FOREVER
米光美保
1995-10-21


【収録曲】
1.作詞作曲 土屋昌巳
2.8.作詞 井上秋緒
3.4.6.10.作詞 門屋祐美
5.作詞 米光美保
7.作詞 加藤健
9.作詞作曲 吉田美奈子
全曲作曲編曲 角松敏生
7.作曲 浅野祥之
7.編曲 浅野祥之・角松敏生 
10.編曲 角松敏生・山田ひろし
3.ホーンアレンジ 数原晋
8.9.ストリングスアレンジ 小林信吾
プロデュース  角松敏生

1.ナチュラル・フーズ ★★★★☆ 
2.LABYRINTH ​★★★★☆
3.ILLUSION TOWN ★★★★★
4.It’s just a moment〜weariness〜 ★★★★☆
5.眠れない夜 ★★★☆☆
6.FALL IN LOVE,IT’S FOREVER ★★★★☆
7.YA-DA ★★★★☆
8.Feel of you(Album version) ​★★★★★
9.恋は流星 SHOOTING STAR OF LOVE ​★★★★☆
10.ひとりじゃないのよ ★★★☆☆

1995年10月21日発売
Epic/Sony Records
最高位66位 売上不明

米光美保の2ndアルバム。先行シングル「Feel of you」を収録。今作発売後に「It’s just a moment〜weariness〜」がシングルカットされた。「ひとりじゃないのよ」はそのシングルのC/W曲として、「LABYRINTH」はシングル「恋人よ〜TO LOVE YOU MORE」のC/W曲としてシングルカットされた。前作「From My Heart」からは10ヶ月振りのリリースとなった。

米光美保は1990年に東京パフォーマンスドール(TPD)のメンバーとしてデビューした。フロントメンバーとして活躍し、その透明感溢れる歌声のためか、グループの歌唱力担当と言うべき存在だった。1994年の9月にTPDを脱退し、ソロ活動に専念するようになった。TPD在籍時にも、他のメンバーと同時にソロアルバムがリリースされているものの、そちらはソロアルバムとしてカウントしていない。
その後、1998年に活動を休止し、2004年にインディーズで復帰するも、2009年に再び活動を休止。現在は地元に帰って農業をしているようだ。

今作のリリース当時、歌手活動を「凍結」して、作家やプロデューサーに専念していた状態だった角松敏生が前作に引き続きプロデュースを手掛けた。シティポップ・AORやフュージョンの色を強く出しながらも、米光美保の歌声を生かしたプロデュースとなっている。打ち込みを多用しつつ、しっかりと聴きごたえのあるサウンド面に仕上げられた。


「ナチュラル・フーズ」は大橋純子がボーカルを担当していた美乃家セントラル・ステイションの楽曲のカバー。作詞作曲は当時のメンバーで、後に一風堂で活躍する土屋昌巳が手がけた。原曲はファンキーなバンドサウンドと大橋純子のボーカルが強烈なパワーを叩き出すものだったが、こちらは打ち込み主体でグルーヴ感のあるサウンドを実現させた。角松敏生によるフュージョン色の強いギターサウンド、シンセベースと生のベースとの絡みは格好良いと言うほかない。歌詞はタイトルのフレーズを繰り返したものであり、その聴きごたえのあるサウンドを楽しむべき曲という感じ。ボーカルの存在感は流石に大橋純子には敵わないが、米光美保にしか出せなかった新たな良さがあると思う。


「LABYRINTH」は今作発売後に「恋人よ〜TO LOVE YOU MORE」のC/W曲としてシングルカットされた曲。キレの良いエレクトロファンクナンバー。複雑な展開を見せるメロディーだが、サビはかなりキャッチー。大げさなほどに派手な打ち込みサウンドは角松敏生ならではで、「TOUCH AND GO」の頃の作風を彷彿とさせるアレンジになっていると思う。
歌詞は恋人と別れた女性の心情を描いたものと解釈している。「誰も壊せない 私のこと壊せない」「誰にも見せない 私のこと見せないわ」など、強気な女性像がイメージできる。他の曲に比べても力強いボーカルになっている印象があり、曲の世界を形作っている感じ。エレクトロファンクに傾倒していた時期の角松敏生の作品が好きなので、この曲もやはり好き。


「ILLUSION TOWN」は爽快感のあるポップナンバー。曲全体を通して楽しげなメロディーなのだが、思わず一緒に口ずさみたくなるようなサビがたまらない。一度聴いただけでも、しっかり耳に馴染むような感覚がある。
キーボードとホーンセクションが主体となったサウンドであり、それは聴き手に高揚感を与えてくれる。勝田一樹による、間奏での熱のこもったサックスソロには引き込まれるばかり。また、ギターを一切使用しないアレンジとなっているのが特徴的。ギタリストでもある角松敏生のプロデュース作品にしては異色な印象。


「It’s just a moment〜weariness〜」は今作発売後にシングルカットされた曲。ダンサブルなサウンドが心地良いミディアムナンバー。シングルカットされただけあって、サビはかなりキャッチーな仕上がり。また、間奏では外国人によるラップが入っているのも特徴。
サウンド面では、淡々としているのに、不思議とノリが良いと思ってしまうキーボードのリフが印象的。思わず指で弾き真似をしたくなること請け合い。この曲もギターを一切使用しないアレンジとなっており、打ち込みならではのグルーヴ感が追究されている。当時としては最新鋭のサウンドを積極的に取り入れた曲になっていると思う。


