Time to Destination
Every Little Thing
1998-04-15


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 五十嵐充
6.作詞 持田香織&五十嵐充
11.ストリングスアレンジ Jerremy Labbock
プロデュース        五十嵐充

1.For the moment ★★★★★ 
2.今でも…あなたが好きだから ★★★★☆
3.Face the change《Album Mix》 ★★★★☆
4.Old Dreams《Instrumental》 省略
5.モノクローム ★★★★☆
6.All along ​★★★★☆
7.Hometown ★★★☆☆
8.出逢った頃のように ​★★★★★
9.Shapes Of Love ​★★★★☆
10.True Colors ★★★☆☆
11.Time goes by 《Orchestra Version》 ★★★★★

1998年4月15日発売
2012年3月21日再発(廉価盤)
avex trax
最高位1位 売上352.0万枚

Every Little Thingの2ndアルバム。先行シングル「For the moment」「出逢った頃のように」「Shapes Of Love」「Face the change」「Time goes by」を収録。前作「everlasting」からは1年振りのリリースとなった。

前作「everlasting」リリース後もハイペースで5作のシングルをリリースし、そのどれもヒットしていた。5作の中でも最後にリリースされた「Time goes by」はELTにとって唯一のミリオンを達成することとなった。今作はそのシングル群がバージョン違いも織り交ぜる形で全て収録されており、それが今作の大ヒットの所以と言える。

今作は352.0万枚という記録的なヒットを叩き出した作品である。初動で156万枚を売り上げ、そこからも売れ続けた。以降は何作かに記録を抜かされたが、現在でも歴代アルバム売上11位という位置にいる。


「For the moment」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。森永製菓「ICE BOX」のCMソング、TBS系音楽番組『COUNT DOWN TV』の1997年6月度のエンディングテーマに起用された。初のチャート1位獲得曲。これまでのシングル曲よりも若干テンポを落としたミディアムナンバー。とはいえ、サビはかなりキャッチーで開放感のあるメロディーとなっている。どことなくシリアスながらもポップなシンセの音色と、そのようなメロディーは聴き手の心を掴んで離さない。
歌詞はこれまでの自分を反省し、恋人と仲直りしようとする女性の想いを描いたもの…と解釈している。かなりわがままな女性像が浮かんでくる詞世界なのだが、持田香織の透明感溢れる歌声のおかげでサラっと聴けてしまう。歌声の魅力がよくわかる曲だと思う。


「今でも…あなたが好きだから」は五十嵐充が奥菜恵に提供した曲のカバー。奥菜恵のバージョンはシングル化もされた。どこか哀愁を帯びたミディアムナンバー。それでも、サビは一度聴けばすぐに耳に馴染むようなメロディーが展開されている。作家としても充実していた頃の五十嵐充ならではのメロディーセンスが発揮されている。サウンド面はシンセはもちろんのこと、他の曲よりもギターサウンドが前面に出ている印象。前述した「哀愁」はそれによるところが大きいのかもしれない。
歌詞はタイトルからも察しがつくように、別れた恋人のことを忘れられない女性の心情が描かれている。全体的にもどかしさが伝わってくるような詞世界である。
奥菜恵のバージョンは聴いたことが無いので、機会があれば聴いてみたいと思う。


「Face the change《Album Mix》」は先行シングル曲。トヨタ「HILUX SURF SSR-V」のCMソング、“チャレンジバージョン”という別バージョンがテレビ朝日系番組『27時間テレビ 熱血チャレンジ宣言'97』のオープニングテーマに起用された。
これまでのシングル曲に比べても、ロック色が強めな曲。アグレッシブなシンセやギターサウンドのせいか、PAMELAHの楽曲を彷彿とさせるサウンドとなった。また、ビートやキーボードがシングルバージョンよりも激しさが増している印象がある。サウンド面は変化したが、やはりキャッチーなメロディーは普遍。そこは一貫している。
歌詞は別れた恋人へのメッセージのようになっている。主人公は強気な性格なのだろう。「会えば独占欲から 気持ち押し付けてた いつも強がってたよね」という自分を改めて、「いつか笑顔が君に届くように…」と願う。サウンドや詞世界はどことなくトゲのある感じ。今までのELTには無い要素を持った曲だろう。


「Old Dreams」はインスト曲。バッハの「G線上のアリア」を想起させるメロディーを
オルゴールで奏でている。曲と曲の繋ぎと言うほかない。


「モノクローム」は勢いのあるポップロックナンバー。聴き手の心を思い切り掴んでいくような力強さのあるメロディーが展開されているが、サビはかなりキャッチーな仕上がり。シンセを多用しつつも、ロック色の強い硬質なリズムやサウンドが特徴的。そのようなサウンド面はZARDの「こんなにそばにいるのに」を彷彿とさせる。
歌詞は高校時代の恋を振り返ったもの。主人公とその相手はすぐに別れてしまったのだろうか?月日は経っているのだろうが、未だに相手への想いは募るばかり。何とももどかしさの残る詞世界である。メロディーだけだとシングル曲かと思ってしまうほどだが、アルバム曲。当時のELTの勢いがよくわかる。


「All along」はここまでの流れを落ち着けるようなバラードナンバー。森永製菓「ICE BOX」のCMソングに起用された。全体的に美しさのあるメロディーだが、開放感と温かみを併せ持ったサビのメロディーは出色の出来。80年代後半〜90年代前半のJ-POPを彷彿とさせる、どこかひんやりした雰囲気のあるシンセの音色が前面に出ている。
今作では唯一、持田香織が作詞に関わっている。歌詞は「私」のことを支えてくれる人たちへの感謝が綴られたもの。「忙しさ 身を任せ 目の前も見えないね 少し力を抜いて歩いてゆこう」という歌詞が特に印象に残っている。本人も作詞に関わったからか、他の曲よりもさらに、歌詞の一言一言を大切に歌っている印象がある。アルバム曲なので今作だとどうにも地味になってしまいがちなのだが、その中でも好きな曲。


