PURE
佐々木ゆう子
1999-03-17


【収録曲】
1.作詞 前田たかひろ
2.10.作詞 山本英美
3.作詞 佐々木ゆう子・山本英美
4.作詞 山本成美
5.作詞 木根尚登
6.作詞 佐々木ゆう子
7.作詞 緒田茉莉
8.作詞 まこと
9.作詞 田中花乃
全曲作曲 木根尚登
1.8.作曲 生方信堂
9.作曲 田中花乃
1.8.編曲 湯浅公一・生方信堂
2.7.9.編曲 藤田宜久
3.4.5.6.編曲 西脇辰弥
10.編曲 湯浅公一
2.ストリングスアレンジ 西脇辰弥
9.コーラスアレンジ 田中花乃
プロデュース 木根尚登

1.akaikutsu ​★★★☆☆
2.GRADUATION ★★★★☆
3.PURE SNOW ​★★★★★
4.雨音を聴きながら ★★★☆☆
5.桜のトンネル ​★★★★☆
6.風にのって… ★★★☆☆ 
7.Dear ★★★☆☆
8.Call「177」 ★★★★★
9.Love in the cradle ★★☆☆☆
10.GO ALONG WAY AROUND ​★★★★★

1999年3月17日発売
パイオニアLDC
最高位不明 売上不明

佐々木ゆう子の2ndアルバム。先行シングル「PURE SNOW」を収録。今作と同日にシングル「GRADUATION」がリリースされた。前作「”give me a five”」からは約1年振りのリリースとなった。初回盤はスリーブケース入り仕様。

佐々木ゆう子は1997年にデビューした女性歌手。テレ東系番組『ASAYAN』のオーディション企画「コムロギャルソン」をきっかけにデビューした。ただ、小室哲哉は佐々木を採用せず。パイオニアLDCの山里剛(CHAGE and ASKAのプロデューサーとして知られる)が亜波根綾乃と共に佐々木を獲得し、プロデュースを手掛けた。前作「”give me a five”」は山里剛が関わっている。
2000年には女性2人組ユニットPlum Planetsとしてデビューし、2003年に解散。2006年にソロ活動を再開し、その翌年に結婚。2016年に第一子を出産したため、現在は母親に徹するために音楽活動を休止しているようだ。

今作のプロデュースは木根尚登が手掛けた。山本英美、生方信堂などその関連と思われるミュージシャンが参加しているのが特徴。木根尚登特有の美しく温かみのあるメロディーが冴え渡る曲ばかり。


「akaikutsu」は今作のオープニング曲。跳ね上がるようなメロディーが心地良いポップナンバー。特にサビのメロディーがたまらない。キーボードとストリングスが主体になった美しいサウンドに加え、力強いギターサウンドも前面に出て曲を盛り上げている。そのギターサウンドの影響か、ロック色もある程度感じられる。
歌詞はタイトル通り赤い靴がキーアイテムとして登場する。歌詞全体としては今の恋人に出逢って今までとは違う心情になった女性が描かれている。「赤い靴を履いてた女の子」はそれを履いていた少女時代の主人公のことだと解釈している。喜びを噛みしめるような、佐々木ゆう子の可愛らしい歌声がこの曲にはよく映える。派手に盛り上がるような曲ではないものの、オープニングを飾るだけのポップ性を持った曲だと思う。


「GRADUATION」は今作と同日にリリースされたシングル曲。これまでには無かった激しさを感じさせるバラードナンバー。心にグサグサと突き刺さるような切なさを持ちつつ、確かなキャッチーさを持ったメロディーが展開されている。キーボードや打ち込み音が前面に出ているが、随所でストリングスも入って盛り上がる。単純なキーボードのリフが曲にインパクトを与えている印象。
タイトルだけ見ると卒業ソングなのだが、実際のところは別れを描いた曲。恋人との別れを卒業に例えて描いた形となっており、一人での新たなスタートを切ろうとしている姿が印象的。
1stアルバムに収録されたシングル曲に比べると、作風がかなり変わっているのがよくわかる。佐々木の新たな魅力を見つけた感覚になる。


「PURE SNOW」は先行シングル曲。アニメ『火魅子伝』のオープニングテーマに起用された。壮大なバラードナンバー。木根尚登による心に沁みるメロディーが終始展開されており、中でも広がりに満ちたサビのメロディーが素晴らしい。聴く度に鳥肌が立ってしまう。唐突に転調したりサビに入ったりと意表を突いた曲の構成が見事。サウンド面は打ち込み音とピアノ、ストリングスが主体となっており、メロディーの強さをさらに引き出すようなアレンジである。
歌詞は冬の日を舞台に、友達の彼氏を好きになってしまった少女の心情が綴られたもの。諦めようにも諦められない、叶えようとしても叶えられない。そうしたもどかしさや苦しみが伝わってくる繊細な心理描写がされている。あどけなさと力強さの両方が感じられる、佐々木ゆう子のどこか不安定な歌声がこの曲の切なさを何よりも表現している。
佐々木ゆう子にとってはもちろん、「キネバラ」と称される数々の名バラードを生み出してきた木根尚登にとっても一世一代の名バラードだろう。


「雨音を聴きながら」はシングル「GRADUATION」のC/W曲。しっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。繊細さを感じさせるメロディーはとても美しい。音の数はかなり少なく、儚ささえ感じられるような佐々木ゆう子の歌声を際立たせるアレンジとなっている。アコギやシンセによるストリングスが主体となった、シンプルで温かみのあるサウンドが展開されている。
歌詞は男目線で書かれている。どのような状況が描かれているのかわかりにくいものの、雨が降る日が舞台なのははっきりわかる。恋人と一緒に寝ていて、主人公だけが起きた…という状況を思い浮かべながら聴いているが、実際のところはどうだろうか。
地味ながら心に沁みるメロディーはいかにも木根尚登らしさを感じる。C/W曲ならではの佇まいを持った曲と言える。


