RUB OF THE GREEN
SMILE
1998-02-21


【収録曲】
全曲作詞作曲 浅田信一
1.編曲 朝本浩文・SMILE
2.5.編曲 森俊之・SMILE
3.6.7.11.編曲 浅田信一
4.編曲 SMILE
8.10.編曲 森俊之
9.編曲 浅田信一・近藤たかお
プロデュース  SMILE

1.MR.JEREMY ★★★★☆
2.茨の道を突き進め ★★★★★
3.ラブレター ★★★★★
4.DRIVE ​★★★★★
5.砂に埋もれた夜 ★★★★☆
6.WESTSIDE 省略
7.虹橋 ★★★☆☆
8.World’s End ★★★☆☆
9.風と雨の強い日〜It’s a Hard Day〜(Album Mix) ★★★★★
10.DAYS IN THE LIFE ★★☆☆☆
11.素晴らしい朝 ​★★★☆☆

1998年2月21日発売
Sony Records 
最高位37位 売上不明

SMILEの3rdアルバム。先行シングル「風と雨の強い日〜It’s a Hard Day〜」「DRIVE」を収録。前作「UNKNOWN WORLD」からは1年7ヶ月振りのリリースとなった。初回盤は緑色のフィルムが封入されている。

SMILEは1995年にデビューした5人組のバンド。ボーカル・ギターでほぼ全ての楽曲の作詞作曲を担当する浅田信一、ギターの鈴木達也、ベースの池沼克己、キーボードの牧田一平、ドラムの長里和徳からなる。繊細かつポップでキャッチーなメロディーや、力強く骨太なギターサウンド、浅田信一による文学的な歌詞、桑田佳祐を彷彿とさせる浅田信一の色気のある低い歌声などが魅力。
SMILEはデビューした年のせいか、「ポストミスチル」「ポストスピッツ」として語られることが多かった。その二者がヒット曲を次々に飛ばしていた頃だったのに「ポスト」として挙げられていたというのは少々難があるが…

SMILEは12作のシングルと4作のオリジナルアルバムをリリースした後、2000年末に活動を休止した。2004年に一夜限りの再結成ライブを行ったものの、そこで事実上の解散が発表された。その後、2014年8月には活動を再開したようだが、頻繁に活動しているわけではないと思われる。

前2作はストレートなロックやポップスを展開してきたが、今作も同じような路線。浅田信一自らが編曲を担当するようになったこと、森俊之や近藤たかおといった新たなミュージシャンが参加するようになったことが大きな違い。サウンド面では、これまでよりも打ち込みが増えてきた印象。それは次作でさらに顕著なものとなる。


「MR.JEREMY」は今作のオープニング曲。今作の中では唯一、朝本浩文が参加している。力強い曲調で聴き手の心を掴むロックナンバー。どこがサビなのかわかりにくい、独特なメロディーが印象的。激しいギターサウンドが主体となったサウンドではあるが、不思議と聴き心地が良い。随所では打ち込み音も存在感を放っている。朝本浩文ならではの音作りである。
歌詞は散文的で意味はよくわからない。全体としては、逆境をいとも簡単に乗り越えてしまうような強い男が描かれている…と解釈している。それが「MR.JEREMY」という男なのだろうか?サウンド面で、今までの作品との違いを打ち出してきている。作風の紹介という意味では、オープニングにふさわしい曲という印象。


「茨の道を突き進め」は爽快なポップロックナンバー。Aメロ、Bメロ、サビ…と展開の仕方がとてもわかりやすく、90年代のJ-POPのお手本と言うべきメロディーである。浅田信一の優れたメロディーセンスがよく現れている。勢いの良いバンドサウンドが曲をどんどん盛り上げてくれる。
歌詞は応援歌的な要素が強いもの。「人は時に脆くもあるけど 自分を信じてりゃいいのさ」という歌詞が特に好き。浅田信一の渋く力強い歌声は、ポジティブな歌詞の数々の訴求力を高めている。何かに苦戦している時に聴くと、この曲が沁みてくるだろう。
後追いで聴くと、シングルかと思ってしまうほどにポップでキャッチーな曲である。今作のアルバム曲の中でも特に好きな曲。