「Hometown」は前の曲の流れを継いだミディアムナンバー。どこか懐かしさを感じるメロディーが展開されているのが特徴。サビも落ち着いた仕上がりで、聴き心地の良いメロディーとなった。他の曲よりもさらに柔らかく、優しい音色のシンセが前面に出ている。
歌詞は高校を卒業した女性が主人公だと思っている。その友人へのメッセージのような詞世界。「人は皆 変わるというけれど そんなことないよね?」という歌詞が印象的。恐らく、就職や進学で離れ離れになってしまうのだろう。当時の持田香織としても、ある程度共感できる詞世界だったのではと思う。
今作の中でもそれほど目立つような曲ではないが、そのような詞世界から、卒業ソングとしても通用するだろう。


「出逢った頃のように」は先行シングル曲。森永製菓「ICE BOX」のCMソングに起用された。爽やかさ溢れるポップナンバー。この曲までのシングルはどれも爽やかさがあったが、その中でも群を抜いている印象。いきなりサビから始まる構成はインパクト抜群。開放感に満ちたキャッチーなメロディーや、夏の陽のようにキラキラした音色のシンセは絶品。90年代後半のJ-POPの象徴と言えるサウンドである。
歌詞は女性の純粋な恋心や、恋人へのメッセージが綴られたもの。恐らく歌詞の中のカップルは付き合ってからしばらく経っているのだろう。だからこそ「出逢った頃のように いつまでもいたいね ときめき大事にして」と願う。
極私的な話になるが、小さい頃に母親の車の中で流れていた曲というイメージが強く、自分にとってはスピッツの「ロビンソン」と並んでJ-POPの原体験のような存在でもある。恐らく「Every Best Single+3」を通して聴いていたのだと思うが、この曲はその中でも「Dear My Friend」「Time goes by」と並んで印象に残っている。


「Shapes Of Love」は先行シングル曲。テレビ朝日系ドラマ『研修医なな子』の主題歌に起用された。次のシングル「Face the change」程ではないが、そこそこロック色の強いポップナンバー。ギターサウンドもかなり主張している。スポーツの入場テーマのようなイントロは中々にインパクトがある。サビでの派手なオケヒはいかにも90年代と言ったところ。全体的に力強く、耳に馴染みやすいメロディーとなっている。そこはやはりシングル曲の風格というものか。
歌詞は片想いしている女性の想いが綴られたもの。相手の関係をどんどん発展させようとする、前向きな姿勢が見える詞世界となっている。曲調やサウンドと歌詞がぴったり合っている印象。また、可愛らしさと力強さの両方を感じさせる持田香織の歌声も素晴らしい。この曲の世界観を見事に表現している。


「True colors」は重厚感のあるミディアムナンバー。他の曲と比べてもヘビーなギターサウンドが鳴り響いており、ロック色の強めなサウンドとなっている。シンセはあまり主張していないのだが、それだけでサウンドはかなり変わってくるものだ。メロディーに関しても、他の曲のような軽快さはあまり感じられず、どこか陰のあるメロディーが展開されている。
歌詞は好きな人に振り回され、不信感を持っている女性が主人公。他の曲では強がっている女性像が描かれているが、この曲では「今日の私あなたが思うほど強くない…」と弱音を吐く。メロディーやサウンドはもちろんのこと、詞世界についてもかなり異彩を放っていると思う。


「Time goes by《Orchestra Version》」は先行シングル曲。フジテレビ系ドラマ『甘い結婚』の主題歌、トヨタ「HILUX SURF SSR-V」CMソングに起用された。近年でもソフトバンクのCMソングに起用されたり、音楽番組で度々披露されたりとELTの代表曲と言えるポジションにある。
ELTのシングルとしては初のバラードで、まさに勝負作という趣のある曲。タイトル通りストリングスが入って、シングルバージョンよりも厳かな雰囲気のあるアレンジ。ただ、曲の全編に渡ってストリングスが主役になっているかと言われるとそうでもない。どうせやるなら思い切りストリングスをフィーチャーすればよかったと思うが…ただ、訴求力に満ちた美しいメロディーの魅力は一切変わらない。やはり最大ヒット作になったのも頷ける「強さ」がある。
歌詞は上手く行かずに別れてしまったカップルを描いたものだと思っている。喪失感や後悔が伝わってくる、聴いているだけでも胸の痛くなるような詞世界。
散々耳にしてきたので飽きたつもりだったが、やはり聴けば引き込まれてしまう。これぞ代表曲と言ったところ。名バラード。


大ヒット作なので中古屋ではよく見かける。シングルが次々とヒットした影響を受けてか、全編通してポップな作風となっている。恐らく、リリース当時としては半ベスト盤的な扱いをされており、それが352.0万枚という大ヒットに繋がったのではと思う。そのため、シングル目当てならベスト盤を聴けば事足りてしまうわけで、今になって聴くとヒットしたなりの凄さはあまり感じられないと思う。
ただ、当時のELTの勢いの凄まじさは今作で聴いた方がよくわかる。それに押されて、最初から最後まですぐに聴けてしまうだろう。90年代後半という時期にしか生み出せなかった、その時期特有のポップスの数々を楽しめる作品だと思う。

★★★★☆