SING LIKE TALKING
1994-04-27


SING LIKE TALKING
2015-02-11
(リマスター盤)


【収録曲】
全曲作詞 藤田千章
1.英語詞 Cat Gray
全曲作曲 佐藤竹善 
7.作曲 西村智彦
全曲編曲 SING LIKE TALKING
1.編曲 13CATS
4.9.11.編曲 SING LIKE TALKING,Cat Gray
7.編曲 西村智彦
プロデュース SING LIKE TALKING,Larry Fergusson,Cat Gray
1.プロデュース 13CATS
7.プロデュース 西村智彦
8.10.プロデュース SING LIKE TALKING,Larry Fergusson
3.4.5.ホーンアレンジ Cat Gray
9.11.ストリングスアレンジ Clare Fischer

1.Together ★★★★★ 
2.Joy ★★★★★
3.風に抱かれて ★★★★★
4.My Eye's On You ★★★★☆
5.Between Us ★★★★☆
6.幻に恋する日々 ★★★☆☆
7.Night Rhythm 省略
8.Will ★★★★★
9.Your Love ★★★☆☆
10.Standing ★★★★☆
11.点し火のように ★★★☆☆

1994年4月27日発売
2015年2月11日再発(リマスター・Blu-Spec CD2仕様)
ファンハウス
Ariola Japan(2015年盤) 
最高位1位 約28.2万枚

SING LIKE TALKINGの7thアルバム。先行シングル「Standing」「Joy」を収録。今作と同日にシングル「Together」がリリースされ、今作発売後に「風に抱かれて」がシングルカットされた。前作「ENCOUNTER」からは1年2ヶ月振りのリリースとなった。

今作のプロデュースにはラリー・ファーガソンと13CATSのキャット・グレイが全面的に参加している。3rdアルバム「Ⅲ」からプロデュースを担当してきたロッド・アントゥーンからは前作「ENCOUNTER」をもって離れることとなった。前作でSLTとロッド・アントゥーンとの音楽的な関係が完結されたと考えていたからだという。また、曲ごとに編曲やプロデュースが異なっているのも大きな特徴の一つ。

キャット・グレイとはアルバムでは今作から1997年リリースの「Welcome To Another World」まで共に作業することになる。ホーンを多用し、ファンクやフュージョンのテイストが今まで以上に強められているのが特徴。キャット・グレイによるプロデュースはSLTの持つ音楽性をさらに進化させている。

今作のタイトルは「一体感」を意味する。キャット・グレイやエンジニアのラリー・ファーガソン、ドラマーの沼澤尚という素晴らしいパートナーと出逢ったこともタイトルの由来なのかもしれない。特に沼澤尚はアルバムのクレジット欄のスペシャルサンクスに掲載されている。「このアルバムはタカ(沼澤尚)がいなければ絶対にできなかった。彼の夢と意志とサポートに感謝したい。」という旨のメッセージが英語で掲載されている。

今作は前作「ENCOUNTER」に引き続き、アルバムチャート初登場1位を果たした。今作が最後の1位獲得となってしまうが、今作以降もアルバムでは安定したセールスを記録している。アルバムアーティストとしてのSLTの実力がよく分かる。


「Together」は今作と同日にリリースされたシングル曲。実質的なタイトル曲と言えるだろう。アルバムのオープニングという位置にふさわしい、ノリの良いジャズファンクナンバー。カントリーテイストのイントロが唐突に終わって派手にバンドサウンドが流れ込む瞬間は鳥肌もの。限りなくポップかつ流れるようなメロディーが展開されている。サビの解放感溢れるメロディーも絶品。キレの良いギターのカッティングや賑やかなホーンセクションとの絡みはたまらなく心地良い。歌詞は恋人と過ごすことの幸せさを描いたものとなっている。多幸感に満ちた詞世界である。「世界中に散りばめよう 共に生きる幸福(しあわせ)を」というフレーズが顕著。 心から楽しんで歌っているかのような佐藤竹善のボーカルがこの曲から溢れ出す多幸感を演出している。SLTの曲の中でも特に管理人の好きな曲である。


