スピッツ
1994-09-21


スピッツ
2002-10-16


スピッツ
2008-12-17

【収録曲】
全曲作詞作曲 草野正宗
全曲編曲 笹路正徳&スピッツ
3.10.編曲 土方隆行&スピッツ 
プロデュース 笹路正徳&スピッツ

1.たまご ★★★★★
2.スパイダー ★★★★☆
3.空も飛べるはず(Album Version) ★★★★★
4.迷子の兵隊 ★★★★☆
5.恋は夕暮れ ★★★★☆
6.不死身のビーナス ★★★★☆
7.ラズベリー ★★★★★
8.ヘチマの花 ★★★☆☆
9.ベビーフェイス(Album Version) ★★★★☆
10.青い車(Album Version) ★★★★★ 
11.サンシャイン ★★★★★

1994年9月21日発売
2002年10月16日(リマスター盤)
2008年12月17日(リマスター盤SHM-CD仕様)
ポリドール(オリジナル盤)
ユニバーサルミュージック(リマスター盤)
初登場14位、最高位4位 売上86.0万枚

スピッツの5thアルバム。先行シングル「空も飛べるはず」「青い車」を収録。今作発売後に「スパイダー」がシングルカットされた。前作「Crispy!」からはほぼ1年振りのリリースとなった。

前作「Crispy!」ではストリングスやシンセサイザーを多用するなど、ポップ路線に振り切り過ぎてオーバープロデュースと言った状態になっていたものの、今作ではバンドサウンドを主体としたポップスが展開されている。それは現在まで続くスピッツらしいサウンドであり、今作はその萌芽と言える。ポップの面とロックの面のバランスが上手く取れている。

ブレイク前夜の勢いに溢れた作品というよりは安定感ある作品となっている。その点ではプロデューサーの笹路正徳の腕が優れていたと言える。

初登場時は14位だったものの、1996年にドラマ『白線流し』の主題歌として「空も飛べるはず」が起用された時に再ヒットし、最高位4位を記録した。


「たまご」は今作のオープニング曲。オープニングにふさわしい勢いのあるポップナンバー。仮タイトルは「中くらいの曲」だったようだが、確かにテンポが速い印象。パワフルなバンドサウンドと爽やかなメロディーとの絡みは絶品。管理人はサビよりもサビ前のメロディーの方が好き。その部分から入ってくるギターのアルペジオの音色がたまらない。歌詞はどこか意味深なもの。「たまご」はその字面から想起できるような、これから生まれてくる新たな命の象徴として描かれているのか、それとも他のものなのか。ラストの歌詞「君と僕のよくある…」は聴く度にその続きを想像したくなる。 考えれば考えるほどよく分からなくなるような詞世界、爽やかなメロディー、力強いバンドサウンドとスピッツ流のポップスを構成する要素が満たされている。スピッツ流のポップスの形が完成した今作のオープニングを飾るにはうってつけな存在の曲だと思う。


「スパイダー」は今作発売後にシングルカットされた曲。ニッポン放送『伊集院光のOh!デカナイト』のオープニングテーマに起用された。ライブでは盛り上げ担当の曲としてよく演奏される。アコギが主体となったサウンドが心地良いポップナンバー。仮タイトルが「速い曲」だったように、この曲もまたテンポが速い。実際には「たまご」の方が速かったようだが。透き通るような美しさを持ったギターサウンドはスピッツならでは。歌詞に関しては、管理人は幼女誘拐をテーマにしていると解釈している。自らを「スパイダー」と例えているのは中々に闇を感じさせる。 誘拐をテーマにしている割には爽やか過ぎる曲調やサウンドではあるが…色々と解釈しながら聴けるのはスピッツの曲の醍醐味と言えるだろう。


