小沢健二
2003-12-27


【収録曲】
全曲作詞作曲編曲 小沢健二
5.6. 作曲 筒美京平
プロデュース 小沢健二


1.流星ビバップ ★★★★★
2.痛快ウキウキ通り ★★★★★
3.さよならなんて云えないよ(美しさ) ★★★★★

4.夢が夢なら ★★★★★
5.強い気持ち・強い愛 ★★★★★

6.それはちょっと ★★★★☆
7.夜と日時計 ★★★☆☆

8.いちょう並木のセレナーデ ★★★★★
9.流星ビバップ インストなので省略


2003年12月27日発売
東芝EMI
最高位29位 売上4.3万枚


小沢健二のアルバム未収録曲集。一応ベストとも取れるが、アルバム未収録曲集という扱いとなっている。発売前はベスト盤がリリースされると言われていたものの、発売が2003年8月31日から12月27日に延期された挙句、残念な収録内容となった。そのため、発売当時は批判がかなり多かったようである。
「残念な収録内容」というのは、内容がたった9曲(それも1曲は収録曲のインスト)であることや、1997.1998年の楽曲が一切収録されていないことに対しての管理人の率直な感想である。おまけに、比較的知名度の高い「カローラⅡにのって」「戦場のボーイズ・ライフ」が収録されなかった。


今作のジャケットは3種類ある。3種類あるとは言っても収録内容に違いは無いため、特に意味は無い。物好きな方なら全て集めたかもしれないが、そこまでの違いがあるわけでもない。中々に謎である。



「流星ビバップ」は1995年リリースのシングル「痛快ウキウキ通り」のC/W曲。原題は「流れ星ビバップ」であった。3分半程度の短い曲ではあるが、思い切り詰め込まれた歌詞が心地良い一曲。早口な歌い方のため、実際に口ずさむとかなり大変。



「痛快ウキウキ通り」は1995年リリースの同名シングルの表題曲。大ヒットアルバム「LIFE」の世界観を3分25秒の中に凝縮したような一曲。サビの「喜びを他の誰かと分かり合う!」は人間が誰かを愛することの原点に触れたような名フレーズ。途中のキーボードソロが印象的。クリスマスのシーズンになったら街を歩きながら聴きたくなる曲。



「さよならなんて云えないよ(美しさ)」は1995年リリースの同名シングルの表題曲。改題されている。森永「ダース」のCM曲として起用されている。イントロのギターフレーズはMichael Jacksonの「Black or White」から引用されている。相当に露骨である。タモリはこの曲の歌詞を「人生をここまで肯定できない」と絶賛し、好きな曲だと小沢がテレフォンショッキングに出演した際に語った。青春の終わり際を歌った曲。



「夢が夢なら」は1996年リリースの同名シングルの表題曲。気だるい雰囲気がたまらない名曲。恋人と別れた後、一緒に過ごした季節を回想する内容の歌詞である。情景描写が凄すぎる。歌い出しから「銀河を見上げる冬の小径 色とりどり擦れ違うダウン・ジャケット」とキレキレ。終始文学的な季節の描写がなされた美しい一曲。どういう頭をしていたらこのような表現が浮かぶのか?



「強い気持ち・強い愛」は1995年リリースの同名シングルの表題曲。筒美京平とのコラボがされ、筒美が作曲を担当した。ストリングスが冴え渡るぶっ飛んだレベルの明るい曲。でんぱ組.incがカバーしたことでも知られる。多幸感が全編通して放たれている。
曲の終わりの方の「長い階段をのぼり 生きる日々が続く 大きく深い川 君と僕は渡る 涙がこぼれては ずっと頬を伝う 冷たく強い風 君と僕は笑う」という歌詞は何度聴いても鳥肌が立つ。人生をこんなに文学的かつ幸せに表現できる人は彼以外にいないだろう。



「それはちょっと」は「強い気持ち・強い愛」のC/W曲。ドラマ「部屋においでよ」の主題歌に起用された。求婚を断る男の曲。王子様時代の小沢だからこそ歌えたような一曲。「きっと僕は死ぬまでずっとワガママだから」とかいう歌詞。腹が立つが小沢だから許せる。



「夜と日時計」は1993年リリースのシングル「暗闇から手を伸ばせ」のC/W曲。今作収録曲では最も古い曲となる。原題は「夜と日時計(swamp folk)」であり、改題されている。原題の通り、フォークテイストなシンプルで静かな一曲。渡辺満里奈に提供した曲のセルフカバー。そのためか、原曲の女性口調の歌詞が直されている。



「いちょう並木のセレナーデ」はシングル「さよならなんて云えないよ」のC/W曲としてシングルカットされたバージョン。武道館でのライブの音源。確かに未収録ではあったが、原曲は「LIFE」に収録されている。今作に収録する必要はあったのだろうか?



「流星ビバップ」は1.のインストバージョン。往年の名曲を全て聴き終えると、突如一曲目の曲が再び流れる。しかし、そこに彼の歌声は無い。何とも寂しいものである。この曲の存在は映画や舞台の終了後に流れるようなやけに明るい曲のようだ。「これで終わりです!気を付けてさっさとお帰りください!」とでも言いたげな曲である。そこに余韻に浸れるような間は無い。



ある意味ベスト盤ともオリジナルアルバムとも取れる一作。たまに中古屋で売られている。恐らくレンタルの方が見かけやすい。



タイトルの「刹那」が何とも意味深である。小沢自身が当時の彼を忌み嫌っているような、皮肉っているようなタイトルである。その頃は一瞬にしか過ぎないというメッセージなのだろうか?聴き手がその刹那の中に取り残されているようにすら思えてくる。



悪評の方が多くなってしまったが、現時点でも小沢健二の音楽の入門としておすすめできる。とりあえず当時を懐かしみたい方にもおすすめである。楽曲はキレキレなので、是非とも歌詞カードを見ながらゆったりと聴いていただきたい。

★★★★☆