IN THE SUN,IN THE SHADE
スターダスト・レビュー
1991-06-17


In The Sun,In The Shade
スターダスト・レビュー
2002-05-22

In The Sun,In The Shade
スターダスト・レビュー
2011-02-23


【収録曲】
1.作詞 田口俊
2.3.作詞 篠原仁志
4.作詞 竜真知子
5.作詞 有川正沙子
6.作詞 高橋研
7.9.作詞 葉庭敏貴
8.作詞 三谷泰弘
10.作詞 寺田正美・三谷泰弘 
全曲作曲編曲 三谷泰弘
2.4.6.作曲 根本要
3.作曲 柿沼清史
プロデュース 深川昌弘・山内英邦

1.Brand-New Wind ★★★★☆
2.夏のシルエット ​★★★★☆
3.月光列車(ムーンライト・ロコモーション) ​★★★☆☆
4.Be My Lady ★★★★☆
5.Triste ★★★★★ 
6.Northern Lights-輝く君に- ​★★★★★
7.Endless Dream ​★★★★☆
8.夏の女王(Dedicated to Esther Williams) ★★★★☆
9.ラビリンス・サスペンス ★★★☆☆
10.In The Sun,In The Shade ★★★★☆

1989年7月10日発売
1991年6月21日再発
2002年5月22日再発(リマスター)
2011年2月23日再発(リマスター)
ワーナーミュージック(オリジナル盤・1991年盤)
WEA(2002年盤)
ワーナーミュージック・ジャパン(2011年盤)
最高位5位 売上2.9万枚(オリジナル盤)

スターダストレビューの7thアルバム。先行シングル「Northern Lights-輝く君に-」「夏のシルエット」を収録。今作発売後に「Be My Lady」がシングルカットされた。前作「RENDEZ-VOUS」からは約1年振りのリリースとなった。

今作は「スタレビ流リゾートアルバム」というテーマで制作された。タイトルだけ見ても夏をイメージさせる曲があるが、全体的に清涼感のある作風となっている。熱い雰囲気を持った曲と、爽やかな曲とが丁度いいバランスで並んでいるのも特徴。


「Brand-New Wind」は今作のオープニング曲。涼しげな雰囲気を持ったミディアムナンバー。懐かしさを持った、しっとりしたメロディーが展開されているが、サビはしっかりとポップにまとめる。どこか切ない音色のアコギがイントロから前面に出ており、曲の世界観を構築している。そこからバンドサウンドが合流し、上品さを保ったまま盛り上がる。
歌詞は恋人とドライブデートする男性が描かれたもの。「走りさる風の4車線 すべりこむ真夏のSeaside Freeway」という歌い出しから、様々な想像を掻き立ててくれる。聴き手にも爽やかな風を吹かせてくれるような詞世界となっている。
オープニングというには少々地味な印象があるが、爽やかさに満ちた曲なので今作の作風にはぴったり。どの時期に聴いても、今作を聴いている間は夏になる。流石はオープニング曲と言ったところか。


「夏のシルエット」は先行シングル曲。森永乳業の「ピクニック」のCMソングに起用された。開放感に満ちたポップナンバー。シンセによるホーンがフィーチャーされており、それによってメロディー自体のポップ性がより高められている印象。メロディーや根本要のボーカルに寄り添って歌うようなベースラインを聴いていると、ついつい追ってしまいたくなる。
歌詞は夏の日を舞台にしたラブストーリーが繰り広げられたもの。出逢ったばかりの二人が主人公となっている。「君と出会うため ここまできたんだ 感じているのさ 二人はデスティニー」とまで言い切ってしまう。夏の夕暮れの光景が浮かんでくるような、繊細な情景描写がされているのも魅力。
夏を舞台にしたラブソングはこれまでのスタレビには少なかったように感じるが、それでも違和感の無い曲になっていると思う。


「月光列車(ムーンライト・ロコモーション)」は陽気な雰囲気を感じさせるポップナンバー。作曲は柿沼清史が担当した。メインソングライターの二人に負けず劣らずのメロディーセンスを見せつけている。吉川忠英によるフラットマンドリンと思われる音や、シンセによるホーンが存在感を発揮しており、メロディー自体が持っている明るさを引き立てている。
歌詞はタイトルからも想像できるように、ファンタジックな印象のもの。星座や宇宙をイメージさせるフレーズが多く並んでいるが、サビは「Wow〜Wow〜」というメンバー全員でのコーラスとなっているのがインパクト抜群。ア・カペラアルバムをリリースしたくらいなので、メンバー全員が確かな歌唱力の持ち主ということがわかる。その強みを活かしたコーラスワークは絶品。聴いているこちらの心まで明るくしてくれるような感覚を持った曲である。


「Be My Lady」は今作発売後にシングルカットされた曲。メニコンのCMソングに起用された。聴き心地の良いポップナンバー。ポップながらも美しさも持ったメロディーは絶品。スタレビならではの味わい深さがある。サウンド面ではバンドサウンドに加えて、シンセによるストリングスが使われており、曲をより上質なものにしている。
歌詞は恋人への想いをストレートに告げたもの。「君しかいない」「君と生きたい 歩いてゆきたい」といった歌詞は聴いていて恥ずかしくなるほどに真っ直ぐである。根本要の力強くて渋い歌声がまた、歌詞の一言一言に確かな説得力を持たせている。男の自分が聴いても「いい声」と思って聴き惚れてしまうほどである。
一聴しただけで口ずさめるくらいにキャッチーなサビなので、シングルカットされたりCMタイアップがついたりしたのも頷ける。


