愛の世代の前に
浜田省吾
1999-09-08



愛の世代の前に
浜田省吾
1990-06-21



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【収録曲】
全曲作詞作曲 浜田省吾
全曲編曲       水谷公生
プロデュース  鈴木幹治

1.愛の世代の前に ​★★★★☆
2.モダンガール ★★★★☆
3.愛という名のもとに ★★★★☆
4.独立記念日 ★★★☆☆
5.陽のあたる場所 ★★★★★
6.土曜の夜と日曜の朝 ​★★★☆☆
7.ラストショー ★★★★★
8.センチメンタルクリスマス ★★★☆☆
9.悲しみは雪のように ★★★★☆
10.防波堤の上 ★★☆☆☆

1981年9月21日発売
1985年12月1日発売(初CD化)
1990年6月21日再発
1999年9月8日再発(リマスター・初回盤)
1999年9月29日再発(↑の通常盤)
CBSソニー
Sony Records(1990年盤)
クリアウォーター(1999年盤)
最高位12位 売上8.7万枚(LP)
最高位18位 売上9.0万本(CT)
最高位2位 売上69.7万枚(1990年盤)
最高位22位 売上1.6万枚(1999年盤初回盤)

浜田省吾の7thアルバム。先行シングル「陽のあたる場所」「ラストショー」を収録。今作発売後に「悲しみは雪のように」(※1992年バージョンではない)がシングルカットされた。前作「Home Bound」からは11ヶ月振りのリリースとなった。

今作は1982年1月に自身初の武道館ライブを行うことになり、その公演のために制作された作品。レコーディング期間はわずか2週間と驚異的なペースで制作された。
ジャケットにある「Born in 1952」は浜田の生年であり、「自分の世代」を意味しているという。

1990年盤がオリジナル盤を遥かに上回る売上をを記録しているが、これは「悲しみは雪のように」の1992年バージョンがフジテレビ系ドラマ『愛という名のもとに』の主題歌として大ヒットし、それの原曲およびドラマのタイトルとして使われた曲が収録された作品ということで注目され、リバイバルヒットしたためだと思われる。


「愛の世代の前に」は今作のオープニングを飾るタイトル曲。激しいロックナンバー。どこを取っても耳に残る、確かな強さを持ったメロディーは浜田ならでは。ハードロック的なギターサウンドをピアノで中和しており、聴きやすいサウンドにまとめられている。
歌詞は反核兵器に対するメッセージが込められたもの。人類が消滅することへの危機感や虚無感についても語られており、「一瞬の閃光(ひかり)」というサビのフレーズは原爆のことを指しているという。
前作「Home Bound」での勢いをそのまま受け継いでいる感じがする。


「モダンガール」は前の曲から一転して、都会的な雰囲気を持ったポップナンバー。一聴すればすぐ口ずさめるようなキャッチーなサビである。かつてのモータウンからの影響を感じさせる、ピアノやサックスの使い方が見事。
歌詞は浮気性な女性に振り回される男性の心情が描かれたものだろうか。そうした性格だと分かっていても切り捨てられない弱さに共感してしまう。
メロディーやサウンド面では、70年代後半の浜田の作風を当時なりに進化させた曲という印象がある。


「愛という名のもとに」はここまでの流れを落ち着けるバラードナンバー。後にドラマのタイトルとして使われ、挿入歌にも起用された。曲のどの部分を取っても、甘く美しいメロディーが展開されている。ピアノを主体とした洗練されたサウンドで聴かせる。間奏の叙情的なギターソロは聴きどころ。
歌詞は共に暮らしていた恋人とのすれ違いや別れが描かれたもの。ただ、一旦距離を置いてまたやり直そうとする姿が見え、少しだけ希望が見える終わり方なのが印象的。
ドラマのワンシーンのような詞世界を持った曲なので、後にドラマのタイトルに使われたのも納得。


「独立記念日」は前の曲からの流れを変えるようなポップロックナンバー。サビはキャッチーにまとまっている。この曲もピアノやサックスの使い方が絶妙で、曲を盛り上げる一要素となっている。
歌詞は中高生の心情を代弁した、メッセージ性の強いもの。クラスメイトや教育のあり方についての疑問が語られている。
ロック色の強い歌詞を親しみやすく聴かせることに成功している。詞世界やサウンド面については、後の尾崎豊に似た世界観を持った曲だと思う。


