「2020年に出逢ったベストソング」の上半期編は上半期の終わり際に書きましたが、今回は下半期後編ということで、10月~12月に出逢ったベストソングを紹介していきます。

2021年が始まってからしばらく経ってしまいましたが、ようやく書き上げました。大変長らくお待たせいたしました。

2020年リリースの曲はあまりにも聴いた量が少ないので「2020年のベストソング」はやりません。
「2020年に出逢ったベストソング」ということで、過去の作品を聴いた中で特にハマった曲を年代問わず紹介していきます。ただ、上半期にも増して2020年リリースの曲が増えています。何故かはわかりませんが。
YouTubeなど動画サイトにアップされているものは動画も添えています。


10月…


・久野かおり「Adam & Eve 1989」(1989年)
作詞作曲:久野かおり
編曲:佐藤準



シンガーソングライター兼サックスプレイヤーという異色の肩書きを持つ久野かおりの1stアルバム「LUNA」の収録曲。近年のシティポップ・AOR再興の流れを受けてか、この時期に1stアルバム「LUNA」が再発されたので、それを入手した。この曲はアルバムの再発と同時に7インチレコード化も同時にされており、人気ぶりがうかがえる。
イントロからして圧倒的な高揚感を持った曲。最初から最後まで一切の隙が無い、徹底的に作り込まれたメロディーやサウンドがたまらない。そして、可愛らしくもどこか儚さのある歌声も素晴らしい。似た声の持ち主が意外といない。


・笠原弘子「夏のリトグラフ 2005」(2005年)
作詞:田口俊
作曲:ジョー・リノイエ
編曲:ジョー・リノイエ,吉原かつみ



笠原弘子の3rdミニアルバム「H.K.」の収録曲で、1993年にD-projectが発表した曲のカバー。このミニアルバムは元D-projectのジョー・リノイエがプロデュースと全曲の作編曲に関わった作品。その流れでカバーが決まったと思われる。
原曲は「2018年に出逢ったベストソング 上半期編」の3月のところで紹介しているが、こちらのカバーも最高だった。一部の歌い回しや歌詞が変わっているのが特徴。打ち込み主体のアレンジになったことで、原曲よりもポップな質感のサウンドとなった。笠原の透き通るような歌声の心地良さが尋常ではなく、よくこの曲をカバーしてくれたと心の底から思った。そして、この曲のメロディーの強さを再認識した。


・富樫明生「Make Me Happy」(1989年)
作詞作曲:富樫明生
編曲:U・S・WONDER

(23:03〜)

富樫明生の唯一のアルバム「HARLEM WONDER PARADE」の収録曲。後にm.c.A・Tと改名して活躍するわけだが、デビュー当初は本名名義。アルバムはエレクトロファンクに傾倒した作風で、その中でも特に好きなのがこの曲。
やり過ぎなくらいに音が詰め込まれた、猥雑な雰囲気を持ったエレクトロファンクナンバー。若干ロック色も感じられるのが特徴的。この手の濃厚なファンクサウンドは自分好みそのもので、一聴しただけでも圧倒された。そして、すぐに馴染むサビの強さは後の活躍も当然だと思わされる。また、彼独特のパワフルなハイトーンボイスはこの頃から発揮されていたことがわかる。


・platinum 900「Missing Star」(1999年)
作詞:坂田直子・西村一彦・小林泰三
作曲:西村一彦
編曲:飯星裕史



platinum 900の唯一のシングル曲。彼らの作品はどれもかなりのプレミアがついており、自分もこのシングルを定価の数倍の値段で入手した。
フリーソウル〜AORからの影響を感じられるミディアムナンバー。曲の完成度も演奏の聴きごたえも相当なものがあり、プレミアがついてしまっているのも頷けるほど。この曲を聴く度に、ここまで聴き心地の良い曲を作れるのかと驚かされる。
彼らの他の作品も入手したいところだが、そもそも出回っている量があまりにも少な過ぎる。今こそ作品が再発されてほしい、再発されるべきアーティスト。それだけの価値がある作品たちだと思う。


・藤井風「青春病」(2020年)
作詞作曲:藤井風
編曲:Yaffle



藤井風の配信限定4thシングル曲。「何なんw」で藤井風というアーティスト名自体は知っていたが、1stアルバム「HELP EVER HURT NEVER」を入手して本格的に彼の作品を聴き始めたのはこの頃から。ちょうどこの時期に配信リリースされてハマったのがこの曲。
グルーヴ感のあるサウンドがたまらない、叙情的なミディアムナンバー。サラッと聴けてしまうが、よくよく聴くとかなり複雑な構成であることがわかる。青春時代をテーマにした内省的な歌詞にも魅かれた。誰もがその頃に一度は感じたことがあるようなことが的確かつ鮮やかに描き出されている。「青春はどどめ色」というフレーズが鋭く響く。


