forever you
ZARD
1995-03-10


【収録曲】
全曲作詞 坂井泉水
1.2.4.6.8.作曲 栗林誠一郎
3.5.7.10.作曲 織田哲郎
9.作曲 春畑道哉
全曲編曲 明石昌夫
5.編曲 織田哲郎
6.7.編曲 池田大介
8.編曲 明石昌夫・池田大介
9.編曲 葉山たけし
プロデュース B.M.F

1.今すぐ会いに来て ★★★☆☆
2.ハイヒール脱ぎ捨てて ​★★★★☆
3.Forever you ★★★★★
4.もう逃げたりしないわ 想い出から ★★★☆☆
5.あなたを感じていたい ★★★★★ 
6.気楽に行こう ​★★★★☆
7.I’m in love ★★★★☆
8.こんなにそばに居るのに ★★★★☆
9.Just believe in love ★★★★☆
10.瞳そらさないで ★★★★☆

1995年3月10日発売
B-Gram Records
最高位1位 売上177.4万枚

ZARDの6thアルバム。先行シングル「こんなにそばに居るのに」「あなたを感じていたい」「Just believe in love」を収録。前作「OH MY LOVE」からは9ヶ月振りのリリースとなった。

坂井泉水は同じビーイング系のアーティストに歌詞を提供することがよくあり、坂井泉水&織田哲郎はヒットの定番コンビのようになっていた。そのような曲のセルフカバーを収録するのは今回が初。今作以降は定期的にセルフカバーを収録していく。それはZARDのオリジナルアルバムの魅力の一つとなっていた。

セピア風のジャケ写が印象的な作品だが、これは「HOLD ME」(1992年リリース)の頃に撮影されたものだという。その2作のジャケ写を見比べると、どことなく似た雰囲気があるのがわかる。


「今すぐ会いに来て」は今作のオープニング曲。シャッフルリズムのミディアムナンバー。言葉で説明するのは何とも難しい曲調である。無理やり表現するなら、80年代前半のアイドル歌謡のような雰囲気と言ったところ。サビでもそれほど盛り上がらないため、ポップ性は薄め。
歌詞は恋人のことを褒め称えたもの。「私だけは味方よ」「今すぐ会いに来て その笑顔が好きよ」などと称えており、男性リスナーの多くは「言われたい」と思ってしまうはず。少なくとも自分はそうである。
冴えない男性キラーな詞世界はZARDの楽曲に数多くあるものの、曲調はかなり異色である。これまでの作品にも、以降の作品にも無いような独特な味わいを持った曲になっていると思う。今作について回る「地味」というフレーズは、オープニングを飾るこの曲の影響ではと感じる。


「ハイヒール脱ぎ捨てて」はどことなく哀愁を感じさせるポップナンバー。フジテレビ系番組『ROOMS』のエンディングテーマに起用された。売れ線でポップなメロディーながらも、全体としては哀愁を帯びた仕上がり。栗林誠一郎ならではの芸当である。シンセとサックスが絡んだイントロから、この曲の世界に引き込まれてしまう。ラスト1分ほどの長いアウトロは聴きごたえがある。
歌詞は別れた恋人への想いを綴ったもの。かつては仕事と恋で選択を迫られ、仕事を選んだようだ。この曲の詞世界については、一方的に想いを伝えているようにも、既に再会を果たしているようにも解釈できる。再会を果たした方に賭けたいが。
曲自体は中々にポップなのだが、歌詞は陰を感じさせる。裏サイドのZARDが現れた曲と言ったところか。


「Forever you」は今作のタイトル曲。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。温かみがあって、どこか懐かしい雰囲気のメロでが展開されている。途中まではピアノやアコギが主体で進んでいくが、後半では一気にギターサウンドが主張して、ロックバラード色の強い曲調に変貌を遂げる。最後はまたしっとりとした曲調に戻る。
歌詞は過去のことを振り返りつつ、恋人に出逢えた喜びを語ったもの。歌詞の全編を紹介したいくらいなのだが、「自分が将来(あした)どんな風になるのかわからなくて ただ前に進むことばかり考えていた」という歌詞が特に好き。思い出や喜びを噛みしめるような、坂井泉水の優しく美しい歌声がこの曲の世界観を何よりも構成している。他の作品のタイトル曲と比べると少し地味な印象だが、それでも確実に心に沁みるような訴求力を持った曲だと思う。


「もう逃げたりしないわ 想い出から」は淡々とした曲調が印象的なバラードナンバー。サビでもそこまで盛り上がらないが、それでも引き込まれる。イントロからピアノが前面に出たサウンドが展開されており、曲の落ち着いた雰囲気を演出している。
歌詞は新たな恋人がいるのに、前の恋人のことを忘れられない女性の心情が描かれている。主人公の女性の苦しみが伝わってくるような詞世界である。その手の詞世界にはあまり共感できないものの「時間(とき)は人の気持ちより速く過ぎる」という歌詞が好き。この曲に関しては、集中して聴くよりも聴き流した方が良いと感じる。ZARDの曲は聴き流すのに丁度いい曲が多いと思っているが、その中でもこの曲はその印象が強い。


