現在は「曇りめがね的名盤特集」をやっているので、自分では用済みになったように思っていた「○○年代私的ベストアルバム」ですが、改訂版の執筆を希望する声が多かったのでこれからやっていきます。
第1回は2000年代の前編ということで、2009年~2005年の好きな作品をランキング形式で紹介していきます。手短な紹介文も添える形で。ベスト10を基本としますが、年によっては変動する場合もあります。紹介する作品は現物で所有しているものだけで、邦楽のみ。
また、先の「曇りめがね的#ベスト平成アルバム」で紹介した作品は紹介文をコピペしています。ご了承ください。
2010年代ほどではありませんが、2000年代も割と顔ぶれが変わっているように思います。4年の間にいかに趣味が変わったか(広がったか)がよくわかるはずです。
それでは早速本題に入りましょう。
前回の「2010年代私的ベストアルバム【後編】」(2014年〜2010年)はこちらへ。
【2009年】
10位 B'z「MAGIC」
B'zの17thアルバム。今作に収録されたヒットシングル「イチブトゼンブ」の印象そのままに、爽快かつポップなロックナンバーが主体となった作品です。多くの人が想像するであろうB'zの王道と言ったところ。
全体を通しての長さがコンパクトなだけでなく、最初から最後まで勢いが落ちない流れの良さも今作の魅力です。
9位 角松敏生「NO TURNS」
角松敏生の19thアルバム。タイトルは「過去を振り返らない」というような意味があるようです。
「夏・海」路線の曲、「夜・性愛」路線の曲、内省的でメッセージ性の強い曲とがバランス良く散りばめられています。これまでの25年以上に渡る活動の中で積み上げてきたものをそのまま突き詰めたような印象がある安定の作品。
8位 seikou nagaoka(長岡成貢)「Romantic GOLD」
seikou nagaokaの2ndアルバム。長岡成貢は多くのアーティストへの楽曲提供や編曲、映画・ドラマ・アニメの劇中音楽を手掛けてきました。
ハウスミュージックを始めとしたダンスミュージックに傾倒した作風で、ダンサブルかつ限りなくポップな曲やサウンドがたまりません。何かのついでにひたすら聴き流していたい曲が揃っています。
7位 たむらぱん「ノウニウノウン」
たむらぱんの2ndアルバム。タイトルは英語の「Know-Knew-Known」から来ているようです。
アーティスト名だけ見るとイロモノのように思えますが、圧倒的なメロディーセンスの持ち主です。どの曲もかなり凝っているのに、キャッチーそのもの。伸びやかな美しい歌声も相まって、すぐに心を掴まれてしまうような強さがあります。
6位 UNDER THE COUNTER「DON’T LOOK BACK」
UNDER THE COUNTERの5thアルバム。メジャーレーベルからの最後のリリースとなりました。一部の曲では亀田誠治がプロデュースで参加しています。ポップかつ爽快なギターロックを終始に渡って楽しめる作品。
当時はメンバー全員が音楽活動とアルバイトを両立させていたようですが、日常に寄り添ったメッセージ性のある詞世界にそれが反映されているように思います。
5位 Buono!「Buono!2」
Buono!の2ndアルバム。前作「Café Buono!」からさらにロック色を強めた作風となり、Buono!としての音楽性を確立した印象があります。
その路線そのままのシングル曲はもちろんのこと、AORテイストの曲や本格的なシンフォニックロックを取り入れた曲など、新たな挑戦がされたアルバム曲の聴きごたえもかなりのものです。
4位 ROUND TABLE「FRIDAY,I’M IN LOVE」
ROUND TABLEの4thアルバム。この名義でのフルアルバムのリリースは「RADIO BURNIN’」以来実に8年振り。
これまでの作品とは打って変わって、全体的にソウルのテイストが強い作風となっています。北川勝利と伊藤利恵子の優れたメロディーセンスが際立つような生音主体の音作りで、非常に聴き心地の良い曲が揃っています。
