MY LITTLE LOVER
1995-12-05


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 小林武史
4.作詞 小林武史・AKKO
7.作詞 AKKO
5.作曲 藤井謙二&小林武史
プロデュース 小林武史

1.Magic Time ★★★★☆
2.Free ★★★★★
3.白いカイト(Album Version) ★★★★★
4.めぐり逢う世界 ★★★★★
5.Hello, Again ~昔からある場所~ ★★★★★+2
6.My Painting ★★★☆☆
7.暮れゆく街で ★★★☆☆
8.Delicacy(Album Version) ★★★★☆
9.Man&Woman ★★★★★
10.evergreen ★★★★★

1995年12月5日発売
2008年5月1日再発
トイズファクトリー(オリジナル盤)
avex trax(再発盤)
最高位1位 売上279.7万枚

MY LITTLE LOVERの1stアルバム。先行シングル「Man&Woman/My Painting」「白いカイト」「Hello, Again ~昔からある場所~」を収録。今作発売後に「めぐり逢う世界」がシングル「ALICE」のC/W曲としてシングルカットされた。初回盤はクリアスリーブケース仕様、メンバーのサイン入りポストカード(野球ボール型)付き。 

MY LITTLE LOVERは当初はAKKOと藤井謙二の2人でのデビューであったが、今作リリース時に元々プロデューサーだった小林武史が正式にメンバーとして加入した。シングル曲では女性による作詞をイメージさせるため、3人の頭文字(Kenji,AKKO,Takeshi+Ensemble)を繋げた「KATE」の名義だったが、今作の発売により小林武史に変更された。

AKKOのボーカルは下手と言う方も多いが、楽曲をこれ以上無い程に彩る、透明感溢れる歌声である。どこか少年っぽさも感じさせる声だと思う。AKKO以上に上手い女性歌手はいくらでもいるが、楽曲の世界観を構成する上では替えが利かない。MY LITTLE LOVERの楽曲の大きな魅力となっていると思う。JUJUバージョンの「Hello, Again~昔からある場所~」を聴いて、原曲の方が良いじゃんと思った方は立派なMY LITTLE LOVERファンと言える。
 
今作は初動だけで102万枚を売り上げてミリオンを達成するという驚異的な売上を記録。初動ミリオンは当時としては初の快挙。最終的に280万枚近くを記録するという大ヒットとなった。 


「Magic Time」は今作のオープニング曲。木琴が使われたイントロからして神秘的な雰囲気が漂っている。余計な物を一切取り払ったような少ない音の数もその雰囲気を高めていると言える。歌詞もどこか幻想的なイメージを持ったものとなっている。タイトルは夜明けの前にほんの一瞬だけ見られる紫色の光景が広がっている時間を描いたものだと解釈している。冬の早朝の風景をイメージしている。「tick tock」と繰り返される部分はゆっくりと時間を刻んでいるかのようだ。ラストの10カウントがこの曲の聴きどころ。それは「次の旅立ちまでのアナウンスとカウントダウン」である。早朝のモヤモヤしたイメージがよく合っている印象。 名盤のオープニングは驚くほど静かに飾られる。今作そのもののイントロという感覚がある。


「Free」は前の曲の雰囲気を跳ね除けるような爽やかなポップナンバー。AXIAのCMソングに起用された。何となく、この曲が実質的なオープニングというイメージがある。ストリングスが使われた解放感溢れるイントロからこの曲に引き込まれることだろう。ストリングスの音色はまるで歌っているかのようであり、曲を鮮やかに彩っている。流れていくような美しいメロディーが展開されている。サビでの跳ね上がるようなメロディーは聴き心地がたまらなく良い。歌詞は失恋した女性の気持ちが描かれたもの。悲しみを乗り越えて前を向こうとする姿が浮かぶようだ。「あなたがいない私はFree」と言いつつも、「あなたがいなけりゃ ただのFree」と本心を吐露している。この変わり方が何とも可愛らしい。 後追いで聴いた管理人はこの曲をシングル曲だと思っていた。それだけアルバム曲離れした完成度を持った曲である。


「白いカイト(Album Version)」は先行シングル曲。2004年にジョンソン&ジョンソンの「タイレノール」のCMソングに起用された。タイトル通りアルバムバージョンでの収録となった。スネアドラムとギターが互いに主張しており、「ちょっと耳にうるさい」という理由でミックス変更がされているという。はっきり言って管理人には違いはわからない。
マイラバの楽曲の王道中の王道と言いたくなるような、爽やかなポップナンバー。どこまでも広がっていくような夏の青い空をイメージしてしまう。聴き手を包み込むような優しいメロディーや高揚感溢れるサウンドもそのイメージを膨らませる。ホーンを始めとした柔らかい音と骨太なギターサウンドとの絡みが素晴らしい。晴れた空の下、草原に寝転がって聴きたくなるような心地良い曲やサウンドである。
歌詞はポジティブな決意表明と取れるようなもの。「誰かの言葉に 惑わされぬように そして 誰かの痛みから 逃げ出さぬように」という2番の歌い出しの歌詞が好き。主人公は男性とも女性とも解釈できると思う。マイラバの楽曲に見られる、少年のようなイメージはこの曲に集約されている印象がある。世間では「Hello,Again〜昔からある場所〜」ほど話題にされない印象だが、この曲も十分すぎるほどの名曲。


