【収録曲】
全曲作詞 浜崎貴司
8.作詞 橋本淳
9.作詞 浜谷淳子
1.作曲 中園浩之
2.作曲 伏島和雄
3.作曲 浜崎貴司・飯野竜彦
4.6.作曲 浜崎貴司
5.10.作曲 丸山史朗
7.9.作曲 加藤英彦
8.作曲 すぎやまこういち
全曲編曲 FLYING KIDS
2.7.ブラスアレンジ 小林正弘
5.6.ストリングスアレンジ 金子飛鳥
1.欲望のカタマリ ★★★★☆
2.朝日を背にうけて ★★★★☆
3.明日への力 ★★★★☆
4.木馬(あたたかな君と僕) ★★★★☆
5.お別れのあいさつ ★★★☆☆
6.この世の楽しみ ★★☆☆☆
7.野生のハマザキ ★★★☆☆
8.君だけに愛を ★★★☆☆
9.小さな私 ★★★★☆
10.一日の終り ★★★☆☆
1991年10月21日発売
ビクター音楽産業
最高位69位 売上不明
FLYING KIDSの3rdアルバム。先行シングルは無し。今作と同日にシングル「君だけに愛を」がリリースされた。前作「新しき魂の光と道」からは10ヶ月振りのリリースとなった。
FLYING KIDSは1988年、東京造形大学の学生を中心として結成された7人組ファンクバンド。そして、1989年に『平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国』に出演し、3代目イカ天キングとなる。その後5週連続勝ち抜きを果たし、初代イカ天グランドキングとなった。FLYING KIDS以降のイカ天グランドキングはBEGIN、たま、BLANKEY JET CITYなどがいる。
FLYING KIDSは1993年頃からポップス路線に転向するが、今作は初期のファンクロック路線を突き進んだ作品。これまでの作品と同じく、ファンキーなサウンドと内省的でメッセージ性の強い詞世界を両立させた楽曲が並んでいる。
「欲望のカタマリ」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。勢いの良さと気だるさを併せ持ったファンクロックナンバー。浜崎の語りから始まる構成はかなりのインパクトがある。全編サビのような強いメロディーである。浜谷との掛け合いや、中園によるタイトなドラミングはこの曲の聴きどころ。
歌詞はタイトル通りのことが歌われている。「あー欲しいもの全て あー手に入れたいの」「あー出来ること全て あーやってみたいの」と様々な欲望が歌われており、青臭い詞世界となっている。
聴き手を引き込む役割を果たしており、まさにタイトル曲と言ったところ。
「朝日を背にうけて」は爽快感のあるポップナンバー。洗練された美しいメロディーはとても聴き心地が良い。サウンド面では、初期のFLYING KIDSとしては珍しく、バンドサウンドに加えて生のホーンセクションが使われているのが特徴。
歌詞は青春時代に思い描いていた理想の自分について語られたもの。「大人になるのはいいけれど 複雑でくじけそうになる」「生まれてきたのはいいけれど つらい事はなぜ起きるの」などと迷いが綴られており、そちらも印象に残る。
この曲については、後のポップス路線を先取りしていたような感覚がある。今作の中でも一番好きな曲。
「明日への力」はここまでの流れを継いだミディアムナンバー。言葉数が多く、言葉が詰め込まれたようなメロディーなのでかなり耳に残る。終始ピアノが前面に出たサウンドになっており、明るい質感のサウンドに仕上がっている。
歌詞は一日の終わりを思わせるもの。「おやすみ 体を休めたら 明日また 力がだせるよ」というサビの歌詞が好き。当たり前と言ってはそれまでだが、それを真っ向から歌えるのが彼らの凄さ。
比較的高低差のある曲なので、浜崎のボーカリストとしての実力を実感できる。
「木馬(あたたかな君と僕)」は爽やかなポップナンバー。ポップでどことなく切なさを漂わせたメロディーはシングル曲のような風格がある。全編通してギターをかき鳴らしたサウンドは高揚感に溢れている。
