A Groovy Kind of Love
paris blue
1993-07-21


【収録曲】
全曲作詞 谷口實希
1.9.作詞 谷口實希・日比野信午
4.作詞 日比野信午
全曲作曲 日比野信午
全曲編曲 岡本洋・日比野信午
プロデュース 多田勉

1.雨が降る ​★★★★★
2.まさか そんな だって だけど ​★★★☆☆
3.GONE WITH THE WIND ★★★☆☆
4.一緒に暮らそう ★★★☆☆ 
5.あなたがいない ★★★★★
6.OH! MY GOD!! ★★★☆☆
7.いつだってもっと ​★★★☆☆
8.真冬の夢 ​★★★★☆
9.なぜ ★★★★★
10.それでいいの ★★★☆☆

1993年7月21日発売
BMGビクター
最高位不明 売上不明

Paris Blueの2ndアルバム。先行シングル「雨が降る」を収録。前作「SING A SIMPLE SONG」からは約7ヶ月振りのリリースとなった。

Paris Blueは1992年にデビューし、1996年に活動を休止した2人組ユニット。ボーカル・作詞の谷口實希、コーラス・作曲・編曲の日比野信午から成る。日比野信午はたまにサックスも演奏する。ユニット名の表記に関しては「PARIS BLUE」「paris blue」「パリスブルー」と様々な表記があるが、当ブログでは「Paris Blue」で統一する。
Paris Blueの活動休止後、谷口實希は谷口美紀名義でソロデビューしてシングルを1枚リリースしたが、その後は行方知れず。日比野信午は作曲家や編曲家として活動しているが、体調のせいか精力的な活動ができているとは言えない状態。

Paris Blueは「新時代のアコースティックサウンド」を標榜し、フレンチポップやシティポップ・AORを取り入れたお洒落なポップスを得意としたユニットである。谷口實希の甘く可愛らしい歌声と、日比野信午のハイトーンボイスを生かした透明感のあるコーラスワークが魅力的。

Paris Blueのアルバムは曲名から取られていることが多いが、今作はThe Mindbendersの同名のヒット曲から取られている。「恋はごきげん」というサブタイトルも、この曲の邦題をそのまま使ったもの。


「雨が降る」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。気だるい雰囲気を感じさせるミディアムナンバー。イントロのシンセからして名曲を予感させるが、サビまでたどり着く頃にはその予感が正しかったことがわかる。甘く美しいメロディーが聴いていてたまらなく心地良い。サビでの日比野信午によるコーラスは曲の美しさをさらに引き出している。
歌詞は雨の日を舞台に、恋人と別れた女性の心情が綴られたもの。もう恋人との関係は戻らない。そうした切ない詞世界と谷口實希の歌声の相性はぴったり。
Paris Blueの曲の中でも特に好きな方に入ってくる。90年代ガールポップにおける傑作の一つと言っていいと思う。


「まさか そんな だって だけど」は上品な雰囲気漂うミディアムナンバー。大きく盛り上がるような曲調ではないが、サビはタイトルのフレーズを畳み掛けているためかなり耳に残る仕上がり。少々チープなシンセが主体となったサウンドは不思議と懐かしさがある。
歌詞は恋人に不意打ちで海に連れて行かれることになった女性を描いたもの。戸惑いつつも喜んでいるのが伝わってくる詞世界がとても可愛らしい。つくづく思うが、谷口實希は自らの歌声とそのイメージに合った歌詞を書くのが上手い。
そうしたことから、谷口實希の作詞家としての上手さがわかる曲という印象がある。


「GONE WITH THE WIND」は前の曲からの流れを継いでのミディアムナンバー。サビでもそこまで盛り上がらないが、この曲についてはそれがよく合う。ピアノやシンセが前面に出たカラフルなサウンドはボーカルの魅力をさらに高めている。日比野信午による、他の曲と比べても色気を増した印象のコーラスがこの曲の聴きどころ。
歌詞は別れた恋人との思い出を忘れられずにいる女性の心情が描かれている。「信じてると一言だけ 言えないままさよならした」というサビ頭の歌詞が何とも切ない。
少し間違えたら地味になりかねない曲だが、それでもしっかりと聴けるところが見事。


「一緒に暮らそう」はしっとりとしたバラードナンバー。甘く優しいメロディーには聴き惚れるばかり。アコギとシンセが前面に出たサウンドは聴き流すのがとても心地良い。メンバー構成の割にデュエット曲が少ないParis Blueだが、この曲が数少ないデュエット曲。恐らくこの曲のみ。
作詞は日比野信午が単独で担当した。タイトル通りの内容。不動産屋に二人で行って部屋を探そうと提案するもの。日常を描いた歌詞が微笑ましい。
他のアーティストの作品の記事でも述べたが、この頃のガールポップ作品にはこの手のタイトルの曲が多い。何故だろう。


