シー・ガット・ザ・ブルース
マイクロスター
2016-07-20


ストリーミング配信について…Spotify,LINE MUSIC,Apple Music,Amazon Music,AWAでの配信を確認。(※「microstar」「マイクロスター」と二つの名義が混在しているので注意)

【収録曲】
全曲作詞 飯泉裕子
全曲作曲編曲 佐藤清喜
プロデュース microstar 

1.Chocolate Baby ★★★★☆
2.Tiny Spark ​★★★★★
3.月のパレス ★★★☆☆
4.友達になろう ​★★★★☆
5.My Baby ★★★☆☆
6.夕暮れガール(Album Mix) ★★★★★
7.私たちは恋をする ​★★★☆☆
8.She Got The Blues ★★★☆☆
9.夜間飛行 ★★★★★
10.おやすみ ★★★★★

2016年7月20日発売(CD)
2017年5月24日発売(LP)
VIVID SOUND
最高位不明 売上不明

microstarの4thアルバム(2ndフルアルバム)。先行シングル「夕暮れガール」「夜間飛行」「Tiny Spark」(いずれも7インチアナログ盤+CDの形態でリリース)を収録。前作「microstar album」からは8年2ヶ月振りのリリースとなった。

microstarは1996年に結成されたユニット。ボーカル・ベースの飯泉裕子と作編曲の佐藤清喜からなる。二人は夫婦でもある。そのためか、活動はかなりマイペース。

結成当初の作品はテクノポップ色が強かったのだが、前作「microstar album」辺りからオールディーズ系の美しいメロディーと打ち込みサウンドを融合させた音楽性となった。
今作はリリース当時のシティポップ・AORリバイバルの流れに影響されたのか、そうした作風が強い曲が並んでいるのが特徴。


「Chocolate Baby」は今作のオープニング曲。洗練された雰囲気を持ったポップナンバー。サビで一気に引き込む技術は佐藤清喜の得意技。ホーンが前面に出た賑やかなサウンドがメロディーのポップさを高めている。シンセによるハンドクラップが入った部分があり、緻密な音作りがたまらない。
歌詞は恋人に振り回される女性を描いたものだと解釈している。ただ、全体としては割と多幸感のある詞世界となっている。
メロディーやサウンドの高揚感は相当なもので、聴き手の心を掴むオープニングとしてはうってつけの曲だと思う。


「Tiny Spark」は先行シングル曲。80年代のシティポップやディスコミュージックを蘇らせたような雰囲気のあるポップナンバー。キャッチーかつ流れるような美しさを持ったメロディーが見事。それはサビでも変わらない。ストリングス・ホーン・ギターのカッティングとどれを取っても高揚感に溢れたサウンドに圧倒される。
歌詞はどこか内省的な世界観を持ったもの。「自分の事しか解らない自分に 永遠に続く答えの出ない問い」というフレーズが顕著。
メロディーやサウンドが自分好みのど真ん中。今作の中でも一番好きな曲。前の曲からの流れも絶妙。


「月のパレス」はここまでの流れと同じく、洗練されたポップナンバー。この曲に限ったことではないが、聴き流すのがたまらなく心地良いメロディーが展開されている。高らかなホーンとハンドクラップは聴いているだけでも心が明るくなる。
歌詞は女性が恋に落ちる瞬間を切り取ったようなイメージがある。戸惑いとこれからへの期待の両方が入り混じったような感情を的確に言い表した詞世界となっている。
冒頭3曲は似たようなアプローチがされた曲だが、全く飽きない。この畳み掛けられるような感覚がたまらない。


「友達になろう」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。甘く美しいサビのメロディーは一聴しただけでも心を掴まれる。純粋に「良い」と思わせてくれるようなメロディーである。落ち着いたバンドサウンドやホーンがメロディーの魅力をより引き立てている。
歌詞はタイトル通り誰かと話している光景が浮かぶ。少しずつ相手の腹を探っているようなイメージがある。「喋り過ぎれば喋る程 喋ってないのと同じだ」という歌い出しの歌詞からして、かなり内省的。
派手に盛り上がるわけではないが、それでも魅かれるメロディー。佐藤のメロディーメーカーとしての実力が遺憾無く発揮された曲だと思う。


