山下達郎
1999-06-02

【収録曲】
特記以外全曲作詞作曲編曲 山下達郎
5.作詞作曲 Pete Andreoli&Vincent Poncia
8.作詞 竹内まりや
11.作詞作曲 Felix Cavaliere & Eddie Brigati
プロデュース 山下達郎

1.アトムの子 ★★★★☆
2.さよなら夏の日 ★★★★★
3.ターナーの汽罐車 -Tuner's Steamroller- ★★★★☆
4.片想い ★★★★★ 
5.Tokyo's A Lonely Town ★★★★☆
6.飛遊人 -Human- ★★★☆☆
7.Splendor ★★★★★
8.Mighty Smile (魔法の微笑み) ★★★★☆
9."Queen Of Hype"Blues ★★★★☆
10.Endless Game ★★★★☆
11.Groovin' ★★★★☆

1991年6月18日発売
1999年6月2日(再発)
MOON/MMG(オリジナル盤)
MOON/WARNER MUSIC JAPAN(再発盤)
最高位1位 売上71.0万枚

山下達郎の10thアルバム。先行シングル「Endless Game」「さよなら夏の日」を収録。今作発売後に「ターナーの汽罐車 -Tuner's Steamroller- 」「アトムの子」がシングルカットされた。オリジナルアルバムのリリースは前作から3年振り。

山下曰く「前作はコンセプト・アルバム的な作品だったので、次は作家主義・楽曲主義でいこう」と決めていたという。タイトルは「職人」を意味している。「自称アーティスト」のミュージシャンが増えて、文化人的な志向の風潮があった当時の流れへの反抗意識から「ARTIST(芸術家)」と対極をなす「ARTISAN(職人)」というタイトルをつけたようだ。「職人」という言葉は山下達郎の音楽に対する姿勢そのものを表す、これ以上無いほど合った言葉だと思う。
サウンドは打ち込みが中心になっている。


「アトムの子」は今作発売後にシングルカットされたポップな一曲。様々なCMや番組で使用されているため、一般的な知名度も比較的高いと思われる。タイトル通り、鉄腕アトムを題材にした曲。今作の制作中に手塚治虫の訃報があり、タイムリミット直前にこの曲を作ろうと思い立ち、期限10日前にレコーディングを開始して完成させたという。山下曰く「突貫工事もいいとこ。」ライブでもよく歌われる曲である。童心に帰ったようなピュアな歌詞が印象的。山下は手塚治虫の漫画を読んで育った世代(だと思われる)なので思い入れが深いのだろう。


「さよなら夏の日」は先行シングル曲。 第一生命のCMソングに起用された。その後もケンタッキーや三菱電機のカーナビのCMソングに起用された。この曲も一般的な知名度がそこそこあるのではないだろうか?「夏の終わりに彼女と遊園地のプールに行った時に夕立にあい、雨上がりの虹を見た」という山下の高校生時代の思い出を元に作った曲。そのような思い出に加え、全ての演奏を山下自身で行った初めてのシングル曲ということで、山下本人も思い入れが強いという。夏の終わりになると聴きたくなる、切なさに満ちた曲。管理人はライブでこの曲を聴いた時に夏の終わりでもないのに感動して涙が出てしまった。


「ターナーの汽罐車 -Tuner's Steamroller- 」は今作発売後にシングルカットされた曲。「元々はロックンロールを作ろうと思っていた」というが、あまりそれっぽさは無い。気だるい雰囲気を持った、耽美的なイメージの一曲。音楽的にはU2のような曲にしたかったらしい。ターナーの『雨、蒸気、速力』という作品に影響を受けているという。タイトルの「ターナー」はそれが元ネタ。日産スカイラインR32後期型のCMソングに起用された。


「片想い」はAORテイストの一曲。ドラマチックな歌詞ではあるが、歌詞は全て創作だという。職業作詞家的な意識で作詞したようだ。山下本人も気に入っているという一曲。「やさしい事がいつも 正しい訳じゃなかった」という2番の歌詞が好き。何となくではあるが、山下達郎の曲は片想いがテーマの曲が多い気がする。


「Tokyo's A Lonely Town」はトレイドウインズというアーティストの「New York's A Lonely Town」をカバーした一曲。原曲の歌詞を微妙に変えており、シチュエーションを東京の街に置き換えたという。原曲は全く知らないが、ポップな一曲。原曲の日本語訳は「ニューヨークは淋しい町」だというが、そのような淋しい感じが無い。


「飛遊人 -Human-」は1分50秒程度の短い曲。全日空のヨーロッパ就航のCMソングとして作られた。このような当て字のタイトルになっているのはそれが原因なのだろう。小品であり、レコードで言うA面とB面の間のクッション的な存在の曲。後半部分はCM用として制作し、前半の弾き語りを足して作ったようだ。


「Splendor」はアイリッシュ風の一曲。この曲もU2を意識していたという。当時の山下はU2をよく聴いていたようだ。歌詞については2~3人の職業作詞家に依頼したものの、望んでいた感じにならなかったので山下自身で書いた。サウンドの格好良さ、幻想的な印象の歌詞。このアルバムの中でも出色の出来の一曲だと思う。


「Mighty Smile (魔法の微笑み)」はモータウンサウンドに影響を受けたシャッフル・ミュージック。ポップで楽しげな雰囲気が漂う一曲。作詞は竹内まりやが担当した。山下は「カミさんらしいポジティブな歌詞だね」とコメントしている。


「"Queen Of Hype"Blues」はシニカルな歌詞が印象的なファンク。「HEY REPORTER!」(「FOR YOU」収録)や「俺の空」(Ray Of Hope」収録)を髣髴とさせるボーカルが加工された一曲。タイトルの「Hype」は過大に誇張することや、騙すことを意味している。


「Endless Game」は先行シングル曲。TBSドラマ『誘惑』の主題歌に起用された。この曲を制作するにあたって原作『飾り火』(作 連城三紀彦)の上下巻を読み込んでから制作に臨んだという。暗い話だったため、山下には珍しいマイナー・メロディーになった。山下曰く「作家としての山下達郎から出てきた曲だったので、自分の声がオケから浮いてしまった。マイクを下の方にセットして俯いて歌ったら声がくぐもってオケに合った」とのこと。


「Groovin'」はヤング・ラスカルズの楽曲のカバー。現在は『山下達郎のサンデー・ソングブック』のエンディングテーマに起用されている。この曲の演奏は気に入っていないというが、「曲自体が難しいので誰がカバーしても大したものにならない」とのこと。元々は『プレミア3』というラジオ番組のテーマとしてカバーしたというが、番組は今作がリリースされる直前に終わってしまったので、永久にお蔵入りになる可能性を考えて収録したようだ。


ヒット作ということもあり、山下達郎のアルバムの中では珍しく中古屋で安価で入手できる一作。「アトムの子」「さよなら夏の日」「Endless Game」をはじめとした著名な楽曲が収録されているため、ベストの後のオリジナルアルバムとしてもそこそこ良い。1990年代の山下の音楽に手軽に触れたいならおすすめ。

★★★★☆