↑リマスター盤
【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
全曲編曲 小林信吾、KAN
プロデュース KAN

1.ラジコン ★★★★☆
2.Cover Girl ★★★★★
3.星空がcrying ★★★★☆
4.いつもまじめに君のこと ★★★★★
5.甘海老 ★★★★☆
6.STARS ★★★☆☆
7.焼肉でもいきましょうよ ★★★★☆
8.秋、多摩川にて ★★★★★
9.明るいだけのLove Song ★★★★★
10.朝日橋 ★★★★☆

1993年12月10日発売
2010年10月27日(リマスター再発)
ポリドール(オリジナル盤)
アップフロントワークス(リマスター盤)
最高位13位 売上6.9万枚

KANの8thアルバム。先行シングル「いつもまじめに君のこと」を収録。

当時のKANは自らの作品に対する評価が段々と厳しくなっていた。練っても練っても納得がいかないという状況であったという。その中で作られたアルバムが今作である。KAN本人もこのアルバムは重苦しい雰囲気があるとコメントしている。
実際に聴いてみると、今までのアルバムには無かったような落ち着いた、静かな雰囲気が今作にはある。「愛は勝つ」によるヒットも一段落し、集中して曲作りに取り組むことができるようになったためだろうか?

しかし、中身はバラエティに富んだものとなっている。王道と言えるピアノ弾き語りによる楽曲はもちろんのこと、打ち込みを主体としたダンスナンバーもある。

「弱い男の固い意志」というタイトルがかなり秀逸。KAN自身の想いがそのまま表れているようなタイトルだと思う。「弱い男」を描いたラブソングを作り続けてきたKANの一つの到達点と言える。


「ラジコン」はピアノ弾き語りによる2分少々の短い一曲。アルバムのイントロのような存在と言える。流れるようなピアノの音色が美しい。歌詞は彼女に振られてラジコンをやり始めた男が歌われている。ラストの「ラジコンはきっとぼくをきずつけたりはしないから」という歌詞はとても情けない。
「ダン!」という感じの強いピアノの音がして曲が終わるが、その音はラジコンが落ちて壊れてしまう音を表現しているという噂がある。


「Cover Girl」はモデルの彼女を描いたポップロック。彼女は世界中を回っているようだ。ギターサウンドが前面に出ている当時としては数少ない曲。KANの歌詞では珍しい程に横文字が多用され、スカした印象のものとなっている。「今はどこにいて 誰の胸でねむるの」という歌詞は何とも切ない。


「星空がcrying」はAORテイストの一曲。しっとりと聴かせてくる。「恋をした 恋をした きっとぼくだけが 夢見てた 夢見てた ひとりきり」というサビの歌詞が切ない。あまりに悲しくなると涙が出なくなってしまう。そんな切なさに溢れた曲。


「いつもまじめに君のこと」は先行シングル曲。KAN自身の人柄が出ているような誠実な男が描かれている。恋人への手紙のようになっている歌詞が印象的。その言葉には飾りは無い。ポップではあるがお洒落な一曲。


「甘海老」は打ち込みを主体としたマイケル・ジャクソン風の一曲。今作の帯には「異色の話題作『甘海老』を含む全10曲収録」と書かれていた。話題になる前から話題作と言いきるセンスが良い。曲調や歌い方もマイケル・ジャクソンを思わせるものとなっている。歌詞は夜の街で遊ぶ女子高生への警告のようになっている。男の真理もしっかりと突いている歌詞である。「甘海老みたいに 殻むいて ひとくちで食べちゃうぞ」
「甘海老みたいに 生のまま しっぽから食べちゃうぞ」何とも意味深である。


「STARS」はストリングスが効果的に使われているジャズテイストの一曲。結婚を控えた恋人への優しい言葉が綴られている。正直このアルバムの中では印象が薄い。一曲単位で聴くと良い曲なのだが…


「焼肉でもいきましょうよ」は跳ね上がるようなメロディーが印象的なポップな一曲。一目惚れしてしまった男の素直な感情が歌われている。語尾がですます調で統一されているのが舞い上がっている心を誰かに語っているようで微笑ましい。「Wow wow wow」が多用されている。終始ハイテンションである。


「秋、多摩川にて」はKANの王道と言えるピアノの弾き語りを主体とした美しい一曲。KAN自身も「秀曲」と認めている。夢に出てきた結婚した元カノのことを「愛する人のためだけに お給料ももらわずに 働く毎日って大変だろう どうなんだろう」と考え、「がんばれ」と応援する。何て優しい男だろうか。KANのキャリアを通しても出色の出来だと思う。


「明るいだけのLove Song」は「SMAPに提供するつもりで作った」という一曲。確かにタイトル通り明るいのだが少し無理しているように聴こえる。そういう闇もKANらしくて良いけど。楽曲はポップなので聴きやすい。


「朝日橋」はアルバムの最後を飾るピアノの弾き語りによる一曲。別れた彼女のことを頑張って忘れようとする男が歌われている。何とも切ない。聴いた人の心に影を落とすようである。朝日橋は実在する場所であるが、同じ地名が多くあるため何処かは不明。


ヒット作ということで比較的中古屋で見かける一作。著名な楽曲は収録されていないため、ベストの後のオリジナルアルバムにはあまり向いていないが、深くKANの曲に触れてみたいという方にはおすすめできる。ピアノの弾き語りを主体とした曲、聴いていて笑ってしまうような曲、切なさが全開の曲… KANの幅広い楽曲の世界観を味わえる。どちらかと言うと失恋ものの曲が多いと思う。

まさに「隠れた名盤」といえる。KANの音楽に興味を持った方には是非とも聴いていただきたい。「愛は勝つ」だけのアーティストではないことを認識してほしい。

★★★★★