「Joy」は先行シングル曲。ハウステンボスの夏のキャンペーンのCMソングに起用された。これまでのシングル曲の中でも群を抜いてポップな曲。サビは極めてキャッチーである。キーボードが主体となったサウンドは爽やかそのもの。バックをしっかりと固める、うねうねしたシンセベースも曲を彩っている。若干ではあるがゴスペルの要素も含まれているのが特徴。この曲のサウンド面での聴きどころは間奏のジャズギターのソロ。その音色は明るく爽やかな曲に確かな力強さを与えている。歌詞は運命と言えるような恋人に出逢ったことへの喜びが語られたもの。「こんなにも 広い世界の中で ひとり 他には 何一つ 掴めずに構わない」というフレーズは主人公の感情が爆発しているかのよう。SLTにしては珍しく、マニアックな要素が少ない曲だと思う。当時のSLTのシングルの中ではヒットした部類に入るというのも頷ける。すぐに口ずさめそうなくらいキャッチーなのだが、歌おうと思うと物凄く難しい。佐藤竹善の突き抜けるようなハイトーンボイスは並みの男性では到底出せない。


「風に抱かれて」は今作発売後にシングルカットされた曲。後楽園ゆうえんち「ルナパーク」のCMソングに起用された。派手なホーンセクションによるホーンが前面に出たバラードナンバー。一切の隙を感じさせないタイトなバンドサウンドと、ホーンやピアノとの絡みは非常に心地良い。The Emotionsによる官能的なイメージの女性コーラスは曲に危うい魅力を与えている。歌詞はいつになくアダルトな世界観を持ったもの。都会の夜を舞台に、恋人たちが愛を確かめ始める瞬間を切り取っている。かなり生々しい詞世界という印象がある。この曲の歌詞ほどアダルトな雰囲気を持った歌詞はSLTには珍しい。 この曲はサウンド、メロディー、歌詞とこれまでの曲より格段にレベルが高まったようなイメージがあり、SLTによるAORの到達点と言えるような存在感がある。


「My Eye's On You」は上質なバラードナンバー。ソウルミュージックのテイストを取り入れたお洒落な雰囲気漂うサウンドが展開されている。1番のサビまでは少ない音の数で進んでいくが、サビになるとセクシーなホーンが輝きを放つ。このサウンドの変貌振りには圧倒される。2番からはバンドサウンドが入って賑やかなサウンドとなる。歌詞はある女性に一目惚れし、告白しようとする男性の心情を描いたもの。「言えなくて 悔やむのならば 僕は変わろう 過去を脱ぎ捨てて」というフレーズは力強さに溢れている。 サビでの佐藤竹善の美しいファルセットは男でも聴き惚れてしまう。何処からそんな声を出しているのかと問いたくなる。佐藤竹善のボーカリストとしての圧倒的な実力を見せつけられるような曲である。


「Between Us」はグルーヴィーなバラードナンバー。バンドサウンドは全て日本人メンバーで演奏されているが、ホーンセクションは外国人ミュージシャンで構成されている。特にピアノが前面に出ており、流れるような音色で美しい曲を引き立てている。この曲でもThe Emotionsが参加しており、卓越したコーラスワークで曲を盛り上げている。The Emotionsが参加しているのはサビ。佐藤竹善との掛け合いはこの曲の聴きどころ。歌詞は感情がすれ違う男女を描いたもの。仲が良いはずなのにどこかですれ違いが生じてしまう。「こんなに結ばれても 逸っている 僕は 此の闇を 追い出して 支えたい」というフレーズには男性の誠実さが漂っている。アルバム曲ながらかなりキャッチーでシングル向きな印象がある。


「幻に恋する日々」は今作と同日にリリースされたシングル「Together」のC/W曲。しっとりとした聴かせるバラードナンバー。サウンドはこの曲のみ全て打ち込みで構成されている。キラキラしたシンセの音色とうねるようなシンセベースの音色が前面に出ている。生音だともっと聴きごたえのあるサウンドになっていたかもしれないが、打ち込みでも味がある。聴き手を引き込むようなメロディーが魅力的。サビでの佐藤竹善の美しいファルセットは曲の聴きどころである。歌詞は別れた恋人に想いを寄せる男性を描いたもの。叶わないとは分かっていても、街に出れば昔の恋人がそっと現れそうな気がしてしまう。歌詞を見るとこの曲のタイトルが中々に切ないものだと感じられる。


