Memories of Blue
氷室京介
1992-12-29


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【収録曲】
全曲作詞 松井五郎
5.10.作詞 氷室京介・松井五郎
8.作詞 氷室京介
全曲作曲 氷室京介
全曲編曲 西平彰
プロデュース 西平彰

1.KISS ME ​★★★★★
2.YOU’RE THE RIGHT ​★★★★☆
3.Memories Of Blue ★★★★☆
4.RAINY BLUE ​★★★★☆
5.Good Luck My Love ★★★★☆
6.SON OF A BITCH ★★☆☆☆
7.Decadent ★★★☆☆
8.Urban Dance ★★★☆☆
9.GET READY “TONIGHT” TEDDY BOY ​★★★☆☆
10.WILL ★★★☆☆

1993年1月7日発売(CD,CT)
2003年7月21日再発(リマスター・紙ジャケ・CCCD)
東芝EMI/イーストワールド
最高位1位 売上134.2万枚

氷室京介の4thアルバム。先行シングル「Urban Dance」「Good Luck My Love」「KISS ME」を収録。前作「Higher Self」からはリミックスアルバム「masterpiece #12」を挟んで1年9ヶ月振りのリリースとなった。

今作は自身初のミリオンを達成したシングル「KISS ME」の影響を受けてか、氷室のオリジナルアルバムの中では最高の売上を記録した作品となった。

今作はビートのみならずメロディーも重視して制作したという。当時の氷室は今作を絶賛しており、本人としてもかなりの自信作であったことがわかる。


「KISS ME」は先行シングル曲。ブティックJOYのCMソングに起用された。アルバムバージョンでの収録。氷室にとっては最大のヒット曲となり、代表曲の一つ。一度聴けばすぐ口ずさめるような、圧倒的な耳馴染みの良さを持ったメロディーがたまらない。キレの良いバンドサウンドとシンセが絡んだサウンドがメロディーを際立たせる。
歌詞はストレートなラブソングと言ったところ。氷室の艶のある歌声とよく合っている。
アルバム曲用に作ったが、あまりの出来の良さにシングル化が決まったというだけあって、とにかくインパクトがある。ヒットしたのも当然だろう。


「YOU’RE THE RIGHT」は先行シングル「KISS ME」のC/W曲。この曲もアルバムバージョンでの収録。重厚感のあるミディアムナンバー。美しさの中に力強さのあるメロディーが展開されている。あくまで体感に過ぎないが、シングルバージョンよりもアダルトな雰囲気を持った質感のサウンドになった印象。間奏でサックスが使われているのもそれを思わせる。
歌詞は別れた恋人への想いを綴ったものだろうか。「ひとりで生きるために 痛みを 許す気持ちが欲しい」という歌詞がなんとも切ない。
A面があまりにも派手過ぎたので埋もれてしまっている印象が否めないものの、こちらもかなり好きな曲。


「Memories Of Blue」は先行シングル「Good Luck My Love」のC/W曲で、今作のタイトル曲。こちらもアルバムバージョンでの収録。爽快なポップロックナンバー。聴いているだけだとポップだと思うが、かなり歌いにくそうな感じ。シンプルなバンドサウンドが曲の爽快さを演出する。
歌詞は青春時代の思い出を回想したものだろう。聴いた人の誰もがそれぞれの青春時代を思い出しながら聴けるような歌詞となっている。
聴いている限りでは比較的王道なポップス寄りな印象のある曲で、当時の氷室にとってはありそうで無かった曲という印象。


「RAINY BLUE」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。哀愁に満ちた美しいメロディーが終始に渡って展開されている。イントロ無しでいきなり始まる構成は中々にインパクトがある。ストリングスやピアノを押し出した静謐なアレンジがメロディーやボーカルを引き立てる。
歌詞は恋人への想いが綴られたもの。恋人のことを包み込むような雰囲気のある、優しく力強いフレーズが並んだ詞世界となっている。氷室の繊細なボーカルがより映える。
各アルバムに1曲は収録されているような、隠れた名バラード的と言いたくなるようなポジションの曲である。


