GOLD DIGGER
角松敏生
1994-12-16


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 角松敏生
2.5.6.8.ブラス編曲 数原晋
5.9.ストリングス編曲 佐藤準
プロデュース       角松敏生

1.I CAN’T STOP THE NIGHT ★★★★☆
2.SPRINGIN’ NIGHT ★★★★☆
3.MOVE YOUR HIPS ALL NIGHT LONG ★★★★☆
4.SECRET LOVER ★★★★☆
5.MELODY FOR YOU ​★★★★☆
6.TOKYO TOWER ​★★★★★
7.PRAJÑÀ(VIOLENCE IN THE SUBWAY) 省略
8.MERMAID PRINCESS ​★★★★☆
9.IT’S TOO LATE ★★★☆☆
10.NO END SUMMER ★★★★★

1985年5月21日発売(LP,CT)
1989年11月21日再発(CD化)
1994年12月16日再発(CD)
AIR/RVC(オリジナル盤)
AIR/BMG VICTOR(1989年盤)
OM/BMG VICTOR(1994年盤)
最高位7位 売上6.2万枚(LP)
最高位13位 売上3.6万本(CT)

角松敏生の5thアルバム。シングル「TOKYO TOWER」が今作と同日にリリースされた。今作発売後に「NO END SUMMER」がシングルカットされた。前作「AFTER 5 CLASH」からは11ヶ月振りのリリースとなった。

前作「AFTER 5 CLASH」から、デビュー以来続いたリゾートミュージック路線から一転して「夜」「都会」といったイメージの楽曲を展開するようになった。今作はその路線にさらに傾倒し、詞世界に関しても性的なイメージを持ったものが増えた。そのため、全体的に耽美的な世界観が繰り広げられている。ちなみに、タイトルは「金目当てで男漁りをする女」という意味の俗語。

前作でも少々使われていたスクラッチだが、今作ではより使用頻度が増えている。また、当時の日本の音楽界では一般的でなかったラップも使われている。打ち込みサウンドと生音を効果的に使い分けたディスコファンクは今でも格好良さがある。


「I CAN’T STOP THE NIGHT」は今作のオープニング曲。当時としては最新鋭の打ち込みサウンドが駆使されたエレクトロファンクナンバー。サビはキャッチーなのだが、曲全体としてはそこまでノリが良いわけでもない。うねうねしたシンセベースや、シモンズドラムの連打音は今になって聴くと中々にチープな音である。しかし、それが今作の聴きどころ。今作の特徴であるスクラッチも多用されており、曲を盛り上げている。
歌詞は女性に振り回される男性が描かれたもの。「逃げられないさ あなたからは 心まで 血まみれの夜 とまどいも 感じない」「あざ笑い 消えて行く君…」といった歌詞はインパクト抜群。男性は何をされたのだろうか?
「ダサい」と「格好良い」の中間にある感じがたまらない曲。オープニングだけあって、今作の世界に聴き手を導いてくれる。


「SPRINGIN’ NIGHT」は前の曲よりも激しさを増したファンクナンバー。メロディー自体はそれなりに耳に残るのだが、どちらかというとメロディーよりサウンドで盛り上がれる曲という印象。ヨギ・ホートンによる一打一打が力強く、ファンキーなドラミングがたまらない。生のベースとシンセベースがセットで使われているのも特徴で、ダンサブルなサウンドを構成している。
歌詞は一人きりで夜を過ごす男性の想いが綴られたもの。恋人はいるのだが、その相手には会えず。電話をしようと思うも、結局せずに一人でワインを飲む。何とも寂しげな雰囲気の詞世界なのだが、サウンド面の影響でそのような要素がほとんど感じられなくなっている。
ファンキーな曲が並ぶ1曲目〜3曲目の流れだけで、聴き手の心をぐっと掴んでくれる感覚がある。


「MOVE YOUR HIPS ALL NIGHT LONG」は力強いファンクナンバー。今作の中では珍しく、ロック色も感じさせる。メロディーそのものもかなり力強いのが特徴。隙のないバンドサウンドは、イントロから聴き手の心を掴んで離さない。特に唸るようなギターサウンドや、激しいスラップベースには圧倒されるばかり。また、サビでの女性コーラスは曲を効果的に盛り上げる役割を果たしている。
歌詞は耽美的なイメージがあるもの。恋人同士の夜を想起させる詞世界となっており、角松敏生のボーカルもいつもより色気が増している印象。そのような詞世界ながら、いやらしさよりも格好良さやお洒落さがギリギリ優っているのは、角松敏生の優れたセンスの賜物と言えるだろう。


「SECRET LOVER」はファンキーなサウンドが展開されたミディアムナンバー。大きく盛り上がるような部分は無いものの、サウンド面をしっかり楽しめる。イントロからラップが入っており、曲全体から溢れ出るギラギラした雰囲気を演出している。サウンド面では、シンセベースと生のベースが使い分けられているのが特徴。それぞれでしか出せない良さがあり、聴きごたえのあるダンサブルなサウンドの構成要素として活躍している。
歌詞は恋人がいる女性と愛し合う男性が描かれたもの。相手にバレてしまうことを恐れて消極的になる男性と、それを気にもせず積極的に求めてくる女性。聴いているだけでもドキドキしてくるような、スリルのある詞世界となっている。この手のテーマの曲は角松敏生の作品にはそこそこある印象だが、どれも漏れなく好き。


