ストリーミングについて…現時点ではまだ配信されていない。(ラストアルバム「Milk&Cookies」のみ配信されている)
【収録曲】
全曲作詞 辻睦詞
全曲作曲 渡辺善太郎
全曲編曲 Oh!Penelope
3.5.コーラス・ブラス&ストリングスアレンジ 村田陽一&Oh!Penelope
プロデュース Oh!Penelope
1.Petal ★★★☆☆
2.Vertigo High ★★★★☆
3.Comming Days ★★★☆☆
4.Kind of Funny ★★★★★
5.Vibration ★★★★☆
1995年1月21日発売
Epic/Sony Records
最高位不明 売上不明
Oh!Penelopeのデビューミニアルバム。先行シングルは無し。EPという形でプレデビュー盤(A面「Kind of Funny」,B面「Vertigo High」の別バージョン)が存在するのだが、これはサンプル盤のみ。「Kind of Funny」の8cmシングルもあるようだ。
Oh!Penelope(オー!ペネロープ)はボーカルで作詞の辻睦詞、ギターでメインコンポーザーの渡辺善太郎から成る2人組ユニット。2人は元々詩人の血で活動していたのだが、詩人の血は1994年にキーボードの中武敬文が脱退したことにより解散。残された2人がOh!Penelopeとして活動することとなった。彼らのデビュー作が今作。
結局、Oh!Penelopeはシングル2作・ミニアルバム2作・フルアルバム1作をリリースして1997年に活動を停止した。
辻は詩人の血の4thアルバム「花と夢」(1992年)辺りから渋谷系〜ソフトロックに傾倒し始めた。デビュー当初はニューウェーブ色の強い作風だったが、辻に合わせるように作風も変化した。Oh!Penelopeも様々なジャンルの音楽を取り入れた音楽性だが、ソフトロック色の強い曲が多い。
「Petal」は今作のオープニング曲。サイケな雰囲気を感じさせるバラードナンバー。スキャットで歌われている部分が多いのだが、それはかなりインパクトがある。サイケなサウンドと囁くようなボーカルも相まって、聴いているとどこかに連れて行かれそうな感覚に陥る。
タイトルは英語で「花びら」を意味するが、歌詞にもそれがよく登場する。「君の手の中に開く 花の名をいつも忘れないで」という歌詞が何ともロマンティック。
オープニングにしては落ち着き過ぎている感が否めないが、それでも引き込まれる一曲。
「Vertigo High」はフリーソウルのテイストを感じさせるミディアムナンバー。メロディー以上にサウンドが印象に残る。派手に盛り上がるわけではないが、演奏にグルーヴ感が溢れていて聴きごたえがある。バンドサウンドだけでなく、トランペットも使われているのが見事。コーラスで矢野顕子が参加しており、辻との掛け合いも聴きどころ。
歌詞は昼下がりの庭が舞台となっている。「白昼夢」というフレーズがサビに登場するのだが、全体的に薄ぼけたような感覚のある詞世界を的確に言い表したものだと思う。
この曲はサウンド面が好き。6分以上あるのに長さが気にならない。
「Comming Days」は再び流れを落ち着けるバラードナンバー。60年代後半〜70年代前半のソフトロックからの影響を感じさせる、聴き心地の良いメロディーやサウンドが展開されている。サビでも盛り上がらないのだが、それがこの曲にはよく合う。ストリングスやホーンも取り入れたサウンドは豪華そのもの。
歌詞の意味はよくわからないのだが、詩人の血時代と何ら変わらない辻の独特な言語センスが発揮されたものだと思う。「明日への過去」「いま遠過ぎて覚えてない未来」といったフレーズが好き。
退屈になりそうでならないという絶妙な心地良さを持った曲だと思う。これがOh!Penelopeの凄さと言ったところ。
「Kind of Funny」は清涼感のあるポップナンバー。聴き流すのがたまらなく心地良いメロディーが展開されている。ネオアコ〜ギターポップのテイストを強く感じさせる、透き通るようなギターサウンドはいつまでも聴いていたくなる。
歌詞の意味ははっきりとわからないのだが、いつも晴れた休日をイメージしながら聴くことが多い。この曲を聴いていると、何も考えずにぼ〜っとしながら過ごしている光景が浮かんでくる。そうした時間は無駄なようでいて、大切にしておきたい時間である。
メロディーやサウンドが自分好みで、今作の収録曲の中でも一番好きな曲。
「Vibration」は今作のラストを飾る曲。ロマンティックな雰囲気を持ったバラードナンバー。今作の収録曲の中でも特にサビがキャッチー。この曲もソフトロックからの影響が感じられるサウンドが展開されている。ボーカルやメロディーを包み込むようなストリングスには聴き惚れてしまうばかり。
歌詞はストレートなラブソング。意味が分かりにくい曲が多い中で、この曲は一際意味が分かりやすい歌詞だと思う。辻の優しい歌声がそうした歌詞とよく合っている。
曲全体から溢れる心地良さこそOh!Penelopeの楽曲の魅力と思わされる。
あまり売れた作品ではないので、中古屋では滅多に見かけない。ただ、Oh!Penelopeの作品の中では遭遇頻度が高い方。
作風は詩人の血の末期とさほど変わらないのだが、詩人の血時代にも増して、生音にこだわったサウンドが展開された曲が多い印象。それが曲にエバーグリーンな魅力を与えている。
彼らをジャンルに分けるとしたら渋谷系になるのだろうが、リリース当時よりも今の方がこの手の音楽が受け入れられやすい環境にあると思う。今作に限らず、詩人の血やOh!Penelopeの作品は再発されたらさらに多くのファンが生まれるはずなのだが…
★★★★☆
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