「Triste」は三谷泰弘のメインボーカル曲。シリアスな雰囲気に満ちたAOR。繊細さを感じさせるメロディーながら、サビはグッと心を掴むような仕上がり。キレの良いギターサウンドや重厚なベースといったバンドサウンドに加えて、イントロ・アウトロやサビでのシンセのリフがかなり耳に残る。ついつい弾き真似をしながら聴いてしまうことだろう。
タイトルは「悲しい」というような意味があると思われる。恋人に別れを告げられた男性の心情が綴られたもので、全編を通して哀愁漂う詞世界となっている。「この身体 半分を失くしたようさ」というサビの歌詞はそれが顕著に現れている。
三谷泰弘の艶のあるハイトーンボイスがこの曲の世界観を構成している。特にサビでのファルセットが美しい。三谷泰弘は根本要と比べても素晴らしいボーカリストであることがわかる曲だと思う。


「Northern Lights-輝く君に-」は先行シングル曲。オーツタイヤのCMソングに起用された。爽快感溢れるポップロックナンバー。イントロから高揚感に満ちた感じだが、サビは一聴しただけで引き込まれてしまうほどに力強くキャッチー。根本要の突き抜けるような歌声には圧倒されるばかり。本人はそれほど力んでいない感じで歌っているのが尚更凄い。躍動感のあるバンドサウンドが目立っているが、シンセも多彩な音色で曲を盛り上げている。
歌詞は別れた恋人とやり直そうとする男性の想いが綴られたもの。過去に対しての後悔も語られているが、全体的にはポジティブな詞世界となっている。主人公の男性の想いが、都会の中を駆け抜けていくようなイメージがある。曲調と歌詞のイメージがよく合っていると思う。ライブの定番曲というのも頷ける。今作に収録されたシングル曲の中では一番好きな曲。


「Endless Dream」はしっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。身を委ねてしまいたくなるほどに心地良いメロディーが展開されている。サビになっても、流麗なメロディーは変わらない。余計なものを一切取り払った、シンプルかつ美しいサウンドが展開されている。根本要の渋く色気のある歌声の魅力を最大限に引き出したアレンジになった。
歌詞は片想いしている男性の心情を描いたものと解釈している。「まだ僕に気付かずにいるね 寂しさばかりを追いかけ いつだって見つめているから 愛しさだけをくり返し」という歌詞は何とも切ない。友達止まりになってしまいがちな男性なのだろうか。まるで自分が主人公になったような感覚で聴いてしまう。今作の中でも特にメロウな部分のスタレビが現れた曲だが、この手のバラードに外れは無い。


「夏の女王(Dedicated to Esther Williams)」は先行シングル「Northern Lights-輝く君に-」のC/W曲。三谷泰弘のメインボーカル曲。清涼感溢れるミディアムナンバー。サビで一気にキャッチーなメロディーになるのだが、その部分はかなりの開放感がある。音の数はそこまで多くはないものの、全ての音が無駄なく鳴っている感じ。とても洗練されたサウンドが展開されている。
「エスター・ウィリアムズに捧ぐ」というサブタイトルの通り、アメリカの映画女優だったエスター・ウィリアムズをイメージさせる歌詞となっている。銀幕のスター女優への想いを語った詞世界である。彼女は競泳選手としても活躍していたようで「まぶしいプールサイド」「水しぶき 飛び込む夏の女王」を始めとした歌詞はそれを彷彿とさせる。
C/W曲ながら、アルバムの作風によく合った曲になっている印象。アルバムの箸休め的な存在の曲なのかもしれないが、個人的にはかなり好きな曲。


「ラビリンス・サスペンス」は怪しげな雰囲気を感じさせるポップナンバー。Aメロ・Bメロ・サビと変化がはっきりとわかる構成のメロディーが特徴的。他の曲と比べてもシンセがかなり前面に出たサウンドとなっており、生音との絡みがこの曲の聴きどころ。リリースされた頃よりも少し古く感じるサウンド面になっている印象がある。
歌詞はタイトル通り、謎めいた感じのもの。友達以上恋人未満の関係の二人が主人公なのだろう。お互いに心の中を探り合う段階を、迷路やミステリーに例えているような印象。全体としてはコミカルなイメージとなっており、タイトルから想像されるような難解さを持った詞世界ではない。今作を聴いているだけでもスタレビが様々な魅力を持ったバンドであることがわかるが、この曲では三枚目的な魅力が現れていると思う。


「In The Sun,In The Shade」は今作のラストを飾るタイトル曲。ラストにふさわしい壮大さを持った曲。聴き手を包み込むようなメロディーが展開されている。曲の前半ではシンセが効果的に用いられており、壮大な中にもポップ性を散りばめたアレンジとなっている。段々とバンドサウンドが合流していき、さらに盛り上がっていく。一曲聴いているだけなのに、ストーリー性のあるサウンド面が面白い。
歌詞は大きな自然の力をイメージさせるもの。「凍てついた心が 優しさに包まれた時 見えなかった明日が やがて希望へと変わってゆくさ」という歌詞が好き。
SING LIKE TALKINGの「Seasons Of Change」と似たような詞世界なのだが、この手のメッセージソングはとても好き。タイトル曲ならではの訴求力を持った曲だと思う。


それほど売れた作品ではないが、中古屋ではそこそこ見かける。三谷泰弘が中心となって作曲や編曲を担当していた頃のスターダストレビューの作品はシティポップ・AORの文脈で語られることが多いが、今作は特にシティポップの色が強い作品になっている印象。「リゾートアルバム」を目指して制作されただけあって、どの曲にも確かな爽やかさがある。そのような作風なので全体的に統一感がある上に、一曲一曲の完成度もかなり高い。スターダストレビューに関してはそこそこのニワカなのだが、それでも今作は特に好き。

★★★★★