CONFUSION
大沢誉志幸
2013-04-10


【収録曲】
全曲作詞 銀色夏生
1.10.作詞 大沢誉志幸
全曲作曲 大沢誉志幸
全曲編曲 大村雅朗
プロデュース 木崎賢治・小林和之

1.CONFUSION ★★★★☆
2.そして僕は、途方に暮れる ​★★★★★
3.雨のタップダンス ★★★☆☆
4.FREE WAYまで泣くのはやめろ ★★☆☆☆
5.その気×××(mistake) ★★★★★
6.Living Inside ★★★★☆
7.彼女の向こう側 ​★★★★☆
8.ダーリン小指を立てないで ​★★★★☆
9.BROKEN HEART ★★★☆☆
10.ウーレイ ​★★★☆☆

1984年7月10日発売(LP,CT)
1984年8月1日発売(CD)
1993年10月1日再発(リマスター)
2013年4月10日再発(Blu-Spec CD2・リマスター)
EPICソニー
Sony Music Direct(2013年盤)
最高位不明 売上不明

大沢誉志幸の3rdアルバム。先行シングル「その気×××(mistake)」を収録。今作発売後に「そして僕は途方に暮れる」がシングルカットされ、「Free Wayまで泣くのはやめろ」がそのB面としてシングルカットされた。前作「SCOOP」からは約5ヶ月振りのリリースとなった。

大沢誉志幸はシンガーソングライターとしてブレイクする前から作曲家として活躍しており、「デビュー前から100万枚を売った男」というようなキャッチコピーもあったようだ。ただ、今作収録の「そして僕は途方に暮れる」がシングルカットされてヒットしたことにより、大沢自身もトップアーティストの一員となった。

今作は作詞の銀色夏生、作曲の大沢誉志幸、編曲の大村雅朗という体制で制作された最後の作品となった。今作はニューヨークでもレコーディングが行われており、現地で活躍するミュージシャンも多数参加している。


「CONFUSION」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。攻撃的なサウンドが展開されたファンクナンバー。複雑な構成ながら、メロディー自体はかなりキャッチーな仕上がり。曲を支配するかのような太いベースラインや、耳をつんざくようなギターサウンドには圧倒されるばかり。間奏ではホーンも登場し、その音色で曲を盛り上げる。
歌詞は大沢自身によるもの。語感を重視した感じで、意味を考えて聴くような歌詞でもない。タイトル通りのごちゃごちゃした雰囲気を持った詞世界である。
オープニングにふさわしい高揚感のある曲だと思う。かつてのライブで冒頭によく披露されていたというのも頷ける。


「そして僕は、途方に暮れる」は今作リリース後にシングルカットされた曲。日清食品「カップヌードル」のCMソングに起用され、ヒットを記録した。大沢にとっての代表曲と言える。タイトルの「、」は今作での表記に従った。シングルバージョンよりも曲が少し長い。
しっとりとしたバラードナンバー。どこまでも美しく切ないメロディーには心を思い切り掴まれる。サビに入った瞬間の視界が開けるような感覚がたまらない。淡々としたシンセのリフが終始前に出ているが、極めて単純なのに引き込まれる。無機質なようでいて、温かみのある音色がたまらない。
歌詞は恋人に出ていかれた男性の想いが綴られている。どこを切り取っても名言と言っていいほどの歌詞が素晴らしい。タイトルに「そして」とつけることでハードボイルドなイメージが強く出ているのも凄い。
メロディーもアレンジも歌詞もボーカルも圧倒的な完成度を誇っている。80年代の数あるヒット曲の中でも特に好きな方に入る。自分を大村雅朗の信者のようにさせたきっかけの曲でもある。


「雨のタップダンス」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。しっとりとした曲調ながら、サビはしっかりと耳に残る仕上がり。全体を通して音の数が少なめで、ボーカルを際立たせるようなアレンジである。サビになると音の数が増えるのだが、それでも主張は控えめ。
歌詞は雨の日を舞台に、恋人との別れを描いたもの。「君がいなくなれば 僕はひとりきりさ 愛より先に行かないで」という歌詞が何とも切ない。こうした詞世界に大沢の歌声はよく合う。大沢にしか出せない渋さや色気がある。
「そして僕は途方に暮れる」によって、バラードシンガーとして定着していくわけだが、この頃から優れた実力を持っていたことがわかる。


「FREE WAYまで泣くのはやめろ」は今作発売後にシングルカットされた「そして僕は途方に暮れる」のB面曲。「変」「けったい」などといったフレーズが似合うシンセ(サンプラー?)が随所でかなりの存在感を放っている。メロディーよりもその音のインパクトの方が強く、印象を持っていかれてしまう。
歌詞の意味はよくわからないのだが、彼女に浮気がバレた男性の心情を描いたものだと解釈している。「このまま深みに落ちそうな すべてが終ってしまいそうな 危険な胸の距離」という歌詞が意味深。
A面とB面で方向性がかなり変わっていて、それが面白いところ。