「桜のトンネル」はここまでの流れを変えるような、温かみのあるポップナンバー。キャッチーさと美しさを兼ね備えたサビのメロディーは絶品。この曲までは打ち込みが目立つ曲が多かったが、この曲はシンプルなバンドサウンドが中心となったアレンジである。ドラムが生になっただけでもだいぶ印象が変わる。
歌詞は高校時代に好きだった人のことを思い出したものだと思っている。その相手との幸せな記憶を蘇らせながらも「思い出に恋なんかしたくはないから」と再会することを願う。明るいとも切ないとも捉えられる、味わい深い詞世界だと思う。この曲は作詞も木根尚登が担当しており、メロディーのみならず歌詞からも木根特有の哀愁が満ちている。それを見事に表現する佐々木ゆう子のボーカルもまた素晴らしい。


「風にのって…」は爽快感のあるポップナンバー。サビまでは淡々と進むが、サビはかなりキャッチーな仕上がり。ピアノが主体となったサウンドは軽快そのもので、聴いているこちらも楽しくなるようなサウンドとなっている。それでもどこかスリリングな感じもするのは何故だろう。
作詞は佐々木ゆう子が単独で行った。何か新しいことをすると決意した時の心情が描かれたものだと思うが、全編を通して開放感のある詞世界となっている。今までの自分を変えようとする自らを励ましたものとも捉えられる。
この曲については、メロディー以上にサウンドが印象に残っている。駆け回っているようなイメージのピアノの演奏の影響だろう。


「Dear」はここまでの流れを落ち着けるミディアムナンバー。派手に盛り上がるわけではないが、違和感無く耳に入ってきてすぐに馴染むメロディーが見事。サウンドはキーボードや打ち込み音が前面に出たもので、少々無機質な仕上がりになっている。間奏ではサックスが入り、その音色で曲に彩りを添えてくれる。
歌詞は遠距離恋愛をしている恋人へのメッセージのようになっている。進学先が違って離れ離れになったのだろう。この手の曲は「淋しい」という感情を前に出した歌詞が多いと思っているのだが、この曲はあくまで一人でも楽しい日々を過ごしている様が描かれている印象がある。そのためか、悲壮感や切なさはほとんど感じられない。そうしたバランス感覚が絶妙だと思う。


『Call「177」』は上品さのあるポップナンバー。一度聴けばしっかりと馴染む親しみやすさに加え、聴き惚れてしまうほどの美しさも持ったメロディーが素晴らしい。ストリングスやギターが前面に出たサウンドがこの曲の「上品さ」を形作っている。
歌詞はタイトルからも察しがつくように、天気予報がキーワードとなっている。フラれてしまった主人公が男友達を呼び出して出掛けようとする様子が描かれている。国道沿いのファミレスで二人で色々話している姿が浮かんでくる。二人の人物像さえ想像できるような、丁寧な描写が見事。
今まで生方信堂の名前を知らなかったのだが、この曲を聴いただけでも優れたメロディーメーカーであることがわかる。今作のアルバム曲の中でも特に好きな方に入ってくる。


「Love in the cradle」はしっとりとした曲調で聴かせるバラードナンバー。サビまでは淡々と進んでいくが、サビはかなりキャッチーにまとめられている。ほぼ全てがキーボードや打ち込みで構成された、どこかひんやりしたイメージのサウンドとメロディーは不思議とよく合っている。必要最低限の音しか鳴らされていない感じがするが、この曲にはそれが一番のアレンジだと思う。
歌詞は恋人に2週間ぶりに会う時の様子や心情が描かれたもの。恋人に久し振りに会えることへの喜びも感じられるが、別れの不穏な気配も感じられる詞世界となっている。会ってからの二人はどのようなことを話すのだろう。その後が気になる歌詞である。
この曲だけ違った作家が作詞作曲を担当しているか、今作の中でも異彩を放っている印象。


「GO A LONG WAY AROUND」は今作のラストを飾る曲。壮大なバラードナンバー。どこまでも広がっていくようなサビのメロディーがたまらない。力強く渋いイメージのギターサウンドと、透明感のあるシンセの絡みが心地良い。そうしたサウンドは曲にポップな味付けをする役割を果たしており、ただ重いだけの曲にはなっていない。
歌詞はメッセージ性の強いもの。運命の相手に出逢うことを信じる女性が描かれている。「少しくらい 人をうらやむ時も せっかちな日々が 押し寄せても 下を向いて生きたくない」という歌詞が特に好き。訴求力に満ちたメロディーやボーカルも相まって、なおさら歌詞が響く。
様々な要素を鑑みても、ラストにふさわしい存在感を持った曲だと思う。


あまり売れた作品ではないため、中古屋では滅多に見かけない。ただ、このまま埋もれてしまうには惜しい。
1999年のリリースなので、80年代後半〜90年代中頃にかけてひっそりと盛り上がったガールポップも終焉を迎えた頃。ただ、前作「”give me a five”」および今作はそのジャンルにおける名盤の一つと言っていいと思う。透明感に満ちた可愛らしい歌声、親しみやすく美しいメロディー、その魅力を引き出すようなアレンジ、ストーリー性のある詞世界を堪能できる。
前作「”give me a five”」はアイドル的な要素を前面に押し出した作品で、今作はシンガーとしての佐々木ゆう子の魅力を出した作品である。どちらの方が好きかと問われたら回答に困ってしまう。
幸いなことに楽曲は動画サイトに多く上がっている。それらを聴いて少しでも歌声が気に入ったら、是非とも聴いていただきたい。

★★★★★