・YUKIKA「Soul Lady」(2020年)
作詞:박진배(ESTi)・박지연(MonoTree)・최영경(MonoTree)
作曲編曲:박진배(ESTi)



YUKIKAの1stアルバム「Soul Lady」のタイトル曲。YUKIKAは韓国を拠点に活動する日本人女優・歌手・声優。韓国でも70年代〜80年代辺りの日本のシティポップ・AORが一部で人気なようで、アルバムはその流れを受けて制作されたと思われる。どの曲も自分好みな作品だったのだが、迷った末にこのタイトル曲を紹介する。
時代性の強いキラキラ感のあるサウンドがたまらないポップナンバー。シティポップだけでなくディスコ系の要素も感じられる。また、韓国の首都である「Seoul」(ソウル)と「Soul」を掛けたであろうタイトルも上手い。


・Rainych「Say So(日本語カバー)」(2020年)

作詞作曲:Yeti Beats・Lydia Asrat・Nicki Minaj・Dr. Luke & Doja Cat
日本語詞:Datenkou

(原曲)

インドネシアの歌手・YouTuberのRainych(レイニッチ)による、Doja Catの楽曲「Say So」の日本語カバーバージョン。
原曲すら聴いたことが無かったのだが、こちらのバージョンを店内放送でよく耳にして、中々忘れられなかったのがこの曲との出逢い。何かのついでに聴いていても離れられなくなるような、異様なまでの中毒性の高さ。Rainychの歌声もあってか、原曲のアダルトな世界観が一気に薄れて可愛らしさ全開になった感じ。
他にも様々な曲をカバーしているようで、日本での活動はどうなるのか気になるところ。


11月…


・鬼頭明里「トウメイナユメ」(2020年)

作詞:yukiko
作曲編曲:藤井健太郎(HANO)



鬼頭明里の3rdシングル「キミのとなりで」のC/W曲。爽快かつお洒落な雰囲気を漂わせたポップロックナンバー。イントロからしてぶち上がってしまう。ギター最高過ぎんか?それだけでなく、後半はフュージョン的な展開を見せる。そこがたまらない。
言葉の数が多くて歌いにくそうな感じがするが、それでも見事に歌いこなしており、歌唱力を実感できる。全体的に歌声の魅力が活かされるような音作りがされている印象がある。この手の路線の曲をもう少しやってみてほしいと思ってしまう。


・麻倉もも「あしあと」(2020年)
作詞:オカダカナ

作曲編曲:すずみとりあ



麻倉ももの8thシングル「僕だけに見える星」のC/W曲。サブスクで聴けるようになった直後から声優関連で繋がっているフォロワーが絶賛しており、それがきっかけで聴いた。
R&B〜ヒップホップのテイストを取り入れたバラードナンバー。ふわっとした歌声と音使いにただただ癒される。仕事終わりの心情を描いた歌詞も日常に寄り添っている感じがする。
アイマス楽曲「Sweet Sweet Soul」でも同じことを書いたが、もちょの声とラップの異常なまでの親和性の高さよ。(約7ヶ月振り2度目)
あと、もちょの字が好き。リリックビデオを見てくれ。


・駒形友梨「Night Walk」(2020年)
作詞:叶人
作曲編曲:高橋諒



駒形友梨の4thミニアルバム「Night Walk」のタイトル曲にしてオープニング曲。同じく2020年リリースの前作「a Day」が朝〜昼をテーマにした作品なら、「Night Walk」は夜をテーマにした作品である。聴いた中でも一番ハマったのがこのタイトル曲。
AOR色の強いメロディーやサウンドが心地良い曲。夜の空気の中に溶けていくような感覚がたまらない。あまり張り上げ過ぎないボーカルも曲の雰囲気に合っている印象がある。まさに夜のテーマソングと言ったところ。
ここまでのクオリティの作品を連発されると、今後の音楽活動も楽しみになってくる。


・KAN「エキストラ」(2020年)
作詞作曲編曲:KAN



KANの17thアルバム「23歳」の収録曲で、リード曲。「23歳」はファンになってから初のアルバム「6×9=53」以来の作品ということでとても楽しみにしていた。その期待通りの充実した作品だった。その中でも特に好きな曲。
ほぼピアノとボーカルのみで構成された直球なバラードナンバー。どこまでも美しく繊細なメロディーには聴く度に鳥肌が立つ。片想いをテーマにした切ない歌詞は初期の作品を彷彿とさせるが、そこに老いの視点が含まれているのが印象的。今のKANにしか作れなかっただろう。
往年の名バラードに比肩する名曲が出てきたと思わされた。やはりKANは凄い。


