Blue Avenue
花澤香菜
2015-04-22



Blue Avenue
花澤香菜
2015-04-22



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【収録曲】
1.2.3.5.11.13.作詞 岩里祐穂
4.作詞作曲編曲 宮川弾
6.作詞作曲 ティカ・α
7.作詞 北川勝利
8.10.作詞 花澤香菜
9.作詞作曲編曲 矢野博康
12.作詞作曲編曲 中塚武
14.作詞 西寺郷太
1.3.7.8.10.13.作曲 北川勝利
2.作曲編曲 STUDIO APARTMENT
5.作曲編曲 mito
11.作曲 Andy Connell・Corinne Drewery
12.作曲 中塚武
14.作曲編曲 奥田健介
1.7.8.13.編曲 北川勝利
3.編曲 北園みなみ・北川勝利
6.編曲 やくしまるえつこ・山口元輝
10.編曲 zakbee&Hatayoung・北川勝利
11.編曲 Andy Connell
1.ホーンアレンジ 村田陽一
6.ホーンアレンジ 北園みなみ
13.ストリングスアレンジ 宮川弾
プロデュース 北川勝利
2.サウンドプロデュース STUDIO APARTMENT 
6.プロデュース やくしまるえつこ
11.プロデュース Swing Out Sister

1.I ♥ NEW DAY! ★★★★★
2.ほほ笑みモード ★★★★☆
3.Nobody Knows ★★★★★
4.ブルーベリーナイト ★★★☆☆
5.Trace ★★★☆☆
6.こきゅうとす ★★★★☆
7.Night And Day ★★★★☆
8.タップダンスの音が聴こえてきたら ★★★☆☆
9.We Are So in Love ​★★★★★
10.プール ★★★☆☆
11.Dream A Dream ​★★★☆☆
12.マジカル・ファンタジー・ツアー ★★★★☆
13.君がいなくちゃだめなんだ ​★★★★☆
14.Blue Avenue を探して ​★★★★☆

2015年4月22日発売
アニプレックス
最高位12位 売上1.2万枚

花澤香菜の3rdアルバム。先行シングル「ほほ笑みモード」「こきゅうとす」「君がいなくちゃだめなんだ」を収録。前作「25」からは約1年2ヶ月振りのリリースとなった。初回盤は三方背BOX入り仕様・フォトブック・Blu-ray付属。

今作は「ニューヨーク」をテーマにしている。ジャケットやブックレット内の写真はニューヨークで撮影されているほか、一部の収録曲はニューヨークのミュージシャンが参加している。

1st「claire」と2nd「25」は渋谷系の色が強い曲を展開してきたが、今作はジャズ・フュージョン、AORなどを取り入れた作風となっている。花澤自身ジャズ系の曲をやりたいと思っていたようで、それが反映されたと言える。


「I♥ NEW DAY!」は今作のオープニング曲。フュージョンの要素を取り入れたお洒落なミディアムナンバー。ゆったりと流れていくメロディーは上質そのもので、たまらなく心地良い。演奏はニューヨークのミュージシャンが数多く参加している。イントロから豪華かつ聴きごたえのあるバンドサウンドが展開されており、今までとは何かが違うと確信できるほど。
歌詞は新しい生活の始まりを思わせるもの。全体を通して前向きな詞世界であり、中でも「 なりたい自分になるための期限に 遅すぎることなんてないから」という歌詞が好き。
曲や演奏の影響なのか、歌詞の影響なのか、聴いているとこれ以上無いほどにワクワクさせられる。最高のオープニングだと思う。


「ほほ笑みモード」は先行シングル曲。今までのシングル曲とは打って変わって、STUDIO APARTMENTがプロデュースを手掛けた。ハウスミュージックの要素を取り入れた曲。サビでも大きく盛り上がらないが、それでもよく耳に残る。サウンド面は打ち込み主体によるもの。淡々と刻まれる4つ打ちキックやエレピが浮遊感を演出する。
歌詞は恋人との出逢いを描いたものだろうか。多幸感のある詞世界に仕上がっており、花澤の可愛らしい歌声がより際立つ。
異色な路線ではあるが、これはこれで良いと感じる。後にも先にもこの手の路線の曲は少ないだけに貴重。