「空も飛べるはず(Album Version)」は先行シングル曲。1996年にフジテレビ系ドラマ『白線流し』の主題歌に起用されてリバイバルヒットし、ミリオンも達成した。今作収録にあたってボーカルが再録され、ミックス変更がされているようだ。正直かなり変化が分かりにくい。ファンではない層からも知名度のある代表作の一つ。実質的な今作のタイトル曲と言っていいかもしれない。爽やかなポップナンバー。爽やかながらもどこか切なさを感じさせるメロディーを、骨太なバンドサウンドでしっかり固めている。タイアップ相手のドラマの影響もあってか、青春の象徴のような扱いをされており、中高生の合唱曲としても歌われる機会が多い。とはいえ歌詞には青春を思わせるようなフレーズはあまり無い。「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてる」と格好良く歌い上げたと思えば、「ゴミできらめく世界が僕たちを拒んでも」と毒のあるフレーズでそれを台無しにする。ただの爽やかな曲にはしない!と言わんばかりのアクの強い詞世界がたまらない。 管理人が本格的にスピッツを聴き込む前から知っていてよく聴いていた曲なので流石に聴き飽きてしまった感があるが、好きな曲だというのには変わりはない。


「迷子の兵隊」は力強いパワーポップナンバー。タイトルは当時のスピッツを形容するフレーズだったという。ロックバンドとしてのスピッツの姿を感じられるような、パワフルなバンドサウンドが展開されている。スコーンと抜けていくようなドラムの音や太いベースの音が特徴的。歌詞は「迷子の兵隊」への応援歌と取れるような内容。今作リリース当時のインタビューによると、『「黒い翼」で落ちていった先の世界を歌っている』とのこと。「黒い旗振る」というフレーズは降参を意味する「白旗」の逆。諦めずに戦っていくという姿勢を表現したフレーズだと思っている。果てしない闇の中で戦っているような光景が浮かんでくる。バンドサウンドだけでなく、歌詞もかなり力を持ったものだと感じられる。


「恋は夕暮れ」は今作発売後にシングルカットされた「スパイダー」のC/W曲。ホーンやピアノが全面的に使用されている。しっとりとした曲調も相まって、どことなくAORっぽい雰囲気がある。そっと心をほぐしてくれるような美しいメロディーは絶品。歌詞は「恋」を様々なものに例えた内容。草野マサムネなりの恋愛観がよく表れた詞世界になっていると思う。様々な例え方がされているが、管理人が特に好きなのは「恋は届かない悲しきテレパシー」「恋はささやかな 悪魔への祈り」という歌詞。スピッツらしい弱々しい部分が表現されたフレーズだと思う。これらのフレーズに共感できる方は恋に関して何かしら辛い思い出があるのではなかろうか。そのような方の心も癒すような美しく優しい草野の歌声やメロディーがたまらない。


「不死身のビーナス」はハードロックテイストのサウンドが展開されたポップロックナンバー。ライブでは盛り上げ担当の曲としてよく演奏される。ラストの歌詞に「ネズミの街」と出てくるが、そこはライブ会場の地名に変えて歌われることが多いようだ。激しいバンドサウンドと疾走感溢れるポップなメロディーとの絡みはスピッツならでは。「最低の君を忘れない」と高らかに歌い上げるサビは極めてキャッチー。歌詞は別れを描いたものなのだが、聴き流しているだけだととてもそうだとは感じられない。ストレートな歌詞にポップでキャッチーな曲。どちらを取っても一般受けしそうな感じがするので、シングルにしていても良かったのでは?と思ってしまう曲。


「ラズベリー」は爽やかなポップロックナンバー。力強いバンドサウンドとホーンとのバランスが取れたサウンドは爽快そのもの。サビのキャッチーさも素晴らしいが、サビ前の流麗なメロディーもたまらない。そこで入ってくるピアノがとても心地良い。そのようなメロディーやサウンドに乗せられる歌詞は極めて変態なもの。草野曰く「女性が歌ったら楽しいだろうなあ」という妄想をしながら作ったという。 「この曲を女の子に歌わせたらセクハラになる」とも語っている。 「泥まみれの 汗まみれの短いスカート」「おかしいよと言われても構わない 君のヌードをちゃんと見るまで僕は死ねない」「でこぼこのゲームが今始まる」「穴を抜けてこっちへおいでと 五円玉のむこうから呼ぶよ」…変態過ぎて逆に心地良さすら感じる。爽やかな曲と歌詞とのギャップがとにかく凄い。妄想を膨らめれば膨らめるほど味わい深くなる歌詞が素晴らしい。少しでも自分が変態だと思うなら是非とも聴いてほしい。そのような歌詞を含めても名曲だと思えるだけの完成度を誇っている。


