前回に引き続き。


この記事での楽曲感想については、シングルのC/W曲およびアルバム未収録となっている配信シングルのみとさせていただきます。
シングル表題曲の感想はアルバムレビューの方へ。まだ更新できていないものはいずれ。気長にお待ちいただけると幸いです。

それでは本題に入りましょう。


【1st配信シングル 「辿りつく場所」】
2015年7月31日発売
2015年10月21日配信







アルバム未収録なので一応。元々は花澤がハイレゾ対応ポータブルオーディオブランドのAstell&Kernとコラボしたモデル「Astell&Kern AK100II KANA HANAZAWAエディション」が発売された際、それにプリインストールされていた曲。台数限定発売だった上に非常に高価だったので、しばらく聴くのが困難な曲となっていたが、後にこの曲が単体で配信されることになった。

【収録曲】
作詞 Reom
作曲編曲 Yamato Kasai from.Mili

1.辿りつく場所 ★★★★☆


「辿りつく場所」は幻想感のあるバラードナンバー。クラシックのテイストを取り入れたアレンジがされている。ボーカルに加え、ピアノや弦楽器といった一つ一つの音が非常に際立って聴こえるので、音質にこだわって制作されたことがうかがえる。生々しいほどの聴こえ方である。
歌詞は一人の少女を主人公とした、ストーリー性の強いもの。「気持ちの揺らぎ」がキーワードになっていると感じた。
この曲自体が悪いわけではないが、本人名義の作風としては思い切り浮いている印象が否めない。何となく初期の牧野由依の作品に似ていると思った。現時点でアルバムに収録されていないのも頷ける。


【9thシングル 「透明な女の子」】
アニプレックス
2016年2月24日発売
最高位20位 売上0.7万枚

【収録曲】
全曲作詞作曲 山崎ゆかり
全曲編曲       窪田渡
3.ストリングスアレンジ 上野耕路
プロデュース 山内真治
サウンドプロデュース 山崎ゆかり

1.透明な女の子 省略
2.パン屋と本屋 ​★★★★☆
3.雨降りしき ★★★☆☆
4.透明な女の子(Instrumental) 省略


「パン屋と本屋」は素朴な雰囲気を持ったミディアムナンバー。包み込まれるような心地良さを持ったサビのメロディーが好き。栗コーダーカルテットのメンバーがリコーダーや金管楽器の演奏で参加しており、それが曲の脱力感を演出している。
歌詞は日常での細やかな楽しみをイメージさせるもの。隣町に行く、パン屋や本屋に寄る…非常にありふれた様子が描かれているが、それがとても尊く感じられる。「パン屋」は花澤の好きなものに合わせたのだろうか?
このシングルの収録曲の中では一番好きな曲。山崎ゆかりとのコラボが最も良い形で反映された曲だと思う。


「雨降りしき」は静謐な雰囲気を持ったバラードナンバー。どこか懐かしさのあるメロディーが終始展開されている。ピアノとストリングスのみで構成された、かなりシンプルかつ重みのあるサウンドで聴かせる。
歌詞はタイトル通り雨の日を舞台に、物思いに耽る様子が描かれている。他の曲にも増してウィスパーボイスで歌われており、それがセンチメンタルな詞世界の魅力を限りなく引き出している。
聴き流しているだけだと地味なバラードとしか思えないのだが、しっかり聴くと細部まで丁寧に作り込まれているのがよくわかる。


【10thシングル 「あたらしいうた」】
アニプレックス
2016年6月1日発売
最高位14位 売上0.7万枚

【収録曲】
全曲作詞 花澤香菜
全曲作曲編曲 北川勝利
プロデュース 山内真治
サウンドプロデュース 北川勝利

1.あたらしいうた 省略
2.今朝のこと ★★★★★
3.Looking for your Smile ​★★★★☆
4.あたらしいうた(Instrumental) 省略


