テリー&フランシスコ
Terry&Francisco
2006-07-05


【収録曲】
全曲作詞 テリー福山
全曲作曲 Terry&Francisco 
全曲編曲 フランシスコ松浦
プロデュース Terry&Francisco 

1.ためいきの銀河 ★★★★★
2.サマークラシック ★★★★★
3.青いペガサス ​★★★★★
4.乱気流 ★★★★☆
5.熱をもつ夢 ★★★☆☆
6.嵐のあとで ​★★★☆☆
7.まだ見ぬ町へ ​★★★☆☆

2006年7月5日発売
最高位280位 売上不明

Terry&Franciscoの1stミニアルバム。先行シングル「青いペガサス/ためいきの銀河」を収録。

Terry&Franciscoは2006年にメジャーデビューした男性2人組ユニット。活動自体はそれよりも前からインディーズで行っていたようだ。ボーカルのテリー福山、ベース・キーボード・コーラスのフランシスコ松浦から成る。2作のシングルと2作のミニアルバムをリリースし、活動を終えた。

Terry&Franciscoは上質で爽やかなポップスを得意としていた。70年代のウエストコーストロック、シティポップ・AORなどの要素を取り入れたメロディーやサウンドはどこか懐かしく、心地良い。今作でもその魅力が遺憾無く発揮されている。


「ためいきの銀河」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。「青いペガサス」とは両A面シングルだった。韓国映画『青春漫画~僕らの恋愛シナリオ~』の日本版テーマソングに起用された。清涼感に溢れたミディアムナンバー。温かみのあるメロディーながらも、サビはしっかりとキャッチーな仕上がり。ピアノを前面に押し出した、シンプルかつ聴き心地の良いサウンドはメロディーの魅力を引き立てる。
歌詞は片想いしている男性の心情を描いたものだと思っている。日本語の響きを大切にした歌詞になっていると思う。松本隆のそれを彷彿とさせる。テリー福山の繊細さを感じさせる美声がそのような詞世界によく合う。
デビュー曲ならではの「青さ」と、ベテランのような円熟味との両方を持った名曲。


「サマークラシック」は美しいメロディーが冴え渡るポップナンバー。美しく聴き心地の良いメロディーは彼らにとって当たり前ではないかと思ってしまうほど。そして、サビは一度聴いただけでも心を掴まれるような仕上がり。全編を通して展開されている、弾むようなリズムも聴き手に高揚感を与えてくれる。間奏ではサックスソロも用意されており、曲をさらに上質なものにしている。
歌詞は一夏の恋の思い出を切り取ったようなイメージ。幸せそうな二人の光景が浮かぶ描写もあるが、それらは全て過去形となっているのが何とも切ない。テリー福山の叙情的な歌声がこの曲でも映える。往年のシティポップの名曲のような懐かしさも、現代のポップスとしての要素もある。


「青いペガサス」は先行シングル曲。「ためいきの銀河」とは両A面シングルだった。涼しげな雰囲気に溢れたポップナンバー。「ためいきの銀河」はメロウな方に振り切った印象があるが、こちらはポップかつ上質な曲となっている。耳に何らの違和感無く入ってきて、そのまま聴けてしまうメロディーがたまらない。聴き流すのがとにかく気持ち良いメロディーと言ったところ。サックスや佐藤博によるピアノ・エレピをフィーチャーしたサウンドは絶品。要所はギターソロが力強く締める。
メロディーやサウンドに反して、歌詞はかなり切ないもの。自分ではない別の誰かと幸せになろうとしている「あなた」への想いが綴られている。「僕はきみを愛してた」という一言が突き刺さる。
メロディーやサウンドと歌詞のギャップが好き。今作の収録曲の中でも特に好きな方に入ってくる。