3位 黒沢健一「Focus」
黒沢健一の4thアルバム。ソロとしては「NEW VOICES」以来実に7年振りのリリースとなりました。
生活の中に違和感無く溶け込むような、どこまでも優しく聴き心地の良いポップスを楽しめます。普遍性に溢れたメロディーセンスは黒沢ならでは。一部の楽曲はシライシ紗トリがプロデュースを手がけており、その点を始めとして新たな挑戦がされた部分が複数あります。
2位 高野寛「Rainbow Magic」
高野寛の11thアルバム。デビュー20周年記念作であり、本人が「第2のデビューアルバム」と位置付けています。
90年代終わり〜2000年代にかけての高野はアコースティックな作風に傾倒していましたが、まさにタイトル通りのカラフルなポップスが全編に渡って展開されています。ポップス職人としての高野の実力が遺憾無く発揮されており、キャリア屈指の充実作だと思います。
1位 andymori「andymori」
andymoriの1stアルバム。全編通して勢いのある切れ味鋭いロックナンバーが次々と並び、「すごい速さ」で駆け抜けていくアルバム。短い曲の中に歌詞が詰め込まれたような印象がありますが、その中にはとても内省的な歌詞もあり、そのギャップに引き込まれること請け合いです。1stならではの初期衝動に溢れた名盤。
【2008年】
10位 椿屋四重奏「TOKYO CITY RHAPSODY」
椿屋四重奏の3rdアルバム(メジャー1stアルバム)。タイトル通り「東京」をテーマとした作品です。格好良さと妖艶さを併せ持った、彼ら独特のロックが展開されています。
バンドサウンドだけでなく、ピアノや打ち込みなど外部の音が入るようになりましたが、そこはインディーズ時代との大きな変化だと思います。
9位 Mr.Children「SUPERMARKET FANTASY」
Mr.Childrenの15thアルバム。消費されることをポジティブに捉えて制作されたという作品で、タイトルにもそれが表れているように思います。その背景の通り、終始ポップな作風となっています。
先行シングル曲のみならず、全体を通じても有無を言わせないほどの勢いの良さがあり、いつ聴いても引き込まれます。
8位 Buono!「Café Buono!」
Buono!の1stアルバム。ハロプロ系のグループでありながら、つんく♂が楽曲制作やプロデュースに関わっておらず、外部提供によって制作されました。
後半では作風が少し異なりますが、前半は徹底的にロック色の強い曲を並べており、Buono!ならではの音楽性の片鱗を見せています。可愛らしいボーカルと爽快なロックサウンドとの絡みが不思議と心地良い作品。
7位 ROUND TABLE featuring Nino「Distance」
ROUND TABLE featuring Ninoの3rdアルバム。この名義では今のところ最後のオリジナルアルバム。
生音を主体として丁寧に作り込まれたサウンドによって、メロディーの強度がより高められている印象があります。ただひたすらお洒落かつ良質なポップスを楽しめます。アニメタイアップを抜きにしても聴かれるべき曲が揃った作品です。
6位 arcorhyme「甘い日々-la douce vie-」
arcorhymeの1stアルバム(「soundmatic brain」と同時発売)。作家として長らく裏方で活動していた高浪敬太郎が当時の妻だった西村郁代と結成し、久し振りに表舞台に出てきたユニット。
ロジャニコのジャケ写のオマージュがされていますが、元ネタと同じくソフトロックに傾倒した作風で、高浪のメロディーセンスが遺憾無く発揮されています。西村の可愛らしいボーカルとの絡みがたまりません。
5位 FROG「EXAMPLE」
FROGの1stアルバム。元Cymbalsの沖井礼二によるソロプロジェクトで、ソロ作品のリリースはこれが初。
様々なゲストボーカリストを迎えて制作されており、バラエティに富んだ曲が並んだ作品となりました。沖井節と称される、お洒落かつ格好良いメロディーラインや音作り(特にベース)を終始に渡って堪能できます。