「今朝のこと」は軽快なサウンドが心地良いポップナンバー。渋谷系のテイストを感じさせるバンドサウンドがたまらない。イントロからして心を掴まれる。当たり前のように美しさとポップ性を両立させたメロディーには聴き惚れるのみ。
歌詞は恋人への想いが綴られたもので、幸せな雰囲気に溢れた詞世界となっている。本人が作詞すると内省的な詞世界になりがちな印象があったので、とても新鮮だった。
メロディー・サウンド共に、自分が北川勝利の作品に求める要素がよく現れている印象があって、かなり好きな曲。C/W曲の中でも特に好きな方に入る。


「Looking for your Smile」はソフトロックの要素が感じられるポップナンバー。ポップかつ美しく訴求力のあるメロディーで聴かせる。ピアノやホーンを主体としつつ、楽しげな雰囲気を持ったサウンドに仕上がっている。かなり凝ったコーラスワークも特徴で、曲を効果的に盛り上げる役割を果たしている。
歌詞は幼少期の記憶を振り返りつつ、母親を始めとした大切な人へのメッセージが綴られたもの。優しい言葉が全編に渡って出てくる。
こちらも北川勝利ならではの曲となっている印象。
このシングルもかなり充実感があると思う。新境地と言える表題曲と、これまでの王道と言えるC/W曲2曲。どちらも素晴らしいものがある。


【11thシングル 「ざらざら」】
アニプレックス
2016年11月30日発売
最高位20位 売上0.7万枚

【収録曲】
1.作詞 花澤香菜
2.3.作詞 岩里祐穂
1.作曲 秦基博
2.作曲編曲 末光篤
3.作曲編曲 ナカムラヒロシ
1.編曲 島田昌典
プロデュース 山内真治

1.ざらざら 省略
2.クラッシュシンバル ★★★★☆
3.IN LOVE AND IN TROUBLE ​★★★★☆
4.ざらざら(Instrumental) 省略


「クラッシュシンバル」は表題曲から一転して、爽快なピアノロックナンバー。複雑ながらも高揚感に溢れたメロディーにはすぐに心を魅かれる。曲と共に駆け抜けていくような感覚のあるピアノはいつまでも聴いていたくなる。
歌詞は力強く前向きなメッセージが込められたもの。タイトル通り、楽器や音楽を思わせるフレーズが多く登場するのが特徴。
ボーカルと同じくらいかそれ以上にピアノが前面に出たサウンドがとにかく印象に残る。竹達彩奈の「♪の国のアリス」や「Yes-No」を聴いた時にも感じたのだが、作編曲を担当した末光篤の色が強く出た曲となっている印象。


「IN LOVE AND IN TROUBLE」は全編打ち込みによるポップナンバー。全体的に言葉数が多くて言葉が詰め込まれている感覚があり、それもあってとても耳に残る。打ち込みによるキラキラしたサウンドはメロディーやボーカルに寄り添うかのよう。
歌詞は比較的メッセージ性の強いもの。「12月の雨」「白い息」「星屑のイルミネーション」など冬を思わせるフレーズが出てくるので、その時期になると聴きたくなる。
この手の打ち込み主体のポップナンバーは割と少ないので、「運命の女神」と同じく好きな曲。このシングルの中では一番好き。


【12thシングル 「春に愛されるひとに わたしはなりたい」】
SACRA MUSIC(ソニー)
2018年2月7日発売
最高位15位 売上0.4万枚



【収録曲】
1.作詞作曲 水野良樹
2.3.作詞 花澤香菜
2.3.作曲 佐橋佳幸
全曲編曲 佐橋佳幸
プロデュース 佐橋佳幸

1.春に愛されるひとに わたしはなりたい 省略
2.ひなたのしらべ ★★★☆☆
3.夜は伸びる ★★★★☆
4.春に愛されるひとに わたしはなりたい(Instrumental) 省略


