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※「Contrary Parade」「コントラリーパレード」の両名義が混じっているので注意。(今作は前者の表記で配信されている)
【収録曲】
全曲作詞作曲 たなかまゆ
全曲編曲 Contrary Parade&All musicians
2.9.ストリングスアレンジ 清野雄翔(harmonic hammock)
9.10.ブラスアレンジ 熊山淳士
3.7.サウンドプロデュース 小林陽介(トレモロイド)
プロデュース 吉田裕也
1.5線譜のうた ★★★★☆
2.エイプリルシャワー ★★★★★
3.空想クロール ★★★★☆
4.マーガレット ★★★★☆
5.アンドロイド ★★★☆☆
6.トリルトレモロ ★★★☆☆
7.虹色 ★★★★☆
8.プリズミカル ★★☆☆☆
9.プライマリー ★★★★★
10.マーチ ★★★★☆
2013年9月18日発売
ストロボレコード
最高位不明 売上不明
Contrary Paradeの1stフルアルバム。先行シングル「空想クロール/虹色」(ライブ会場・通販限定販売)を収録。2ndミニアルバム「ノクターン」(ライブ会場・通販限定販売)からは約1年10ヶ月振りのリリースとなった。
Contrary Paradeは2001年に結成された。当初はバンドとしてスタートし、2012年2月からはボーカル・ピアノのたなかまゆのソロユニット。現在はサポートメンバーを迎えたり、弾き語りで活動したりしている。たなかまゆは作詞家・作曲家として楽曲提供も行っている。
今作は一人体制になってから初の作品。タイトルは「小さな光の音楽」を意味する。
↑全曲ダイジェスト動画
「5線譜のうた」は今作のオープニング曲。温かみのあるメロディーやボーカルが心地良いポップナンバー。ピアノを前面に出した軽快かつお洒落なサウンドがそれらの魅力をさらに引き立てている。
歌詞は制作時点でのたなかの音楽家としての想いが綴られているような印象。「知らない間にひとりぼっちで だけど立ち止まることが ただ怖かった」という歌詞はソロユニットになった当初のたなかの想いがよく現れていると思う。
ソロユニットとしてのContrary Paradeのスタートとなった今作のオープニング曲という位置にふさわしい曲だろう。
「エイプリルシャワー」は爽やかなポップナンバー。開放感に溢れたサビのメロディーには一聴しただけで心を掴まれる。サウンド面はバンドサウンドが主体だが、要所でストリングスが主張して高揚感を演出している。
歌詞は春の始まりを思わせるもの。それに伴い、新しい生活を始めようとしている人への応援歌とも取れる。「強い風が吹き荒れて 飛ばされてしまったとしても ここでいつでも待っているよ」というサビの歌詞がとても優しい。
メロディーやサウンドが自分好みのど真ん中で、Contrary Paradeの中でも一番好きな曲。この曲に出逢った2年前の3月以来、自分の中では毎年4月のテーマソングのようになっている。高校卒業→大学生活開始というタイミングで出逢えたのも本当に大きい。
「空想クロール」は先行シングル曲。ここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。温かみと懐かしさを併せ持ったサビのメロディーが素晴らしい。抑制の効いたバンドサウンドと打ち込みサウンドとの絡みも聴きどころ。さほど主張しないアレンジなので、ボーカルが際立っている。
歌詞は男性目線で描かれており、夏の日の光景が浮かんでくるもの。海辺を恋人と歩いている様子を切り取った、鮮やかかつ多幸感のある詞世界となっている。
シングル曲というには少々地味な印象があるのだが、その分聴く度に良いと感じられるような魅力がある曲。
「マーガレット」は聴き心地の良いミディアムナンバー。流れるような美しさを持ったメロディーは聴き流しているだけでも引き込まれる。曲全体を通じて前に出ている、透明感のあるギターサウンドはスピッツの曲を聴いているかのよう。
歌詞はラブソングの体裁を取りつつも、メッセージ性の強いもの。「誰かに冷たくされたら 誰かにちょっと優しくしよう 最後の呼吸が終わるまで」という歌詞が好き。
