APRIL
ROUND TABLE featuring Nino
2003-04-23


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【収録曲】
1.4.6.7.12.作詞 北川勝利
2.3.5.8.10.11.作詞 伊藤利恵子
9.作詞 Nino
全曲作曲 北川勝利
3.5.10.11作曲 伊藤利恵子
全曲編曲 ROUND TABLE
2.編曲 宮川弾
6.8.編曲 ROUND TABLE&桜井康史
1.9.10.12.ストリングスアレンジ 宮川弾
プロデュース ROUND TABLE

1.Let Me Be With You ★★★★★
2.Dancin’ All Night ★★★★☆
3.Beautiful ​★★★★☆
4.New World ​★★★☆☆
5.Day by Day ★★★☆☆
6.Birthday ★★★★☆
7.Book End Bossa 省略
8.Where Is Love ★★★☆☆
9.Today ​★★★☆☆
10.In April ★★★★★ 
11.Love Me Baby ​★★★★☆
12.Let Me Be With You(new step mix) 省略

2003年4月23日発売
ビクター
最高位不明 売上不明

ROUND TABLE featuring Ninoの1stアルバム。先行シングル「Let Me Be With You」「New World」を収録。ROUND TABLE名義での前作「RADIO BURNIN’」からは2年3ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はデジパック仕様。

ROUND TABLEは北川勝利と伊藤利恵子の2人組ユニットとして1997年にデビューし、2002年までにシングル3作・ミニアルバム7作・フルアルバム4作(ベスト盤1作含む)をリリースしてきた。2002年からボーカルにNinoを迎え、「ROUND TABLE featuring Nino」名義での活動を開始した。

ROUND TABLE featuring Ninoとしての1stシングル「Let Me Be With You」はアニメ『ちょびっツ』のオープニングに起用されたわけだが、以降もアニメ関連のタイアップが多くついた。また、北川・伊藤の両者ともに声優やアニメ・ゲーム関連の歌手への楽曲提供を積極的に行うようになった。
特に北川はアニソンや声優アーティストの楽曲に渋谷系の要素を持ち込んだ立役者と言える。


「Let Me Be With You」は今作のオープニングを飾る先行シングル曲。TBS系アニメ『ちょびっツ』のオープニングに起用されたほか、様々なローカル番組でも使用されている。
お洒落な雰囲気溢れるポップナンバー。メロディーそのものはさほどキャッチーではないのだが、曲の随所で使われる「うっうーうっうー」というコーラスが耳に残って仕方がない。バンドサウンドの中でも、非常にグルーヴ感のあるベースがたまらない。思わず弾きたくなるような魅力がある。
歌詞は真っ直ぐな恋心が綴られたもの。Ninoの可愛らしくも艶のある歌声がそうした歌詞とよく合っている。
ROUND TABLEのキャリアを通じても特に著名な曲だと思うが、それだけの強さを持った曲である。


「Dancin’ All Night」は打ち込み主体のダンサブルなポップナンバー。派手に盛り上がることはないのだが、それでも確かに耳から離れなくなるサビは職人技。この曲ではNinoだけでなく、北川もボーカルとして主張しているのが特徴。浮遊感のある打ち込みサウンドと、上質なストリングスの絡みが聴きどころ。
歌詞はタイトルからも想像できるように、ダンスフロアで踊っている光景が浮かぶもの。下品にならず、あくまでお洒落な感覚が保たれている。
後にROUND TABLEとしてこの曲のセルフカバーをしている。(「FRIDAY,I’M IN LOVE」収録)そちらとの聴き比べをすると、より楽しめるはず。


「Beautiful」は先行シングル「New World」のC/W曲。アニメ『.hack//黄昏の腕輪伝説』の挿入歌に起用された。ジャズやフュージョンのテイストを取り入れたアレンジが印象的なポップナンバー。サビはもちろんのこと、サビ前もかなりキャッチー。本田雅人によるフルートがサウンドをより上質なものにしている。宮田繁男のドラミングも素晴らしい。
歌詞は多幸感のあるラブソングと言ったところ。サビで英語詞が多用されているのが特徴で、それがサビの強さに貢献しているように思う。
こちらが表題曲になっていたとしても何ら違和感の無いような充実感のある曲。


「New World」は先行シングル曲。アニメ『.hack//黄昏の腕輪伝説』のオープニングに起用された。歪んだギターサウンドが前面に出たロックナンバー。アニメのオープニングにふさわしい、開放感のあるサビのメロディーがたまらない。
歌詞は今いるところを飛び出して、何処かを目指しているようなイメージがある。疾走感のある曲調やサウンドなので、それに合った歌詞になっていると思う。
ロック色の強いサウンドながら、ハードになり過ぎないバランス感覚が見事。Ninoの歌声の影響も大きいだろう。


