eternity
Every Little Thing
2000-03-15


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 五十嵐充
2.4.5.8.作詞 Every Little Thing
3.9.作詞 持田香織
3.作曲 伊藤一朗
9.作曲 Every Little Thing
2.4.9.編曲 Every Little Thing&石塚知生
3.編曲 伊藤一朗
9.編曲 Every Little Thing&星野靖彦
11.リミックス 渥美尚樹
プロデュース Every Little Thing

1.Pray ★★★★★
2.Reason ​★★★☆☆
3.switch(Album Mix) ★★★★☆
4.Just be you ★★★★☆
5.The One Thing ​★★★★☆
6.Get Into A Groove ★★★☆☆
7.Rescue me ★★★★★
8.Smile Again ​★★★☆☆
9.sure(Orchestra Version) ★★★★★
10.Who cries for me?(Pray Reprise) 省略
11.sure(Are you sure? Mix) ★★☆☆☆

2000年3月15日発売
2012年3月21日再発(廉価再発)
avex trax
最高位1位 売上96.7万枚

Every Little Thingの3rdアルバム。先行シングル「Pray/Get Into A Groove」「sure」を収録。今作発売後に「Rescue me」「Smile Again」が両A面でシングルカットされた。そのC/W曲として「The One Thing」もカットされている。
前作「Time to Destination」からは1年11ヶ月振り、ベスト盤「Every Best Single+3」からは活動休止期間を挟んで1年振りのリリースとなった。初回盤はピクチャーレーベル仕様。

今作リリース後に五十嵐充が脱退したため、今作はデビュー以来続いてきた3人体制の最終作となった。「プロデュースに専念するため」の脱退としていたが、結局その後ELTに関わることは無かった。2009年〜2010年にサウンドプロデューサーとして復帰しているが、その時限り。

これまでの2作は大多数の楽曲の作詞作曲編曲プロデュースを五十嵐が担当してきたが、今作では他のメンバーもしくは3人で担当した曲が増えているのが特徴。そのためか、プロデュースもEvery Little Thing名義となっている。


「Pray」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。「Get Into A Groove」とは両A面。ダイドーの「Ti-Ha」のCMソングに起用された。活動再開後の初シングル曲で、爽快なポップナンバー。煌びやかなシンセと突き抜けるようにポップなメロディーの絡みは3人時代のELTの王道。サビでの持田の高音も曲のポップ性を高めている。
歌詞は未来に向かって進んでいく姿勢を示したもの。「何も言わずに逃げ出すよりも ひとつひとつ積み上げよう」「現実に嘆くより 弱さを越えてみようよ」といった歌詞が顕著。
歌詞も含め、活動再開後初・2000年代最初のシングル曲という重要なポジションによく合った曲だと思う。


「Reason」はどこかシリアスな雰囲気を持ったミディアムナンバー。それでもサビはポップに仕上げられている。その部分は一貫している。激しいシンセの音色とうねりのある力強いギターサウンド、いつもより力の入った感じのボーカル…それらがシリアスなイメージを持たせているのだろう。
歌詞は友達の彼氏を好きになった女性の心情を描いたものだと解釈している。想いに素直になるのか、友情を取るか…答えをすぐには出せずに戸惑う姿が描かれている。結局答えは出ずに終わっているが、どうなったのだろう。
こうした「きつい」シチュエーションの曲はこれまでには無かった印象がある。


「switch(Album Mix)」は先行シングル「sure」のC/W曲。伊藤一朗が作編曲を担当している。ギタリストが主導しただけあって、いつになくギターが前面に出たロック色の強い曲である。マイナー調で進んでいくが、サビはしっかりと耳なじみの良い仕上がり。メインソングライターではないが、それは共通している。シンセよりもギターが主張しているのは珍しいと思う。
歌詞は悲しみを晴らす方法が語られたもの。全体としてはポジティブなイメージの歌詞なのだが、完全に明るいと言い切れないのはこの頃のグループの状態のせいか。
ここまでギターロック色の強い曲は無かった。新境地を開拓した曲だと思う。


「Just be you」は前の曲に続いての爽快なポップナンバー。どこか哀愁を漂わせつつもキャッチーなメロディーは五十嵐充の真骨頂である。ボーカルさえも食わんばかりに主張する派手なシンセやキーボードは曲に疾走感を与えている。
歌詞は優柔不断だった今までの自分を反省して、やり直そうとする女性を描いたもの。「自分を知るたびに 立ち止まる心が ありのまま受け止めたら 生まれ変わる」という歌詞を始めとして、全体的にポジティブな詞世界である。
異色な感じの曲が並んだ中で、この曲はこれまで通りという感覚がある。