「ラブレター」は温かみに満ちたミディアムナンバー。何かのついでに聴いていても、思わず聴き入ってしまうようなメロディーは絶品。それでいて、サビはかなりキャッチー。シンプルなバンドサウンドだけでなくストリングスやグロッケンも使われており、彩りが加えられている。
歌詞は恋人へのメッセージのような形である。まさに手紙の文面のようなイメージ。歌詞の中の二人は遠距離恋愛をしているのだろうか?SNSやメールを使えば離れていてもすぐに連絡を取れる今、ラブレターというのはかなり貴重だと思う。今だからこそ心に響くものがある。
シングル曲主体のゴールデン☆ベストでアルバム曲の中から選曲されていたことから察するに、ファン人気の高い曲ではなかろうか。リアルタイムで聴いていたリスナーではないので、本当のところはわからないが。


「DRIVE」は先行シングル曲。TBS系音楽番組『POP FILE』のエンディングテーマに起用された。いつになく打ち込み音が前面に出たサウンド面がインパクト抜群なデジタルロックナンバー。「近未来」というフレーズが似合う打ち込み音と、力強いギターサウンドの絡みがたまらない。これまでのイメージを覆すような異色な曲をシングルにしてきたのだから、当時のリスナーは面食らってしまったことだろう。とはいえ、メロディーそのものはポップである。その辺りは徹底している。
歌詞は恋人をドライブに誘うもの。ただのドライブではなく「星空のドライブ」と、何ともロマンチックなもの。その光景が浮かんでくるような、鮮やかな情景描写も素晴らしい。
「異色」とも「王道」とも言えるような、不思議な立ち位置の曲なのだが、それでも好きな曲。


「砂に埋もれた夜」はノリの良い曲調が心地良いポップロックナンバー。ストリングスの流麗な音色から始まり、そこから勢いのあるバンドサウンドが流れ込むイントロが印象的。「歌心」を持ったギターサウンドはSMILEの持ち味である。ただ力強いだけではなく、曲にしっかりと寄り添った演奏が魅力。メロディーは高揚感に満ちた仕上がりだが、後半はゆったりとした感じになる。変貌振りが見事。
歌詞はどことなくネガティブな雰囲気を感じさせるもの。「わが身を削ってまわりを照らす ろうそくに吸い込まれて自分を消す」という歌詞は、当時の浅田信一の心境を描いたものなのだろうか?内省的なフレーズである。
今作の中では最も尺の長い曲なのだが、それても飽きずに聴けてしまう。


「WESTSIDE」は先行シングル曲「DRIVE」のC/W曲。ベンチャーズを彷彿とさせる演奏が心地良いインスト曲。メロディーと共に駆け出すようなギターサウンドが格好良い。エアギターでもしたくなるような音色である。他のバンドサウンドも、どこか楽しげな演奏を聴かせてくれる。インスト曲ではあるが、聴きごたえがあるので飛ばしてしまうには勿体無い。


「虹橋」はここまでの流れをぐっと落ち着けるようなバラードナンバー。フォークロック色の強い曲だ。味わい深く、叙情的なメロディーが展開されている。サウンド面では、浅田信一によるアコギやブルースハープが主体となっている。極めてシンプルな音作りがされているが、その結果、浅田信一の渋く温かみのある歌声の魅力をより堪能できるようになった。
歌詞は恋人への優しいメッセージが綴られたもの。遠く離れたところにいる恋人に語りかけているようなイメージがある。
今作の流れからは外れている印象が否めないものの、箸休めとしてはこれ以上無いほどの役割を果たしている。


