kicks
ASKA
1998-03-25


kicks
ASKA
2001-04-18


ストリーミング配信について…現時点では配信されていない。


【収録曲】
全曲作詞作曲 ASKA
全曲編曲       松本晃彦
2.5.ストリングスアレンジ Will Malone
9.ストリングスアレンジ Chris Elliot
プロデュース  ASKA

1.No Way ​★★★☆☆
2.Girl ​★★★★☆
3.Now ★★★★★
4.In My Circle ★★★☆☆
5.遊星 ★★★☆☆
6.馬を下りた王様 ★★★★☆
7.同じ時代を ★★★★★
8.Tattoo ​★★★★☆
9.Kicks Street ★★★☆☆
10.花は咲いたか ★★★★☆
(シークレットトラック、「Girl」のリミックスバージョン) 省略

1998年3月25日発売
2001年4月18日再発
東芝EMI
ヤマハミュージック
最高位4位 売上20.5万枚

ASKAの5thアルバム。先行シングル「Girl」を収録。前作「ONE」からは1年振りのリリースとなった。

今作は前年でのソロ活動を継続して制作された。当時のASKAはロンドンでのクラブシーンに影響を受けており、それが今作の作風にも反映されている。「ロックとクラブミュージックの融合」を目指して制作されている。ちなみに、タイトルは「刺激」を意味する。

前作「ONE」はロンドンのミュージシャンに編曲やプロデュースを委ねて制作されたが、今作はかつてのCHAGE&ASKAやASKAの作品に関わった松本晃彦が全曲の編曲を担当した。


「No Way」は今作のオープニング曲。怪しげな雰囲気を持ったミディアムナンバー。盛り上がることを拒んでいるような、聴いていて気持ちがざわつくようなメロディーが展開されている。淡々とした打ち込みやギターで構成されたサウンドが怪しさを引き立てる。
歌詞は夜の都会を舞台に、一夜限りの関係を持つ男女の姿が浮かんでくるもの。全体的に淫靡なイメージの詞世界で、それを嗄れた歌声で表現している。
これがオープニング曲なのか?と思ってしまうのだが、今作にはこれが合う。


「Girl」は先行シングル曲。ASKA自身が出演したNECのCMソングに起用された。どこか不穏な雰囲気を漂わせたミディアムナンバー。サビは美しいだけでなく、確かな盛り上がりがある。ロビー・マッキントッシュによるガットギターがフィーチャーされているのが特徴。浮遊感のある打ち込みサウンドとギターの絡みが何とも心地良い。
歌詞は許されない恋をしている二人を描いたものだろうか。そうした詞世界を、いつになく艶のあるASKAのボーカルがさらに盛り上げる。
​かなりマニアックなのだが、それでも聴きやすい。不思議な魅力を持った名曲。


「Now」はダークな雰囲気を持ったロックナンバー。比較的シンプルながら力強いメロディーが展開されている。​分厚く激しいバンドサウンドに圧倒される。演奏だけ聴いていると、当時のUKロックバンドの曲かと錯覚してしまうほど。
歌詞の意味ははっきりとわからないが、ASKAの考えが反映されている印象がある。「手に負えない 奴と呼ばれりゃ それはそれで 当たりだろう」「噛み合わない 奴と言われりゃ それはそれで 答えだろう」といったサビの歌詞が顕著。
ASKAソロに一定数あるこの手のダークな曲が好きなので、今作の中でも一番好き。


「In My Circle」はここまでの流れを落ち着ける、穏やかなミディアムナンバー。メロディーは優しく聴き心地の良いもので、いつも通りのASKAソロ作品と言ったところ。ただ、終始使われている、浮遊感のある打ち込みドラムの音は今作独特のもの。
歌詞は日常に寄り添った、メッセージ性のあるもの。「すべては回っている」ことがテーマだと思われる。
メロディーも歌詞もASKAソロの王道のような感覚があるのだが、今作の中で聴くと一際存在感がある。


