ビータ
かの香織
1993-06-21


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【収録曲】
全曲作詞作曲 かの香織
1.編曲 門倉聡
2.3.編曲 山内薫・井上徳雄
4.編曲 長谷川智樹
5.編曲 森英治
プロデュース  かの香織

1.サンデイサンデイ ★★★☆☆
2.あなたがいないランデヴー ★★★★★
3.YES,IT’S YOU ​★★★☆☆
4.金曜日のレストラン ★★★☆☆
5.エメラルド ★★★★★

1993年6月21日発売
Sony Records 
最高位不明 売上不明

かの香織の1stミニアルバム。先行シングルは無し。前作「fine」からは約1年11ヶ月振りのリリースとなった。

かの香織は1982年にショコラータのボーカルとして音楽活動を開始し、1985年にメジャーデビューを果たした。ニューウェーブとイタリアのカンツォーネを融合させた独自の音楽性が一部で高く評価されたものの、その翌年に活動休止。その後はCaolina Bambina名義でのCMソングの制作、他のアーティストとの共演、デザイナーとしての活動など幅広く活躍。

かの香織としてのソロデビューは1991年。奇抜なファッションや音楽性が印象的だったショコラータ時代とは異なり、自然体なスタイルでデビュー。音楽性もバンド時代のそれとは一変し、シティポップ・AORや渋谷系のテイストを忍ばせたお洒落なポップスを展開するようになった。
声楽科出身らしくオペラの要素が強かったバンド時代の歌い方も、持ち前の独特な声質や優れた表現力を活かしたものに変貌を遂げた。


「サンデイサンデイ」は今作のオープニング曲。静かなバラードナンバー。とはいえ、サビでは確かな盛り上がりを作ってくれる。あまり音の数は多くないが、その分一切の無駄が無いアレンジとなっている。
歌詞は砂浜を舞台に、恋人への想いが綴られたもの。全体的に幸せな描写がされているはずなのに、どこか悲痛な感じが伝わってくるのは何故だろう。
オープニングなのにエンディングかと思ってしまうような壮大なバラードであり、この曲を初めに持ってくる構成には驚かされる。


「あなたがいないランデヴー」は前の曲から一転して、爽やかなポップナンバー。聴き流すのが心地良い、美しく流れの良いメロディーが展開されている。少しだけシティポップのテイストを感じさせるサウンドがたまらない。シンセとギターのカッティングが前面に出ており、聴きごたえのあるアレンジとなっている。
歌詞は恋人と別れた女性が海沿いの道をドライブする姿を描いたもの。別れた恋人との後悔を滲ませつつも、忘れようとする姿が印象的。
前の曲よりもこちらの方がオープニング向きだったのでは?と思ってならない。サウンドが自分好みで、今作の中でも一番好きな曲。


「YES,IT’S YOU」は前の曲と同じく、今作の中では派手な曲。サビ以上にサビ前の方がキャッチーでよく耳に残る。この曲も丁寧なバンドサウンドが主体のアレンジ。その中でも河村智康による抜けの良いドラムの音は聴いていてとても心地良い。
歌詞は別れた恋人のことを忘れられず、関係を戻したいと願う女性が描かれている。「彼女といかないで」というストレート過ぎる言葉から情感が溢れている。
曲やサウンドと歌詞のギャップがかなり激しい印象があるが、それがこの曲の魅力と言える。


「金曜日のレストラン」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。ドラマティックな展開を見せるメロディーはかの香織ならでは。ストリングスを前面に押し出したアレンジがされている。サビで一気に音の数が増えて盛り上がる演出が見事。
歌詞はタイトル通りレストランを舞台にしたもの。これまた別れた恋人と来た思い出があり、それを忘れられない様子。今作はどうにもモヤモヤする歌詞が多い。
3分少々の短めな曲ながら、その中に聴きどころが詰め込まれているような感覚がある。


「エメラルド」は今作のラストを飾るバラードナンバー。繊細さを感じさせるメロディーが全編に渡って展開されている。どこか幻想的な雰囲気を持ったアレンジがされているのが特徴。イントロやアウトロでの民族音楽のようなスキャットが聴きどころ。かののボーカリストとしての実力が遺憾無く発揮されている。
歌詞は南太平洋の島を舞台に、そこで過ごす様子が描かれている。タイトルはそこの海の色を表したものなのだろう。鮮やかな光景が浮かんでくるような描写が素晴らしい。
かのは旅行好きだというが、その一面がよく出た曲だと思う。


よく売れた作品ではないので、中古屋ではあまり見かけない。
次のミニアルバム「Familia」と共に、ソロとしてのかの香織の音楽性を確立した作品という印象がある。ドラマティックなメロディーと緻密なアレンジの絡みはかの香織ならでは。ミニアルバム独特のコンパクトさも相まって、何度でも聴きたくなるような良さがある。

★★★★☆