「Nobody Knows」はジャズ・フュージョン色の強いミディアムナンバー。聴き流すのがたまらなく心地良いメロディーが終始展開されている。この曲もニューヨークのミュージシャンが多く演奏に参加している。鋭いドラミング、曲に絡みつくようなベースやサックスはいつまでも聴いていたくなるような中毒性がある。
歌詞は「誰も知らない この街」を舞台にしたもの。「I ♥ NEW DAY!」で描かれた街と同じなのかはわからないが、そちらとは異なり、不安や孤独などが前面に出されている。
今作の中でも特に緻密かつ技巧的なアレンジがされており、そこは北川勝利と共同でアレンジを手掛けた北園みなみの手腕が発揮されているように思う。


「ブルーベリーナイト」はどことなくひねくれた感覚のあるポップナンバー。1st以来参加している宮川弾が作詞作曲編曲を担当した。跳ねるようなイメージのあるお洒落なメロディーは聴いていて楽しい。打ち込み主体の淡々としたアレンジがボーカルの魅力を際立たせる。
歌詞の意味ははっきりとわからない。語感を重視したようなフレーズが次々と並ぶ中、ところどころでメッセージ性のある言葉が突然出てくる。考えれば考えるほどわからなくなるような歌詞である。また、早口で歌われている部分があるのだが、そこはこの曲の聴きどころ。
全体的にメロディーが言葉に追いついていない感覚があり、それが聴いていて気持ち良い。


「Trace」はここまでの流れをぐっと落ち着けるバラードナンバー。曲全体を通じて、どこか陰のある美しいメロディーが展開されている。アコギとチェロやバイオリンを前面に出したサウンドは荘厳な雰囲気さえ感じられる。花澤本人による分厚い多重コーラスもそうした雰囲気を演出する。主旋律以上にコーラスの方に力が入っているのではないか。
歌詞は幻想的な世界観を持ったもの。「もしあなたがいなければ 私はここにたぶんいないでしょう」という歌い出しからこの曲の世界に引き込まれていく。
落ち着いたバラードは多くあれど、この曲ほどアダルトな質感のバラードは珍しいと思う。


「こきゅうとす」は先行シングル曲。可愛らしさのあるポップナンバー。やくしまるえつこがプロデュースを手掛けた。派手に盛り上がるわけではないが、一聴しただけで耳を離れなくなるメロディーはとても強い。うねりのあるシンセが曲の謎めいた雰囲気を引き立てる。
歌詞は何度も繰り返し歌われる部分や、韻を踏んだ部分が特に印象に残る。聴き流していても、何気ないワンフレーズがスッと入ってきて忘れられなくなる。
曲のどの要素を取っても相対性理論(やくしまるえつこ)の色が非常に強く出ており、初めて聴いた時には笑ってしまったほど。花澤香菜の作品よりも先に相対性理論を聞いていただけに尚更だった。


「Night And Day」はスウィングジャズを取り入れたポップナンバー。弾むような感覚を持ったサビのメロディーは一度聴けば中々離れない。イントロからしてジャズの要素が相当に強い。特に佐野康夫のドラミングは演奏している風景が浮かぶほどに一音一音がくっきりと聴こえる。
歌詞は女性スパイが主人公としたものだろうか。「不揃いに並ぶカード 見えない明日を占う 知り過ぎた秘密に よく似てる」という歌詞を始め、映画のような鮮やかさを持った詞世界に仕上がっている。
演奏の聴きごたえが尋常ではない。今作の中でも最初に作られた曲だというのも納得。この曲が今作全体の作風を引っ張ったのではないか。


「タップダンスの音が聴こえてきたら」は2分半ほどの短めな曲。ピアノに加え、一人多重コーラスがフィーチャーされているのが特徴。
作詞は花澤本人によるもの。軽やかで幸せそうなイメージの歌詞となっている。
曲のどれを取っても楽しげな雰囲気があり、ドゥーワップテイストのコーラスということも相まってBilly Joelの「The Longest Time」を彷彿とさせる。


「We Are So in Love」はフュージョンを取り入れたポップナンバー。どこまでも広がっていくような感覚のあるキャッチーなサビは何度でも聴きたくなる。また、サビ前〜サビの高揚感は凄まじいものがある。花澤のコーラスもそれを引き立てる。サウンドは打ち込み主体。また、イントロや間奏でのキンモクセイの後藤秀人によるギターソロは圧巻。
歌詞は宇宙を思わせるフレーズが多く登場するのが特徴。その要素が無ければ普通のラブソングと言ったところだが、それによってとてもロマンティックな歌詞となっている。そうした歌詞でも全く違和感が無い、それどころかよく似合うのが花澤の凄いところ。
矢野博康と花澤の親和性の高さを思い知らされた名曲。今作の中でも一番好きな曲で、花澤の全ての曲の中でも特に好きな方に入ってくる。