「遊星」はさらに流れを落ち着ける、壮大なバラードナンバー。美しく繊細なメロディーが心地良い。アコギやストリングスを使って盛り上げてくるのは今まで通りだが、そこに打ち込みサウンドを織り交ぜてくるのが今作ならでは。
歌詞は望まれない愛を育む恋人たちが描かれている。儚く切ない詞世界となっており、ASKAの情感のこもったボーカルやサウンドがそれをより引き出す。
全体的にドラマティックなバラードであり、ASKAのパブリックイメージに沿った曲という印象。


「馬を下りた王様」は8ビートによるミディアムナンバー。今作の中では割とわかりやすくキャッチーなメロディーである。シンプルかつ力強いバンドサウンドが終始展開されている。中でもベースがいつになく前に出ており、聴きごたえがある。
歌詞は恋人とのすれ違いを描いたもの。
歌詞のテーマは日常的かつありふれたものだと思うのだが、それに「馬を下りた王様」というタイトルをつけてしまうセンスに脱帽。どうしたら思いつくのだろうか。


「同じ時代を」は力強さに満ちたミディアムナンバー。美しく訴求力のあるメロディーに心を掴まれる。メロディーを聴いている限り、普通に音作りをすれば無骨なフォークロックのようになりそうだが、そうならずに今作の世界観に溶け込んでいる。松本晃彦のアレンジ技術に驚くばかり。
歌詞はメッセージ性の強いもの。タイトル通り、同じ時代を生きている人々へ語りかけているようなイメージのある歌詞となっている。
全編通じて高揚感のある曲で、ファン人気が高い曲なのも頷ける。


「Tattoo」は冒頭3曲のような、不穏な雰囲気を持ったロックナンバー。重厚かつ刺々しい質感のサウンドがたまらなく格好良い。サウンドを前面に出した感じでメロディーの主張は控えめだが、サビはそれなりに耳に残る。
歌詞は不倫している男女を描いたものだろうか。サビの「毛布代わりで抱いた女」というフレーズのインパクトは相当なもの。中々使えるような言葉ではない。
アルバムの流れで聴くと、前の曲からの落差が凄まじい。それだけ作風が幅広いということでもあるのだが。


「Kicks Street」は今作のタイトル曲と言える曲。重厚感のあるサウンドが展開されたミディアムナンバー。この曲もメロディーの主張は控えめ。メロディーよりもバンドサウンドやコーラスワークを際立たせているような感じ。
歌詞は「kicks street」の光景を描いたもの。全体的に退廃的なイメージがある詞世界である。クスリをやる若者の姿も描かれており、ASKAの事件の際に再び注目されることとなってしまった。
今作の作風について語られる時の言葉はこの曲によるものが大きいかもしれない。その点で、実質的なタイトル曲にふさわしい。


「花は咲いたか」は先行シングル「Girl」のC/W曲。もう一つの王道と言える、力強いロックナンバー。​今作の中でもとりわけキャッチーなメロディーが展開されている。曲を終始牽引する、何の飾りもないストレートなバンドサウンドは爽快感がある。
歌詞は少々わかりにくいが、男同士の友情について語られたものだろうか。距離を置きながらも、相手のことをそっと見守る。良い関係の二人が想像できる。
今作がラストに置かれていることで、少しだけまとまりが生まれている印象がある。


アルバムの正真正銘のラストを飾るのは、シークレットトラックで「Girl」のリミックスバージョン。1分半のインストとなっている。原曲の持つ不穏さをさらに高めたようなアレンジである。


ある程度売れた作品なので、中古屋ではよく見かける。
全編通してダークな世界観を持った作品となっており、当時としてはかなり異色かつ攻めた作風として受け取られたのではないか。自分は後追いで聴いたわけだが、それでも相当攻めた作品だと思った。しかし、聴いていてひたすら格好良いのは事実。​ただ「問題作」の一言で片付けるには勿体無いほどの魅力がある。

​★★★★☆