「あなたを感じていたい」は先行シングル曲。NTTドコモ・ポケベル「パルフィーV」のCMソングに起用された。ZARDの楽曲では唯一、織田哲郎が編曲も手がけた曲。温かみを感じさせるメロディーが心地良いポップナンバー。そのようなメロディーを包み込むように鳴っている、キラキラしたシンセの音色は90年代J-POPの王道中の王道と言いたくなる。
歌詞は遠距離恋愛をしている恋人たちを描いたもの…と解釈している。このシングルはクリスマスイブにリリースされたのだが、「にじんだキャンドル」「白い吐息の 季節の中で」「銀色の季節の中で」などとクリスマスを想起させるフレーズが並んでいるのが特徴。ZARDの曲では数少ない、クリスマスをイメージさせる曲だと言える。他のヒットシングルのような派手さや力強さは無いものの、それでも好きな曲。


「気楽に行こう」は爽やかな雰囲気に満ちたポップナンバー。1995年の10月にアステル関西のCMソングに起用された。爽快なバンドサウンドが主張するイントロから爽やかさ全開。その脇を固めるシンセにも何らの隙が無い。マイナー調になるAメロで聴き手の心を掴み、キャッチーなサビでそれを離さない。
歌詞は恋人との倦怠期を迎えた女性の心情を描いたもの。長い付き合いだと、どうしてもそのような時期が来てしまうだろう。ただ、この曲ではタイトル通り、倦怠期を比較的ポジティブに描いている印象がある。この手のテーマの曲は多くあるが、前向きな詞世界になっているのは少ないと思う。
リリースから少し経過してタイアップがついただけあって、ZARDのパブリックイメージをそのまま反映したような曲。シングルにしていても良かったと思うくらい。


「I’m in love」は今作の中では数少ない、ロック色の強い曲。タワーレコードスーパーストアのCMソングに起用された。 ZARDのアルバムにはロック色の強い曲が収録されるのが定番なのだが、今作だと少々異色な印象。どんどんアップテンポになっていき、サビで爆発するようなイメージ。メロディーやサウンド面の高揚感はかなりのものだが、それと同じくらいコーラスワークのインパクトも強い。歌声を聴くに、大黒摩季や川島だりあ、生沢佑一辺りがコーラスで参加していると思われる。
歌詞は恋愛から離れた生活を送る女性へのメッセージが綴られたもの。男性が聴いても違和感の無い詞世界になっていると思う。シングルライフを楽しむ彼女」に対して「何か忘れてる 人間(ひと)を愛するってこと 環境破壊よ あなた自身の」と強いメッセージをぶつけている。それでも嫌味な感じがしないのは坂井泉水の歌声のおかげか。歌詞のテーマと、メロディー・サウンドがぴったり合っているのが好印象。


「こんなにそばに居るのに」は先行シングル曲。三貴「ブティックJOY」のCMソングに起用された。ロック色が強めのポップナンバー。ダンスミュージックの要素も感じさせる。シングルバージョンとはかなりアレンジが変わっている。いきなりサビから始まる構成になり、バンドサウンドを前面に押し出したアレンジになった。シングルバージョンではギターが主体のリズムだが、こちらはベースでリズムを構成しているのも特徴。
歌詞はすれ違う男女の心情を描いたもの。既に恋人同士なのか、それ以前の段階なのかは具体的にわからない。ただ、沈黙が続いている気まずい光景が浮かんでくる詞世界である。それは話題が見つからないせいなのか、心が離れてしまっているせいなのか。聴き手も主人公になったような感覚で聴けると思う。
当時のシングル曲にしてはかなり異質な印象があるが、ZARDのイメージに幅を持たせようとしたのだろうか。


「Just believe in love」は先行シングル曲。TBS系ドラマ『揺れる想い』の主題歌に起用された。春畑道哉がZARDの曲を手がけるのは「IN MY ARMS TONIGHT」以来。シリアスな雰囲気漂うミディアムナンバー。そのような曲調な上に、ギターサウンドが前面に出ているためか「HOLD ME」辺りまでの作品と似た感じがする。それでもポップ性を忘れないのは、シングル曲ならでは。
歌詞は年の差恋愛をしている女性の心情が描かれている。どちらが年上か年下かというのは明言されていないが、女性の方が年下だと何となく思って聴いている。切ない詞世界になっているものの、ラストでは「つまずくことさえも 明日への希望へと変えてゆこう」とポジティブな要素も持っている。
シングルというには地味だという印象が否めないが、一曲単位で聴くとその佇まいに魅かれる。


「瞳そらさないで」はDEENに歌詞を提供した曲のセルフカバー。DEENバージョンはポカリスエットのCMソングに起用されてミリオンを達成した。そちらは90年代J-POPのど真ん中なキラキラしたポップナンバーだったものの、こちらはボサノバテイストのしっとりとした仕上がり。大サビでは少しテンポが速くなるが、それでも原曲ほど盛り上がらない。ポップ性こそ薄れたものの、その分メロディーの味わい深さが増していると思う。
歌詞は青春時代の恋模様をイメージさせるもの。友達以上恋人未満の関係の男女を描いたものだろうか?正直なところ歌詞の意味はよくわからないのだが、「青い夏」「summer breeze」といったフレーズはポカリスエットのCMソングにふさわしい印象。原曲とはかなり異なる雰囲気の曲になっているが、これはこれでいいと思わせてくれるアレンジである。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。前々作「揺れる想い」や前作「OH MY LOVE」のように、ヒットシングルが収録されているわけではない。ジャケ写からのイメージも相まってか、どうにも地味な作品として扱われがちな印象がある。前半はミディアムナンバーが多めなので、確かに派手さは無い。
セールス的な全盛期にリリースされた作品というにはかなり渋い佇まいなのだが、その分飽きが来にくいと思う。聴く度に心に沁みてくるような作品と言える。

★★★★☆