「乱気流」はここまでの流れを継いでのミディアムナンバー。都会的な空気を持ったメロディーが展開されている。一度聴けばしっかり馴染むサビは職人技。シンプルなバンドサウンドに加えて、ストリングスやフルートが前面に出たサウンドとなっており、それらはメロディーやボーカルを包み込むような感覚がある。それらの音が他の音をかき消すわけではなく、あくまで共存している。アレンジャーとしてのフランシスコ松浦の優れたバランス感覚がわかる。
歌詞は初夏の光景が浮かんでくるようなもの。「くわえ煙草」「紙吹雪」「ボンネット」「ブラックコーヒー」など固有名詞が多数使われているのが特徴で、それがより鮮やかな情景を作り出しているように感じる。
「海岸線をドライブしたくなるような…」と帯文に書かれていたが、この曲が最もそれに当てはまっていると思う。


「熱をもつ夢」はこれまでの流れをぐっと落ち着けるバラードナンバー。切なく、どことなく懐かしい雰囲気を持ったメロディーが展開されている。アコギが前面に出た叙情的なサウンドはメロディーの味わい深さを引き出す役割を果たしている。要所ではストリングスが入って、さらに流麗なサウンドにしてくれる。
歌詞は片想いしている男性の心情が描かれたものだと解釈している。まるで少年のように純粋な恋心が綴られているのが特徴。主人公の心を「一人よがりなぼくのあこがれ」と切り捨てているのが特に切ない。聴いているうちに、主人公のことを応援してしまうことだろう。派手に盛り上がらないメロディーやサウンドも一体となって、詞世界のもどかしさを演出している感覚がある。


「嵐のあとで」は前の曲と比べて少しだけ盛り上がりのあるミディアムナンバー。とはいえ、前半の曲に比べるとかなりしっとりした曲である。甘く切ない味わいを持ったメロディーは思わず引き込まれてしまうこと請け合い。サビになってもその魅力は変わらない。サウンド面ではシンプルなバンドサウンドが主体となっている。こうしたメロディーには余計な味付けはいらない。そう思わせてくれるサウンドだ。
歌詞のシチュエーションは「青いペガサス」にどことなく似ている。「さよなら」としっかりと言えないまま、どこかへ旅立とうとしている「きみ」への想いが綴られたもの。「夏」のフレーズが登場するのだが、いつも春を思い浮かべて聴いてしまう。新しい環境に変わっていくことの切なさや虚しさを感じさせる詞世界。この手の詞世界にテリー福山の繊細な歌声がよく似合う。


「まだ見ぬ町へ」は今作のラストを飾る曲。「熱をもつ夢」ほどではないが、かなり落ち着いた雰囲気を持ったバラードナンバー。温かみを感じさせるメロディーが耳に優しい。聴いていると不思議と安心するメロディーである。アコギがメインとなった、シンプルでエバーグリーンな魅力を持ったサウンドとの相性はぴったり。
歌詞は前の曲からの続きだと思っている。「今日」を「町」に例えた、希望や期待感を持った詞世界。「通り過ぎたさよならをまた見送って僕は行くよ」というラスサビの歌詞は他の曲にも増して力強いものだと思う。旅を経てぐっと成長したようなイメージ。
この曲を聴き終える頃には、また最初から聴きたくなっているはず。何度だって味わいたい曲ばかりだから。


あまり売れた作品ではないので、中古屋では滅多に見かけない。ただ、名前をほとんど知られないまま埋もれるには惜しすぎる。
清涼感があって、洗練されたポップスの数々はどれだけ年月が経っても変わらない魅力を放ち続けると思う。リアルタイムで曲を聴いてきたわけでもないのに「懐かしい」と感じてしまう。かといって「古臭い」とは決して感じない。聴いていると、優しく涼しい風が吹いてくるような感覚がある作品だ。夏を舞台とした曲も多く、夏を過ごすお供にはこれ以上無いほどうってつけである。

「シティポップ」「リゾートミュージック」「ウエストコーストロック」といったフレーズに魅かれた方、「はっぴいえんど」「大滝詠一」「山下達郎」「伊藤銀次」「キリンジ」「MAMALAID RAG」といった名前にピンときた方は是非ともTerry&Franciscoの音楽を聴いてほしい。きっとハマるだろう。

★★★★★