いきなりプライベートな話になりますが、テスト週間に入って立て込んでいるので、今月の終わりくらいまではしばらくブログの更新はできないと思います。その代わりとは言っては難ですが、最近ハマっているアーティストを紹介します。


昨年末から洋楽及びネオアコに対しての熱が上がり、色々と作品を漁るようになっている。その中でも特にハマったのがDanny Wilson。
シンガーソングライターのような名前だが、実は3人組のバンド。フランク・シナトラが出演した映画『Meet Danny Wilson』(1952,邦題:ダニー・ウィルスンに会ってくれ)から取られているという。ちなみに、これは1stアルバムのタイトルにもなっている。1987年デビュー、1991年解散と割と短命。
ボーカルでメインコンポーザーのGary Clark、その弟でギターのKit Clark、Garyの親友だというベースのGed Grimesからなる。構成だけ見るとL⇔Rのような感じ。
デビュー曲の「Mary’s Prayer」が小ヒットを記録し、本国では一発屋的な扱いをされていると思われる。

1st「Meet Danny Wilson」(1987)を入手してすぐにハマり、しばらくして2ndにしてラストアルバム「Bebop Moptop」(1989)も入手した。僕は2ndの方にハマった。1stにも増して多彩な曲調やサウンドが揃っていると感じた。一聴しただけで名盤と確信したほどだった。

彼らは良くも悪くも「中庸」な音楽性のバンドだったと思う。ネオアコにもシンセポップにもニューウェーブにもソウルにもAORにもなりきらない、それでいてとても洗練されたポップス。僕はこの手の「中庸」な音楽が好きだったりする。他にこれが当てはまると思うアーティストは、Prefab Sprout、Deacon Blue、China Crisis、Andy Pawlak辺りか。

Steely Danのフォロワー的に語られることが多いようだが、確かにそう感じる部分はある。ゲイリー・クラークのメロディーメーカーとしての実力はドナルド・フェイゲンとも張り合えるくらいだと思う。
ただ、Steely Danの作品にある、文句を言わせないほどの凄まじい完成度や緊張感のようなものは無い。むしろかなり親しみやすく、温かみや懐かしささえある。メンバーはスコットランド出身のようで、僕が勝手にスコットランド出身のアーティストに対して抱いているイメージそのものだった。「温かみ」「懐かしさ」「素朴」といった感想の正体はそれだったのではないか。


それでは、特に好きな曲を紹介していく。


「Mary’s Prayer」(1987)

Danny Wilsonのデビューシングルにして、最大のヒット曲。映画『There’s Something About Mary』(1998,邦題:メリーに首ったけ)の挿入歌にも起用された。
洗練されたメロディーが心地良いポップナンバー。美しくキャッチー、そして開放感に満ちたサビのメロディーが素晴らしい。一気に視界が開けるような感覚がある。派手なサウンドの曲がヒットしていた中で異質なほどにシンプルなサウンドの曲だが、売れたのも頷けるだけの強さを持った曲だと思う。


「Aberdeen」(1987)

1st「Meet Danny Wilson」収録曲。2分半ほどの曲だが、アルバムの中でも特にポップな曲。短めな曲ながら、非常に強いサビが見事。ストリングスやホーンの使い方は映画音楽からの影響を感じさせる。相当に複雑なメロディーの曲だと思うが、それをとても聴き心地の良い曲に仕上げているのが彼らの凄いところ。それはとても1stアルバムでできるようなことではない。


「Lorraine Parade」(1987)

1st「Meet Danny Wilson」の収録曲。流麗なメロディーが心地良いミディアムナンバー。Danny Wilsonの楽曲に共通して言えることではあるが、ただ聴き流しているだけでとても幸せな気持ちになれる。また、随所で使われている、迫ってくるようなキーボードの音色がたまらない。


「The Second Summer Of Love」(1989)

2nd「Bebop Moptop」の収録曲。シングル曲で、この曲も小ヒットを記録した。これまでには無かった、フォークロック色の強い曲。「Summer Of Love」の通り、60年代後半のような味わいがある。ギター主体の素朴なサウンドがメロディーをさらにポップなものにしてくれる。2分50秒行かない程度と割と短めな曲だが、とにかくサビが耳に残る。これぞゲイリーのメロディーセンス。


「I Can’t Wait」(1989)

