まだ5月なのに、真夏かと思ってしまうほどの暑さに苦しむ日もある。しかも、これからの季節は暑くなる一方だ。汗っかきな自分にはあまりにも辛い季節になる。そうした暑さを跳ね除けるまではいかなくても、楽しむ方法は無いのか。生粋のインドア派な自分には、海に行ったりキャンプをしたりという発想は無い。
冷房の効いた部屋でアイスを食べながら野球中継を見る…くらいしか思いつかない。そのお供に、素敵な音楽があればもっと楽しいのは想像に容易い。では、そうした夏のお供によく似合うアルバムは何だろう。今回はそれらを紹介していこう。

これはほんの数日前に思いついた企画なのだが、どのような作品たちを選ぼうかと迷っていたら「#夏に聴きたい9枚」なるタグが自分のタイムラインで密かに盛り上がりを見せるようになった。あまりにもタイムリーで驚いたので、予定よりも早くこの記事を書くことにした。


早速、ラインナップを紹介していく。


・大江千里「OLYMPIC」(1987年)
OLYMPIC
大江千里
2013-07-17(リマスター盤)



・槇原敬之「Cicada」(1999年)
Cicada
槇原敬之
1999-07-07



・フリッパーズ・ギター「カメラ・トーク」(1990年)
CAMERA TALK
FLIPPER’S GUITAR
2006-08-25
(リマスター盤)


・久保田利伸「Neptune」(1992年)
Neptune
久保田利伸
1992-07-01




・村田和人「Boy’s Life」(1987年)
BOY'S LIFE
村田和人
2012-05-23(リマスター盤)




・スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」(1989年)
In The Sun,In The Shade
スターダスト・レビュー
2002-05-22
(再発盤)


・サニーデイ・サービス「24時」(1998年)
24時
サニーデイ・サービス
1998-07-15



・PEPPERLAND ORANGE「PEPPERLAND ORANGE〜夏の魔法〜」(1998年)
PEPPERLAND ORANGE~夏の魔法~
PEPPERLAND ORANGE
1998-09-25



・柿原朱美「Mermaid Kiss」(1995年)
Mermaid Kiss
柿原朱美
1995-07-26




・FESTA MODE「festa mode Ⅲ【trois】」(1995年)
III
festa mode
1995-06-25



このようなラインナップとなった。

世間的に見てもあまりに定番なので、殿堂入り扱いとして除外したのが下記の作品たち。自分の中では「聴きたい」ではなく「聴かなきゃいけない」のレベルに達している。
・サザンオールスターズのアルバム
・大滝詠一「A LONG VACATION」
・佐藤博「AWAKENING」
・山下達郎「FOR YOU」
・TUBEのアルバム


上記10作の簡単な紹介をしていく。


大江千里「OLYMPIC」…「生きている疾走感」のようなものをテーマにしたという作品であり、全編を通して活気に満ちた作風。「回転ちがいの夏休み」がオープニングを飾っているせいか、全体的に夏の雰囲気を感じる。他にも「路上のさようなら」「小首をかしげるTシャツ」「塩屋」「夏渡し」などが夏を想起させる曲である。
10曲で46分程度というコンパクトな長さも相まって、何度でも聴きたくなる名盤。1曲1曲の完成度が高い上に、曲順もこれ以外無いと思うほどに上手くできているのも名盤たる所以。大江千里のアルバム単位での最高傑作だと思う。


槇原敬之「Cicada」…「セミ」を意味するタイトルや、清涼感漂うジャケ写から想像できるかもしれないが「日本の夏」をテーマにした作品である。とはいえ、カラッと晴れ渡る空や輝く海といったものではなく、ジメジメとした蒸し暑い夏が描かれている印象。槇原敬之の歌声やメロディーのおかげで、爽やかさも辛うじて感じられる。そのバランスが今作の魅力。聴いていて怖くなるほどに作り込まれたサウンドや、美しいメロディーの数々は圧倒的な完成度を誇っている。槇原敬之の作品の中では数少ない、コンセプトアルバムとしての要素を持った作品であり、キャリアを通じても屈指の名盤だと思う。


フリッパーズ・ギター「CAMERA TALK」…渋谷系音楽の象徴のような名盤として挙げられることが多いが、今回は夏のお供として紹介する。開放感のあるお洒落なポップス・ロックが並んだ作品であり、晴れ渡る空の下で聴きたくなる。全体的にそうした雰囲気があるのだが、中でも「ラテンでレッツ・ラヴまたは1990サマー・ビューティー計画」「ビッグ・バッド・ビンゴ」「ワイルド・サマー/ビートでゴーゴー」辺りは特に夏に聴きたくなる曲である。青春時代が描かれた曲が多いのも今作の魅力。青春時代を過ごしていても、過ぎても。どちらでも楽しめる名盤。