「Night Rhythm」は今作と同日にリリースされたシングル「Together」のC/W曲。西村智彦の作曲編曲プロデュースによるインスト曲。南国の夜を想起させるようなサウンドが展開されている。西村智彦本人によるギターがフィーチャーされている。このインストはアルバムの流れを調整する存在になっていると思う。


「Will」は先行シングル「Joy」のC/W曲。住友グループの企業CMに数年間起用されていた。曲名は知らなくても世代の方なら意外と聴き覚えがあるかもしれない。壮大かつ爽やかなポップナンバー。この曲も日本人ミュージシャンで演奏されている。どこまでも広がる大地をイメージさせるようなサウンドとなっている。生命の鼓動のようなパーカッションの音色や聴き手を包み込むようなピアノの音色は絶品である。間奏の八木のぶおによるハーモニカのソロも曲を盛り上げている。サビはとてもキャッチーで、一回聴けばすぐに口ずさめるくらい。歌詞は自然をイメージさせるもの。サウンドと同じように歌詞も壮大なテーマとなっている。 一般リスナーにも効果的にアピールできるような曲なので、C/W曲というポジションよりもA面というポジションの方が合っていたのではと思う。


「Your Love」はしっとりと聴かせる美しいバラードナンバー。クレア・フィッシャーによるストリングスアレンジがされており、ストリングスが全面的に使用されている。この曲に関してはバンドサウンドよりもストリングスの方が主張している。また、西村智彦によるエレクトリックシタールの独特な音色も曲にアクセントを加えている。聴き手の心をグッと掴むようなサビのメロディーがたまらなく心地良い。歌詞は恋人への想いをストレートに語ったもの。「あるがままの 思いやりを 僕に教える 貴方が そこに居た と」というフレーズは相手の優しい人柄すら浮かんでくる。 良い曲なのは間違いないのだが、アルバム全体で聴くと前半の勢いに押されて印象に残りにくい。一曲単位で聴くとより浸れる曲だと思う。


「Standing」は先行シングル曲。今作の中では最初に作られた曲。しっとりと聴かせるミディアムバラードナンバー。ピアノが前面に出た、聴き心地の良いサウンドとなっている。ところどころで使われるアコーディオンの音色も印象に残る。あまり変化が無いためどことなく単調な感じがしてしまうメロディーではあるが、逆にそれが曲の美しさを演出していると思う。サビのハイトーンなファルセットはこの曲の聴きどころ。歌詞は自分の落ち度で恋人と別れることになってしまった男性の後悔が描かれたもの。歌詞、メロディー、ボーカルと全てが一体となって切ない世界観を築き上げている感じ。ファン人気が高いというのも頷ける、SLTの名バラードの一つだと思う。


「点し火のように」は今作のラストを飾る曲。静かなバラードではあるが、圧倒的な力強さも感じさせる。バンドサウンドはベース以外使用されておらず、ほぼストリングスのみで構成されている。他にはピアネットという楽器が使われている。荘厳な雰囲気に満ちたサウンドである。それは佐藤竹善の透明感溢れるボーカルを限りなく演出している。歌詞はメッセージ性の強いもの。「燃え上がる一瞬の炎の熱さよりキャンドルの点し火をそっと誰かと分かちたい」というラストの歌詞は名言。あまりにも壮大過ぎて一回聴くとしばらく聴かなくてもいいかなと思ってしまうような曲である。ラスト以外に配置されていたら間違いなく飛ばしていた。


SLTにとってのヒット作ということもあり中古屋ではよく見かける。全体的にポップだった前作に比べてファンク色がかなり強められている。前半はファンク、後半はバラードで固められている印象。全編通して緻密に作り込まれた曲を楽しめる。マニアックな要素と親しみやすさが共存しているのはSLTならではと言ったところ。今作が気に入れば今作以降の「DISCOVERY」「Welcome To Another World」も気に入ると思う。AOR好きまたは興味がある方は是非聴いてほしい一作。

★★★★☆