「Good Luck My Love」は先行シングル曲。TBS系番組『ムーブ』のエンディングテーマに起用された。この曲もアルバムバージョンでの収録。爽やかなポップロックナンバー。キャッチーかつ聴き心地の良いサビのメロディーは何度でも聴きたくなる。曲を通して鋭いギターサウンドが前面に出ているが、全体的にはポップな仕上がり。
歌詞は別れた恋人へのメッセージのようなイメージがあるもの。後悔が綴られているが、あくまで前を向いて進んでいく姿勢もうかがえる。
シングル曲としては少し地味という印象。ただ、かなり好きな曲。


「SON OF A BITCH」は勢いの良いロックナンバー。駆け抜けるような曲調は聴いていると身体が動いてしまう。ビートを前面に出したバンドサウンドや、重厚かつ耳触りの良いギターサウンドはBOØWY時代を彷彿とさせる。
歌詞はこれまた氷室のアルバムでは毎回のようにある性愛路線と言ったところ。語感を重視したような歌詞かと思いきや、「ほんとの愛はどこにある こんな世界は屑だろう」と急に真面目な歌詞が出てくるのに驚く。
アルバムの後半に差し掛かったタイミングに収録されているためか、ノリの良さがより強調されているように思う。


「Decadent」は前の曲に引き続き、疾走感のあるポップロックナンバー。終始勢いが良いので、どの部分もとても耳に残る。安定感のあるバンドサウンドが展開されているが、その中でも鋭く爽快なギターサウンドがたまらない。
歌詞は英語詞が多用されており、語感の良さや歌っている時の心地良さを重視しているような感覚がある。氷室のボーカルは他の曲にも増して強くなっているように思う。
この曲については、サウンド面が特に好きな曲となっている。


「Urban Dance」は先行シングル曲。日本テレビ系ドラマ『…ひとりでいいの』の主題歌に起用された。リミックスアルバム「masterpiece #12」と同じ音源での収録。どこか陰のある雰囲気が印象的なロックナンバー。サビで盛り下がっていくような、独特なメロディーが逆に印象的。この曲も鋭いギターサウンドが前面に出されており、それがサウンド面を牽引している。
歌詞は都会を舞台にしたラブソングと言ったところ。ドラマ主題歌らしく、光景が浮かんでくるような描写が見事。こうした歌詞では氷室の色気のある歌声が冴え渡る。
一曲単位ではそれなりに好きだが、初めて聴いた時はこの曲がシングルか?と思ってしまった記憶がある。


「GET READY “TONIGHT” TEDDY BOY」は疾走感のあるポップロックナンバー。タイトルのフレーズが使われたサビは非常に耳に残る。サウンド面はビートを強調した仕上がりとなっており、これまたBOØWY時代を想起させるような曲である。終始駆け抜けていく感覚がたまらない。
歌詞の意味ははっきりと分からないが、少年時代を回想したものだと解釈して聴いている。不良少年をイメージしている。
今作の中では最もストレートなロックナンバーとなっており、その点で異彩を放っている曲と言える。


「WILL」は今作のラストを飾る曲。重厚感のあるロックバラードナンバー。どこかフォークソングのような雰囲気も感じられる。自然と心に沁みてくるような、確かな訴求力を持ったメロディーが展開されている。サウンドの主張は控えめで、氷室のボーカルを際立たせる。
歌詞はかなり内省的な世界観を持ったもの。当時の氷室の迷いや疑念のような感情がそのまま表現されているような歌詞であり、軽い気持ちで聴けないような強さがある。
今作の中でかなり浮いてしまっている感もあるが、この曲以外がラストに置かれているのも想像できない。どちらも事実。


大ヒットした作品なので、中古屋ではよく見かける。
代表曲「KISS ME」のみならず、ロックナンバーからバラードまであるという幅広い作風となっており、氷室京介ソロとしての王道を確立したような作風となっている。本人にとっても自信作というのも頷ける。ベスト盤の次に聴くオリジナルアルバムとしてもおすすめ。

​★★★★☆