メロディーとアレンジがよく合っていて、それがこの曲の聴き心地の良さに繋がっているのだと思う。
「アンドロイド」は先行シングル「空想クロール/虹色」のC/W曲。打ち込み主体のサウンドが展開されたバラードナンバー。ピアノと打ち込みで構成されたアレンジで、音の響きが他の曲とはかなり異なっている。どこか無機質な響きはまさに「アンドロイド」と言ったところ。
歌詞は片想いしている男性が主人公。自らをアンドロイドに例えた歌詞はまるでSF小説のような感覚がある。たなかのウィスパーボイスがどこか謎めいた雰囲気を演出する。
今作の中でも異色なアレンジがされた曲だが、アルバムの真ん中という位置がよく似合う曲と言える。
「トリルトレモロ」は前の曲から一転して、爽やかなポップナンバー。キャッチーながらどことなく哀愁を帯びたサビのメロディーがたまらない。サウンド面では、グロッケンと繊細なギターサウンドがメロディーの持つポップさを引き立てている。
歌詞は別れた恋人とのことを回想したものだと解釈している。随所に感傷的な雰囲気を持った言葉が並んでおり、それが切なさを感じさせる。
歌詞とメロディー・サウンドとのギャップが激しいのだが、それがこの曲の魅力。
「虹色」は先行シングル曲。「空想クロール」とは両A面だった。センチメンタルな雰囲気を持ったバラードナンバー。畳み掛けるようなサビには引き込まれるばかり。終始淡々と刻まれる、それでいて叙情的なギターやベースはくるりの「ばらの花」のそれを彷彿とさせる。
歌詞は雨の日を舞台にしている。正直なところ、歌詞の世界観は何となくわかる程度なのだが、「悲しくて世界が虹色だ」というサビ終わりの歌詞が印象的。聴く度に「悲しみをこのように表現するか…」と驚かされる。
悲しみや切なさに溢れた曲なのに、曲調が重苦しくなっていないのが好印象。
「プリズミカル」は目まぐるしく変わる曲調が印象的な曲。どこがサビなのか分かりにくいメロディーも複雑そのもの。聴き流していても凝っているとわかるようなバンドサウンドはかなり聴きごたえがある。
歌詞は片想いしている男性の心情が描かれたものだと思う。「君を追いかけたい 君を追いかけたい 生まれた意味など なくたってかまわない」という歌詞は非常に力強い。タイトルは「プリズム」と「リズミカル」を合わせた造語だと解釈している。
メロディーやボーカル以上に演奏を聴かせるようなイメージがある曲。
「プライマリー」はお洒落な雰囲気を持ったポップナンバー。広がりのあるサビのメロディーはキャッチーかつ美しい。バンドサウンドにホーンやストリングス、グロッケンをバランス良く織り交ぜたカラフルで煌びやかなサウンドがたまらない。
歌詞は恋人との明るい未来を思い描いている男性の姿が浮かんでくる。全体的にロマンティックな詞世界となっており、たなかのふわふわとした歌声が特に映える。
メロディーやサウンドが自分好みで、今作の中でもかなり好きな方に入ってくる。
「マーチ」は今作のラストを飾る曲。タイトル通りの楽しげな雰囲気に満ちたポップナンバー。「みんな ありがとう ありがとう」から始まるサビは一度聴けば中々耳を離れない。バンドサウンド、ホーンに加えてコーラスもかなり目立っており、とても賑やかなサウンドに仕上がっている。
歌詞は何気ない日常の中の幸せや周囲への感謝が描かれている。この曲も全体的に多幸感のある詞世界で、聴いているだけで晴れやかな気分になれる。
この曲で締める演出が上手い。この曲がラストに置かれていることで、一貫してポップで明るい作品になっていると思う。
今作…というより、Contrary Paradeの作品に共通するキャッチコピーに『「あなたも聴けばきっとこう言うはず。 「あ、ふつうにいい。」』というものがある。
強い個性こそ無いが、心地良くて普遍的なポップス揃いのContrary Paradeの魅力を的確に表現した言葉だと思う。こうした音楽をやっているアーティストは意外と少ない。もちろん、前述した魅力は今作でも存分に堪能できる。ネオアコや渋谷系の要素が感じられる部分もあり、その手の音楽が好きな方ならハマれるはず。
★★★★★
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