新しき魂の光と道
FLYING KIDS
1990-12-16


【収録曲】
全曲作詩 浜崎貴司
4.8.14.作詩 FLYING KIDS
9.作詩 丸山史朗
10.作詞作曲 JIM WILLIAMS・CLARENCE SATCHELL・LEROY BONNER・MARSHALL JONES・RAHPH MIDDLEBROOKS・MARVIN PIERCE・WILLIAM BECK
10.日本語詩 浜崎貴司
1.3.作曲 加藤英彦
2.14.作曲 丸山史朗・浜崎貴司
4.作曲 飯野竜彦
5.6.作曲 FLYING KIDS
7.作曲 伏島和雄
8.作曲 飯野竜彦・丸山史朗
9.作曲 丸山史朗
11.作曲 加藤英彦・浜崎貴司
12.作曲 浜崎貴司
13.作曲 飯野竜彦・浜崎貴司
全曲編曲 FLYING KIDS
プロデュース FLYING KIDS

1.心は言葉につつまれて ​★★★★★
2.毎日の日々 ★★★★★
3.するコトダケ ​★★★☆☆
4.マッチョズ宣言 ★★★☆☆
5.体の弱い若者 ★★★★☆
6.長い道のり ★★★★☆
7.変化の兆し ​★★★★☆
8.陸の王者大行進 ★★★☆☆
9.マッチョズのテーマ ★★★☆☆ 
10.炎(ファイヤー) ​★★★☆☆
11.歌の思い出 ★★★★☆ 
12.新しい方々 ★★★★★ 
13.大切な人 ​★★★☆☆
14.ギターボンゴ ★★★☆☆

1990年12月16日発売
ビクター音楽産業
最高位43位 売上不明

FLYING KIDSの2ndアルバム。先行シングル「心は言葉につつまれて」を収録。今作発売後に「新しい方々」がシングルカットされた。前作「続いてゆくのかな」からは約8ヶ月振りのリリースとなった。

FLYING KIDSは1988年、東京造形大学の学生を中心として結成された7人組ファンクバンド。そして、1989年に『平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国』に出演し、3代目イカ天キングとなる。その後5週連続勝ち抜きを果たし、初代イカ天グランドキングとなった。FLYING KIDS以降のイカ天グランドキングはBEGIN、たま、BLANKEY JET CITYなどがいる。

FLYING KIDSは1993年頃からポップス路線に転向するが、今作は初期のファンクロック路線を突き進んだ作品。前作「続いてゆくのかな」と同じく、ファンキーなサウンドと内省的でメッセージ性の強い詞世界を両立させた楽曲が並んでいる。また、前作よりもネタ路線の曲が増えているのも特徴。


「心は言葉につつまれて」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。マツダ「ファミリア」のCMソング、テレ東系ドラマ『ハイスクール大脱走』の主題歌に起用された。
これまでのシングル曲と比べてもポップ性の高い曲。一回聴けばすぐに耳に馴染んで離れなくなるようなサビのメロディーは後のポップス路線を予見しているかのよう。それでも、ファンキーな要素は失われていない。太くうねるベースや間奏のギターソロがたまらない。また、イントロやアウトロではシンセによるブラスが使用されている。これはホーンセクションを持たないFLYING KIDS独特の音創り。
歌詞は「心を伝えたい」と思いつつも伝えられずにいる人の想いが綴られている。「言わなきゃならない事がありすぎて 言わなきゃよかった事もありすぎて」という歌詞には共感するしかない。
メロディーのポップ性とファンキーなサウンドが自分好みなので、ポップス路線に傾倒するまでのFLYING KIDSの曲の中でもかなり好きな方に入ってくる。


「毎日の日々」は重厚なファンクロックナンバー。サビまではゆったりした曲調で重いバンドサウンドを聴かせるが、サビでは一転してキャッチーなメロディーに変貌を遂げる。この曲では浜崎貴司と浜谷淳子の掛け合いも曲を盛り上げる要素となっている。
歌詞は社会風刺の要素が強いもの。「こんなに豊かな国なのに いっぱい働かなければ暮らしていけないし」「さまざまな出来事がさめざめと続いてく」といった歌詞は今でも鋭い切れ味を持っていると思う。淡々と続いていくだけの日々への不満を言いながらも、それでも生きていく。やる気に満ちているとも無気力とも言い切れない詞世界がやけに突き刺さる。
後にリリースされたベスト盤にも収録されていることから、今作を代表する曲という立ち位置なのかもしれない。それも頷けるメッセージ性を持った曲だと思う。


