GOLDEN BAD
井上陽水
2000-07-28


【収録曲】
全曲作詞作曲 井上陽水
5.作詞作曲 井上陽水・忌野清志郎
6.作曲 井上陽水・川島裕二
8.作曲 玉置浩二
1.編曲 BAnΛNA(川島裕二の変名)
2.11.編曲 星勝
3.5.編曲 井上陽水
4.編曲 Andrew Ritten
6.13.編曲 川島裕二
7.編曲 大村憲司
8.編曲 井上陽水・安全地帯・中西康晴・川島裕二
9.編曲 BANANA(川島裕二の変名)
10.編曲 BAnΛNA・藤井丈司
12.編曲 矢萩渉
14.編曲 窪田晴男
5.ホーンアレンジ 村田陽一
プロデュース 井上陽水

1.紅すべり ★★★☆☆
2.My House ​★★★★★
3.Be-Pop Juggler ★★★★★
4.SINGING ROCKET ★★★★☆
5.野蛮な再会 ★★★★☆
6.ライバル ★★★★☆
7.ダメなメロン ★★★★★ 
8.俺はシャウト! ​★★★★☆
9.バレリーナ ★★★★☆
10.夢寝見 ★★★☆☆
11.Speedy Night ★★★★☆
12.全部GO ★★★★★
13.Yellow Night ★★★★☆
14.UNDER THE SUN ​★★★★★

2000年7月28日発売
フォーライフ
最高位38位 売上1.9万枚

井上陽水の14thベスト。(非公認作品・ボックスセット含む) 三方背BOX入り仕様。

今作はミリオンを達成したヒット作「GOLDEN BEST」のリリースから丁度1年後にリリースされた。「GOLDEN BEST」はアンドレ・カンドレ名義でのデビューから30年という節目でリリースされただけあって、数多くのヒット曲を網羅したいわゆる「オールタイムベスト」だった。
それと対極をなすベスト盤こそ、今作。「GOLDEN BEST」のジャケ写を反転させたジャケットデザインや、「BEST」とは真逆の意味の「BAD」というタイトルからも察しがつく。

今作はシングル曲は一切収録されていない。シングルのB面曲やアルバム曲から選曲されている、いわば「裏ベスト」と言える作品。普通のベスト盤に収録するほどの知名度や強さはないが、井上にとって思い入れの深い曲が選曲されていると思われる。


収録曲の感想については、今作でアルバム初収録となった曲のみにさせていただく。


「紅すべり」は1989年リリースの27thシングル「夢寝見」のC/W曲。どこか怪しげな雰囲気を漂わせたミディアムナンバー。メロディー自体はそれほど派手ではないが、言葉を畳み掛けるようなサビはかなり耳に残る。打ち込みによるものと思われるパーカッションが曲に無国籍なイメージを与えている。
歌詞は語感を重視しつつも、「花」がキーワードとなっている印象。普通の意味の「花」ではなく、どこか淫靡な世界を思わせる。それにしても、タイトルの「紅すべり」とはどのような花なのだろう?井上の造語だと思われるが…
いきなりアクの強い曲が出てくるが、これぞ裏ベストの真髄である。


「ダメなメロン」は1986年リリースの24thシングル「新しいラプソディー」のC/W曲。弾むような曲調が心地良いポップロックナンバー。次々と言葉を並べるサビは一度聴けば忘れられるはずがない。大村憲司による、鋭くキレのあるギターサウンドが主体となっており、演奏にもかなりの聴きごたえがある。
歌詞は「あなた」をメロンに例え、恋心について語られている。「いつか胸をさわらせて」というフレーズはかなりのインパクトがあるが、タイトルのフレーズが何より強い。「ダメなメロン」という言葉の響きの良さは何だろう。声に出すととにかく気持ちが良い。
怪しくて格好良い。自分が思う井上陽水の楽曲の魅力に溢れた名曲。


「俺はシャウト!」は1986年に井上陽水・安全地帯名義でリリースされたシングル「夏の終りのハーモニー」のB面曲。井上陽水の作品では初収録となった。
ニューウェーブ色の強いロックナンバー。井上と玉置浩二のツインボーカルで進んでいく構成となっており、二人の掛け合いが聴きどころ。ラストはひたすらシャウトしている。全編を通して勢いのある曲調はキャッチーそのもの。また、矢口博康独特の枯れたサックスの音色がたまらない。
歌詞はタイトル通り「シャウト」がキーワード。様々な音楽の用語が登場するのが特徴。恐らく井上は「シャウト」という言葉の語感が好きだったのだろう。何度も繰り返し歌われるため、やたらと耳に残る。
名バラード「夏の終りのハーモニー」の裏でこのような曲が収録されていたとは…驚くばかり。


「Speedy Night」は1984年リリースの23rdシングル「いっそセレナーデ」のB面曲。淫靡な雰囲気を漂わせたミディアムナンバー。メロディーそのものはそこまで強くない印象だが、英語詞で構成されたサビは割と耳馴染みが良い。スラップベースやサックスの影響でかなりファンキーなサウンドとなっている。
歌詞の意味はよくわからない。「Speedy Night」というフレーズの意味もわからないが、キャッチーな言葉だと思う。
それなりに人気があってもいいような曲だが、やはりA面曲が強過ぎる。埋もれてしまっていたのも仕方がないだろう。


あまり売れた作品ではないが、中古屋ではたまに見かける程度。
「GOLDEN BEST」とは比にならないほどアクの強い曲や実験的な曲が並んでおり、入門として聴くような類の作品ではない。むしろ、オリジナルアルバムを聴いてある程度ハマった上で聴くことをおすすめする。自分自身、ハマった後に聴いて印象に残っている曲が増えた。井上陽水の「沼」に浸かるため、もしくは浸かってしまったリスナーのためのベスト盤である。

★★★★☆