「ひなたのしらべ」は2分と少しの短めな曲。懐かしさを持った温かみのあるメロディーが展開されている。サウンド面はアコギが主体だが、アコーディオンやティンホイッスルも使われている。ケルト音楽のような、どことなくのどかな雰囲気を感じさせるサウンドに仕上がった。
歌詞は春の訪れを思わせる言葉が多く並んでいる。春の時期の匂いまで浮かんでくるような詞世界で、花澤の優しい歌声がそれをさらに鮮やかなものにしてくれる。
肩肘張らずに作られた感じが伝わってくる。いかにもC/W曲という感覚がある。


「夜は伸びる」はソフトロックやAORのテイストが感じられるミディアムナンバー。タイトル通りに夜を想像させる、穏やかでムードのあるサウンドがたまらない。ピアノやフリューゲルホルンの使い方が見事。夜の中に溶けていくような美しいメロディーとサウンドの絡みが非常に心地良い。
歌詞は気ままに夜の街や夜の時間を楽しむ姿が浮かんでくる。「細胞が喜ぶような 声を響かせたい」という歌詞があるが、そこが印象的。この歌詞を花澤自ら書き、まさにその声で歌ってしまうところにあざとさを感じる。
派手さこそ無いものの、いざ聴くと引き込まれる曲。


【13thシングル 「大丈夫」】
SACRA MUSIC(ソニー)
2018年7月25日発売
最高位27位 売上0.5万枚


【収録曲】
1.3.作詞作曲 槇原敬之
2.作詞 花澤香菜
2.作曲 佐橋佳幸
全曲編曲 佐橋佳幸
プロデュース 佐橋佳幸

1.大丈夫 省略
2.夏のしおり ★★★★☆
3.大丈夫(Neo Country Ver.) ★★★★☆
4.大丈夫(Instrumental) 省略
※期間生産限定盤はインストではなく「大丈夫(TV Ver.)」収録。


「夏のしおり」はノスタルジックな雰囲気を持ったメロディーが展開されたミディアムナンバー。イントロのギターサウンドが哀愁に満ちていて良い。全体的には打ち込みが前に出ているのだが、やはりギターの印象が強い。
歌詞は恋心を伝えられないまま終わった夏の恋を回想したもの。情感のこもったボーカルが切ない詞世界をさらに魅力的なものにしている。作詞における表現力もかなりレベルアップしている印象。
この曲と同じく佐橋佳幸が関わっていた、初期の鈴木祥子の作品を思い出した。


「大丈夫(Neo Country Ver.)」は表題曲の別バージョン。原曲にあったホーンをカットし、ギターやマンドリンなどを前面に出したバージョン。タイトル通りカントリーミュージックの要素が強いアレンジとなっている。どうやらこちらが槇原によるデモ音源に近いアレンジのようだ。
また、ボーカルも再録されている。元々明るい中に陰も感じられる歌詞だったが、こちらのバージョンはそれが少し前に出ている印象。
原曲・こちらのそれぞれに違った魅力があるので、聴き比べてみることをおすすめする。


【2nd配信シングル「magical mode(Chinese Version)」】

2021年2月2日(3日?)配信


【収録曲】
1.作詞 hanser
1.作曲 神前暁
編曲クレジットは不明だが、恐らく編曲も神前暁が担当したと思われる。

1.magical mode(Chinese Version) ​★★★★☆

音源は各自で検索して聴いていただければなと。


「magical mode(Chinese Version)」は可愛らしさに特化したようなイメージのポップナンバー。ZOZOとのタイアップがされた。フューチャーベースの要素を取り入れた、煌びやかなサウンドはポップなメロディーの魅力をさらに高める。
「恋愛サーキュレーション」の路線を狙って作られたのが想像できる。作られているかどうかは知らないが、いつか日本語版を聴いてみたい。
メロディーやサウンドについては、「こういうの好きなんでしょ?」と煽られているような感覚に陥る。ただ、本当に好きなので何も言い返せない。


これにて「花澤香菜 アルバム未収録曲レビュー」は終了です。これからの音楽活動がどうなるかはわかりませんが、ひっそりと応援していきたいと思います。