サニーデイ・サービス
1999-10-20

【収録曲】
全曲作詞作曲 曽我部恵一
全曲編曲 サニーデイ・サービス
プロデュース 曽我部恵一

1.太陽と雨のメロディ ★★★★★
2.恋はいつも ★★★★☆
3.空飛ぶサーカス ★★★★☆
4.スロウライダー ★★★★★
5.八月の息子 ★★★★☆
6.サイン・オン ★★★★★ 
7.江ノ島 ★★★★★
8.時計を止めて夜待てば ★★★★☆
9.真夜中のころ・ふたりの恋 ★★★★☆
10.夢見るようなくちびるに ★★★★★ 

1999年10月20日発売(CD)
1999年12月25日発売(LP盤)
MIDI
最高位10位 売上2.4万枚

サニーデイ・サービスの6thアルバム。先行シングル「スロウライダー」「夢見るようなくちびるに」を収録。前作から1年3ヶ月ぶりのリリースとなった。初回盤は三方背ボックス入りのデジパック仕様。

全16曲、収録時間計82分というバンドの混沌を煮詰めて作品にしたような前作「24時」から一転し、ポップな楽曲が多く並ぶアルバムとなっている。曽我部恵一曰く「『24時』の反動もあったからまともに作ろうと思ったのが今作。ポップアルバムの大名盤を作ろうという意識があったんだけど、俺の中ではちょっと落ちるかな」とのこと。

今作は原点回帰という捉え方をされることが多かったことについて曽我部は「そうですけど、この頃は結構しんどかった。バンドという形をキープせざるを得ない状況の中で、実は自分が向いている方向が違うわけですよ。楽しくレコーディングしたけど思いっきりって感じではない。実際3人のコミュニケーションも減ってきたから」と語っている。

しかし、曽我部自身が思い描く音楽がバンドの中で表現しきれない状況が増えていた。レコーディングもかなり大変だったようで、スタッフのみならず、メンバーすら曽我部の状態に引いてしまっていたようだ。
相手を奴隷のように思ってしまっていたのはもちろん、曽我部自身も奴隷のように曲作りをしていたという。曲の完成形が見えないのに駄目出しを連発していたため、最悪な泥沼に陥ってしまった。


「太陽と雨のメロディ」はイントロ無しで始まる一曲。「東京の街には太陽と雨が降って 流れるメロディがぼくを旅へと誘う」という歌いだしがいかにもサニーデイらしい。今作の特徴である、ポップながらもサイケデリックな雰囲気のあるサウンドが展開されている。


「恋はいつも」は聴いていると眠くなるようなゆったりとしたバラード。何とも言えない浮遊感があるサウンドである。夜になっていく街の姿が浮かんでくるような曲。サビの「きみの瞳の奥で揺れるものは 隣りに座るだれかのものになる」という歌詞が印象的。


「空飛ぶサーカス」はごちゃごちゃしたサウンドが展開されている一曲。パーカッションが全編通して使用されており、ボコボコした印象がある。曽我部はスライ&ザ・ファミリー・ストーンをイメージして作ったようだ。


「スロウライダー」は先行シングル曲。イントロのギターが印象的。1970年代の歌謡曲風なメロディー。歌詞は「旅」をイメージさせるものとなっている。これを聴くと電車に乗って遠出したくなる。この曲の歌詞について曽我部は「我が道を行くって感じではない。我が道を行きたいけど行けないっていうのが本当だと思う」と語っている。


「八月の息子」は一発録りでレコーディングされたという一曲。エレクトリックシタールやマラカス等が使われており、様々な音が聴こえて面白い。夏の終わりをテーマにした文学的な歌詞である。人が少なくなった海の光景が浮かんでくるようだ。


「サイン・オン」は曽我部も気に入っているという一曲。鈴の音が全編にわたって使用されている。ビーチ・ボーイズを髣髴とさせるコーラスが印象的。聴いていると心地よくなるようなふわふわしたイメージの曲。


「江ノ島」はファン人気が高い、いわゆる「隠れた名曲」。爽快感溢れるギターの音、ゆったりとしたバスドラムに包まれたサウンドが心地良い。海沿いの道をドライブしているような歌詞が印象的。どこまでも広がるような青空、燦々と輝く太陽、輝く海、緩やかなカーブ… 夏の日の姿が浮かんで止まらない。サニーデイの全ての曲の中でも出色の完成度を誇る一曲。


「時計をとめて夜待てば」は曽我部のギター弾き語りを中心としたフォークテイストの一曲。バンジョーも使われている。物語の中のような幻想的な歌詞が良い。


「真夜中のころ・ふたりの恋」は打ち込みも使われたダンスナンバー。不安定なサウンドである。歌詞はアダルトな雰囲気を持っている。曽我部の甘ったるいボーカルが印象的。


「夢見るようなくちびるに」は先行シングル曲。先行シングルらしいポップな一曲。特に表記は無いものの、シングルバージョンには無いエンディングが入っているため、アルバムバージョンと言える。「夢見るようなくちびるに色をつけてみるんだ だれもいない場所で」という歌詞が微笑ましい。曲の最後には「東京」のオルゴールが入っている。


中古屋ではたまに見かける程度。
全編通してゆったりとしたポップな曲を楽しめる。違う空間にいるような不思議な雰囲気もある。それは「MUGEN」というタイトルにもよく表現されている。「無限」「夢幻」等と解釈できる。
サニーデイ・サービス版「ペット・サウンズ」とも称される、モコモコしたイメージの独特な味わいを持ったサウンドが印象的な一作。サニーデイ・サービスの音楽に興味のある方には是非とも聴いていただきたい。

★★★★★