そら(DVD付)
新垣結衣
2007-12-05


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【収録曲】
1.作詞 新原陽一
5.10.作詞 新垣結衣
1.作曲 クボケンジ
2.作詞作曲 渡辺健二(スネオヘアー)
3.作詞作曲 安藤裕子
4.9.作詞作曲 つじあやの
5.作曲 葛谷葉子
6.作曲 高橋啓太
7.作詞作曲 ミト(clammbon)
8.作詞作曲 古内東子
10.作曲 H ZETT M
1.4.8.編曲 松岡モトキ/阿部尚徳
2.編曲 渡辺健二(スネオヘアー)
3.編曲 山本隆二
5.編曲 知野芳彦
6.編曲 オトナモード
9.編曲 森俊之
10.編曲 浅田信一
4.ストリングスアレンジ 竹内純
↓サウンドプロデュース
1.4.8.松岡モトキ
2.スネオヘアー
3.山本隆二
5.知野芳彦
6.オトナモード
7.ミト
9.森俊之
10.浅田信一

1.heavenly days ★★★★★
2.オレンジ ​★★★★☆
3.陽のかげる丘 ★★☆☆☆
4.メモリーズ ★★★★★
5.ひかり ★★☆☆☆
6.Sign of the moon〜interlude〜 省略
7.スターライト ★★★★☆
8.ペアリング ★★★★★
9.愛を知りたくて ​★★★☆☆
10.そら ★★★☆☆

2007年12月5日発売
WARNER MUSIC JAPAN
最高位3位 売上7.2万枚

新垣結衣の1st(デビュー)アルバム。先行シングルは無し。初回盤は新垣(以下ガッキー)自らによるイラストがジャケットに使われている。通常盤は「heavenly days」のMVとメイキングが収録されたDVD付属。

ガッキーの歌手活動は2007年から2010年まで続き、シングル4作・アルバム3作をリリースして終了した。


「heavenly days」は今作のオープニング曲。ガッキー主演の映画『恋空』の挿入歌に起用された。美しく切ない雰囲気に満ちたバラードナンバー。儚ささえ感じられるようなガッキーの歌声とメロディーの絡みがこれ以上無いほど心に響く。シンプルなバンドサウンドと打ち込みによるストリングスで曲の魅力を潰さずに盛り上げる。
歌詞は恋人と別れた女性の心情が描かれたもの。恐らく映画のワンシーンで使われることを想定して書かれたのだと思う。演技同様に入り込んだガッキーのボーカルが歌詞の訴求力を強めている。
リアルタイムで聴いていた頃から好きな曲だったが、後になってこの曲がシングル曲ではなかったことを知って驚いた記憶がある。歌手としてのガッキーの代表曲だと思う。


「オレンジ」は前の曲から一転して、爽やかなポップナンバー。鼻歌でも歌いたくなるような、楽しげな雰囲気に溢れたメロディーが展開されている。ネオアコ的な質感を持った、清涼感のあるギターサウンドがとても心地良い。
歌詞は好きな人と一緒にいる時間が描かれたもの。まさに青春と言いたくなるような、多幸感のある可愛らしい詞世界である。ガッキーの歌声やそのイメージに見事なまでによく合った歌詞となっている。
こちらがオープニング曲だったとしても、全く違和感無く聴けていたと思う。


「陽のかげる丘」は再び流れを落ち着けるバラードナンバー。三ツ矢サイダーのCMソングに起用された。タイトル通りに陰を感じさせる、哀愁のあるメロディーが展開されている。ピアノやストリングスといった柔らかい音使いでメロディーを引き立てている。
歌詞の意味ははっきりとわかりにくいが、少女時代の思い出を回想したものだと解釈して聴いている。
この曲では、他の曲よりも低い歌声で聴かせる。その歌い方がこの曲の世界観に合致していたように思う。