「眠れない夜」はここまでの流れをぐっと落ち着けるスローバラードナンバー。温かみのあるアコギの音色と、どことなく無機質な打ち込み音の絡みが独特。後半では数原晋によるフリューゲルホーンが入り、曲をさらに流麗なものにしてくれる。
作詞は米光美保によるもの。「あなたの心から 私が薄れてく」と恋人の心変わりに気付いた女性の想いが綴られており、何とも切なさの漂う詞世界となっている。
このような落ち着いたメロディーやサウンド面だと、ボーカルを聴かせる曲という印象がある。米光美保の持つ透き通るような歌声がさらに訴求力を増しているように感じる。


「FALL IN LOVE,IT’S FOREVER」は温かみのあるメロディーが心地良いミディアムナンバー。今作のタイトル曲と言えるかもしれない。キャッチーかつ聴き惚れてしまうほどに美しいサビのメロディーがたまらない。1分と少しもある長めなイントロはインパクト抜群。軽い打ち込みによるリズムはチープさも感じられるのだが、リズムを聴かせる曲ではないのでそれほど気にならない。間奏では小林正弘によるトランペットソロがあり、この曲の聴きどころとなっている。
サビでは微笑みながら歌っているような歌声を聴かせてくれる。この曲を聴けば、やはり米光美保の歌声の魅力がよくわかる。


「YA-DA」はラテンのリズムが取り入れられた曲。作曲は今作では唯一、浅野祥之が手がけた。編曲にも角松敏生との共同で参加している。サビでも派手に盛り上がるわけではないが、それでも確かに耳に残るメロディーが特徴。サウンド面もリズムも打ち込みが主体なのだが、ギターは生音でしっかりと聴かせる。間奏での叙情的なギターソロは浅野祥之の実力がよくわかる。
歌詞は自分に気安く近付いてくる男性を「やだ」と切り捨てるもの。相手のことを「肩書きばかりのおじさまくずれ」「なにからなにまで受け付けないの」などと辛辣に否定した詞世界がインパクト抜群。「言われたい」だなんて思ってしまう人はマゾである。


「Feel of you(Album version)」は先行シングル曲。シングルバージョンとの違いに関しては、そちらを聴いたことがないので何とも言えない。流麗なメロディーに聴き惚れてしまうばかりのバラードナンバー。この手のバラードを書かせると、角松敏生は本当に強い。
打ち込みサウンドが主体の曲が多く並んだ作品だが、この曲は生音主体。バンドサウンド全てが生音になっているのはこの曲だけ。曲自体の聴きごたえがさらに増している。
歌詞は恋人への真っ直ぐな想いが綴られたもの。「繰り返す夜明けも さよならの意味も そこにあなたがいたから いつまでもその腕に 抱きしめていてね」という歌詞が特に好き。米光美保の透き通るような歌声も相まって、圧倒的な訴求力を持った名バラードになった。


「恋は流星 SHOOTING STAR OF LOVE」は吉田美奈子の楽曲のカバー。夜空の上をゆったりと浮かんでいるような、優しく柔らかい響きの打ち込みサウンドが主体となっている。今となっては時代を感じる音もあるが、そこはご愛嬌。ストリングスや終盤に入ってくるホーンは原曲の美しいメロディーの持ち味をさらに引き出している。
米光美保も素晴らしい歌唱力を持っているが、流石に吉田美奈子には勝てない。しかし、その透明感溢れる歌声によって原曲とはまた違った魅力が生まれた。
「ナチュラル・フーズ」にしてもこの曲にしても、かなり難易度の高い曲をカバーしたなと思う。どちらもシティポップの名曲として挙げられる曲で、どちらも圧倒的な存在感を誇るシンガーによる曲。角松敏生から米光美保への挑戦状だったのだろうか?


「ひとりじゃないのよ」は今作発売後に「It’s just a moment〜weariness〜」のC/W曲としてシングルカットされた曲。2分40秒程度と比較的コンパクトなバラードナンバー。角松敏生はバラードの名手だと思っているのだが、そのメロディーセンスがこの曲では特に冴え渡っている。繊細さ溢れるメロディーと、小林信吾による美しいピアノに彩られたサウンドの絡みが心地良い。それ以外は全て打ち込みによるものなのだが、曲を効果的に盛り上げている。
ラストというには少々地味な印象なのだが、他にラストを飾れるような曲は無い。


あまり売れた作品ではないので、中古屋ではたまに見かける程度。近年のシティポップ・AOR再興の影響を受けてか、そこそこの値段で出回っていることが多い。上記のジャンルの曲代表的な存在である角松敏生がプロデュースを手がけた…というのが再評価の理由なのだろうが、それを抜きにしても良いと感じられる作品である。
作品としては、前作よりもシティポップ色の強い曲が増えた印象がある。打ち込み主体なのは前作と変わらないが、より聴きごたえが増した。やはり、米光美保の歌声の魅力を引き出したプロデュースが魅力的。米光美保のボーカリストとしての実力、角松敏生のプロデューサーとしての実力が遺憾無く発揮された作品だと思う。

​★★★★☆