4位 RAG FAIR「カラーズ」
RAG FAIRの4thアルバム。リーダーの引地洋輔が単独でプロデュースを手掛けました。
彼らのパブリックイメージであるアカペラや賑やかな雰囲気からは少し離れた作風ですが、全編通して洗練されたポップスを楽しめます。凝ったコーラスワークの聴き心地は素晴らしいものがあり、コーラスグループとしてのRAG FAIRの姿がよく現れている印象です。
3位 Lamp「ランプ幻想」
Lampの4thアルバム。ブラジル音楽やAORなどを取り入れた、美しく甘い曲やサウンドに魅かれます。
一度聴いただけで引き込まれるような派手さや強さは無いですが、それでも何度も聴きたくなるような不思議な魅力があります。日本語の響きにこだわった詞世界も素晴らしく、日本語のポップスとして理想的な作品。
2位 microstar「microstar album」
microstarの1stフルアルバム。作品のリリースは実に7年振り。
1950〜60年代のオールディーズを彷彿とさせる美しくポップなメロディーと、80年代のテクノポップを合わせたようなサウンドを持った曲が並んでいます。佐藤清喜の卓越したメロディーセンスと音作りに圧倒される名盤です。作品全体に溢れている、休日の朝のような幸福感もたまりません。
1位 いきものがかり「My song Your song」
いきものがかりの3rdアルバム。シングル・アルバム通じて初のチャート1位を獲得したヒット作。
グループの存在が段々と大きくなる中でリリースされただけあって、確かな勢いと充実感がある作品です。シングル曲もアルバム曲もひたすら王道J-POPそのもの。この普遍性こそいきものがかり。同年リリースの前作「ライフアルバム」も同様の名盤。そちらもぜひ。
【2007年】
10位 広沢タダシ「アイヲシル」
広沢タダシの5thアルバム。前作「869本目のアーチ」よりもさらに明るく開放的な作風になっており、広沢の多彩な音楽性を楽しめる作品です。
また、優しく普遍性に溢れた詞世界も今作の魅力です。タイトルのフレーズが今作の収録曲の詞世界における大きなテーマになっているように思います。
9位 スピッツ「さざなみCD」
スピッツの12thアルバム。結成20周年の年にリリースされました。
2000年代以降のアルバムで強まっていたロック色は控えめに、スピッツならではの爽やかなポップ性を押し出した作品です。
毒のある曲も少ないため、地味と言ってしまえばそれまでですが、聴く度に良さが出てくる印象があります。
8位 石田ショーキチ「love your life」
SCUDELIA ELECTROの解散後にリリースされた、石田ショーキチのソロ1st(デビュー)アルバム。
多彩なジャンルの音楽性を取り入れつつも、流れるような美しさを持った石田ショーキチならではのメロディーが終始展開されており、メロディーメーカーとしての実力が見事に発揮されています。
7位 eufonius「metafysik」
eufoniusのメジャー2ndアルバム。複雑な転調やボーカルのriyaによる造語コーラスが張り巡らされた、彼ら独特のファンタジックな世界観を持ったポップスが詰め込まれています。
多くの曲にアニメやゲームなどのタイアップがされていますが、タイアップ相手の存在を抜きにしても楽しめるだけの強さを持った曲が揃っています。
6位 kukui「箱庭ノート」
kukuiの1stアルバム(2nd扱いもあり)。アニメやゲームとのタイアップが多いだけあって、メルヘンかつ幻想的な世界観を持った曲を得意としており、今作でもそれが存分に発揮されています。曲やサウンド面は精緻に作り込まれており、実験的な部分もありますが、ボーカルのおかげでかなり聴きやすい仕上がり。
eufoniusが好きならこちらも聴いていただきたいと思います。逆も然り。
5位 新垣結衣「そら」
新垣結衣の1st(デビュー)アルバム。儚ささえ感じられるような独特の歌声を活かした音作りがされた曲が揃っており、聴き心地の良い作品となっています。声優の音楽作品にも通じる雰囲気があると思います。