「あなたがいない」はAOR色の強いミディアムナンバー。全体を通してメロウな曲調ながら、サビはしっかりとキャッチーに仕上げてくるのが見事。今作の中では数少ない、生音が主体となった曲。キレの良いギターのカッティングを始めとして、聴きごたえのある演奏を楽しめる。
歌詞はタイトルからも察しがつくように、恋人と別れた女性の心情が綴られたもの。「曇ったガラスに 額押しつけて 街中に降ってる 真綿色の雪が」という歌詞が好き。鮮やかな情景描写がされていると思う。
他の曲では可愛らしい歌声を聴かせてくれる谷口實希だが、この曲では艶のある歌声を堪能できる。サウンド面が自分好みで、今作のアルバム曲の中でも特に好きな曲。


「OH! MY GOD!!」はここまでの流れを変える軽快なポップナンバー。全体を通してポップで、どこがサビなのかわかりにくいほど。海外のアニメで流れていそうな、メルヘンな雰囲気を持ったサウンドが展開されている。「おもちゃ箱をひっくり返したような」というフレーズがよく似合う。
歌詞は踏んだり蹴ったりな状態の女性を描いたもの。デートの日なのに寝坊したり、天気予報が外れたり、バスが渋滞したり…あまりにも気の毒である。ドタバタした歌詞なのだが、それがサウンドと合っている。
こうした遊び心に満ちた曲もParis Blueの魅力の一つ。


「いつだってもっと」は先行シングル「雨が降る」のC/W曲。跳ねるようなリズムが特徴的なポップナンバー。キャッチーでありながらどことなく気だるい雰囲気を持ったサビのメロディーが不思議と耳に残る。今作の中では生音が目立っている方の曲。アレンジはビートルズを意識したという。
歌詞は口下手な恋人へのメッセージのようになっている。「いつだってもっと ささやいてよ たまにはちょっと ささやいてよ」というサビの歌詞が顕著。不器用な男性の心にこれ以上無いほど響く詞世界だろう。
これまた、谷口自らの歌声のイメージに合った歌詞が展開された曲だと思う。


「真冬の夢」は再び流れを落ち着けるバラードナンバー。終始しっとりとした曲調で、盛り上がるような部分は無い。ただ、それがこの曲にはよく合う。比較的AOR色の強いアレンジがされているのが特徴。ピアノ主体の美しいサウンドがメロディーの魅力を引き立てている。
歌詞はタイトル通り冬を舞台に、既に彼女がいる男性に恋した女性の心情が綴られている。後半の「愛してる」と繰り返す部分はそのボーカルも相まって、凄まじい訴求力がある。
この曲も「あなたがいない」と同じように、メロディーやサウンドが自分好み。アルバム曲の中でも特に好きな曲。


「なぜ」は前の曲からの流れを継いでのバラードナンバー。何気無しに聴いていてもいつのまにか引き込まれてしまうような、美しいメロディーが展開されている。サウンド面では、この頃特有の無機質ながらも温度が感じられるシンセの音が主体となっている。好きな方にはたまらない音だろう。
歌詞は恋人との別れを描いたもの。「何気ない 夕暮れに 愛だけが 吸い込まれていくようで」という歌詞が心に刺さる。簡単な言葉でここまで切ない心情を表現してしまうところには脱帽。
メロディーとアレンジがこれ以上無く合っていて好きな曲。Paris Blueの名バラードの一つだと思う。


「それでいいの」は今作のラストを飾る曲。聴き心地の良いミディアムナンバー。サビまでは落ち着いているが、サビは比較的キャッチーな仕上がり。あまり主張しないシンプルなアレンジながらも、メロディーやボーカルに寄り添った感じがする。
歌詞は自分自身を励ましているイメージのもの。「何かが始まる その時まで 愛することをやめないで」「心配しないでね 幸せの入り口は 意外と近くに あるものなの」といった歌詞が顕著。自分だけでなく、聴き手も励ましているように聴こえる。
ここまでの曲を包み込むような感覚がある曲で、ラストに配置されたのも頷ける。


あまり売れた作品ではないので、中古屋ではたまに見かける程度。
ポップな曲とメロウな曲とバランス良く並んでおり、曲調だけでなくアレンジも多彩。二人の才能が見事に調和した作品になっていると思う。ただ、今作はバラードに好きな曲が固まっている。「雨が降る」が強過ぎた印象が否めないが、それでも割と好きな作品。
谷口實希の歌声について何度も言及しては褒め称えてきたが、自分にとっての「理想の女性ボーカル」と言える存在のため。似たような歌声の持ち主は沢山いそうで、未だに出逢えていない。幸いYouTubeに楽曲が転がっているので、それを聴いて良いと思った方には是非とも作品を入手していただきたい。

★★★★☆