歌詞は恋人と遊園地に行く光景が描かれたもの。幸せな時間を切り取ったものとも、恋人との別れを描いたものとも解釈できるのが不思議なところ。
この曲も後のポップス路線の先駆けとなっているような感じ。ベスト盤にも収録されていたので、今作を代表する曲と言えるかもしれない。
「お別れのあいさつ」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。メロディーそのものよりも、浜崎の変幻自在なボーカルの方が印象に残る。サウンド面では、曲が進むごとに音が増えて盛り上がっていく構成となっている。この曲でフィーチャーされたストリングスも曲を盛り上げる要素の一つ。
歌詞はタイトル通り恋人との別れが描かれている。何故かはわからないが、円満な別れ方をイメージしながら聴いている。
割と味付けの濃いバラードながら、重苦しさは無いのが上手いところ。
「この世の楽しみ」は脱力感のあるミディアムナンバー。曲のほぼ全体を通して、浜崎がファルセットで歌っており、それがこの曲最大の特徴。清涼感のあるギターサウンドが曲の楽しげな雰囲気を演出する。
歌詞はタイトル通り「この世の楽しみ」について歌われている。様々なその例が挙げられた後、「この世の楽しみ 見つからないけど 涙がこぼれたから まだ大丈夫」と内省的な言葉が出てくる。
今作の中でも特に異色なアプローチがされた曲だと思う。
「野生のハマザキ」は一転して、濃厚なファンクロックナンバー。もはやタイトルだけでもその濃厚さがよくわかるはず。この曲もメロディー以上にボーカルの強さが印象に残る。分厚くパワフルなギターサウンドが全体を通して曲を牽引している。
歌詞は浜崎による誇張した自己紹介と言ったところ。全能感すら感じられるほどの力強い言葉が並べた挙句、「オレについてこい」と畳み掛ける。
他の曲にも増して存在感のある、野生的なボーカルを堪能できる。
「君だけに愛を」は今作と同日にリリースされたシングル曲。ザ・タイガースが1968年に発表した曲のカバー。原曲はザ・タイガースの代表曲にしてグループサウンズ(GS)の代表的な曲だが、その要素を残しながらもFLYING KIDSならではのファンキーな味付けがされている。大所帯バンドであることを活かしたコーラスワークも見事。
ストレートな愛の言葉が並んだ歌詞だが、浜崎の熱量のあるボーカルによってさらに強さを増している。
この曲に対してこうしたアプローチもあるのかと思わされたカバーだった。
「小さな私」は浜谷淳子が作詞とメインボーカルを務めた曲。壮大なバラードナンバー。広がりのある美しいメロディーが展開されている。こうした曲では浜谷の突き抜けるような高音がよく映える。ピアノとギターが随所で前面に出ており、曲やボーカルを際立たせている。
歌詞は浜谷の「愛する人に出会えますように」という想いが表現されたもの。「小さな私」というのは浜谷自身のこと。
この曲を聴くと、浜谷も優れたボーカリストであったことがわかる。コーラスでもかなり存在感があるが、メインボーカルだと尚更。
「一日の終り」は今作のラストを飾る曲。温かみのあるバラードナンバー。優しく心地良いメロディーが展開されている。メンバーの手拍子とキーボードが主体の柔らかいサウンドとなっているほか、充実したコーラスワークが曲の温かみを演出する。
歌詞はタイトル通り一日の終りを舞台に、その日あったことを振り返る様子が描かれている。浜崎の歌声の影響なのか、どことなく懐かしい雰囲気が出ている。
これぞラストという感じで、他の曲がこの位置にあることを想像できないほど。
そこまで売れた作品ではないが、中古屋では割と見かける。
前2作よりもファンクロック色が少し薄くなり、後のポップス路線の片鱗を覗かせた作風となっている。次作のミニアルバム以降は段々とメロディー志向のポップス路線に振り切っていくだけに、今作はまさに過渡期の作品という印象がある。
★★★☆☆
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