「World’s End」は曲調が目まぐるしく変わるのが印象的な曲。モヤのかかったような電子音とそれを切り裂くようなギターサウンドとが絡み合う部分もあれば、激しいバンドサウンドが主張する部分もある。浅田信一のボーカルは加工されており、少し聴こえにくい。凝ったサウンド面を聴かせる目的があるのだろうか?メロディーは終始淡々としており、サビでもあまり盛り上がらない。
タイトルの割に、明るいイメージがある詞世界が特徴。「世界の終わり」というよりは「世界の果て」という解釈がされていると思われる。「遥か彼方この世界の果てで あなたをもっと愛したい」という歌詞は真っ直ぐで強い想いがうかがえる。今までには無かった雰囲気を持った曲だが、不思議とマッチしている感じ。


「雨と風の強い日〜It’s a Hard Day〜(Album Mix)」は先行シングル曲。テレビ朝日系報道番組『スーパーJチャンネル』のオープニングテーマに起用された。アルバムバージョンでの収録だが、シングルバージョンは聴いたことが無いので違いについては何とも言えない。
爽快なポップロックナンバー。跳ね上がるようなバンドサウンドが展開されており、メロディーの力強さを引き立てている。一度聴いただけでもすぐに耳に残るような、確かなキャッチー性を持ったサビが素晴らしい。
歌詞はポジティブなメッセージが並んだものだが、いつになくトゲのある言葉が増えており、ただポジティブなだけでは終わらない仕上がり。「君の胸に根付く 偽善者ぶった 偽物の良識を 全て焼き払って 我にかえって あの空を見てみろよ」という歌詞は心にグサッと突き刺さる。
メロディー、サウンド、歌詞などどれを取ってもSMILEの王道と言える良さがある。SMILEの曲の中でも特に好きな方に入ってくる。


「DAYS IN THE LIFE」はダウナーな雰囲気漂うロックナンバー。聴いていると眠くなってしまうような、「ゆったり」というよりは「どんより」というフレーズが似合う曲調である。ぼそぼそとした浅田信一のボーカルも相まって、そのような印象がさらに強くなっている。打ち込み主体の音作りがされており、バンドサウンドが入ってくるのは後から。
歌詞は内省的な味わいを持ったもの。ひらがなが多用された表記となっており、それがどこか意味深。「胸うず巻く かなしみ からみつく くるしみ あなたへの にくしみ すべてぼくの中にある」という歌詞は少々気味の悪さを感じてしまうが、後半では明るさも残っている。
この曲に関しては、どうにも聴いていてだるくなってしまうというのが実情。


「素晴らしい朝」は先行シングル「雨と風の強い日〜It’s a Hard Day〜」のC/W曲。SMILEの「渋さ」という魅力を前面に押し出した、ミディアムロックナンバー。無骨なギターサウンドと重厚なドラムが主体となっている。どことなく歪んだ感じの音作りが、演奏の数々をさらに演出している。
歌詞は前向きなメッセージが並んでいる。「くだらないプライドをゴミの山に捨てに行こう」「素晴らしい朝は 君を待ってるぜ」といった歌詞と、浅田信一の渋く色気のある歌声の相性はぴったり。この曲がラストを飾っていることで、最後まで力強さを保ったまま終わるような構成になっている印象。聴き終えたら、もう一周聴きたくなってしまうことだろう。


あまり売れた作品ではないが、中古屋ではそこそこ見かける。スピッツ、Mr.Children、L⇔R、FIELD OF VIEW、DEEN、RAZZ MA TAZZを始めとして数多くの爽やかなポップスを得意としたバンドが存在した90年代だが、その中でも「渋さ」「男臭さ」というような面で異彩を放っていたのがSMILEだと思う。それはやはり、浅田信一のボーカルによるものが大きかったと言える。
大体の路線はこれまでの2作とそれほど変わらないものの、ポップ性やロック色がさらに強くなった印象がある。打ち込みを効果的に用いているからだろう。シングル曲はもちろんのこと、アルバム曲の完成度も高い。特に知識の無いまま聴くと、どの曲がシングル曲なのかわからなくなってしまうはず。
個人的には、SMILEのアルバムの中では今作が一番好き。過小評価されるには惜しい実力を持ったバンドだけに、今作のみならず、SMILEの作品を見かけたら是非とも救い出してほしいと思う。

★★★★★