a piece of cake
渡辺満里奈
1990-07-21



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【収録曲】
1.5.作詞 渡辺満里奈
2.作詞 岡部真理子
3.作詞 岩里祐穂
4.作詞 戸沢暢美
6.7.作詞 DOUBLE K’O’ CORPORATION
8.9.作詞 井上妙
1.2.3.4.作曲 上田知華
5.作曲 MAYUMI
6.7.作曲 DOUBLE K’O’ CORPORATION
8.9.作曲 外間隆史
1.2.3.編曲 井上鑑
4.編曲 清水信之
5.編曲 新川博
6.7.編曲 DOUBLE K’O’ CORPORATION
8.9.編曲 外間隆史・中原信雄
1.2.3.プロデュース 上田知華
4.プロデュース Tadashi Akai
5.プロデュース MAYUMI
6.7.プロデュース Double K’O’ Corporation
8.9.プロデュース 外間隆史

1.フレンズ ★★★★☆
2.夜道 ★★★☆☆
3.MOVE OUT ★★★☆☆
4.新しい気持ち ★★★★☆
5.BE WITH YOU ★★★☆☆
6.大好きなシャツ(1990旅行大作戦) ​★★★★☆
7.レイニー カインド オブ ラブ ​★★★☆☆
8.グラヂオラス ★★★★★
9.夏の日 ★★★☆☆

1990年7月21日発売
Epic/Sony Records
最高位32位 売上1.6万枚

渡辺満里奈の6thアルバム。先行シングル「新しい気持ち」「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)」を収録。前作「TWO OF US」からは7ヶ月振りのリリースとなった。

今作は今までのリゾートポップ的な路線を形成してきた山川恵津子が参加していない。その代わりに多くの作家が参加し、それぞれがプロデュースを手がけるという形で制作された。

また、先行シングル「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)」を始めとして、フリッパーズ・ギターがDOUBLE K’O’ CORPORATION名義で楽曲提供しているのが特徴。次作「mood moonish」ではさらに渋谷系に寄った作風となる。


「フレンズ」は今作のオープニング曲。洗練された雰囲気を持ったミディアムナンバー。中庸な味わいのメロディーは上田知華独特の魅力である。シンプルなバンドサウンドで進んでいくが、間奏のギターソロは非常に力強い。
作詞は渡辺自ら担当した。タイトル通り、友人へのメッセージのような雰囲気がある詞世界となっている。優しく真っ直ぐな言葉が使われている。
一曲単位ではそれなりに好きなのだが、オープニングというには少々地味な印象が否めない。


「夜道」は不思議な雰囲気を持ったミディアムナンバー。どこがサビなのかわかりにくい、平坦なメロディーが展開されている。この曲のサウンド面も安定感のあるバンドサウンドで構成されている。
歌詞はタイトル通り夜道を舞台としたもの。恋人と夜道を歩いている姿が浮かんでくる。
ちなみに、普通のコーラスのように小さくクレジットされているだけだが、UNICORNの奥田民生とデュエットしている。初めて聴いた時には驚いた。奥田は今作リリース時点でそれなりにビッグネームだったので、もう少し大々的に取り上げてもよかったように思う。


「MOVE OUT」はしっとりとしたバラードナンバー。サビでも大きく盛り上がることなく、終始優しいメロディーが展開されている。バンドサウンドに加えてストリングスやクラリネットなどが使われており、メロディーの魅力をさらに高めている。
歌詞はかつての恋人へのメッセージと言ったところ。「誰よりいい生き方見つけたいから どんな時も 心 飾らないでいる」という歌詞が好き。渡辺自身の作詞ではないが、渡辺の想いがよく現れているような感覚がある。


「新しい気持ち」は先行シングル曲。聴き心地の良いメロディーが展開されたミディアムナンバー。この頃の清水信之らしく、シンセを主体とした賑やかなサウンドとなっている。シンセによるブラスの使い方が絶妙で、上手く曲を盛り上げている。
歌詞は恋人と出逢って変わった女性の気持ちが描かれている。「ねえ 何かを 失うのは 何かしら 手に 入れる 時ね」という歌詞が好き。
アイドルポップとガールポップの中間のような雰囲気がある曲だと思う。


「BE WITH YOU」は先行シングル「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)」のC/W曲。ガールポップやシティポップ辺りの絶妙なラインを突く、MAYUMI特有のメロディーが展開されたミディアムナンバー。力強く安定感のあるバンドサウンドがそうしたメロディーの強度を高めている。
作詞は渡辺自身で手がけた。一人で夏の海に来た女性の心情が描かれている。ただ、悲しみや虚無感は全く無く、あくまで明るく描かれているのが特徴。
この曲も「新しい気持ち」と同じような感覚がある。


「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)」は先行シングル曲。鈴丹のCMソング、劇場版アニメ『YAWARA! それゆけ腰ぬけキッズ!!』の主題歌に起用された。名前を見なくても、タイトルと曲調だけでフリッパーズが提供したと分かってしまうほどに作風がそのまま。メロディーやサウンドだけなら同年リリースの「CAMERA TALK」に入っていても何ら違和感が無い。
歌詞は好きな人と旅に出る姿が描かれている。文学的で気の利いた言葉選びも当時のフリッパーズそのもの。
渋谷系サウンドと渡辺の歌声の相性の良さがこの曲でわかった。


「レイニー カインド オブ ラブ」は前の曲と同じく、フリッパーズ・ギターが提供した曲。脱力感のあるネオアコとなっている。涼しげな音色のギターが主体。曲・サウンド共に肩肘張らずに作られたような雰囲気がある。間奏ではフリッパーズの二人がコーラスを担当している。
歌詞は雨の日にデートがキャンセルになってしまった女性の心情が綴られたもの。お洒落かつどこかコミカルな詞世界となっている。
曲全体から漂う気だるい雰囲気が印象的。渡辺の歌声とよく合っていると思う。


「グラヂオラス」はノスタルジックな雰囲気を持ったバラードナンバー。当時遊佐未森の作品を手掛けていた外間隆史による曲。メロディーもサウンド面も当時の遊佐未森の作品を彷彿とさせる。明るいのにどこか切ない響きのシンセがたまらない。また、間奏では渡辺による笛の演奏がフィーチャーされている。
歌詞は遠く離れたところにいる恋人へのメッセージのようなイメージがある。花の匂いまで伝わってくるような、繊細な描写に魅かれる。
メロディーやサウンドが自分好みで、今作の中では一番好きな曲。


「夏の日」は今作のラストを飾る曲。この曲も外間隆史による曲。しっとりとしたバラードナンバー。心地良く懐かしさのあるメロディーが全体に渡って展開されている。派手さこそ無いが緻密に作り込まれたアレンジは中々に聴きごたえがある。
歌詞はタイトル通り夏の日の光景が描かれている。日本の夏の原風景と言いたくなるような光景が浮かんでくる詞世界となっている。
「グラヂオラス」もそうだが、遊佐未森の歌声が想像できるくらい作風がそのまま。


あまり売れた作品ではないので、中古屋では時折見かける程度。
制作体制がこれまでと変わったが、その分とっ散らかってしまった印象が否めない。アーティストとしての渡辺満里奈を模索していたという雰囲気が後追いでも伝わってくる。
フリッパーズ・ギターが提供した曲があるという話題性だけで聴くには少しきつい印象。

★★★☆☆