「MELODY FOR YOU」は叙情的なメロディーが心地良いミディアムナンバー。全体を通して美しいメロディーが冴え渡っている。イントロのサックスからしてAOR色が強いが、全体を通してそのような上質さを持ったサウンドとなっている。ギターのカッティングや重厚なベースはファンキーだが、やはり上質さが優っている。
歌詞は恋人へのまっすぐな想いが語られたもの。夏の海岸沿いの道をドライブしている描写がされており、その情景がよく浮かんでくる。サビでは「ずっと君のそばにいて 永遠のメロディーをかなでよう」と告白する。歌詞で描かれた情景の通り、夏場のドライブのお供として聴きたくなるような曲となっている。この曲に関しては、「夏」「海」路線が引き継がれている印象。


「TOKYO TOWER」は今作と同日にリリースされたシングル曲。ディスコでの定番だったようなので、世代の方からの知名度はそこそこ高いと思われる。徹頭徹尾ファンキーでダンサブルな曲。流れるようなメロディーながら、サビはかなりキャッチー。イントロの英語詞によるラップや、縦横無尽に暴れ回るスラップベースは思わず身体が動いてしまうこと請け合い。特に間奏のベースソロは鳥肌が立つほどに格好良い。
歌詞は東京の夜を共に過ごす恋人たちの様子が浮かぶもの。「TOKYO TOWER」というのは文字通りの意味ではなく、かなり性的な比喩として用いられている。今となっては東京スカイツリーがあるわけだが、東京タワーの方がギラギラしたイメージがある。「東京スカイツリー」のフレーズが使われた、同じようなテーマの曲が作られるとはあまり思えない。東京タワーが存続する限り、この曲も一部で愛され続けると思う。


「PRAJÑÀ(VIOLENCE IN THE SUBWAY)」はインスト曲。インストとは言ったが、角松敏生によるラップのような声が入っている。音は全てシンセによるもの。正直なところ、気付いたら始まっていて気付いたら終わっている感じ。


「MERMAID PRINCESS」はここまでの流れを落ち着けるようなバラードナンバー。何かをしながら聴いていても、思わず手を止めて聴き入ってしまえるようなメロディーには引き込まれるばかり。角松敏生のメロディーセンスがよくわかる。温もりのあるエレピの音色がサウンドの主体となっているが、それはメロディーの良さをさらに引き立てている。
歌詞は自らの恋人に別の相手がいることを知った男性の想いが綴られたもの…と解釈している。「聞こえないふりをしても つくろう笑顔は悲しすぎる」という歌詞は聞いているこちらの心まで痛くなってくるほど。角松敏生は現在に至るまで様々な名バラードを生み出しているが、この曲は初期の名バラードという印象。


「IT’S TOO LATE」はしっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。甘く美しいメロディーには引き込まれてしまうばかり。それでいて、サビは訴求力のあるメロディー。最初はキーボードだけだが、サビからバンドサウンドが入って盛り上がる。2番からはストリングスも合流して、厳かな雰囲気に包まれたサウンドへと変貌を遂げる。
歌詞は大切な人との別れや、それに伴う後悔が描かれたもの。全編を通して「重い」描写がされており、ただの別れとは思えないような感じがする。「遅すぎて 遅すぎて 君はもう ここにはいない 愛しても 届かない」という歌詞はそれが顕著。後にこの手の重厚なバラードが増えていくが、この頃としては異色な作風だったと思う。


「NO END SUMMER」は今作発売後にシングルカットされた曲。フジテレビ系番組『なるほど!ザ・ワールド』のエンディングテーマに起用された。ファン人気も高いミディアムバラードナンバー。様々なバージョン違いがあるものの、今作収録バージョンが初出。どこまでも甘く、優しいメロディーには聴き惚れてしまうばかり。それでいて、サビはしっかりとキャッチーに仕上げる。そこは一貫しているのは脱帽。シンプルなバンドサウンドにピアノが絡んだサウンドも美しい。後半に入ってくるサックスは鳥肌が立ってしまうほど。
歌詞は恋人への想いをストレートに並べたもの。夏を想起させるフレーズと冬を思わせるフレーズが同居しているので、季節は具体的にはわからない。「次の夏にも 変わらぬ愛を届けよう」という歌詞は力強い。角松敏生の熱を帯びたボーカルも相まって、爽やかさと熱さとを併せ持った名バラードになった。


近年再評価されている作品ということもあり、中古屋で見かけてもそれなりの価格で出回っていると思われる。夜や都会を想起させる楽曲が並んでいるわけだが、初期の「夏」「海」路線の曲もまだまだ残っている。次作「TOUCH AND GO」では初期の路線を捨て去り、キレの良いエレクトロファンクに傾倒するようになるので、今作はその過渡期と言える作品。全曲の完成度は安定しているものの、後半にバラードが固まってしまったのが少々残念なところ。ただ、サウンドの聴きごたえは全編を通して圧倒的なものがある。シティポップの名盤として今作が再評価されるのも頷ける。

​★★★★☆