコリー ★★★★☆ 
3.サービス ★★★★☆
4.パーティ ​★★★★☆
5.キス ​★★★★☆
6.ふたりでいたいよ ★★★☆☆
7.ホリディ ★★★★☆
8.マイ・フレンド ​★★★★★
9.あの娘をつかまえて ​★★★★★
10.きらきら ★★★★☆

1997年1月22日発売
Sony Records
最高位不明 売上不明

THE CHEWING GUM WEEKENDの1stアルバム。先行シングル「あの娘をつかまえて」を収録。

チューインガム・ウィークエンドは1991年に結成し、1996年にメジャーデビュー、2001年に解散した男性4人組バンド。ボーカルでほぼ全曲の作詞作曲を手がける橋本孝志、ギターの岩田晃次、ベースの鈴木淳、ドラムの夏秋文尚から成る。今作リリース当時、夏秋文尚はメンバーではなかったため、ドラムはスタジオミュージシャンが演奏している。

山中さわおがthe pillowsの前に在籍していたバンドであるコインロッカー・ベイビーズに岩田晃次が在籍していたこと、ピロウズのサポートベースを長らく務めた鈴木淳が在籍していたことから、チューインガム・ウィークエンドはピロウズとの繋がりが深いバンドと言える。

今作は、渋谷系の作風を思わせるお洒落なポップナンバーが多く並んだ作品だが、次作以降はギターロック路線に傾倒することとなる。作風の変遷もまた、ピロウズと似たような雰囲気を感じさせる。


「青い雨が僕らにもふりそそぐ」は今作のオープニング曲。都会的な雰囲気を感じさせる、上質なポップナンバー。イントロのスキャットから、この曲及び今作の世界に引き込まれてしまうこと請け合い。バンドサウンドだけでなく、ストリングスも前面に出て曲を流麗なものにしているが、曲を覆わない程度の存在感である。優れたバランス感覚と言える。
歌詞は詩的で意味はよくわからないが、全体を通して感傷的なイメージがある。その中でも、サビの「青春の光と陰がまだ胸を熱く焦がす 躍らせる」というフレーズがとても好き。メロディーとも非常にぴったり合っていて、聴いていてただただ心地良い。橋本孝志が、作詞家・メロディーメーカーのどちらの面でも優れた実力を持っていることを証明するような曲。


「メランコリー」は楽しげな雰囲気漂うポップナンバー。流れるような美しさを持ったメロディーが展開されているが、サビはかなりキャッチーな仕上がり。バンドサウンドの中でも一際目立つ、透き通るようなギターサウンドはスピッツの楽曲を彷彿とさせる。この曲では、コーラスワークも冴え渡っている。タイトルは「憂鬱」というような意味があるが、メロディーやサウンドだけではとてもそのように感じられない。「躁状態」だと解釈すると不思議としっくりくる。
歌詞は、タイトル通りのネガティブなイメージがある。「不愉快な声を消すために 苦痛と快楽を繋げよう」「言葉が邪魔になってく」「憂鬱なペンを折ってる」…字面だけでも中々にインパクトがあるが、これが極めてポップなメロディーに乗せられる。そのギャップに、やたらと引き込まれてしまう。


「サービス」は先行シングル「あの娘をつかまえて」のC/W曲。温かみのあるメロディーが心地良いミディアムナンバー。イントロでの、透明感のあるギターのアルペジオがたまらない。全体を通して、どことなくざらついた音作りがされている印象があり、それがこの曲の世界観を構成している。この曲では橋本孝志の穏やかな歌声が特に映えている。
歌詞はタイトル通り、いつもお世話になっている人に優しくしようとする人が描かれている。「君は僕をわかってる わかろうとしてくれてる 秘かに感謝してる 君の為にできること ずっと考えてた」というサビの歌詞が好き。C/W曲という位置にふさわしく、地味ながらも確かな存在感を放っている。


「パーティ」はここまでの流れを変えるようなロックナンバー。ファンクのテイストも少し感じられる。ボーカルがくぐもった感じになっているのが特徴。メロディーはどこかサイケな雰囲気があるが、サビは割とキャッチー。サウンド面では、イントロからキレの良いギターサウンドが展開されており、思わず身体が動いてしまうことだろう。重厚かつ、うねうねとしたベースラインもたまらない。堀江博久による、ハモンドオルガンもこの曲を効果的に盛り上げている。
歌詞は日常から離れて、パーティという特別感のある場所へ行く主人公が描かれたもの。「パーティに行くなら 裸で感じてたい」「揺れる景色や未来 逃げ回るのはやめようね」…どことなく不穏な印象の詞世界だが、それもまたこの曲の妖しさを引き立てている。
今作の中では異色な曲だと思われるが、違和感無く仕上がっており、チューインガム・ウィークエンドの音楽性の幅広さがよくわかる曲。