「My Baby」は前の曲と同じく、しっとりとしたバラードナンバー。2分45秒ほどの短めな曲。ソフトロック〜ネオアコ系の美しいメロディーが展開されている。メロディーやボーカルを引き立てるような控えめなアレンジがこの曲にはよく合っている。
歌詞は恋人と過ごす幸せな時間が想像できるもの。日常の何気ないシーンを切り取り、そこから二人の幸せまで発展していく。歌詞の展開の上手さが印象に残る。
短めな曲の中に聴きどころが詰め込まれているような感じ。


「夕暮れガール(Album Mix)」は先行シングル曲。シングルバージョンは聴いたことが無いので、違いはよくわからない。
シティポップ色の強いポップナンバー。上品かつキャッチーにまとめられたサビは何度でも聴きたくなる。煌びやかなストリングスやホーンの絡んだサウンドも相まって、聴いていてたまらなく心地良い。
歌詞はタイトル通り夕暮れの都会の光景が想像できるもの。「光る高速道路と街頭と赤いのっぽの電波塔」というサビ頭のフレーズを聴くと、一気に景色が浮かんでくる。
今作の中でも初出が最も古い曲だが、この曲が今作の作風を牽引した印象がある。


「私たちは恋をする」はソウル色の強いミディアムナンバー。曲全体を通して展開されている、甘く美しいメロディーに引き込まれる。メロディーに寄り添った、渋い味わいのサウンドが見事。
歌詞はピロートークしているカップルを描いたものだろうか。幸せを噛み締めているようなイメージの詞世界であり、メロディーとこれ以上無いほど合った歌詞だと思う。
こうした路線の曲は今までのmicrostarには無かった印象。新機軸の曲だが、これはこれで良い。


「She Got The Blues」は今作のタイトル曲。ワルツの要素を取り入れた美しいバラードナンバー。曲全体を通して盛り上がることのない曲調だが、それがこの曲には似合う。流麗なストリングスがしっとりとしたメロディーに寄り添う。
歌詞は帰宅する際の風景を描いたもの。「人ごみの中でイヤフォン ロマンティックな曲を聴く それだけで生きてる それだけで」という歌詞が好き。飯泉は日常のありふれたシーンを鮮やかに描き出すのが上手いと思う。
美しいのにどこか哀愁がある。「Blues」というフレーズにふさわしい曲。


「夜間飛行」は先行シングル曲。エレポップ色の強いポップナンバー。キャッチーかつ上品なメロディーに聴き惚れるばかり。どこまでも広がっていくような感覚のあるサビのメロディーは職人技。シンセを主体としつつも、シティポップ的な洗練されたサウンドが展開されている。
歌詞はタイトル通り夜や星を思わせるフレーズが並んだもの。この曲もまた、サウンドと歌詞の相性がとても良い。
こういうのが聴きたかった!と思わされるような曲やサウンドで、この曲も大好き。


「おやすみ」は今作のラストを飾る曲。映画音楽のように美しく壮大なメロディー・アレンジを堪能できる。アルバムのラストを前提として作られたとし思えないほど。
歌詞はタイトル通り一日の終わりを想像させるもの。この曲も夜空や星がキーワードとなった詞世界で、「夜間飛行」からの繋がりを意識して聴くとより楽しめる。
どこまでも直球なバラードなのに、聴いていて全くだれない。佐藤清喜はキャリアを通じてバラードに名曲が多いが、彼のメロディーセンスの凄さを実感させられる名バラード。


70年代〜80年代の洋楽・邦楽の要素を取り入れ、それを現代の音で蘇らせたような曲が並んでいる。
同様の作風である前作「microstar album」も大好きな作品なのだが、サウンドの方向性が自分の好きな方に振り切っているので今作の方が好き。
シティポップ・AORリバイバルの中で多くの作品が生み出されたが、今作も素晴らしい名盤。この作品はまだまだ評価が足りないと思う。
ちなみに、今作はインストバージョンも配信されており、そちらもおすすめ。緻密なアレンジをより楽しめる。

​★★★★★