「The One Thing」は今作発売後に「Rescue me/Smile Again」のC/W曲としてシングルカットされた曲。映画『クロスファイア』の主題歌に起用された。しっとりとしたバラードナンバー。優しく美しいメロディーはたまらなく聴き心地が良い。その魅力はサビでも何ら変わらない。他の曲では派手な音色だったシンセも、この曲ではメロディーを包み込むような音色で曲を彩っている。
歌詞は恋人へのメッセージと取れるもの。「勇気を出して もう一度 その未来を信じて 生まれ変われる だから逃げないよ」という歌詞はとても力強い。
一つ一つの言葉を丁寧に歌い上げる持田のボーカルが素晴らしい。ボーカリストとしての実力が発揮された曲だと思う。


「Get Into A Groove」は先行シングル曲。「Pray」とは両A面。トヨタの「HILUX SURF」のCMソングに起用された。3人時代の王道をなぞったようなポップナンバー。一度聴けばすぐに馴染むほどにキャッチーなサビは安定感さえある。攻撃的なシンセとギターサウンドはタイトル通りのグルーヴ感を持っている。
歌詞は恋愛に積極的になるよう提案したもの。「少しぐらいは 自信過剰で 生きてもいいんそゃない?」という歌詞は恋愛に限らず心に刺さる。
アルバム曲やC/W曲として聴く分には良いと思うが、両A面と言われるとそこまでの存在感は無かったように感じる。


「Rescue me」は今作発売後にシングルカットされた曲。「Smile Again」とは両A面。日本ゲートウェイノートパソコン「Gateway Solo」のCMソングに起用された。突き抜けるようなポップ性を持った曲。キャッチーかつ陰のあるメロディーが展開されている。サウンド面では、ギラギラした派手なシンセが主体。
歌詞は当時の五十嵐の心情が強く反映されたものだろう。一応は女性目線になっているのだが、ラストでは「複雑な社会に大人はこき使われ いらない教養と知識におぼれている」とキレッキレの歌詞が炸裂する。歌詞全体から漂うやさぐれた感じが異様にクセになる。
シングルカットされたのも頷けるくらいポップな曲なのだが、そのポップさがどこか虚しいと思えるのは何故だろう。


「Smile Again」は今作発売後にシングルカットされた曲。「Rescue me」とは両A面。ダイドー「Ti-Ha」のCMソングに起用された。前の曲から一転して、穏やかな雰囲気を持ったポップナンバー。跳ね上がるようなメロディーとリズムは鼻歌でも歌いたくなるような感覚がある。随所で使われるシンセブラスもその楽しげな感じを演出している。
歌詞は「キミ」を励ましたもの。「みんなすべて 投げ出したくなる時もあるよ シナリオどおり そんなにうまくは行かないもの」もいう歌詞はとても優しい。
1stや2ndに収録されていても違和感の無いような曲。そのため、今作の中だと少々浮いているように感じる。


「sure(Orchestra Version)」は先行シングル曲。日本テレビ系ドラマ『バーチャルガール』の主題歌に起用された。結果的に3人時代のラストシングルとなった。
壮大なバラードナンバー。訴求力に満ちた美しいメロディーには圧倒されるばかり。力強いサウンドもメロディーを引き立てている。
歌詞は大切な存在との別れが描かれている。恋人とも友人とも解釈できるだろう。実際はそうではないのかもしれないが、五十嵐が脱退することを受けて、持田が自らの想いを綴った…と言われても信じてしまいそう。
そのままでも名バラードと言えるくらい完成度が高いだけに、オーケストラを追加する必要は無かったのでは…?と思ってしまってならない。


「Who cries for me?(Pray Reprise)」は「Pray」でのコーラスをアレンジした短めの曲。柔らかなサウンドの中で「Who cries for me?」というボーカルが繰り返される。このままアルバムが終わっても不思議ではない感じ。


「sure(Are you sure? Mix)」は今作のラストを飾るリミックスバージョン。しっとりとしたバラードナンバーがテンポの速いユーロビート調に変貌を遂げている。思わず笑ってしまいそうになるくらいの変化。そのテンションに圧倒されたまま、今作は終わりを告げる。


かなり売れた作品なので、中古屋ではよく見かける。
3人全員が楽曲制作に関わっているため、3人の力を結集して作られた作品という印象がある。これまでの路線を維持した曲もあれば、新機軸の曲もある。アルバム全体としてのまとまりはそこまで無いのだが、一曲一曲の充実感はかなりのものがある。3人時代の作品と2人になってからの作品の中間に位置する作品だと思う。

★★★★☆