2nd「Bebop Moptop」収録で、シングルカットもされた。この曲はキット・クラークとジェド・グライムスの共作。ボーカルもキットが担当している。Danny Wilsonはゲイリーのワンマンバンドだと思っていたが、この一曲だけでその考えが変わった。もはやイントロから果ててしまったほどにサウンドが自分好み。僕はキラキラシンセには弱いのだが、ここまで弱点を突かれたらたまったものではない。メロディーもどこを取っても素晴らしい。
ゲイリーが関わっていない(コーラスや演奏では関わっていると思われる)曲なのだが、彼らの中では一番好きな曲となっている。それどころか、現時点で聴いてきた全ての洋楽の中でも特に好きな方に入ってきそうなほど。そして、早くも2020年のベストソングに内定した。


「If You Really Love Me(Let Me Go)」(1989)

2nd「Bebop Moptop」収録で、シングルカットもされた。「I Can’t Wait」の次に来る、しっとりとしたバラードナンバー。相当に爽やかな曲の次だけに、かなりの落差がある。しかし、それでも違和感無く聴けてしまう。美しく渋いメロディーがひたすら心地良い。ゲイリーのダンディーなイメージの歌声がその手の色が強い曲によく合う。Danny Wilsonの「中庸」な音楽性の中でも、ブルーアイドソウル〜AORの面が現れた印象がある。


「If Everything You Said Was True」(1989)

2nd「Bebop Moptop」収録。比較的ポップな仕上がりの曲。Aメロはしっとりとしているのだが、サビ前〜サビで一気に畳み掛けてくる。その変貌振りが聴いていてとても心地良い。それが無いとただの地味な曲になっていたかもしれない。また、80年代後半特有の質感を持ったキーボードの音色が目立っており、その手の音が好きな自分にはたまらない。


「I Was Wrong」(1989)

2nd「Bebop Moptop」収録。「I Can’t Wait」が最高だけど、じゃあゲイリーの曲はどうなんだ?と思っていた僕をぶん殴ってきた名曲。ゲイリーに対してまさに「I Was Wrong.」と言いたくなるくらいだった。
ここまでメロディーもサウンドも明るいのに切なくなる曲にはそうそう出逢えない。随所にハーモニカがフィーチャーされているが、これほど哀愁に満ちたハーモニカの音色も珍しい。一聴しただけで心を掴まれてしまった。こちらも大好きな曲となった。


「Never Gonna Be the Same」(1989)

シングル曲で、2nd「Bebop Moptop」収録。この曲も美しくポップなメロディーが展開されている。畳み掛けるようなイメージのサビのメロディーは一度聴いただけで魅かれた。そして、すぐに好きな曲になった。やはりゲイリーのメロディーセンスは凄かった。バンドサウンドとシンセをバランス良く使った、カラフルなアレンジも自分好みそのもの。短めな曲なのに、確かな聴きどころがあって何度でも聴きたくなる。これぞ名曲。


「Desert Hearts」(1989)

2nd「Bebop Moptop」収録。ゲイリーとシンガーソングライターのAli Thomsonとの共作。アルバムの終わりに差し掛かったタイミングでやってくる、爽快なポップナンバー。確実にサビで掴んで離さない。当たり前のようにそれができてしまうのが凄いところ。
この曲もまた、80年代後半特有のキーボードがフィーチャーされており、それがたまらない。2ndアルバムを通じて、自分がどれだけこの音が好きかを実感させられた。


↓おまけ
「Freefloating」(1993年)

ゲイリーにとっては唯一のソロアルバムとなる「ten short songs about love」の収録曲。ブルーアイドソウル〜AORの「テイスト」どころか、それらに振り切ったような仕上がりの曲。相変わらず美しく甘いメロディーを聴かせてくれる。サウンド面もさほど主張せず、ゲイリーのボーカルを際立たせる。アルバムの収録曲全体に言えることだが、Danny Wilson時代にも増して歌声が甘く渋い味わいになっている。この曲では特にそれが感じられる。


サブスクについては、LINE Music(ゲイリーのソロ含む)、Spotify(ゲイリーのソロ含む)、amazon Musicでも聴けるようです。


…自分はまだ聴けていないが、アルバム未収録のB面曲にも名曲が多いようだ。また、未だにアルバムが再発されていないのも不思議なところ。中庸な音楽性故に熱烈なファンが業界内にいないのだろうか…?B面曲やライブ音源をボーナストラックにして、オリジナルアルバム2作及びゲイリーのソロアルバムがリマスター再発されてほしいと思う。