「めぐり逢う世界」は今作発売後にシングル「ALICE」のC/W曲としてシングルカットされた曲。爽やかさと力強さを併せ持ったバラードナンバー。イントロのSEが終わってドラムやピアノが流れ込む瞬間は鳥肌もの。最早イントロから名曲だと想像させてくれる。この曲は藤井謙二によるギターが特に冴え渡っている。清涼感溢れる音色から唸るような強い音色まで変幻自在。サビまでの落ち着いた雰囲気から一気に畳み掛けるようなサビは絶品。歌詞は恋人への想いをストレートに語ったもの。作詞にはAKKOも関わっている。「いろんな迷いに 背中を向けないで 向き合った瞳(め)を そらさないで」というフレーズが一番好き。全編通して切なく可愛らしい乙女心が描かれていると思う。どれだけAKKOが作詞に関わったかはわからないが、AKKOの功績によるものが大きいかもしれない。
シングル曲「白いカイト」と「Hello,Again〜昔からある場所〜」に挟まれているにもかかわらず、全く埋もれていない。これだけ完成度の高い曲をアルバム曲として発表してしまうところ(後にリカットされたが)には当時のマイラバの凄みを感じさせる。


「Hello, Again~昔からある場所~」は先行シングル曲。日本テレビ系ドラマ『終わらない夏』の主題歌に起用された。マイラバにとっての最大ヒット曲。切なさと力強さに溢れたバラードナンバー。シンプルでありながらこれ以上無いほどに心に訴えかけてくるイントロは何度聴いても鳥肌が立ってしまう。この曲のギターサウンドには一切の飾りが無い。それなのに聴き手を感動させてくる。それほど藤井謙二が素晴らしいギタリストということだろう。美しさを極めたようなメロディーも圧巻。特にサビ前のメロディーは流麗そのもの。
歌詞は失恋を描いたもの…なのだが、単純にそれだけとは言えないくらい文学的な詞世界が展開されている。どの歌詞も好きなのだが、2番の歌い出しの「自分の限界が どこまでかを 知るために 僕は生きてる訳じゃない」というフレーズが一番好き。
思わず聴き惚れるような美しいメロディー、一切の無駄の無い作り込まれたサウンド、深遠な世界を感じさせる歌詞、AKKOの少年性を持った透明感溢れるボーカル…この大名曲を構成する要素は全てが欠けてはならないものだろう。マイラバの最高傑作と自信を持って言える。小林武史の最高傑作かもしれない。J-POPの中でもトップクラスの完成度を誇る一作と言っても過言ではない。管理人が今まで聴いてきた曲の中でも特に好きな曲に入ってくる。この曲については↓の記事でも熱く語っているので、そちらも読んでいただけたら幸いである。


「My Painting」はマイラバにとってのデビューシングル曲。「Man&Woman」と両A面シングルだったが、殆どA面曲扱いされていない印象がある。フレンチポップスのテイストを感じさせる、お洒落なポップナンバー。バンドサウンド、シンセ、ストリングス…とにかく沢山の音が使われている。「おもちゃ箱をひっくり返したような」というフレーズはこの曲のサウンドを表現するためにあると言っても良いだろう。それでいて全ての音が絶妙なバランスで共存している。歌詞はいつか幸せになるために頑張ろうと誓う女性を描いたもの。当時のAKKOや彼女と同世代の女性をモチーフにして描かれていると思う。「どきどきすることが ときめくこと」というフレーズはとても可愛らしい。 ちなみにこの曲、元々幼いイメージのAKKOのボーカルがさらに幼く拙い感じになっている。デビューシングルなので慣れていなかっただけなのだろうか?とはいえ、その危うい感じのボーカルがこの曲の魅力になっているが。