「Day by Day」はピアノの弾き語りによるシンプルな曲。切なく懐かしい雰囲気を漂わせたメロディーが展開されている。
歌詞は誰かに片想いしている少女の心情が綴られたものだろうか。
1分45秒ほどのとても短い曲で、アルバムの流れを調整する役割を果たしているように思う。


「Birthday」はテクノポップ色の強い曲。淡々とした4つ打ちリズムや、ヴォコーダーによるコーラスなど、今作の中でも特に異色なアプローチがされたサウンド面だと思う。攻めたサウンドながら、メロディーはいつも通り美しくキャッチーそのもの。
歌詞はタイトル通り、誕生日をテーマにしたもの。「Everyday is somebody’s birthday yeah!!」というサビ終わりの歌詞は多幸感に満ちている。
テクノと言っていいほどに煌びやかな打ち込みサウンドと、Ninoの可愛らしい歌声はこれ以上無いほど相性が良い印象がある。この手の曲は少ないだけに貴重。


「Book End Bossa」は先行シングル「Let Me Be With You」のC/W曲。アニメ『ちょびっツ』の挿入歌に起用された。
タイトル通りボサノバの要素を取り入れたインスト曲。インストながら、Ninoのスキャットも入っている。昼寝する時に聴きたくなるような心地良さがある。


「Where Is Love」はR&Bの要素を取り入れたバラードナンバー。無機質な打ち込みサウンドが終始前面に出ているが、これは当時流行したサウンドだろう。渋さを感じさせるギターサウンドや男性コーラスが曲の雰囲気を演出している。サウンド重視でメロディーはさほど強くない印象があるものの、聴き流す分には困らない。
歌詞はアダルトなイメージのあるもの。「触れあって特別だと 確かめたいだけなの 止められない気持ちを ゆれるこの想いを抱いて」という歌詞を始めとして、とても色っぽい詞世界となっている。
可愛らしいだけではない魅力が出ており、Ninoのボーカリストとしての力量がわかる曲だと思う。


「Today」はしっとりとしたバラードナンバー。王道J-POPらしさを感じさせるメロディーやサウンドとなっている。心に沁みるような優しいメロディーが展開されている。バンドサウンドのみならずストリングスもフィーチャーされており、後のバラードにおける流行を先取りしたかのよう。
歌詞の意味ははっきりとわからない。ただ、どことなくノスタルジックなイメージのある詞世界だと思って聴いている。ちなみに、Ninoが作詞に関わったのは後に先にもこの曲のみ。
バラードが少ない今作の中ではかなり存在感がある。一曲単位よりアルバムの流れの中で聴くとより良いと感じられる。


「In April」は清涼感に溢れたポップナンバー。実質的なタイトル曲と言えるかもしれない。訴求力のある、切なく美しいメロディーには聴き惚れるのみ。イントロからなだれ込んでくるようなストリングスがたまらない。曲全体を通してこれほど派手に主張するストリングスも珍しいと思うが、それでも他の音やボーカルを潰すことなく存在感を発揮している。間奏のエレピのソロも聴きどころ。
歌詞は恋人への想いが綴られたもの。直接「April」を思わせるフレーズは登場しないのだが、全体的に前向きで明るい詞世界がどことなく春を想起させる。
メロディーもサウンドも自分好みのど真ん中で、今作の収録曲の中でも一番好きな曲。


「Love Me Baby」は今作のラストを飾る曲。懐かしさや切なさを漂わせたメロディーが心地良いミディアムナンバー。サウンド面はエレピやオルガンといった柔らかい音が主体で、メロディーやボーカルを包み込んでいるような感覚がある。
歌詞は恋人に甘えているようなイメージのもの。サビでの「yeah」の高音がとても可愛らしく、また色っぽくもある。Ninoの歌声の不思議な魅力がよく現れた部分だと思う。
アウトロでは「Do you love me baby?」と繰り返しコーラスが入り、最後には拍手で終わる。賑やかではあるが、どこか寂しさもある終わり方が印象的。


「Let Me Be With You(new step mix)」はオープニングのリミックスバージョン。今作よりも先に『ちょびっツ』のオリジナルサウンドトラックに収録されていた。
ボーナストラック扱いであり、本編の流れからは外れたところにあると思われる。元のバージョンよりもリズムが強調されているのが特徴で、ベースがかなり目立っている感じ。
「可愛い」「お洒落」ではなく「格好良い」と言いたくなるこのバージョンも好き。


中古屋ではあまり見かけないものの、現在でも人気があるのかそれなりの値段で売られていることが多い。
今作はROUND TABLEとしてリリースしてきた作品よりもメロディーやサウンドの「わかりやすさ」が増している印象がある。Ninoの歌声の魅力を引き出すために工夫した結果だと思うが、それが見事に成功している。
自分は2ndの「Nino」の方が好きなのだが、今作もかなりの名盤。

​★★★★☆