ガッキーの歌手活動は黒歴史のような扱いをされてしまいがちですが、それで済ますには勿体ないほどに力が入っています。
4位 GOING UNDER GROUND「おやすみモンスター」
GOING UNDER GROUNDの6thアルバム。バンドの解散の危機を乗り越えて製作されたようです。河野丈洋による曲が少なく、松本素生が手がけた曲が大部分を占めているのも特徴。
初期を思わせる爽快なバンドサウンドと近作で見られた打ち込みとをバランス良く折り混ぜ、安定感と新鮮さを併せ持った曲が並んでいます。全編通しての流れの良さに加え、全体に溢れる高揚感に心を掴まれます。
3位 岩﨑元是「FOR A LONG TIME」
岩﨑元是の1stアルバム。岩﨑元是&WINDY解散後、長らく作家として裏方で活躍してきましたが、20年振りに表舞台に復帰した作品です。大滝詠一からの影響を感じさせる、ウォール・オブ・サウンドを取り入れた彼ならではの音楽性が全面的に発揮されています。バンド自体と何ら変わらない美声も素晴らしい。
いい意味で2000年代の作品とは思えない懐かしさと普遍性があります。
2位 face to ace「NOSTALGIA」
face to aceの4thアルバム。ACE(エース清水)・本田海月(本田恭之)による叙情的なメロディーの応酬には聴き惚れるのみ。本田の真骨頂と言える、シンセを主体とした緻密に作り込まれたサウンド面も相まって、全編通しての充実感は圧倒的なものがあります。
また、秋〜冬を思わせる曲が多いので、その時期に聴きたくなります。
1位 くるり「ワルツを踊れ Tanz Waltzer」
くるりの7thアルバム。「ロックとクラシックの融合」をテーマに、ウィーンとパリでレコーディングされた作品。オーケストラがフィーチャーされていますが、本来のバンドサウンドと見事に共存しています。
キャリアを通じて音楽的に様々なアプローチをしてきたくるりですが、この時の路線は特によく合っていたように思います。
【2006年】
10位 牧野由依「天球の音楽」
牧野由依の1stアルバム。アニメタイアップがついた曲が多いだけあって、全体的に幻想的な世界観を持った曲が多め。
様々な作家が参加しており、実験的なアプローチがされた曲もありますが、牧野の柔らかく優しい歌声を生かす方向性は一致しています。それが作品を通しての聴きやすさに繋がっている印象です。
9位 paris match「after six」
paris matchの6thアルバム。セルフプロデュースに移行してからは初のオリジナルアルバムです。タイトル通り「夜」をテーマとしたコンセプトアルバムで、午後6時から午前6時までの風景を1時間に1曲ずつ切り取って描かれています。
サウンド面や詞世界も含め、ミズノマリの艶っぽい歌声がこれ以上無いほど映えるような曲が揃っています。
8位 曽我部恵一「LOVE CITY」
曽我部恵一の5th(6th?)アルバム。直近のソロ作はロックンロールに傾倒した作風でしたが、今作はメロウかつソウルフルな雰囲気をまとったポップスが展開されています。作風はサニーデイ・サービス時代の「MUGEN」に近い印象です。また、タイトル通りに都市を舞台としたようなラブソングが多め。曽我部のシルキーで色気に溢れた歌声が合う曲ばかりで、聴き惚れるのみ。
7位 Nona Reeves「3×3」
Nona Reevesの7th(通算9th)アルバム。代表曲の一つである「透明ガール」が収録されています。
80年代のディスコやソウルを換骨奪胎した、彼ら独自の音楽性が今作でも遺憾無く発揮されています。耳馴染みの良さに振り切ったメロディーの力も相当なもので、シングル曲のみならずどの曲もかなり耳に残る仕上がり。
6位 流線形「TOKYO SNIPER」
流線形の2ndアルバム。今作ではクニモンド瀧口のソロプロジェクトととなり、ボーカルに江口ニカ(一十三十一の変名)を迎えて制作されました。70〜80年代のシティポップ・AORからの強い影響が感じられる音作りが持ち味。