「ヘチマの花」はしっとりと聴かせるバラードナンバー。ここまでの流れをグッと落ち着けるような存在感がある。寺本りえ子とデュエットした曲。寺本りえ子は当時のスピッツのライブにコーラスで参加していたほか、「惑星のかけら」に収録されている「僕の天使マリ」「オーバードライブ」「リコシェ号」でもコーラスで参加していたようだ。繊細で美しい歌声で曲を彩っている。曲はシンプルなバンドサウンドが展開されているが、ところどころでシンセドラムのような音も使われている。歌詞は恋人たちと「ヘチマの花」について描かれている。ヘチマの花は何かの例えなのだろうが、何かはわからない。妊娠して大きくなったお腹のことなのだろうか?
曲自体は聴いていてとても心地良いが、しっとりし過ぎていて通して聴くとこの曲の時だけいつも眠くなってしまう。


「ベビーフェイス(Album Version)」は先行シングル「空も飛べるはず」のC/W曲。今作収録にあたって、ホーンセクションが加えられているほか、曲のテンポも少し上がっている。全員でコーラスをする数少ない曲ということもあってか、サウンドチェックとして使われることあるようだ。曲は軽快なポップナンバー。ロックというよりはブルースを彷彿とさせる感じ。草野マサムネのボーカルはいつもより低いと感じるところがある。歌詞は死をイメージさせるもの。スピッツの楽曲にはよく見られるテーマだが、この曲ほど分かりやすく死について描かれた曲は少ないと思う。「星になったあいつ」というフレーズが顕著。「涙をふいて 生まれ変わるよ」というフレーズは輪廻転生を想起させる。 爽やかな曲調と歌詞とのギャップが凄まじいが、やはりこれはスピッツならではの魅力である。


「青い車(Album Version)」は先行シングル曲。テレビ朝日系情報番組『OH!エルくらぶ』のエンディングテーマに起用された。今作収録にあたってミックス変更がされている他、サビのコーラスやエンディングの長さが変更されている。イントロのギターサウンドから突き抜けるような爽快感溢れるサウンドが展開されている。思わずイントロからこの曲の世界に引き込まれてしまう。草野マサムネはゆったりしたアレンジを想定していたようだが、リハーサルに草野が遅刻したため、他のメンバーが草野抜きでアレンジをしたようだ。その結果誕生したのがこのアレンジ。ゆったりしたアレンジだったらこのバージョンほどの爽やかさが感じられなかったと思う。そのような爽快な曲に乗せられる歌詞はこれまた闇を感じさせるもの。管理人はカップル同士の無理心中を描いたものだと解釈している。明るく解釈するとすれば、二人で現実逃避の旅に出ている…という感じだろうか。ファン人気が高いかどうかは分からないが、スピッツ=爽やかなポップスバンドというイメージの強い管理人にとっては趣味にどストライクな曲。


「サンシャイン」は今作のラストを飾る曲。骨太なバンドサウンドと切ないメロディーに彩られた重厚なバラードナンバー。草野マサムネは今作の収録曲の曲の中で最も気に入っているようだ。イントロのバンドサウンドからもう引き込まれる。ドラムの演奏の上手い下手は全く分からないが、この曲のドラムは大好き。サビになると入ってくる、浮遊感のあるエレピの音色も曲の切なさを演出している。歌詞は別れをテーマにしている。主人公の恋人は田舎から都会へと旅立っていくのだろうか?どことなくそう感じさせる部分がある。「寒い都会に降りても 変わらず夏の花のままでいて」という歌詞は相手のことを応援しているかのよう。 スピッツのバラードの中でも特に好きな曲。今作のラストという位置にぴったり合った曲だと思う。


ヒット作ということもあり比較的中古屋で見かけやすいものの、リマスター盤が出ているためそちらを聴くことをおすすめする。
現在まで続くスピッツらしいサウンドの始まりと言えるアルバム。ポップな曲がメインでありながら、骨太なバンドサウンドもしっかり主張している。メロディーだけでもハマれるような曲ばかりだが、演奏に耳を傾けるとさらに聴きごたえが感じられるようになると思う。今作は一般リスナーが思うスピッツの楽曲像そのままと言った感じ。アルバム全体の流れも良く、何度も聴けるような中毒性も秘めている。 これまでの作品にも好きな曲は多いが、管理人としては今作か前作「Crispy!」からがスピッツらしい作品という印象が強い。

★★★★★