くるり
2001-02-21


【収録曲】
(特記以外)全曲作詞作曲 岸田繁
全曲編曲 くるり
1.作曲 くるり
5.作詞作曲 くるり
7.作詞 岸田繁/佐藤征史 作曲 くるり
プロデュース くるり


1.TEAM ROCK ★★★★☆
2.ワンダーフォーゲル ★★★★★

3.LV30 ★★★★★
4.愛なき世界 ★★★★☆
5.C’mon C’mon ★★★☆☆
6.カレーの歌 ★★★★☆
7.永遠 ★★★☆☆
8.トレイン・ロック・フェスティバル ★★★★☆
9.ばらの花 ★★★★★+2
10.迷路ゲーム ★★★★☆
11.リバー ★★★★☆


2001年2月21日発売(CD)
2001年4月21日 アナログ盤発売
2005年9月22日 CD廉価盤発売
2008年12月17日 廉価版発売
SPEEDSTAR RECORDS
最高位8位 売上約5.4万枚


くるりの3rdアルバム。初の完全セルフプロデュースによるアルバムとなった。初のアルバムトップ10を獲得した。先行シングル「ワンダーフォーゲル」「ばらの花」を収録。今作発売後に「リバー」がシングルカットされている。

前作「図鑑」のオルタナロックサウンドからガラリと変わって、打ち込みを主体としたテクノ・ダンスミュージック系のサウンドが展開されている。

全体的にギターサウンドと打ち込みサウンドのバランスが上手く取れているが、歌詞が少なめのテクノサウンドを聴かせる楽曲も中盤からは見られるので、今作はロック好きな人よりもテクノサウンドが好きな人の方が馴染みやすいかもしれない。


岸田繁はこのアルバムについて「東京での環境に慣れていった感じ」とコメントしている。前作「図鑑」の時はバンドの仲が大変悪かったようだが、今作では改善されたという。それも今作の「TEAM ROCK」というタイトルにも現れているのかもしれないが、その割にバンドサウンドが目立つ曲が少ない。何とも皮肉なものである。



「TEAM ROCK」はタイトル曲。ラップ調の曲となっている。「メッセージすら何処にも御座居ません」という脱力感ある歌詞が印象的。2分少しの小品なので、アルバムのイントロのような位置付けと言っても良いかもしれない。



「ワンダーフォーゲル」は先行シングル曲。今までのくるりには無かったポップな楽曲。今作の特徴であるダンスミュージックへのアプローチがされた一曲。そのため、今作を象徴する曲と言える。明るいメロディーではあるが、サビは「ハローもグッバイもサンキューも言えなくなってこんなにもすれ違ってそれぞれ歩いていく」と切ない。ライブでも人気のある曲。



「LV30」は岸田の好きなゲームであるドラクエシリーズを元に作られた一曲。ゲームをやっている時の感情が歌われている。マイ・ブラッディ・バレンタインの楽曲にとても似ている。シューゲイザーサウンドの曲。曲のラストの「召喚するかドアを開けるか回復するか全滅するか」と繰り返した後の「書き換えするか」という言い回しはとても感心させられる。



「愛なき世界」は今作では数少ないストレートなロックナンバー。ほぼ同期で親交があるSUPERCARの楽曲「Fairway」のアンサーソングとも言われている。



「C’mon C’mon」はハウス、ダンスミュージック系の楽曲。歌詞は「カモンカモン」と繰り返されるだけ。音を聴かせる曲ということで良いだろう。アルバムの箸休め的な存在の曲と捉えている。



「カレーの歌」は岸田によるピアノの弾き語りによる楽曲。寒い冬の頃になると聴きたくなる優しい一曲。家に帰ってくる途中、カレーの匂いがするとワクワクしたあの頃の感情が蘇る。ジョン・テンバーの「故郷に帰りたい」と似ている。



「永遠」はダンスミュージック系の一曲。歌詞は少なめで、「C’mon C’mon」と同じような音を聴かせる曲と言える。このような曲に慣れていない管理人はつい飛ばしたくなってしまう。



「トレイン・ロック・フェスティバル」は前作を彷彿とさせる歪んだロックサウンドが印象的な一曲。ゆったりとしたアルバムの流れを一瞬でぶった切るような曲。アルバムの流れを考えて聴くとさらに良い曲だと思える。



「ばらの花」は先行シングル曲。くるりの代表作と言える一曲。雨が降っている朝の光景が浮かぶような優しいながらも冷たさも感じさせる名曲。終始鳴り続ける無機質なキーボードのリフが印象的。メンバーも大変気に入っている曲であり、多くのアーティストにカバーされている。SUPERCARのフルカワミキがコーラスで参加している。



「迷路ゲーム」は穏やかでありながらもサイケさも感じさせる一曲。正直歌詞の意味は全くわからない。ラストの「迷路ゲームにはもう飽きた」という歌詞は当時のくるりの想いだったのかもしれない。



「リバー」は今作発売後にシングルカットされた一曲。ポップな曲なので、シングルカットするには相応しい一曲だったと思われる。『日立世界・ふしぎ発見!』のエンディングにも起用された。雨が降る街の風景がよく浮かんでくる歌詞である。



ヒット作ということもあり、比較的中古屋では見かけやすい。
くるりの代表作と言える「ワンダーフォーゲル」「ばらの花」が収録されていることもありベストの後のオリジナルアルバムとしてもおすすめできる。他のアルバムとは一線を画するテクノ、ダンスミュージック系のサウンドが展開されたアルバムなので、好き嫌いがかなり分かれる一作。岸田の詞も深みを増しているため、そこにも注目して聴いていただきたい。


★★★★★