聴きごたえと聴き心地の良さを併せ持った曲が揃っており、夜のドライブのお供としてはこれ以上無いほどうってつけな作品だと思います。
5位 スキマスイッチ「夕風ブレンド」
スキマスイッチの3rdアルバム。繋がりの良い構成が印象的で、良くも悪くもシングル曲が強過ぎる印象があった前2作とは異なり、全体を通して聴かせたいという意図が伝わってきます。その甲斐あって、初期の到達点と言いたくなるような充実作となりました。
1st「夏雲ノイズ」、2nd「空創クリップ」と続いた初期の3部作の中では最高傑作だと思います。
4位 ORANGENOISE SHORTCUT「Bubblelights」
ORANGENOISE SHORTCUTの3rdアルバム。現時点では彼らの最後のオリジナルアルバムとなっています。彼らはネオ渋谷系として括られることが多いユニット。
それだけあって、お洒落かつキラキラしたポップ感を持った曲が全編に渡って揃っています。杉本清隆の女性のようなハイトーンボイスも曲の親しみやすさを高めています。
3位 Terry&Francisco「Terry&Francisco」
Terry&Franciscoの1stミニアルバム。ウエストコーストロック周辺からの影響を受けた、清涼感のある洗練されたポップスが展開されており、シティポップ・AOR再興の流れの中で評価されてほしい存在です。
同年リリースの「Terry&Francisco2」も同様の名盤。そちらもぜひ。※今から聴くなら、新曲入りの全曲集「テリー&フランシスコ ギャラクシー」を入手するのがおすすめ。
2位 アツミサオリ「空色ノスタルジー」
アツミサオリのインディーズ2ndアルバム。素朴かつ普遍的な魅力を持った曲が並んでおり、タイトル通りのノスタルジックな雰囲気に溢れています。どの曲も非常にメロディーが強い。いわゆる「ギター女子」系アーティストの作品における最高傑作だと思っています。
とあるフォロワーの好きなアルバムランキングベスト100のラインナップを揃えようとした時、最後に残ったのが今作で、入手までにかなり時間がかかったこともあり、内容の良さを抜きにしても個人的な思い入れが強い一作です。
1位 ROUND TABLE featuring Nino「Nino」
ROUND TABLE featuring Ninoの2ndアルバム。収録曲の大多数にアニメ関連のタイアップがついたというベスト盤的な内容の作品。それだけあって、一曲一曲が凄まじくキャッチー。北川勝利も伊藤利恵子もメロディーがキレッキレです。Ninoの可愛らしい歌声にも魅かれます。ポスト渋谷系のシーンを代表する名盤でしょう。
【番外編】
Roger Joseph Manning Jr.「Solid State Warrior」
Jellyfishの中心メンバーだったRoger Manningの本名名義によるソロ1stアルバム。これまでも別名義で作品のリリースがありましたが、それら以上にポップオタクとしての本領が発揮されている印象。どこかひねくれた、それでいて人懐っこい雰囲気のあるポップスはJellyfish時代を彷彿とさせます。
【2005年】
10位 Something ELse「COLOR」
Something ELseの7thアルバム。インディーズからリリースされ、結果的に彼らのラストアルバムとなりました。
バンドのリスタートということもあってか、全体的に明るく開放的な作風なのが特徴。これまでのような突出して強い曲こそ無いですが、その分通して聴きやすいと思います。
今後が楽しみになるような作品だっただけに、今作が最後となってしまったのが残念なところです。
9位 サノトモミ「サイレントフライト」
サノトモミの1stアルバム。流線形の「シティミュージック」でボーカルを務めた歌手で、初のソロ作。
70年代のニューミュージック〜シティポップの名曲を想起させる、洗練された部分と素朴な部分とが絶妙なバランスで共存した曲たちに魅かれます。全曲徹底して聴き心地が良く、何度でも聴いていたいと思えます。
