シトロン
Qlair
1992-06-21


ストリーミング配信について…Spotify,LINE MUSIC,Apple Music,Amazon Music,AWAでの配信を確認。(いずれも「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ Qlair Archives」)

【収録曲】
1.4.6.作詞 西尾佐栄子
2.作詞 芹沢類
3.作詞 只野菜摘
5.作詞 川村真澄
7.作詞 木村麗子
1.7.作曲編曲 成田忍
2.作曲 広谷順子
3.作曲 大沢誉志幸
4.6.作曲 山口美央子
5.作曲 鈴木祥子
2.編曲 門倉聡
3.編曲 門倉聡・広谷順子(コーラスアレンジ)
4.6.編曲 山川恵津子
5.編曲 成田忍・佐橋佳幸・西平彰
プロデュース 篠崎恵子

1.CITRON ★★★★☆
2.タヒチアンラブ ★★★☆☆
3.泣かないでエンジェル ​★★★★☆
4.思い出のアルバム ​★★★★★
5.パジャマでドライブ ★★★★☆
6.一緒に見た風 ★★★★☆
7.IN YOUR EYES ★★☆☆☆

1992年6月21日発売
2005年11月30日発売(全曲集「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ Qlair Archives」)
Ki/oon Sony Records(オリジナル盤)
GT Music(「Qlair Archives」)
最高位84位 売上0.3万枚(オリジナル盤)

Qlairの2ndアルバム。先行シングルは無し。前作「Les filles」からは7ヶ月振りのリリースとなった。初回盤はシースルートレイ入り仕様。


Qlairは1991年にデビューし、1994年に活動休止した3人組の女性アイドルグループ。今井佐知子・井ノ部裕子・吉田亜紀から成る。メンバーは全員フジテレビが主催・運営していたアイドル育成講座の乙女塾出身。CoCo、ribbonと続いた乙女塾出身のアイドルグループの流れを汲んでいる。

1980年代の終わりから1990年代後半(おニャン子クラブの解散〜モーニング娘。の登場まで)は「アイドル冬の時代」と称されることがあるが、Qlairを含めた乙女塾系のグループはその時代の中で存在感を発揮していた。乙女塾系のグループはメンバーのキャラクターよりも楽曲のクオリティを重視していた印象がある。
派手さは無いものの、上品かつポップなメロディーや、充実したコーラスワークといった部分が魅力。Qlairのそうした音楽性は今で言う「楽曲派アイドル」の元祖とされることがある。

今作はシングル「眩しくて」の流れを受けてか、「夏」をテーマにしたコンセプトアルバムのような作風となっている。前述した音楽性が遺憾無く発揮されている。


「CITRON」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。清涼感のあるポップナンバー。わかりやすく高揚感のあるメロディーが見事。少し尖った質感のギターサウンドと煌びやかなシンセが前面に出ているのが特徴で、こうしたアプローチはQlairとしては珍しかったように思う。
歌詞は多幸感のあるラブソングと言ったところ。「24時間 あなたでいっぱい」という歌い出しからしてそれに満ちている。Qlairの魅力であるコーラスワークがこの曲では特に冴え渡っている。
異色なサウンドで攻めたオープニングだが、持ち味である上品な雰囲気は失われていない。バランス感覚の良さが印象的。


「タヒチアンラブ」は上品さを感じさせるミディアムナンバー。サビまでは美しいメロディー、サビでは一気にキャッチーなメロディーを楽しめる。こうした展開はアイドルポップならではと言える。メロディーの魅力を引き立てるような丁寧なアレンジがされているが、間奏のギターソロは渋い質感。そこはこの曲の聴きどころ。
歌詞はタイトル通りタヒチを舞台にしたラブソング。常夏の島を舞台にした歌詞にもかかわらず、何故か避暑地をイメージしながら聴いてしまう。
前の曲と比べ、メロディーやサウンド面ではこちらの方が王道という感じがする。


「泣かないでエンジェル」は前の曲と同じく、洗練されたミディアムナンバー。大沢誉志幸独特の、美しく哀愁を漂わせたメロディーを全編通して堪能できる。キラキラしたシンセが前面に出たイントロから心を掴まれるばかり。
歌詞は夏の終わりを舞台に、片想いのまま終わってしまった恋に苦しむ女性が描かれている。「近くにいられるのなら 妹でかまわない 悲しみを隠してでも 友達でいたかった」という歌詞が切なく響く。あくまで明るく可愛らしいボーカルがなおさらそれを切なくさせる。
派手さこそ無いが、隠れた名バラードと言いたくなるような立ち位置の曲。


「思い出のアルバム」は懐かしさと切なさに満ちたミディアムナンバー。サビでの畳み掛けるようなメロディーとコーラスワークは訴求力に溢れている。曲の随所で存在感を発揮する、この時代特有の無機質なのにどこか温かみのあるシンセの音色がたまらない。
歌詞は別れた恋人との思い出を振り返ったもの。「いつだって 優しいのに照れてただけ 今も変わりませんか」という2番のサビ前の歌詞が好き。ベタ過ぎるほどの歌詞がアイドルポップでは魅力に変わる。
「眩しくて」やこの曲を始め、山口美央子とQlairの相性は非常に良かったと思う。今作の中では一番好きな曲。


「パジャマでドライブ」はしっとりとしたバラードナンバー。サビはもちろんのこと、Aメロからして引き込まれてしまうほどの美しいメロディーは鈴木祥子の真骨頂である。他の曲と比べても格段に音の数が少ない上に柔らかい音色で固められ、隙間を活かしたようなアレンジがされているのが特徴。
歌詞はかつての恋を振り返ったもの。「バカげた恋だった」「今もあなたほど 夢はないけど 嘘を信じるの うまくなったわ」などといった歌詞はいつになく大人びて聞こえる。
この曲に関しては、メロディーとアレンジの良さが印象的。特に凝ったアレンジの曲だと思う。


「一緒に見た風」は前の曲と同じく、しっとりとしたバラードナンバー。こちらも山口美央子による曲。切なくキャッチーにまとめられたサビは何度聴いても心を掴まれてしまう。ストリングスを前面に出した流麗なアレンジとコーラスワークの相性は素晴らしいものがある。
歌詞は別れようとしている恋人への想いが綴られたもの。繊細な情景描写が彩りを添える。「嘘のつけない そういうところも愛してたから」という歌詞が何とも切ない。
「思い出のアルバム」ほどではないが、こちらも大好きなバラード。


「IN YOUR EYES」は今作のラストを飾る曲。1分半ほどの短めな曲で、Qlairとしては唯一の全編英語詞による曲。冒頭で蜩の鳴き声が使われているのが印象的で、夏の終わりを思わせるような演出。
アルバム全体のアウトロのような役割を果たしており、静かにアルバムが終わる。


あまり売れた作品ではないので、中古屋では滅多に見かけない。今から聴くなら、全曲集「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ Qlair Archives」を入手することをおすすめする。
前述した通り、「夏」をテーマにしたコンセプトアルバムだと思う。叙情的な曲が多めなのが特徴で、夏ならではの明るさを持った曲は冒頭2曲くらいしか無い。ただ、Qlairならではの洗練されたアイドルポップは全体を通して楽しめる。今こそ再評価されるべき作品・グループだと思う。

★★★★★