PINK
1994-04-25


【収録曲】
1.8.9.作詞 福岡ユタカ
3.10.作詞 吉田美奈子
4.6.7.作詞 安藤芳彦
5.作詞 渋谷ヒデヒロ
全曲作曲 福岡ユタカ
2.作曲 福岡ユタカ・矢壁アツノブ
7.作曲 PINK
全曲編曲 PINK
プロデュース PINK

1.光の子 ★★★★★
2.SHISUNO 省略
3.日蝕譚-SOLAR ECLIPSE- ★★★☆☆
4.HIDING FACE ​★★★★☆
5.GOLD ANGEL ★★★★☆
6.DON’T STOP PASSENGERS ★★★★★
7.ISOLATED RUNNER ​★★★☆☆
8.青い羊の夢 ★★★★☆
9.星のPICNIC ★★★☆☆
10.LUCCIA ★★☆☆☆

1986年2月25日発売(CD・LP)
1994年4月25日再発
MOON RECORDS
east west japan
最高位不明 売上不明

PINKの2ndアルバム。先行シングル「DON’T STOP PASSENGERS」を収録。今作発売後に「光の子」のリミックスバージョンが12インチシングルとしてシングルカットされた。前作「PINK」からは9ヶ月振りのリリースとなった。

PINKは1985年にデビューした6人組バンド(今作リリース当時)。ボーカルでリーダーの福岡ユタカ、ベースの岡野ハジメ、ドラムの矢壁アツノブ、キーボードのホッピー神山、ギターの渋谷ヒデヒロ、パーカッションのスティーブ衛藤から成る。
メンバー全員が結成時点でスタジオミュージシャンや他のアーティストのバックバンドとして経験を積んでおり、卓越した演奏技術と強烈な個性を持ち合わせていた。当初は福岡ユタカのワンマンバンドに近い形だったが、強烈な個性が故に1987年リリースの「CYBER」からは岡野ハジメやホッピー神山の主張が強くなり、最終的にはソロ作品の集合体のようなアルバム「RED&BLUE」(1989年)をリリース。同年にバンドとしての活動を「凍結」することとなる。

PINKは「無国籍サウンド」と形容される、多彩なジャンルを取り入れた楽曲を展開していたバンドである。その音楽性の原点はメンバー個々の幅広い音楽の嗜好にある。
PINKの楽曲の大きな魅力はサウンド面と言える。普通のバンドとは異なり、ギターが後ろに引っ込んでサウンドを支えているというのが特徴。「変態的」というフレーズが似合うベースや、ワンフレーズで曲を彩るキーボードが前面に出て、タイトかつパワフルなドラムと野生的なパーカッションがサウンドの基礎を築く。そして、福岡ユタカの「雄叫び」のような凄まじいボーカルがバンドサウンドを包み込み、従える。


「光の子」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。民族音楽のテイストを感じさせるファンクナンバー。良い意味で「ごちゃごちゃ」した演奏の数々はPINKならでは。ガムランの要素を取り入れたギミックが用意されており、それとファンクビートとの絡みはとても日本の音楽とは思えないほど。
歌詞は語感を重視した感じ。特にサビは福岡ユタカによる造語で構成されており、福岡独特の歌声も相まってファンキーそのもの。メロディー自体はさほどキャッチーではないが、そのボーカルによって相当に耳に残る仕上がりとなっている。
「無国籍サウンド」というPINKの代名詞の通りの曲であり、オープニングから聴き手をワクワクさせてくれる。


「SHISUNO」はスキャットで構成された曲。前の曲からはそのまま繋がって始まる。「光の子」をさらにエスニック風味にしたイメージの曲となっている。この曲ではパーカッションが特に目立つ。異国情緒溢れる音色とボーカルに引き込まれるばかり。


「日蝕譚-SOLAR ECLIPSE-」は幻想的な雰囲気のあるミディアムナンバー。どこか陰のある美しいメロディーはこの頃の福岡ユタカ特有の持ち味であり、それが発揮されている。パワフルなリズムと変幻自在のキーボードの絡みがこの曲の聴きどころ。他の曲にも増して「変態的」なベースラインも素晴らしい。ついついそちらを追いながら聴いてしまうほど。
作詞は吉田美奈子が担当した。今作以降もPINKの一部の楽曲の作詞を手がけている。タイトルの日蝕を想起させるフレーズは無いものの、全体を通してロマンティックかつスケールの大きな詞世界である。
「光の子」とは路線が異なるが、こちらもまた無国籍な感覚を持った曲である。


「HIDING FACE」はトリッキーな演奏がたまらないミディアムナンバー。派手に盛り上がるような曲調ではないが、サビはボーカルも相まってかなり耳に残る仕上がり。ベースやキーボードはもちろんのこと、この曲ではギターが印象深い。ゲスト参加したRAによる、唸りをあげるようなギターサウンドが冴え渡っている。
歌詞はよく意味がわからない。「銃声」「”Don’t hit me!”」「引き金」など、どことなく不穏なイメージが多く出てくるのが特徴。ただ、サビの「Woman woman」と繰り返し歌われる部分のインパクトがかなり強い。サビが耳に残る理由と言っていいほど。
今作の中では比較的地味な曲だが、演奏の聴きごたえがクセになって好きな曲。