「するコトダケ」はここまでの流れを落ち着けるミディアムナンバー。この曲に関しては、ブルースのような渋さを持った演奏を楽しめる。多彩な表情を見せるギターやベースには引き込まれるばかり。他の曲でもかなりの存在感を放っているボーカルだが、この曲では圧倒的な存在感を発揮する。「野生的」というフレーズをボーカルについて語るのに使うことは浜崎貴司以外無いだろう。「することだけじゃ足りないみたい」と愛し合うことの難しさを描いた詞世界なのだが、その苦しさやもどかしさを見事に表現したボーカルである。


「マッチョズ宣言」は今作の中でも異彩を放つネタ曲。マッチョズ1号こと伏島和雄、2号こと飯野竜彦がメインボーカルを担当している。飯野竜彦による打ち込みが主体となったサウンドはFLYING KIDSのキャリアを通じてもかなり異色。人力でのグルーヴが持ち味のバンドなので、特にそう感じる。
歌詞はタイトル通り宣言が並んでいる。「世界の平和と地球を守るために歌う」ようだ。この手のネタ路線はFLYING KIDSの楽曲の魅力の一つ。


「体の弱い若者」は濃厚なファンクナンバー。メロディーそのものはそれほどキャッチーではないが「体の弱い若者」と繰り返す部分はかなり耳に残る。言葉そのものがキャッチーだからだろう。無意識のうちに身体が動いてしまうような、うねうねしたベースラインがたまらなく格好良い。
タイトルからしてかなりクセの強い詞世界が想像できるが、思いのほか真面目なメッセージが綴られている。「体の弱い若者」へのメッセージのようになった詞世界だが、それでも結婚して子宝に恵まれているようだ。ただ、この曲の歌詞で一番印象に残るのは「さよならを言わなきゃならない人は必ずでてくるから」というもの。大切な存在との別れを、ここまでシンプルかつ心に突き刺さるフレーズで表現するところが素晴らしい。浜崎貴司の詩人としての実力がよくわかる曲だと思う。


「長い道のり」は勢いのあるファンクロックナンバー。メロディーそのものはそれほどキャッチーではないが、浜崎貴司と浜谷淳子のツインボーカルが曲に確かな強さを与えている。何かのついでで聴いていたとしても、確実にボーカルが引っかかって耳に馴染んでいると思う。タイトなバンドサウンドの中でも、ヘビーなスラップベースや唸るようなギターサウンドに圧倒される。
歌詞は内省的なメッセージが並んだもの。「ぼくのことを決して誰ひとりわかってくれないよ」「願いは全て叶うこともない」と言いつつも、「不安に思うことは何もない」という言葉で何とか前向きな姿勢を見せる。自分が思う、FLYING KIDSの詞世界の王道という感じがたまらない。


「変化の兆し」は前の曲よりさらに熱を帯びた ファンクロックナンバー。どこがサビなのかわかりにくいメロディーではあるが、語感の良いフレーズが大量に並んだ詞世界の影響でかなりキャッチーなメロディーだと感じられる。イントロから勢い溢れるバンドサウンドが流れ込み、そのまま終始盛り上げている。
歌詞はかなりネガティブなメッセージが込められている。「変化の兆し」について「あーあ今日も全く見えない」と悲観する。それは社会に関しても、自分の生活に関しても。
この曲もまた、今になって聴いた方が歌詞に強さが加わっているのではと感じる。28年も前の作品なのに、現在の日本を先取りしたかのような詞世界には脱帽。


「陸の王者大行進」はシュールなネタが展開されたファンクナンバー。メインボーカルは浜崎貴司とマッチョズ1号・2号。重厚なファンクサウンドを展開しつつも、全編通してふざけた雰囲気が漂っている。歌詞はタイトルのフレーズを繰り返しているだけのもの。カンフー映画でも観ているかのようなコーラスもかなり耳に残る。楽しげな雰囲気に飲まれたまま、次の曲に進んでいく。


「マッチョズのテーマ」は再びマッチョズが登場。2分ギリギリ行かない程度の短い曲。メインボーカルは伏島和雄と飯野竜彦。前作に収録された「あれの歌」をバックに、マッチョズの自己紹介をしている。サウンドは他の曲と変わらずファンキーなのだが、ふざけた歌詞が2人の脱力感溢れるボーカルに乗せられていると不思議な感覚に陥る。それにしても飯野竜彦、かなり鼻にかかった歌声である。歌詞と同じくらいのインパクトがある。