「陽のあたる場所」は先行シングル曲。メロウなバラードナンバー。レコードではこの曲がA面の最後。しっとりと進んでいくが、サビはコーラスワークも相まってかなり耳に残る仕上がり。ピアノやエレピなどが主体となった控えめなアレンジでメロディーの魅力を引き出している。
歌詞は不倫を描いたもの。具体的にはわからないものの、既婚者の男性と未婚の女性という関係だと思って聴いている。
「The History of Shogo Hamada "Since1975"」に収録されているため、早い時期から馴染みのある曲だった。小学生の頃から単純に良い曲だと思って聴いていたが、ここまで大人な世界観の曲と知ったのはだいぶ後。


「土曜の夜と日曜の夜」はレコードではこの曲がB面の最初。R&B色の強いポップナンバー。英語詞がサビ頭に入っているのでかなり耳に残る。サウンド面では、スラップベースやホーンが活気のあるサウンドを作り出している。
タイトルはアラン・シリトーの同名の小説から取られているという。歌詞は日常から離れて楽しもうというメッセージが込められたもの。
ライブで演奏することを前提として作ったのか、観客に寄り添ったようなイメージがある歌詞となっている。演奏されたら盛り上がりそうな感じ。


「ラストショー」は先行シングル曲。爽快なポップロックナンバー。ドラマティックな展開を見せるメロディーが終始展開されており、全編サビのような感覚がある。もはやイントロからしてキャッチーそのもの。シンプルなバンドサウンドとシンセを絡めたサウンドは非常にポップ。
歌詞は「青春映画のワンシーン」を意識したという。恋人との別れが描かれており、確かに映画を思わせる鮮やかな描写がされている。字面だけだとキザな詞世界なのだが、それでも違和感無く聴けるのが浜田の凄さ。
こちらも「The History of Shogo Hamada "Since1975"」に収録されているため、かなり前から聴き馴染みのある曲だった。


「センチメンタルクリスマス」は後にシングルカットされた「悲しみは雪のように」のB面曲。しっとりとしたバラードナンバー。切なく美しいメロディーで聴かせる。ドゥーワップからの影響を感じさせるコーラスワークがこの曲の聴きどころ。
歌詞はタイトル通りクリスマスを舞台にしたもの。恋人との幸せな時間や、世界中の人が幸せであるよう祈る詞世界となっている。
同じ浜田のクリスマスソングでも「MIDNIGHT FLIGHT-ひとりぼっちのクリスマス・イブ-」とは全く世界観が異なる。


「悲しみは雪のように」は今作発売後にシングルカットされた曲。1992年バージョンはフジテレビ系ドラマ『愛という名のもとに』の主題歌に起用され、浜田の最大ヒット曲となった。哀愁を漂わせたミディアムナンバー。一度聴けば口ずさめそうなキャッチーなサビで、後に大ヒットしたのも頷ける。1992年バージョンとは異なり、ピアノやハモンドオルガンが前面に出ているのが特徴。
歌詞は浜田の母が病に倒れ、意識不明になった際に思った時のことが綴られているという。悲しみや絶望に暮れている時だからこそ、相手を深く見ることができ、誰かに優しくできる。そうした感情が伝わってくる。
1992年バージョンに慣れ親しんでいるので、こちらがオリジナルバージョンだとわかってはいるがどうしても違和感を持ってしまう。


「防波堤の上」は今作のラストを飾る曲。重厚感のあるバラードナンバー。サビはしっかりと盛り上がりを見せるが、全体としてはかなり落ち着いている。エレピを中心としたソフトなアレンジでメロディーやボーカルを引き立てる。
歌詞は虚無感や死を思わせるもの。漠然と続くこれからの日々について考えると、それらが急に浮かんでくることがあるが、この曲もそのようにして作られたのだろうか?
この曲からどことなく漂う重苦しさは歌詞のせいか。


中古屋では1990年盤が最も多く出回っている印象がある。
タイトル曲「愛の世代の前に」から受ける印象だけだと、社会派なロックナンバーが並んでいるように感じるが、実際はそうではなく、ラブソングが多め。かなりメロディー志向の強いポップな作風だと思う。
基本的な作風は前作「Home Bound」と変わらない。前作と共に、浜田の基本的な音楽性を確立した作品と言える。

​★★★★☆