久保田利伸「Neptune」…ジャケ写からも涼しげな感じがするのだが、今作は「水」をテーマとした作品。そこから転じて、「夏」をイメージさせる曲も多い。久保田利伸といえばノリノリなR&Bやファンクという印象が強いが、今作はそれに加えてAORやジャズのテイストを持った曲も収録されている。先行シングル曲、シングルカットされた曲、ベスト盤に収録された曲が無いアルバムというのも特色。つまりは収録曲全てが今作でしか聴けないということなのだが、これは久保田利伸本人の拘りもあるのかもしれない。一曲一曲の完成度や、全体を通しての流れも無駄のない仕上がり。久保田利伸のアルバム単位での最高傑作だと思っている。


村田和人「Boy’s Life」…村田和人は山下達郎の弟分と言っていい存在だったシンガーソングライターである。夏をテーマにした作品を数多く生み出したのだが、その中でも自分が特に好きなのが今作。ロサンゼルスと東京でレコーディングされただけあって、ウエストコーストロックのテイストも持ったシティポップの数々を楽しめる。安藤芳彦によるエバーグリーンな詞世界や村田和人の爽やかな歌声も相まって、夏のどのようなシーンでも違和感無く楽しめる名盤になっていると思う。車の免許を取ったら、このアルバムを流しながら海岸線を走ってみたい。きっと楽しいはず。


スターダストレビュー「IN THE SUN,IN THE SHADE」…「スタレビ流リゾートアルバム」を目指したという作品。そのテーマに沿って制作されただけあって、清涼感溢れるポップス・ロック・AORが展開されている。熱さと涼しさの両方を感じられる。それでも洗練された雰囲気を失っていないのはスターダストレビューならではの凄さ。当時キーボードを担当していた三谷泰弘のメロディーセンス・アレンジ能力も冴え渡っており、最初から最後まで隙のない作品に仕上がった。自分が今作を聴いたのは3月だったのだが、それでもハマった。その時点で「夏に聴きたいなあ…」と思っていたので、今作と過ごす夏が楽しみだ。


サニーデイ・サービス「24時」…サニーデイ・サービスの夏のアルバムと言えば「DANCE TO YOU」もあるのだが、あえてこちらで。ここまでは夏の昼間や夕暮れをイメージさせる作品を挙げてきたのだが、今作は蒸し暑い夏の夜をイメージさせる作品。当時のサニーデイ・サービスの混沌とした雰囲気をパックしたような何ともヘビーな作品なのだが、それがたまらない。「問題作の傑作」と言うべきか。
全体を通じてどんよりしているようでいて、聴いているだけでも汗が垂れてきそうなくらいに熱を帯びた曲もある。クーラーをつけずに、窓を開ける程度の状態にして今作を聴いてみてほしい。不思議とその不快な状態が心地良く感じられるだろう。


PEPPER ORANGE「PEPPERLAND ORANGE〜夏の魔法〜」…ペパーランドオレンジにとっては最初で最後のアルバム。タイトル曲の「夏の魔法」を始めとして、甘酸っぱい青春の雰囲気に満ちた曲が多く並んでいる。当然、夏をテーマにした曲もある。爽やかでどこか切なく、懐かしい雰囲気を持ったメロディーの数々はまさに90年代J-POPの王道中の王道。
今作を聴けば、いつだって青春時代に戻れる。そう言ってしまっていい。まさに「夏の魔法」がかかった作品だ。このような作品が埋もれてしまうにはあまりにも勿体無い。タイトル曲を聴いて良いと思ったら、是非とも今作を手に取っていただきたい。


柿原朱美「Mermaid Kiss」…音楽性がコロコロと変わっていた柿原朱美なのだが、今作をリリースした時期はシティポップ・AORに傾倒していた。ソウルの要素も感じさせる、洗練されたメロディーやサウンド面はとにかく心地良い。柿原朱美の透明感のある歌声も相まって、聴いているだけでも涼しくなれるような感覚がある。夏の夕暮れ〜夜の始まりに聴きたくなる。シティポップ・AOR冬の時代と言ってよかった90年代にあって、女性アーティストとなるとさらに貴重。古臭さを一切感じない作品になっているので、再評価されてもいいと思う。


FESTA MODE「festa mode Ⅲ【trois】」…ジャケ写からも想像できるかもしれないが、「夏」をテーマにした作品である。タイトルだけで「夏」をイメージさせるような曲は無いものの、作品を通じて夏の1日を表現している感じがする。「a・sa・ya・ke」「ko・mo・re・bi」「yu・na・gi」というタイトルのインストがアルバムの最初、中盤、最後に仕込まれているのも、コンセプトアルバムとしての要素が感じられる。ボーカルの一木有佳子の清涼感溢れる歌声も魅力的。屋外でも屋内でも楽しめる作品だと思う。


作品の紹介は以上である。この記事を読んで「聴いてみたい!」と思った作品があれば、是非とも手に取っていただきたい。音楽と作る夏の思い出はきっと素晴らしいものになるはず。