RIKA
田嶋里香
1995-05-31


【収録曲】
全曲作詞 沢村大和
6.8.作詞 田嶋里香
全曲作曲編曲 小泉誠司
2.4.6.作曲編曲 Haward Killy(河井拓実の変名と思われる)
7.作曲 柳原愛子
7.編曲 Haward Killy
プロデュース 長戸秀介

1.会いたくて会いたくて~Voice Of Moon~ ★★★★★
2.この恋の終わりに ★★★★☆ 
3.ねえ!(Album Version) ​★★★★☆
4.蒼い季節の中で ★★★★★
5.銀色の空 ​★★★☆☆
6.ずっとあなたが ★★★★★ 
7.素顔のままで~ノーマ・ジーンのように~ ​★★★☆☆
8.この雨通り過ぎるまで(Album Version) ★★★★☆
9.泣いてもいいよ ​★★★★☆
10.LAST AGAIN ★★★☆☆

1995年5月31日発売
東芝EMI
最高位不明 売上不明

田嶋里香の1stアルバム。先行シングル「この雨通り過ぎるまで」「蒼い季節の中で」「会いたくて会いたくて~Voice Of Moon~」を収録。

田嶋里香は1994年にデビューした女性歌手。今作リリース当初は18歳だったため、その容姿も活かしてアイドル的な売られ方もされていたのかもしれない。結局、歌手としてはシングル9作、アルバム2作を残した。CM出演や、深夜ドラマで主演を務めたこともあったようで、女優としても活動していたと思われる。その後は名義を変更して活動していたようだが、近況は不明。

田嶋里香の持ち味は、透き通るような歌声にある。「お嬢様っぽい」と思ってしまうような、どことなく上品さを感じさせる歌声である。なおかつ、可愛らしさも持っている。この手の女性ボーカルは沢山いそうで、意外といないもの。


「会いたくて会いたくて~Voice Of Moon~」は先行シングル曲。テレビ東京系アニメ『獣戦士ガルキーバ』のエンディングテーマに起用された。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。何かをしながら聴いていても、思わずその手を止めて聴き入ってしまいそうなほどに美しいメロディーが展開されている。サウンド面はシンセが主体ながらも、全体的な音の数は少なめ。
歌詞はロマンティックなフレーズが多く並んだラブソングと言ったところ。「たえまなく流れる愛のすべてを込めて 守りたい 月明かりのように あなたを…」というサビの歌詞は、まさにロマンティック。
タイアップ相手のアニメにはあまり合っていないのではと思ってしまうが…それでも名バラードであることには変わりない。


「この恋の終わりに」はシリアスな雰囲気を感じさせるポップロックナンバー。勢いのあるメロディーと共に駆け抜けていくようなギターサウンドが展開されている。力強さと哀愁を併せ持った音色である。イントロで使われている、リリース当時に聴いていても「古い」と思ってしまいそうなシンセの音色はインパクト抜群。前面に出ているのはイントロくらいなのだが、かなり印象に残る。意図的にそのような音作りをしたのだろうか。
歌詞はタイトル通り、恋人と別れた女性の心情が描かれたもの。「もう二度とあなたのこと 愛せないくらいに 痛いほど傷ついてしまいたい この恋の終わりに」というサビの歌詞からは、主人公の気持ちが痛いほどに伝わってくる。他の曲よりも力の入ったボーカルとなっており、悲しみや悔しさが表現されている印象。


「ねえ!(Album Version)」は先行シングル「蒼い季節の中で」のC/W曲。爽やかな雰囲気漂うポップナンバー。起承転結のはっきりした、わかりやすくキャッチーなメロディーが展開されている。煌びやかなシンセの音色と、キレの良いギターのカッティングが主体となったサウンドはかなりノリが良い。
歌詞は女心に気付いてくれない恋人へのメッセージのようになっている。「心の真ん中にいつもいさせて」「一途な想い誰にも負けない」といった歌詞は何とも可愛らしい。アイドルとしての色が強く現れた詞世界になっていると思う。歌声と詞世界の相性がぴったり合っており、聴いていると思わずニヤニヤしてしまう自分がいる。後追いで聴くと、とてもC/W曲とは思えないほどのポップ性がある。


「蒼い季節の中で」は先行シングル曲。日本テレビ系情報番組『うるとら7:00』のエンディングテーマに起用された。美しいメロディーで聴き手の心を安らげるバラードナンバー。サビになると音が増えて盛り上がるものの、それでも派手さはそこまで無い。どちらかというと、厳かに盛り上がっていく感じ。シンプルなバンドサウンドがメインなので、そのような雰囲気がなおさら高められている。
歌詞は高校の卒業式の日を舞台にしたもの。教室の匂いや机の落書きも浮かんでくるような、繊細な描写がたまらない。このような詞世界なので、当時の田嶋里香が歌うにはうってつけだったと言える。一つ一つの思い出を噛みしめるような、穏やかで美しい歌声がこの曲の世界観を何よりも演出していると思う。シングルとしては落ち着き過ぎな印象もあるが、それでも好きな曲。