「メモリーズ」は素朴な雰囲気を持ったミディアムナンバー。ガッキー初主演の映画『恋するマドリ』の主題歌に起用された。つじあやのにとっては初めての楽曲提供にして、ガッキーにとってのデビュー曲。フォークソング的な温かみや懐かしさのあるメロディーはとても聴き心地が良い。ストリングスが使われているのは映画の主題歌ならでは。
歌詞は春の日を舞台に、大切な人との別れが描かれている。これもまた映画の内容に沿って書かれたような感覚がある。
普通に聴いてもかなりの名曲だと思えるが、映画の流れの中で聴くとさらにこの曲が沁みてくるのだろう。


「ひかり」は前の曲と同じく、フォークソングのテイストを持ったバラードナンバー。繊細さのあるメロディーを、アコギやストリングスを主体とした柔らかい響きのアレンジで優しく包み込んでいる。
作詞はガッキー自身によるもの。迷いや疲れなどが感じられる、正直に言うと中々に暗い詞世界なのだが、当時のガッキーの素が現れているのだと思う。初めて作詞したとは思えないほどの丁寧な心理描写も印象的。最後の最後で明るさが見えて終わるのが救いか。


「Sign of the moon〜Interlude〜」はインスト曲。演奏もオトナモードのメンバーによるもので、映画音楽のような雰囲気を持ったインスト曲に仕上がっている。アルバムの流れを調整するには打ってつけな存在だと言える。


「スターライト」は幻想的な雰囲気を持ったポップナンバー。駆け上がっていくようなイメージのあるメロディーはかなりの高揚感がある。透き通るような美しさを持ったピアノの音色が終始前面に出ており、曲の幻想的な雰囲気を演出する。
歌詞はタイトル通り星や夜空がキーワードとなったもの。ロマンティックな世界観を持った詞世界となっている。
かなり提供相手の色が強く出ている感じの曲なのだが、それとガッキーのボーカルとの親和性の高さが印象的。


「ペアリング」は哀愁を漂わせたミディアムナンバー。いきなりサビから始まる構成は中々にインパクトがある。ただ、メロディー自体もかなりキャッチーな仕上がり。フルートやバイオリンも含め、聴きごたえのある上質な演奏を楽しめる。
歌詞は既に彼女がいる相手に恋心を抱く女性の心情が描かれている。苦しく切ない描写に心を掴まれる。タイトルだけ見て幸せな方の曲だと思ったが、実際は真逆である。
古内東子の作品はあまり深く聴いていないのだが、それでも古内の色が強く出た曲だと感じた。メロディーが自分好みで、今作の中でも特に好きな曲。


「愛を知りたくて」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。キャッチーかつ切なさに溢れたサビのメロディーは出色の出来。アコギやピアノ、ストリングスなどの優しい音色が前面に出されており、歌声の魅力を最大限に引き出すようなアレンジとなっている。
歌詞は恋人との別れを決め、別れを切り出そうとする女性の想いが綴られたもの。透明感のある歌声がこうした歌詞にはよく似合う。
豪華な作家陣が多数参加した作品だが、中でもつじあやのとの相性が最も良いように感じた。


「そら」は今作のラストを飾るタイトル曲。力強さを持ったミディアムナンバー。聴き心地の良い、懐かしい響きのメロディーが展開されている。ただ、何となく歌いにくそうに聴こえてしまう。今作の中では比較的ロック色が強めなアレンジがされているのが特徴。
歌詞は「ひかり」と同じく、ガッキー自身によるもの。応援歌のような歌詞で、聴き手に寄り添うような優しい言葉選びが印象的。
比較的切ない詞世界の曲が多い中で、この曲で終わるのが好印象。希望を持たせて終わることができている感じ。


大きく売れた作品ではないが、中古屋ではよく見かける。
同じ声の持ち主がいそうでいない、独特な歌声の魅力を活かすような音作りがされていて、J-POP〜アイドルポップとして上質な作品になっていると思う。
ガッキーの歌手活動は黒歴史のように扱われがちな印象が否めないものの、それでも好きな作品。単なるファンのためのコレクターズアイテムにはとどまらない良さがある。

★★★★★