「GOLD ANGEL」は爽快なポップロックナンバー。英語詞が多用されたサビはかなりキャッチーで、一度聴けば口ずさめそうなほど。サウンド面はあまりにもPINKらしくて語りにくいものの、独特な音作りによるストリングスがフィーチャーされているのが特徴と言える。
渋谷ヒデヒロが作詞を手がけた数少ない曲。他のPINKの楽曲の作詞を手がける人物と同じく、シュールで難解な詞世界となっている。奇妙な夢を見ているような感覚にさせられる詞世界である。
今作の中ではメロディーを始めとして比較的王道寄りなイメージのある曲で、あまり取り上げられることは無いがそれなりに好き。


「DON’T STOP PASSENGERS」は先行シングル曲。疾走感溢れるポップロックナンバー。サビが何度も繰り返されるので、キャッチーそのもの。うねうねしたベースラインがたまらなく格好良い。オケヒのようなシンセ音が多用されているのも特徴で、曲の勢いの良さを引き立てる要素となっている。
歌詞は旅そのものや旅人をイメージさせるもの。「消えた路地裏の 仮面のヒーローは すり傷と落書きで 世界を奪えたのに」という歌詞がどことなく切なくて好き。小さい頃の記憶を蘇らせてくれるようなフレーズだと思う。
今となってはこの曲以上に好きな曲があるが、PINKを知ってハマるきっかけになった曲なので思い入れが深い。


「ISOLATED RUNNER」はここまでの流れを継いでのポップロックナンバー。バンド名義で作曲された数少ない曲。サビは何度もリフレインするため、聴き終える頃にはすっかり耳を離れなくなっていることだろう。バンドサウンドの中でも、跳ねるように乱れ飛ぶベースがこの曲の疾走感を演出している。
歌詞はタイトルからも想像できるように、孤独なランナーを思わせるもの。「終りのない restless race 相手のない いらだたしさ」という歌詞が顕著。自分との戦いを描いたものなのだろうか。
曲を追うごとにどんどん盛り上がっていく構成がたまらない。


「青い羊の夢」は高揚感溢れるロックナンバー。「Oh oh oh…」と繰り返す部分も含め、キャッチーそのものなメロディーが展開されている。他の曲は情報量の多いサウンドが展開されているが、この曲は比較的少なめですっきり整理されたサウンド。
歌詞はこれまたシュールなもの。何より凄まじいインパクトを放っているのが「それがわししつかんだ 青い羊の夢」というサビのフレーズ。「わしつかんだ」(鷲掴みした)ではなく「わししつかんだ」である。あまりにもぶっ飛んだ字余り振りがクセになる。
YouTubeには逆井オサムがギターを担当したライブバージョンの映像があり、そちらも非常に格好良い。スタジオ音源と聴き比べると楽しいと思う。


「星のPICNIC」は幻想的な雰囲気を持ったバラードナンバー。サビでもさほど盛り上がるような曲ではないが、この曲にはそれが合う。サウンド面ではメロトロンのような音が前面に出ており、それがこの曲の持つ浮遊感を演出していると思う。透明感のあるギターサウンドも心地良い。
歌詞はタイトル通り、夜や星を思わせるもの。「いつの間に僕はここにいて 君と一緒に歌った」という歌い出しからして、ロマンティックな詞世界である。
この曲も「GOLD ANGEL」と同じく王道寄りな印象がある。今作の中では地味ではあるが、一曲単位では好き。


「LUCCIA」は今作のラストを飾る曲。リミックスバージョンが12インチシングル「光の子」のB面曲としてシングルカットされた。しっとりとしたバラードナンバー。叙情的なメロディーは聴いていてとても心地良い。音の数がとても少ないため、福岡ユタカのボーカルが際立つ。アコギが主体のシンプルなサウンドはメロディーの美しさを引き立てている。
歌詞は「LUCCIA」という女性に語りかけているような感じ。気高い存在をイメージしながら聴いているが、実際のところはどのような存在なのだろうか。
今作の中では特に落ち着いた曲であり、ラストはこの曲以外務まらないだろうと思う。


中古屋ではあまり見かけない上に、かなりの高値で出回っていると思われる。
作風は前作「PINK」と変わらない。無国籍ファンク路線の曲と叙情的なミディアムナンバーとがバランス良く並んでおり、彼らの音楽性の幅広さを実感できる作風。
演奏に関しての言及がどうしても多くなってしまうのだが、福岡ユタカによるボーカルやメロディーの数々も味わい深く、歌モノとしても完成度の高い作品であることは事実。この頃のPINKが充実していたことがよくわかる名盤だと思う。

★★★★★