8位 capsule「NEXUS-2060」
capsuleの5thアルバム。宇宙旅行をテーマにしたコンセプトアルバムです。それだけあって、スペーシーなイメージを持った打ち込みサウンドが展開されています。初期のcapsuleならではの、お洒落で可愛らしい渋谷系的なポップス路線を極めた印象があります。
同年リリースの「L.D.K. Lounge Designers Killer」もぜひ。
7位 小田和正「そうかな 相対性の彼方」
小田和正の7thアルバム。シングル曲は2曲のみながら、全曲に何かしらのタイアップがついたのが特徴。代表曲「たしかなこと」を始めとして、誰もが思う小田和正の楽曲像そのものと言える曲が揃っています。
最初から最後まで勢いを保ったまま進んでいく構成は見事なもの。大ベテランの作品なのに、瑞々しささえ感じられるほどです。
6位 キンモクセイ「十三月のバラード」
キンモクセイの4thアルバム。大滝詠一の「NIAGARA CALENDAR」を彷彿とさせる、カレンダー形式のアルバム。各月に1曲ずつ当てはめ、繋ぎのインスト曲を織り交ぜながら1年を表現した構成です。
70〜80年代のポップスへのオマージュが散りばめられた、上質かつ親しみやすいポップスが並んでおり、これぞキンモクセイ!と言いたくなる安定感と充実感があります。
5位 Melting Holidays「pop go the happy tune」
Melting Holidaysの3rdアルバム。中心メンバーのササキアツシは後にあつぞうくん名義でボカロPとして活躍します。
60〜70年代のソフトロックからの影響を感じさせる凝ったメロディーラインや、渋谷系を思わせるカラフルなアレンジがたまらない作品。ボーカルのウィスパーボイスも相まって、晴れた休日を過ごすお供として聴きたくなるような心地良さに溢れています。
4位 堀込高樹「Home Ground」
堀込高樹の1stアルバム。キリンジの兄による初のソロ作品。作風そのものは当時のキリンジとそこまで変わらないように思いますが、当然ながら兄の色が強く出ている印象。
どこか変態的かつ叙情的な世界観を持った曲に引き込まれます。日本語の響きにこだわった美しい詞世界が魅力的。冬の穏やかな情景を浮かべながら聴いています。
3位 サザンオールスターズ「キラーストリート」
サザンオールスターズの14thアルバム。前作「さくら」からは実に約7年振りのリリース。2枚組で全30曲入りという超大作ですが、いつになくパブリックイメージに答えた印象のある作風となっています。アルバム曲においても、従来のマニアックな部分は控えめに、先行シングル曲を思わせるポップ性が前面に出されています。曲数の割に聴きやすいのはその影響かなと。
2位 レミオロメン「ether[エーテル]」
レミオロメンの2ndアルバム。これまでの3ピースによるシンプルなロックサウンドから一転、小林武史をプロデュースに迎えたことでよりポップな作風となりました。今作以降はさらにポップ性を強めていくため、ちょうど過渡期という印象。
全体を通しての流れの良さという点で、今作がレミオロメンの最高傑作だと思っています。出世作となったのも頷ける仕上がり。
1位 浜田省吾「My First Love」
浜田省吾の17thアルバム。彼にとっての「初恋」であるビートルズの楽曲に影響を受けた、シンプルかつ最高に聴き心地の良いロックンロール・ポップスが並んだアルバム。浜田自身の年齢を反映したような、叙情的なバラードナンバーも見事。浜田の自信作でもあるようで、それにふさわしい充実感に溢れた名盤です。
以上となります。ここで挙げた作品やその順位は全て執筆当時のものなので、後でいくらでも変動してくると思います。大きく変動するようなことがあれば、いつかまた改訂版を書くかもしれません。
続編「2000年代私的ベストアルバム【後編】(2022年版)」はこちらへ。
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