KAN
2010-10-27


↑リマスター盤
【収録曲】
全曲作詞作曲 KAN
全曲編曲 小林信吾、KAN
プロデュース KAN

1.丸いお尻が許せない ★★★★☆
2.まゆみ ★★★★★

3.香港SAYONARA ★★★★☆
4.Moon ★★★★★ 

5.君がいなくなった ★★★★☆
6.孔雀 ★★★☆☆

7.Day By Day ★★★☆☆
8.TOKYOMAN ★★★★★ 
9.死ぬまで君を離さない ★★★★☆

10.KANのChristmas Song ★★★★★ 


1993年2月25日発売
2010年10月26日発売(リマスター再発)
ポリドール(オリジナル盤)
アップフロントワークス(リマスター再発盤)
最高位3位 売上14.4万枚


KANの7thアルバム。先行シングル「死ぬまで君を離さない」「丸いお尻が許せない」を収録。今作発売後に「まゆみ」がシングルカットされた。


ベストを挟んでリリースされたため、オリジナルアルバムのリリースは前作「ゆっくり風呂につかりたい」から1年9ヶ月ぶりとなった。そのブランクのおかげか、前作までの作品と比べ楽曲のクオリティが上がり、音楽の幅が広がったとKAN自身も評価している一作。
前作リリース後、KAN自身初となるヨーロッパ旅行を経験し、東京を外から見たことが今作にも影響しているようだ。
ジャケ写、楽曲共に今までの作品には無かった落ち着いた雰囲気がある。


今作はアルバムチャート最高位3位を記録したものの、今作以降アルバムチャートトップ10獲得は今年リリースの「6×9=53」が10位を獲得するまでずっと達成できなかった。



「丸いお尻が許せない」は先行シングル曲。「30歳になったらエロソングを作りたい」と思っていたKANが30歳を迎えた年に満を持して作ったという一曲。タイトルだけでもそのような内容だというのは察することができるが、お尻フェチの男が主人公である。彼女のお尻を堪能しようと頑張っている姿がコミカルに綴られた歌詞が微笑ましい。サウンドはキラキラしたイメージのシンセがメイン。普通に美メロポップスになっているのが凄い。しかし、このような曲を何故シングルにしてみたのだろうか?ちなみに、この曲以降定期的に男の欲望を題材にしたようなエロ曲を発表している。KANの中で何かが吹っ切れてしまったようだ。


「まゆみ」は今作発売後にシングルカットされた一曲。三ツ矢サイダーのCMソングに起用されたため、比較的著名。KAN自身のシングル売上でも「愛は勝つ」に次いで2位に入ってくる。KAN曰く「実在の人物を歌っている」とのことだが、最低な男の立場から歌っているため、あまり評価されたくない曲だという。しかし、そのようなことを考えられない程に歌詞は優しさに溢れたものとなっている。特にラストの「まゆみ 一番澄き通ってて美しい水って なにか知ってるかい まゆみ 恋をして せつなくてがまんして がまんして こぼれた涙がきっとそうだよ こんなことしか言えないぼくを許して」という歌詞には圧倒される。サビに入る直前のピアノが美しい。



「香港SAYONARA」はボサノバテイストの一曲。香港が中国に返還される前の時代の曲である。それだけ聞くと社会派な曲のようだが、内容は香港を舞台にしたラブソング。2分半の短い曲。アルバムの箸休め的な存在の曲と言える。



「Moon」はASKAの作風を意識して作ったという王道バラード。ASKAの「はじまりはいつも雨」を聴いてKANは邦楽を聴いてきて初めて感動し、その感動のままに作ったようだ。ファン人気も高い名曲。少しギリギリな高音が印象的。月を見ながら聴きたくなる一曲。



「君がいなくなった」は失恋ものバラードの名曲。失恋後、いなくなってしまった彼女のことを思い出しながら虚無感に浸る男が主人公。明るい曲調が切なさをさらに増幅させてくる。「君がいなくなった時から ぼくはただのひと」という歌詞が印象的。失ったものは余りにも大き過ぎる。



「孔雀」はマイケル・ジャクソン風のダンスナンバー。歌い方も若干似せている。ライブではダンスと共に披露される一曲。韻の踏み方が凄い。KANの曲には珍しい、ダンサブルかつ夜のイメージを持った曲である。



「Day By Day」はリアレンジでシングルカットされた「言えずのI LOVE YOU」のC/W曲。今作にはリテイクバージョンで収録されている。日を追うごとに「君」を好きになる男が描かれている。片想いなのか、別れてしまった後なのかはわからないが、男の素直な心が綴られた歌詞が印象的。



「TOKYOMAN」はタイトル曲。「健之(たけし)」「香織」「小山」と三人人物が出てくるが、全員実在する方だという。香織さんがKANのライブに来た時にこの曲を歌ったものの、香織さんの意見によって「昔俺に惚れてたのに」という歌詞を「昔俺が惚れてたのに」と変えて歌わされたというエピソードがある。恋に仕事に頑張る「TOKYOMAN」が主人公。
繰り返される「明日のことなど誰にもわからない」というフレーズが印象的。



「死ぬまで君を離さない」は先行シングル曲。タイトルからもわかるが、大変真面目なバラードである。恋人への永遠の愛を誓う男の飾らない想いが綴られた歌詞。歌詞を見ているだけでも少し恥ずかしくなってしまうくらい誠実な歌詞である。何故かはわからないがKANはこの曲と同じような内容の楽曲が多い。



「KANのChristmas Song」は「死ぬまで君を離さない」のC/W曲。ケンタッキーのCMソングに起用されたこともあり、比較的著名な一曲。ビリー・ジョエルの「The Longest Time」に影響を受けて作られたという。ほぼ全編がアカペラで構成されている曲。タイトルにKAN自身の名前が入っているが、「自分が死んでからもクリスマスのスタンダードとして愛されてほしい」という思いが込められているという。



KANの作品の中ではヒット作ということもあり、中古屋でよく見かける一作。しかし、KANのアルバムでも屈指の完成度を誇る作品であり、中古屋で眠ったままにしておくには勿体無い。


全体を通しての統一感、一曲一曲のキレ共に素晴らしい。「まゆみ」「KANのChristmas Song」等著名な楽曲も収録されており、KANのライトリスナーにもおすすめできる。ベストの次のオリジナルアルバムとしても適任と言える。KANの音楽に興味を持った方には是非とも聴いていただきたい。

★★★★★