12月…


・SEKAI NO OWARI「silent」(2020年)
作詞:Fukase
作曲:Fukase・Nakajin
編曲:SEKAI NO OWARI




SEKAI NO OWARIの14thシングル曲で、TBS系ドラマ『この恋あたためますか』の主題歌。米津玄師の「感電」と同じような経緯だが、タイアップ相手のドラマが好きで毎回見ていたのでその流れで印象に残った形。
恐らくセカオワとしては初となるクリスマスソング。セカオワとクリスマスソングという組み合わせの親和性の高さは聴く前からわかっていたつもりだった。何となくどちらもロマンティックだったりファンタジックだったりするイメージがあったためだ。いざ聴くとまさにその通りだった。自分が思うセカオワの楽曲像そのものと言った感じ。


・黒沢律子「Blue Sky」(1993年)
作詞作曲:佐藤竹善・藤田千章
編曲:ジョー・リノイエ




黒沢律子の4thアルバム「DISH」の収録曲。90年代ガールポップのマイナーどころに入るアーティスト。この時期に運良くアルバム全作を一挙に入手することができた。その中で一番好きになったアルバムは「DISH」。そこからどの曲を紹介しようか迷った末にこの曲を紹介する。
SING LIKE TALKINGの佐藤竹善・藤田千章が作詞作曲、D-projectのジョー・リノイエが編曲を手がけたポップナンバー。タイトル通りの爽やかさがたまらない。王道かつ洗練されたメロディーとサウンドが最高で、まさにこういうのを聴きたかった!という感じ。


Tomato n’ Pine「なないろ☆ナミダ」(2011年)
作詞:Kenji & Jane
作曲:古川貴浩
編曲:釣俊輔



Tomato n’ Pineのメジャー2ndシングル曲。散開からかなり経った現在でも、楽曲派アイドルの代表格として支持され続けているグループ。唯一のアルバム「PS4U」はかなりの名盤で、どの曲も印象的だった。非常に迷った末にこの曲を紹介する。
優しく聴き心地の良いアイドルポップ。メロディーも最高だが、ただただ寄り添って慰めてくれるようなイメージのある詞世界が自分にはこれ以上無いほど響いた。派手に主張しない、お上品な雰囲気がこのグループの魅力だったように思う。その魅力が特に発揮された曲という印象。


・大本友子「ニュースにならない恋人たち」(1997年)
作詞作曲:大本友子
編曲:門倉聡



大本友子の5thアルバム「ニュースにならない恋人たち」のタイトル曲。アルバムはネオソウルからの影響を感じさせるサウンドで固められた作品で、どの曲も自分好みだった。その中でも特に印象的だったのがこのタイトル曲。
メロディーやサウンドには一聴しただけで好きになった。ラブソングの形を取りつつも、流れてくるニュースについて描かれた、どこかシニカルな雰囲気を持った詞世界にも魅かれた。
アルバムは3年半ほど探していた作品だったが、聴いた時には今まで苦労して探してきた甲斐があったと心の底から思えた。


彼女のサーブ&レシーブ「Racket Love」(2017年)※全国流通は2018年
作詞:田辺優
作曲編曲:ikkubaru


彼女のサーブ&レシーブの1stアルバム「SERVICE ACE」の収録曲で、後に7インチシングル化もされた。イロモノのようなユニット名だが、楽曲には非常に恵まれている。この時期に2ndアルバム「kanosare」がリリースされたので、その流れで1stアルバムも入手した。
恋模様をテニスのラリーと掛けたポップなラブソングで、ユニット名を体現した曲だと思う。また、角松敏生の「TAKE YOU TO THE SKY HIGH」を彷彿とさせる、畳み掛けるようなサビのメロディーが印象的。ikkubaruの提供なので、その辺りは狙っていたのだろうか?


・アップル&ペアーズ「きんいろのかけら」(1996年)
作詞作曲:岡田純
編曲:白井良明とアップル&ペアーズ



アップル&ペアーズの1stシングル「ときには空」のC/W曲。この曲は表題曲と同様にフォロワーからの人気がかなり高く、前から気になっていた。この時期にようやくシングルを入手できたので聴いたところ、その期待通りの名曲だった。
懐かしい雰囲気を持った、聴き心地の良いミディアムナンバー。包み込まれるようなメロディーにはすぐに心を掴まれた。また、過去の思い出を回想しつつ、メッセージ性のある歌詞が今の自分の心情に優しく響いた。
表題曲は数年前に聴いて以来大好きな曲となっているが、このC/W曲も表題曲に比肩するレベルで好きな曲となった。


【おまけと宣伝】
試聴用としてSpotifyにてプレイリストを作りました。
https://open.spotify.com/playlist/2E3IpUqgdjm8ZmkBmriBVU?si=nFlVKpBdTamzgMKO5gJzkA

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かなり抜けがありますが、Spotifyにある分は全て入れています。「夏のリトグラフ」については、笠原弘子のカバーが無かった代わりにD-projectの原曲を入れています。Spotifyを使っている方はぜひ。


下半期編は以上です。2020年は今回紹介した以外にも、数え切れないほど多くの名曲に出逢えました。2021年も新旧問わず沢山の素晴らしい音楽に出逢えることを願って、今回の記事を終えます。