「暮れゆく街で」はここまでの流れを落ち着けるような重厚なバラードナンバー。キラキラしたポップスが並んでいる今作の中ではかなり毛色が違う。音の数はかなり少なく、メロディーもかなり淡々としている。暗くどんよりした雰囲気が漂うサウンドである。夕暮れ時特有の寂しさが表現されていると思う。心臓の鼓動のような音が終始流れており、曲に何とも言えない緊張感を与えている。作詞はAKKO単独によるもの。恋人と別れる瞬間を切り取ったような詞世界となっている。女性の方だけが相手を熱心に思っていたように感じられる。切なさや後悔がにじみ出ている。少し硬めなAKKOのボーカルは主人公の女性の切ない感情を代弁しているかのよう。この曲だけかなり浮いている印象が否めない。この曲だけ飛ばしてしまうという方も多いかもしれない。聴けば聴くほど味が出てくるような曲だとは思っているが…


「Delicacy(Album Version)」は先行シングル「Hello,Again〜昔からある場所〜」のC/W曲。アルバムバージョンでの収録となった。アウトロに加工された男性の声が追加されている。ファンクのテイストを盛り込んだポップナンバー。うねうねしたベースラインはつい指で追いたくなる。太く力強いベースとノリの良いホーンが絡み合うサウンドはお洒落で格好良い。そのメロディーの中を泳ぐようにして歌うAKKOのボーカルもこの曲を彩っている。サビが若干字余りしたようになっているのが特徴的。歌詞はデリカシーの無い恋人への文句を垂れたもの。女心を的確に描き出す作詞家・小林武史の本領発揮である。『友達が言った「好きなところとね 嫌いなところは 本当はきっと紙一重のように隣りあっている」と』という2番の歌い出しや、「1+1=2だって数字を考えた人も きっと恋愛じゃそんなにうまくはいかないかもね」という2番のサビの歌詞は名フレーズ。今作の中では少々地味な印象のある曲だが、この手のサウンドが好きな管理人にとってはたまらない。


「Man&Woman」はマイラバにとってのデビューシングル曲。「My Painting」とは両A面シングルだったが、殆ど両A面扱いされていない。この曲の単独A面というような扱いである。デビューシングルではあるが90万枚程の大ヒットを記録している。カラフルなサウンドが展開された、清涼感溢れるポップナンバー。涼しげなアコギの音色と曲の要所で存在感を発揮するホーンとの絡みは非常に心地良い。思わず口ずさんでしまうような、ゆらゆらしたメロディーも素晴らしい。どこかぎこちなく危うい感じのAKKOのボーカルはデビュー曲ならではと言ったところか。 甘ったるさすら感じてしまうような歌声であるが、それが良い。
歌詞は男女の出逢いが描かれている。恋に落ちた瞬間の煌きや不安が鮮やかに描き出されている。しかし、「いつかはHey Hey Hey!」とはどういう意味なのだろうか?某音楽番組のことだと解釈している。デビュー曲というにはあまりにも完成された曲である。小林武史のポップス職人としての実力を見せつけられる。


「evergreen」は今作のラストを飾るタイトル曲。今作リリースの際のCMに使われていたようだ。大地や生命の鼓動を感じさせるような壮大な曲である。軽やかでありながら力強さに満ちたアコギやピアノの音色はとにかく心地良い。サビに入る瞬間に流れ込んでくるホーンには圧倒的な高揚感がある。この曲のもう一つの聴きどころはラストのコーラス。ブラジル人がコーラスを担当したようだが、母国の歌い回しで歌っているという。それが曲と見事にマッチしている。「常緑樹」というタイトルに恥じない色褪せることの無いような名曲。「永遠の緑は心に広がってる」という歌詞はまさに名言。 この曲がラストに配置されていることで、1曲1曲に個性がある今作に確かなまとまりが生まれていると思う。これまでの全ての曲を包み込むような雰囲気がある。


大ヒット作ということで中古屋で溢れかえっている。このまま埋もれてしまうにはあまりにも勿体無いと感じるような、古臭さは一切無い普遍性に溢れた曲ばかりである。まさに「evergreen」な傑作中の傑作。時が経つのを忘れてしまったような永遠の輝きを放っている。そう言っても過言ではない。聴けば誰もがそう感じると思う。
全体の流れもこれ以上無いほどにまとまっており、素晴らしいポップスを全編に渡って味わえる至高のポップアルバム。小林武史によるアレンジが冴え渡っている。メロディーやボーカルもそうだが、是非ともアレンジにも耳を傾けて聴いてみてほしい。
恐らく、この頃が小林武史の全盛期中の全盛期だったのではなかろうか。天才ポップス職人・小林武史、彼の才能を最大限に引き出した最高のボーカリスト・AKKO、職人的な存在感と卓越した演奏力で楽曲を彩った最高のギタリスト・藤井謙二。3人が起こした奇跡と言えるような作品。
J-POPが好きだという方なら必ず聴いておくべき作品。管理人がこれまでに聴いてきたアルバムの中でも一番の名盤という位置にある。自信を持っておすすめする。

★★★★★+2