「炎(ファイヤー)」は洋楽のカバー。恐らく、Ohio Playersの「Fire」が元ネタだろう。原曲も熱いファンクナンバーだが、こちらもFLYING KIDS独特の魅力を加えつつ熱量のあるファンクに仕上げられた。日本語訳詞は浜崎貴司が行なっており、下ネタ路線のものとなっている。また、冒頭ではセリフが入っているのもインパクトがある。「もっとみんなをブチ壊してやる みんなの心をブチ壊してやる」という強気なセリフを、優しい声で語りかけているのが逆に恐ろしい。何も知らずに聴いたら、FLYING KIDSのオリジナル曲だと思ってしまうだろう。それくらい自然なカバーとなっている。


「歌の思い出」はここまでの流れを落ち着けるミディアムナンバー。サビでも大幅に盛り上がるわけではないが、聴いていて心地良いメロディーである。グルーヴィーながらも渋さを感じさせるギターサウンドが前面に出ており、曲全体としても洗練された雰囲気を持ったサウンドとなっている。前の曲と演奏の振り幅がかなり大きい。メンバーの演奏力の高さがわかる。
歌詞はメッセージ性の強いもの。「流れている歌を忘れずに この時をきっとおぼえていてくれるから」という歌詞が好き。「歌」というのは、様々な記憶と共にあるものだと思う。歌心に満ちた浜崎貴司のボーカルも相まって、歌詞の一言一言に確かな説得力や強さが生まれている。


「新しい方々」は今作発売後にシングルカットされた曲。映画『真夏の地球』の主題歌に起用された。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。ボーカルだけでなく、メロディーそのものも歌っているのかと錯覚するほどに訴求力のあるメロディーが展開されている。メロウな部分もあれば、ファンキーな演奏を聴かせる部分もあって変化に富んでいるため、今作最長の6分半ほどという長さもそれほど気にならない。
歌詞は「君」を励ましたもの。「そのうちに君を誰かほめてくれるから」「とってもすてきな君をだれかわかってくれるから」といった歌詞は優しさに満ちている。シングルカットされたのも頷ける名バラード。「幸せであるように」と負けず劣らずの強さがある曲だと思う。


「大切な人」はここまでの流れを引き継いでのバラードナンバー。繊細さに満ちた美しいメロディーを、しっとりと聴かせる。サウンドは全編が打ち込みによるもので、生音はほぼ使われていないと思う。ここまでバンド感の無いサウンドも珍しい。
歌詞はタイトル通り「大切な人」へのメッセージが綴られたもの。「心がやさしくなるころ 年を重ねた人がふえ いくつもの名前を忘れてる」という歌詞は、今の自分にはまだ共感できない。いつかこの歌詞が心に沁みてくるのだろう。全体的に優しい詞世界となっているが、「大切な人」に語りかけているかのようなボーカルに引き込まれるばかり。そのおかげで、歌詞の一言一言の説得力も強まっていると思う。


「ギターボンゴ」は今作のラストを飾る曲。わずか40秒程度という極めて短い曲。リードボーカルは丸山史朗が担当し、タイトル通りボンゴも演奏している。アコギ、ボンゴ、コンガのみという少ない音と、メンバーの楽しげな雰囲気が伝わってくるようなボーカルだけで構成されている。一度聴こうものなら、「ギターボンゴ」のフレーズが頭から離れなくなってしまうことだろう。よくわからないが陽気な雰囲気に飲まれて、今作は終わりを告げる。


あまり売れた作品ではないので、中古屋ではたまに見かける程度。
インタルード的な存在の短めなネタ曲を挟みつつ、次々とファンキーな曲を並べる構成。そのため、14曲という収録数ながら55分程度と比較的コンパクト。前作「続いてゆくのかな」ではひたすら攻撃的なファンクが並んだ構成だったが、今作ではそれに加え、後の路線のようなポップナンバーやしっとり系のバラードなどより多彩な作風となった印象がある。メロディーやサウンド、ボーカルもそうだが、FLYING KIDSは歌詞も魅力的。今でも通じるような様々なメッセージが込められた詞世界にも耳を傾けて聴くと、より楽しめると思う。

★★★★☆