大滝詠一
2011-03-21

【収録曲】
全曲作詞 松本隆
4.のみ作詞 大瀧詠一
全曲作曲 大瀧詠一
全曲編曲 多羅尾伴内(大瀧詠一の変名)
プロデュース 大瀧詠一

1.君は天然色 ★★★★★
2.Velvet Motel ★★★★☆
3.カナリア諸島にて ★★★★★
4.Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語 ★★★☆☆
5.我が心のピンボール ★★★★☆
6.雨のウェンズデイ ★★★★★
7.スピーチ・バルーン ★★★★★
8.恋するカレン ★★★★★
9.FUN×4 ★★★★☆
10.さらばシベリア鉄道 ★★★★★

1981年3月21日発売(LP、CT)
1982年10月1日発売(CD)
1983年8月31日(LP、CTマスターサウンド盤)
1989年6月1日(CD、CTリマスター盤)
1991年3月21日発売(CD選書盤)
1997年10月22日発売(MD)
2001年3月21日発売(20th盤)
2011年3月21日発売(30th盤)
NIAGARA/CBS/SONY(オリジナル盤)
NIAGARA/Sony Music Records(再発盤)
最高位2位(LP) 総売上推定200万枚

大滝詠一の5thオリジナルアルバム。先行シングルは無し。今作発売当日に「君は天然色/カナリア諸島にて」がシングル発売されている。その後も「恋するカレン/雨のウェンズデイ」「さらばシベリア鉄道」がシングルカットされている。

大滝自身最大のヒット作となった。1982年にCD化され、オリコン初のミリオン達成作品となった。世界初のCD化タイトル20作の中に選ばれた作品である。しかし、大滝曰く「誰も買わなかった」とのこと。発売後3年間はCDによる印税はゼロだったという。

大滝はCD化された音源に「何故音が悪いのか?」と疑問を抱き、デジタルサウンドを研究する日々が始まることとなった。その結果、CDでの発売後約1年でリマスタリングが行われ、世界初のCDによるリマスターが行われた作品となった。その後も幾度となくリマスター盤が発売されている。


「君は天然色」はシングルカットもされた大滝の代表作といえる一曲。現在もCMソングに起用されているため、イントロだけなら誰もが知っていると思われる。ポップでありながら分厚いサウンドのいわゆる「ウォール・オブ・サウンド」を象徴するような曲。何かが始まる予感を告げるような流麗なイントロから始まるこの曲はまさに日本のポップスの到達点だろう。


「Velvet Motel」は夏の夜のモーテルの姿が浮かんでくるような一曲。大滝のクルーナー・ボイスが色っぽく、この曲の世界観をイメージさせる。ジャケ写の雰囲気と最も合っている曲だと思う。


「カナリア諸島にて」はシングルカットもされた比較的著名な一曲。作詞の松本隆は当時カナリア諸島に行ったことがなく、ほぼイメージで作詞したという。「何となく語感が気に入ったから」という理由でカナリア諸島というワードを使ったようだ。松本隆はカナリア諸島を1999年に初めて訪問したという。2015年にスバルの「WRX」のCMソングに起用された。


「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」は今作の中で唯一大滝自らが作詞を担当した。サウンド重視でユーモアのある歌詞のいわゆる「ノベルティソング」と呼ばれる曲。そのため、作り込まれた楽曲が並ぶ今作の中では箸休め的な存在の曲である。しかし、シンセの音作りには苦戦したようだ。大滝曰く「シンセ・ドゥーワップ」というジャンルの曲。タイトルの「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba」のドゥーワップのフレーズはシンセにしゃべらせている。


「我が心のピンボール」は大滝の力強いボーカルを味わえる一曲。鈴木茂によるギターの音色が印象的。サウンドが今作では珍しいハードなものなので、そちらの方面の印象が強い。


「雨のウェンズデイ」はシングルカットされた一曲。LP盤の場合この曲からB面となる。元キャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)のメンバーがセッションに参加しているが、再会するのは久し振りだったが、和気藹々としたものではなく、緊張感があったという。初回プレスのシングル盤はクリアビニール仕様になっているが、それは貴重品になっているようだ。気だるい雰囲気がたまらない曲。ピアノが印象的。


「スピーチ・バルーン」は今作の中では少し地味な印象のある曲だが、2004年にソニーの「デジタルハンディカム」のCMソングに起用されたことで注目を集めた一曲。ほのぼのとした曲調。何度か聴くと良さが出てくるタイプの曲だろうか。タイトルの「スピーチ・バルーン」は漫画等に使われるフキダシのこと。


「恋するカレン」はシングルカットされた一曲。今作の収録曲の中でも著名で、様々なアーティストによってカバーされている。「ウォール・オブ・サウンド」の形容がぴったり合うような一曲。様々な楽器が一斉に録音され、コーラスも分厚く重ねられ、挙句にストリングスも使われている。聴いている者はただただ音の洪水に飲まれるだけである。失恋をテーマにしたネガティブな歌詞にも引き込まれる。

 
「FUN×4」は楽しげな雰囲気漂うポップな一曲。この曲もいわゆるノベルティソングだろうか。ちなみに、タイトルに正式な読み方は無いという。そのため、「ファン・ タイムス・フォー」や「ファン かける よん」等読み方も様々。大滝曰く「どんなに自由な読み方をしてもよい」という不思議な曲。「散歩しない?」というセリフがあるが、その声は太田裕美が担当している。月に吠える男の声は五十嵐浩晃が担当している。大滝と同じソニー所属ということで、たまたま使われたと思われる。


「さらばシベリア鉄道」は太田裕美に提供した曲。前の「FUN×4」の最後に聞こえる、ミュージシャンやスタッフのアンコールに応えて演奏される。実質ボーナストラックのような存在だろうか。この曲だけアルバムの雰囲気に合わないためか、別枠の扱いとなっている。1989年リマスター盤ではこの曲がカットして発売された。シリアスな曲調で、松本隆によるドラマチックな歌詞が印象的。どこまでも続くような雪原の姿を想像できる。


日本のロック・ポップス史に残る傑作。最初にリリースされてから35年が経過した今もなお色褪せないサウンドを味わえる。毎年夏になると聴きたくなる一作。そして、聴いた者の心の中に微風を吹かせてくれるのだろう。
邦楽を愛する方全てに聴いていただきたい永遠の名盤。

★★★★★+2