前回のDanny Wilsonにハマった件と同じく、テスト期間中なので通常のアルバムレビューにはまだ戻れません。その代わりと言っては難ですが、先日「Vaporwave」なるジャンルの作品を初めて聴きました。初めて聴いての感想を書いていきます。


Vaporwaveについての詳細を説明すると長くなるので、 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ヴェイパーウェイヴ を参照していただきたいと思います。


【Vaporwaveとの馴れ初め】

Vaporwaveはツイッターのフォロワーにも好きな方が多く、その手のジャンルの曲を作っている方もいらっしゃる。そのため、かなり前から名前だけは知っていた。
先日、いつもお世話になっているフォロワーさんが「2010年代のベストアルバム」の中にMacintosh Plusの「Floral Shoppe(フローラルの専門店)」(Vaporwaveの界隈を代表する名盤)を挙げていたことがきっかけで、YouTubeで聴いてみた。


【Vaporwaveとの初対面】

「Floral Shoppe」の1曲目「ブート」を聴き終える前から「…なんだこれ?」という感想を抱いた。80年代特有のサウンドを限りなくチープにしたようなサウンド、何度となく響く呻き声のような声…どう処理したら良いのかわからなくなってしまった。ここまで反応に困る音楽を聴いたのも初めてかもしれない。印象が無いはずはない。あまりにも情報量が多過ぎて、どこから突っ込んだら良いのかわからないのだ。

何よりインパクトがあったのは、80年代終わり〜90年代前半のCMのような、今見ると恐ろしく安っぽいCGで構成されたPV。「意味がわからない」というより、「意味を持たせない」映像なのだろう。サイケな雰囲気さえ感じられた。

曲や映像から溢れる薄気味悪さのせいで何度も途中で切り上げたくなったのだが、何故か引き込まれてしまい、結局最後まで聴き終えてしまった。最初から最後まで「…なんだこれ?」と思い続けていた。
翻訳ツールの結果をそのまま使ったような不自然な日本語タイトル、聴いていて笑えるほどチープな音、サイケな雰囲気さえある映像…
もうそこに意味なんて無いんじゃないか?意味を探すこと自体が愚かしいんじゃないか?そう思えた。


いざ聴き終えると、凄まじいほどの虚しさが襲いかかってきた。これはタイミングが悪かったのかもしれない。テスト勉強の合間にふと思い立って調べ、聴いてしまったからだ。普通の状態だったならまだしも、テスト前で心理的に追い詰められた中で聴いてしまった。それが良い意味でも悪い意味でも影響した。
疲れた時に映像込みで聴くと、余計に作品に引き込まれると思った。初体験にしてVaporwaveの恐ろしさを知ってしまった。言葉にするのも大変なのだが、無理やり表現するとしたら「観る虚無」「聴く虚無」というべきか。
テレビを点けたまま寝落ちしてしまい、深夜に目覚めた時のような感覚があった。現実なのか夢なのかわからない中、音と映像だけが流れ続けている。その瞬間を切り取ったような音楽だと感じた。そして、「虚無」を音楽で作り出せることに驚いた。


【Vaporwaveへの想い】

Vaporwaveは現在ではかつてほど盛んではないようだ。つまり、このタイミングでこのジャンルを聴き始めた僕は「今更」ということになる。
こうして今更ながらVaporwaveとの出逢いを果たしたわけだが、僕とVaporwaveの親和性はかなり高いように思う。サウンドの元ネタになっている音楽が自分好みであることはもちろん、昔のCMを見るのが好きだからだ。何故かはわからないが、昔のCMを見ていると落ち着くのだ。何より楽しい。
また、僕は友人から独特な言葉選びについて指摘されることが多い。その言語センスがVaporwaveの作品名とこれ以上無いほど共鳴する。


ここまでハマれる要素があったのなら、もっと早く出逢いたかった。しかし、入ってはいけない領域に入ってしまった感が凄い。ただ、やたらとワクワクするのはどうしてだろう。
こうして、少しずつVaporwaveの作品を聴き進めるようになった…(完)