「プール」はレゲエのテイストを取り入れたミディアムナンバー。サビでの訴求力のある美しいメロディーが見事。聴き流していると気にならないのだが、少し集中して聴くとかなり緻密に作り込まれたサウンドであることがわかる。リズムのせいか、後述する歌詞のせいか、どこか気怠げなイメージのある曲となっている。
作詞は花澤本人によるもの。「明日の温度感じて 焦る気持ちは このままじゃもういられない 戦わなきゃだめ?」という歌詞を始め、内省的な詞世界となっている。本人が作詞すると、内省的で暗い歌詞が多くなる印象がある。
花澤の作品でも、北川の関わる作品でもこの手のサウンドのアプローチがされた曲は珍しいと思う。


「Dream A Dream」はSwing Out Sisterがプロデュースを手掛けたミディアムナンバー。当たり前ではあるが、日本の音楽の匂いを全く感じないメロディーである。ソウルやジャズ、シンセポップなど様々なジャンルの要素を織り交ぜた、上質なサウンドはSwing Out Sisterの楽曲そのもの。
歌詞はタイトル通りのドリーミーな雰囲気を持ったもの。また、イントロや間奏で語りが入っているのが特徴で、それが曲の世界観を形作っている。
曲以上にサウンドの聴きごたえがある曲だと思う。ただ大物アーティストを参加させただけでなく、それが作品の中に浮くことなくまとまっているところに構成の上手さを感じる。


「マジカル・ファンタジー・ツアー」はミュージカル音楽のような雰囲気を持ったポップナンバー。美しくキャッチーなメロディーは聴いていると心が弾む。ストリングスやブラスを前面に出し、盛り上がりのあるサウンドとなっている。ただ、2番では打ち込みドラムを前面に出すという攻めたアプローチもされているのが見事。
歌詞は多幸感のあるもの。「世界は愛で埋めつくされる」「地球はふたりのために回ってる」といった歌詞が顕著。花澤の軽やかなボーカルが歌詞をさらに鮮やかなものにしている。
中塚武が花澤に提供した曲の中でも、特に中塚本人の色が強く出た曲という印象。


「君がいなくちゃだめなんだ」は先行シングル曲。花澤が主演した同タイトルの映画の主題歌に起用された。シングル曲として初の直球なバラードナンバー。優しく美しいメロディーや、ピアノやストリングスを前面に出した流麗かつドラマティックなサウンドに聴き惚れる。
歌詞は「君」への強い想いが綴られている。この「君」は聴き手それぞれで当てはめることができるだろう。サビでの「君がいなくちゃだめなんだ」という、岩里祐穂にしてはあまりにも真っ直ぐな言葉が印象的。花澤の透き通った歌声もいつになく力強く響く。
映画の流れの中で聴いたら、さらにこの曲の良さが際立つのかもしれない。いずれ映画も観たいと思う。


「Blue Avenue を探して」は今作のラストを飾るタイトル曲。今作のタイトルが決まってからこの曲名になったという。AOR色の強いサウンドが展開されたポップナンバー。曲やサウンドに80年代の雰囲気が感じられるのはNona Reevesならでは。
歌詞は「CALL ME EVERYDAY」「YESTERDAY BOYFRIEND」(この曲と同じく西寺が提供した2曲)から繋がっているイメージとのこと。「大人になれたなら Broadwayに行こう」という、かつての恋人との夢を一人で叶える女性が描かれている。
「君がいなくちゃだめなんだ」で締めるのではなく、この曲で終わるのが上手い。この曲で締めることで、さらにドラマティックな終わり方になっている印象。


大きく売れたわけではないが、中古屋ではそれなりに見かける。
異色なアプローチがされた先行シングルを聴いただけでは、今作全体の作風は全く想像できない。アルバムの中で浮くことなくまとまっているのが不思議なくらい。
全体を通して非常にサウンド面に聴きごたえがある贅沢な作品となっている。ボーカルが演奏に負けてしまっている感が否めない曲もあるのだが、そうしたボーカルだからこその聴きやすさがある。曲やサウンド面がことごとく自分好みで、花澤香菜のアルバムの中で1番好きな作品となっている。

​★★★★★