「その気×××(mistake)」は先行シングル曲。資生堂サマーキャンペーンのCMソングに起用された。シングルバージョンよりも少し長くなっているのが特徴。曲全体で前面に出た、キレッキレのカッティングがたまらないファンクナンバー。どこかスリリングな展開を見せるメロディーとなっており、演奏もそうした雰囲気を盛り上げている。CMタイアップだけあって、サビはしっかりとキャッチーな仕上がり。
歌詞は焦らすのが上手な女性に翻弄される男性を描いたもの。「ダウンさせる手口を 覚えた 困った女さ」という歌い出しから、独特な哀愁と格好良さが漂っている。
大沢のハスキーな歌声がこれ以上無いほど似合う曲。大沢以外が歌ったら間違いなくダサくなってしまうだろう。


「Living Inside」は今作の中では比較的AOR色の強めなミディアムナンバー。洗練された雰囲気の漂うメロディーながら、サビはかなりキャッチーな仕上がり。流石はメロディーメーカーである。ホーンやトニー・レヴィンによる重厚なベースが前面に出たサウンドは相当な聴きごたえがある。
歌詞は心を閉ざした彼女と、心が離れていく男性が描かれたもの。幸せな日々と現状との対比は聴いていて辛くなるほど。「もう君がどうにも他人(ひと)ごとだから」というサビ終わりの歌詞が冷たく響く。なお、タイトルのフレーズは登場しない。「内にこもる」というような意味合いだろうか。
今作の中ではかなり地味だと思うが、メロディーや演奏が好みで割と好きな曲。


「彼女の向こう側」は流れを再び戻すポップナンバー。サビまではメロウな曲調でAORのテイストを感じさせるようなメロディーだが、サビで一気にポップなメロディーに変貌を遂げる。思わず「そう来るか!?」と言いたくなるようなメロディーだ。聴いていて安心感のあるバンドサウンドと、哀愁を帯びたサックスの音色との絡みがたまらない。
歌詞は女性に振り回される男性を描いたもの。「誰にでも甘い夢を見させてる」女性のようだ。どれほど愛しても、結局は別の人の元に行ってしまう。どことなく虚無感のある詞世界となっている。
この曲はメロディーの展開がとても印象的。それなのに、無理やりポップに仕上げようとしたとは思えないのが凄いところ。


「ダーリン小指を立てないで」はファンキーな演奏を楽しめるミディアムナンバー。憂いを帯びたメロディーは大沢の得意技でもある。切れ味鋭いカッティングやスラップベースに加え、アタックの強いドラムはいつまでも聴いていたくなる。間奏ではサックスソロがあり、その音色で曲の持つ渋さを引き立てている。
歌詞はこれまた恋人との別れを描いたものだろうか。「会うたび君は 遠い人だね」という歌詞が切なく響く。「小指を立てる」仕草は国によって様々な意味合いを持っていると思うが、この曲ではどういう意味合いで描かれているのだろうか?
この曲も演奏が自分好み。この手の曲が多いと聴いていて嬉しい。


「BROKEN HEART」は流れをまた落ち着けるバラードナンバー。タイトルだけでもバラードだと察しがつくほどに王道なタイトルだ。全体に渡って展開された美しいメロディーと、情感のこもったボーカルとの絡みが聴きどころ。後半に行けば行くほど盛り上がっていく演奏が特徴。後半では激しいギターサウンドが主張しているが、それなのに切なさが感じられるのは何故だろう。
歌詞はタイトル通りの失恋もの。「今度の雨は ワイパーでもかわせはしない」という歌詞が好き。これほど「終わり」を婉曲的に想像させること歌詞もそうは無いと思う。
派手に盛り上がるような曲ではないが、それでも聴き飽きないようなメロディーやアレンジが見事。


「ウーレイ」は今作のラストを飾る曲。力強いポップロックナンバー。勢いの良いメロディーは否が応でも耳につく。シンセやギターを前に出しつつもファンキーなサウンドとなっており、エレクトロファンクというべきか。様々なギミックが用意されており、最初から最後まで全く予想できないようなサウンドに引き込まれる。
作詞は大沢自身によるもの。タイトル曲と同じく、あまり意味を持たせないような歌詞である。その分語感を重視し、歌っていて気持ちの良いものを目指した印象。
曲自体はそれなりに好きなのだが、これで終わるのか?と思ってしまう。これをラストに置いたのはかなり不思議。


旧盤はあまり出回っていないため、2013年盤を入手することをおすすめする。
ファンクからバラードまで多彩な魅力が遺憾無く発揮された作品となっている。「その気×××(mistake)」「そして僕は途方に暮れる」が収録されているため、聴き始めの作品にも良いと思う。相当に攻めたアレンジの曲もあるが、それでもあっさりと聴けてしまうのが凄い。銀色夏生・大沢誉志幸・大村雅朗の制作体制は今作で終わるため、1stからの路線の集大成という感覚もある。それにふさわしい充実感を持った作品である。

​★★★★☆