「キス」は洗練されたサウンド面が格好良いポップナンバー。今作全体に言えることだが、ホーンが効果的に使われており、曲のお洒落さを引き立てている。常にソロを弾いているかのような、存在感溢れるギターもこの曲を彩る。それでいて、他の音を食わないという絶妙なバランスである。淀みなく流れるようなメロディーが素晴らしく、聴き流すのが本当に心地良い。
歌詞は好きな人への想いがストレートに綴られたもの。「君を愛したいのになぜか 憂鬱な夢ばかりみてる 悲しみを消せるように この恋に口づけて」という歌詞は、主人公の陰のある部分が現れているように感じる。ポップなメロディーやサウンド面なのだが、歌詞は悲しげな印象。そのギャップがたまらない。


「ふたりでいたいよ」は懐かしげな雰囲気漂うミディアムナンバー。50年代や60年代の洋楽ポップスを思わせる、温かみや普遍性を持ったアレンジがされている。優しいギターサウンドやコーラスワークが、この曲の温かみを何よりも引き出している。橋本孝志のボーカルも、他の曲にも増して穏やかな感じがする。起伏のないメロディーながら、それもこの曲の世界観の構成要素となっている。
歌詞は切ない恋模様が綴られたもの。恋人が既にいる人に恋してしまったのだろうか。「今だけは何も迷わないで 僕のところにおいでよ 頼むからさ ふたりでいようよ」という歌詞からは、主人公の心がよく伝わってくる。アルバムの中ではかなり地味な曲なのだが、それでも引き込まれるだけの良さがある。


「ホリディ」はファンク色の強いアレンジが印象的な曲。イントロからクラヴィネットがフィーチャーされたサウンドは今作の中でもかなり異色。ファンキーな音色のギターや、うねりのあるベースライン、手数の多いドラムはたまらなく格好良い。メロディー自体はそこまで盛り上がらないものの、サビは開放感のあるメロディーで一気に心を掴む。
歌詞は冬の休日を舞台に、恋人に逢おうとする男性の心情が描かれている。「空の色で君の顔 思い出してた」「恋より確かな愛をさがしてるか」といったフレーズは、かなり簡単な言葉ではあるがどこか文学的。何故空の色で恋人の顔を思い出せるのだろうか…?何気ない一言で、味わい深い詞世界を作り出せる。橋本孝志の実力がよく現れている。


「マイ・フレンド」はお洒落な雰囲気に満ちたポップナンバー。思わず鼻歌で歌いたくなるような、軽やかなメロディーがたまらない。特にイントロは絶品。バンドサウンドに加えて、全編に渡ってピアノやホーン、ストリングスが多用された豪華なサウンドは渋谷系を想起させる。分厚いコーラスワークもまた、この曲を鮮やかに彩っている。
歌詞は女友達に語りかけているようなイメージのもの。「ふしぎなひこうき」に乗って「君」に逢いに行くよ…というメッセージなのだが、全体を通してどこか夢見がちな感じ。それでも、情景が想像できるのが不思議。詩人としての橋本孝志の実力がよく現れた詞世界と言えるだろう。
メロディーやサウンド面がとにかく自分の好みのどストライクであり、今作の中でも最も好きな曲。


「あの娘をつかまえて」は先行シングル曲。チューインガム・ウィークエンドにとってのメジャーデビュー曲。デビューしたばかりのバンドとは思えないほどに完成されきった、上質なポップナンバー。淡々としたメロディーだが、サビはかなりキャッチー。歌っているかのように多彩な音色のギターサウンドと、高らかな音色で曲を彩るホーンとの相性はぴったり。変幻自在のギターサウンドは、チューインガム・ウィークエンドのキャリアを通じて大きな魅力なのだが、それはデビュー作から発揮されていたことがよくわかる。
歌詞は「あの娘」を連れて遠くまで行こうとする男性が描かれている。「沈んでく僕のこと 救ってくれた」という相手のようだが、「あの娘」は主人公のことを全く意識していないように感じる。この曲全体からどことなく漂う切なさは、そのような詞世界のせいだろうか?


「きらきら」は今作のラストを飾る曲。透明感のあるギターサウンドが心地良い、ミディアムナンバー。ポップでもあり切なくもある、独特な味わいを持ったギターサウンドとなっている。間奏のソロでは、力強い音色で曲を盛り上げる。メロディーに派手さは無いものの、思わず身を委ねたくなるような優しさがある。
歌詞はどことなく幻想的な雰囲気を持ったもの。「消されないように 激しく彩って 鮮やかに暮らそう 夢見心地のまま」という歌詞が印象的。ふわふわとしたイメージのある詞世界なのだが、それでもその光景を想像できてしまう。ラストにふさわしい存在感を持った曲というわけではないのだが、この曲を聴き終えると、また最初から聴きたくなるはず。


ヒット作ではないが、中古屋ではそこそこ見かける。2ndにしてラストアルバムである「Killing Pop」はプレミアがついているものの、こちらは安価で売られていることが多い。
チューインガム・ウィークエンドは、今作以降のシングル及び「Killing Pop」のオルタナ・ギターロック路線が高く評価されることが多い印象だが、今作も名盤である。ただ、路線が異なり過ぎて別のバンドかと思ってしまうほど。お洒落で洗練されたポップスが並んだ作品なので、渋谷系音楽やギターポップが好きな方には是非とも聴いていただきたい。

​★★★★★