「銀色の空」は先行シングル「この雨通り過ぎるまで」のC/W曲。カシオ「プリントジョイ」のCMソングに起用された。上品さを感じさせるミディアムナンバー。淀みなく流れていくようなメロディーは聴き流していても心地良い。それでいて、サビはしっかりとキャッチーに仕上げてくる。シンセとアコギが主体となった、比較的シンプルなサウンドで聴かせる。
歌詞は多幸感に溢れたラブソングと言ったところ。ただ、「銀色の空に泳ぐ星」「時の波間」「銀河」などファンタジックなフレーズが並んでいるのが特徴。恋人と幸せな時間を過ごしている時の、舞い上がる感覚を表現しているのだろうか?C/W曲ならではの、良い意味での地味さを持った曲だと思う。ふとした時にこの曲を思い出して、心に沁みるような不思議な安定感がある。


「ずっとあなたが」は爽やかさに満ちたポップナンバー。突き抜けていくような、開放感のあるサビのメロディーは一聴しただけでも心を掴まれてしまう。サウンド面はストレートなバンドサウンドが前面に出ており、その脇をシンセが固める…というもの。それは90年代J-POPの象徴のようである。メロディーやサウンド面だけなら、ヒット曲とも何ら遜色がない。
今作では数少ない、田嶋里香本人が作詞を手がけた曲。男友達と離れ離れになる寸前で、「ずっとあなたが大好きだった」と正面切って告白する内容。「蒼い季節の中で」と繋がっていそうな、ストーリー性のあるピュアな詞世界となっている。メロディー、サウンド面、歌詞とどれを取ってもヒット性の高いものだと思う。アルバム曲という位置は勿体無いと感じてしまうほどである。シングル曲でも違和感が無い。


「素顔のままで~ノーマ・ジーンのように~」は先行シングル「会いたくて会いたくて~Voice Of Moon~」のC/W曲。聴き心地の良いミディアムナンバー。作曲は柳原愛子が手がけた。当時のビーイング系アーティストだった柳原愛子と同一人物だろうか?詳細はわからない。サウンドはシンセが主体となったもので、曲を鮮やかに彩っている。
歌詞は内省的な味わいを持ったもの。「素顔のままで 私のままで 恋していたい」という願いを持った女性の心情が綴られている。ちなみに、サブタイトルに入っている「ノーマ・ジーン」はマリリン・モンローの本名として有名だが、そのどちらの名前も歌詞の中には登場しない。恐らく、主人公が憧れている生き方の象徴として使われていると思われる。ボーカルに関しては、今作では珍しく「力強さ」の面が現れた曲になったと思う。


「この雨通り過ぎるまで(Album Version)」は先行シングル曲。田嶋里香にとってのデビュー曲である。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。アルバムバージョンとあるが、シングルバージョンよりもピアノやストリングスが主張したサウンドになった印象。曲の美しさをより前面に押し出したアレンジだと思う。
今作では数少ない、田嶋里香本人が作詞を担当した曲。タイトルからも想像できるように、雨の日の夜が舞台。恋人に「この雨通り過ぎるまで このままいたい 涙が止まるまでずっと 抱きしめてほしい」とお願いしている。恋人とも言い切れない、曖昧な描写がされているので想像の余地が残されている。デビュー曲らしい「あどけなさ」のような魅力はあまり感じられないものの、確かな訴求力を持ったバラードだと思う。


「泣いてもいいよ」は明るく開放的な雰囲気に満ちたポップナンバー。一度聴いただけでしっかり耳に残るような、キャッチー性を極めたサビは絶品。サウンド面はとても陽気な感じを持ったもの。派手なシンセの音色に加え、ギターサウンドやパーカッションもその感じを演出している。
歌詞はいつも頑張っている人へのメッセージが綴られたもの。聴き手に寄り添った詞世界と、優しく包み込むような歌声には引き込まれてしまうばかり。「泣いてもいいよ 今日くらい もう我慢しないで いつでも強いあなたでいなくてもいいの」というサビの歌詞はそれが顕著に現れている。頑張っている人への一休みを勧めるタイプの応援歌となっており、頑張り過ぎてしまう人が多い今でも心に沁みるような曲だと思う。


「LAST AGAIN」は今作のラストを飾る曲。重厚なバラードナンバー。思わず聴き惚れてしまうような、繊細で美しいメロディーがたまらなく心地良い。ストリングスが主体で、それ以外の楽器は必要最小限で鳴っている。余計な物を一切取り払ったサウンド面は「引き算の美学」と言える。
歌詞は昔の恋人に再会した女性の心情が描かれたもの。雑踏の中で再会し、今も変わらず元気でいると伝えたかったのに、結局伝えられなかった。「あなた」で表現されているので、相手が誰であるかは具体的にわからないものの、自分は昔の恋人と解釈している。全編を通して切なさに満ちた詞世界となっている。自分が主人公になったような感覚で聴ける。
どの要素を取っても、ラスト以外に配置しようの無い曲だと思う。


あまり売れた作品ではないので、中古屋ではたまに見かける程度。90年代のガールポップという、今ではほぼ顧みられることのないジャンルに括られたアーティストだが、今でも似たような歌声の持ち主には中々出逢えない。そのため、このまま作品が埋もれてしまうには惜しい。

清楚な雰囲気を纏った、透き通るような歌声を活かしたポップスが並んだ作品。作家陣もまた、田嶋里香の魅力を引き出すような歌詞や曲を手がけている。その歌声が好きなら、全編ハズレ無しの曲が揃った、心地良さに包まれた名盤だと思うはず。当然、自分はそう思った側の人間。
幸いなことに、YouTubeには田嶋里香の楽曲が多く並んでいる。気になった方には是非とも聴いていただきたいし、中古屋で見かけたら作品を救い出していただきたいと思う。

★★★★★